令嬢アリスティアの結婚。〜放蕩王子に結婚破棄を宣言されたので、私、隣国王子のプロポーズを受ける事にしました〜

本編・アリスティアの学園生活

花咲く卒業式

学園の周囲の並木通りは、桃色の花で彩られ、満遍なく咲き乱れる頃、アリスティアとジークハルトが通う、ここエチュード学園では、最上級生達の卒業式が行われていた。
快晴の天気はまるで生徒達を祝福している様であった。
学園の卒業式会場には、イスト王国のお歴々が集い、イスト王国現国王のレオルスや、彼の妻である王妃ルビアーナも来賓席に座り、学園の生徒達を笑顔で見守っていた。

「これより、卒業式を始めます」

マナフロアの開式の宣言がされると
今日卒業する最上級生が入場する
シリウスやデネブ、バーンやステラ、既に婚約者が決まっている生徒の白制服はよく目立った。
イスト王国の国旗が掲げられ。全生徒により学園校歌が厳かに歌唱される。
学園の卒業証書が粛々と卒業試験を合格した最上級生達に手渡されると、
学園長マナフロアと国王レオルスが挨拶を行う。
在校生代表の祝辞はイスト王国、王子ジークハルトが行い、彼の行う威風堂々たる祝辞する姿をアリスティアは見守っていた。
卒業生代表の挨拶は生徒会長のシリウスが行った。

「本日は、国王陛下を初めて、来賓各位の御臨席を賜り、諸先生方の協力により、盛大な卒業式を挙行していただき、また、学園長、在校生代表からの暖かい激励と祝辞のお言葉を賜りまして、私たち最上級生一同、感謝の念で…────…本当にありがとうございました。終わりに、皆様の輝かしい発展をお祈りいたしまして、卒業生代表の挨拶とさせていただきます。」

シリウスが卒業生代表の挨拶を終えると、在校生の席や来賓席から大きな拍手が鳴り響いていた。全ての日程が終わると、卒業生が退場する。アリスティアやジークハルトは知り合いの卒業生に向けて盛大な拍手を送った。
開始から終了まで、およそ一時間と少しであったが、アリスティアにとって、ほとんど知り合いが喋っているのを聴いていた様に思えた、そのせいか、呆気なく時間は過ぎてしまった様に思えた。
桃色の花が満開の並木通りを卒業生達はあるってゆく、ある者は談笑し、ある者は涙し、人の想いはそれぞれである。
シリウスとデネブはレオンとローゼリアと談笑していた。アリスティアとジークハルトは二人揃って、並木通りに咲き乱れる花を見上げる。
来年行うであろう自分達の卒業式に想いを重ねていると、そこにステラとバーンの二人がやって来た。

「はぁい、姫様、王子様」

「あ！卒業おめでとうございます！ステラ様、バーン様！」

「おめでとうございます、ローゼンスフィア公爵並びに公爵夫人」

「ああ、ありがとう。…王子、姫。」

アリスティアにはいつも無愛想なバーンが微笑んでいる様に見えた。

「…ステラ様、卒業前に約束果たせなくて本当にごめんなさい…。」

アリスティアは深々と頭を下げるが、ステラは明るく微笑み返す。

「そんな事、いつでも良いのよ、しばらくは特別教師として学園に残るからね、準備が出来たら、一緒にお茶しましょうね♪」

「はい！近いうちに必ず！」

「ローゼンスフィア公爵も教師になられるのですか？」

「ステラの気紛れに付き合うだけだが…学園で困った事があれば聞きに来ると良い。数年はイストに留まると思う。」

バーンはやれやれと言った様な表情なのは、恐らくはステラの要望に根負けしたのだろうとアリスティアは微笑みながらそう思った。

「ステラ様達は何年かしたらイストから離れるのですか？」

「んー…いろんな国を旅行したいとは思うけどね…なんだかんだこの国とっても居心地良いから、郊外にでも魔法商店建てようかな？とかも思ってたり？」

「ステラ…お前また気紛れを…」

「もし土地や建物がご入用でしたら、私も相談に乗りますよ？お二人には私達共々とてもお世話になっていますし。」

「王子…あんまりステラを甘やかさないでほしい、要求がエスカレートしてしまう。」

「あら失礼ね、これでも節操はあるわよ？」

苦笑いのバーンと微笑む三人は話の花を咲かす。

「それじゃ、助けが欲しくなったらいつでも来てね、また会いましょう、王子様、姫様…お菓子楽しみにしてるわね！」

「また会おう。」

「ステラ様、バーン様、帰り道お気を付けて」

アリスティアとジークハルトはバーンとステラを見送る、やがてローゼリアやレオン達が
やって来て、アリスティアは彼等と談笑しながら、彼女達は学園校舎へと戻って行く。

並木通りの木々達が、まるで最上級生達の旅立ちを祝う様に、その身に咲かせる桃色の花の花弁を風に乗せると、柔らかな吹雪の様に優雅に風に舞っていた。