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本編・アリスティアの学園生活
アリスティアの同棲生活
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卒業式も終わり翌日の昼過ぎ、アリスティアとジークハルトは同棲寮への引っ越しの為、家具や荷物をマリエルやライザそして、フィルに手伝ってもらいながら、同棲寮へと運び出す準備を進めていた。
学園の同棲寮は男子及び女子寮とは違い、比べ物にならない程広い、と言うよりも、一般庶民が住む様な少し豪華な戸建ての家が寮代わりになっているのであった。
(…ここに、これから一年、ジークと、二人きり…!?)
初めて同棲寮を見た時、これからの二人の生活を妄想して、アリスティアは顔面を真っ赤にする、そう、もはやこれは、ジークハルトとの新婚生活と言っても過言ではない。
煩悩と戦いながら行う学業は、さながら茨の道やあるいは修羅の道とも思ていた。
卒業生のデネブ・ルプスハート公爵令嬢の発言も、あながち間違いではない事を思い出していたアリスティアは、心の中で、仮にどの様な結果になろうとも、愛するジークハルトと何も包み隠さず、ごく自然体に向かい合う覚悟を決めていた。それと同時に、なるべくジークハルトに甘え過ぎて彼の負担にならない様にすると、決意していた様だ。
「荷物を運び込む前に、お部屋の中をお掃除をしますね」
「では、私は風呂場や水場周りを掃除して来ます」
アリスティアはジークハルトと分担してこれから二人で住む部屋の掃除をした、平屋の一階建で、独身寮よりも圧倒的に広く、部屋数も多い。個室が三つ、リビングと魔鉱石コンロが備わったキッチン、シャワー付きの浴室と、そしてトイレと、まさに一般家庭の家であった。
(これからの生活…とても楽しみですね)
学園の制度には早期にパートナーを決めて途中で破局すると言う例も少なくはない。
しかし、同棲寮に入寮する令嬢の過半数に自立と相手を労る精神を促し、令息達には護るべき者の存在を自覚させ、庇護の精神、あるいは愛する者を護る、毅然たる強き決心をもたらす様に促す。令息令嬢達の親からはそう言った事が支持されて、今もなお学園の伝統となっていた。
掃除もあらかた終わると荷物を運び込む、アリスティアはせっせと忙しなく荷物を運び込んでいると、疲れからか途端に足がもつれてしまう。
「きゃっ!?」
「危ない!アリス!」
ジークハルトは右手でアリスティアの身体を支え、左手で彼女が落としそうになった荷物を掴み受け取った。
「ご、ごめんなさい、ジーク…。」
「アリス、怪我は有りませんか?」
「だ、だいじょう…ぶ、です。」
思いの外逞しいジークハルトの腕に抱かれたアリスティアは、思わず顔面を紅潮させ、顔を逸らす。
(だ、だめ…っ…私ったら…!)
それと同時に、アリスティアの柔らかな身体に触れたジークハルトもまた、顔面を真っ赤にして天井を見上げていた。
(なんと…なんという事か…!)
それぞれが相手の顔をまともに見れない中で二人は同時に思った
((…こんなの、絶対に心臓が保ちそうにない…!!))
二人の胸の鼓動は駆け抜ける様に加速して行った。
そして、その後は何処か、ぎこちなく、ちぐはくな時間が過ぎていく。
そして、家具の配置も程なくして終わり、そろそろ夕飯時という頃であった。
「アリス、晩御飯は私が準備しますね」
「いいえ、ジークは休んでいて下さい、私が準備します」
「アリスも疲れているでしょう?私は大丈夫ですよ」
「私だって大丈夫です、それに、ジークに甘えるばかりではいきませんから」
その様な押し問答を続け、二人はお互いに譲らない、そうして、しばらくの間、膠着状態の睨めっこが続いた。
「ぷっ、くくく…っ!」
「ふっ、ふふふ…っ!」
珍妙なやり取りに、二人は遂に堪えきれなくなって笑い出していた。二人の微笑む目尻には涙が浮かぶ。
「ふふ、ではジーク、二人で分担しましょう」
「ええ、では私は道具を準備しますね」
アリスティアとジークハルトは仲良くキッチンに立って、二人で話し合いながら夕飯を作る。王城で食べる様な豪華ではない簡単な食事ではあったが、二人で談笑しながら食べる、自分達で作った夕食は何物にも変え難い幸福なひと時をもたらしてくれたのだった。
学園の同棲寮は男子及び女子寮とは違い、比べ物にならない程広い、と言うよりも、一般庶民が住む様な少し豪華な戸建ての家が寮代わりになっているのであった。
(…ここに、これから一年、ジークと、二人きり…!?)
初めて同棲寮を見た時、これからの二人の生活を妄想して、アリスティアは顔面を真っ赤にする、そう、もはやこれは、ジークハルトとの新婚生活と言っても過言ではない。
煩悩と戦いながら行う学業は、さながら茨の道やあるいは修羅の道とも思ていた。
卒業生のデネブ・ルプスハート公爵令嬢の発言も、あながち間違いではない事を思い出していたアリスティアは、心の中で、仮にどの様な結果になろうとも、愛するジークハルトと何も包み隠さず、ごく自然体に向かい合う覚悟を決めていた。それと同時に、なるべくジークハルトに甘え過ぎて彼の負担にならない様にすると、決意していた様だ。
「荷物を運び込む前に、お部屋の中をお掃除をしますね」
「では、私は風呂場や水場周りを掃除して来ます」
アリスティアはジークハルトと分担してこれから二人で住む部屋の掃除をした、平屋の一階建で、独身寮よりも圧倒的に広く、部屋数も多い。個室が三つ、リビングと魔鉱石コンロが備わったキッチン、シャワー付きの浴室と、そしてトイレと、まさに一般家庭の家であった。
(これからの生活…とても楽しみですね)
学園の制度には早期にパートナーを決めて途中で破局すると言う例も少なくはない。
しかし、同棲寮に入寮する令嬢の過半数に自立と相手を労る精神を促し、令息達には護るべき者の存在を自覚させ、庇護の精神、あるいは愛する者を護る、毅然たる強き決心をもたらす様に促す。令息令嬢達の親からはそう言った事が支持されて、今もなお学園の伝統となっていた。
掃除もあらかた終わると荷物を運び込む、アリスティアはせっせと忙しなく荷物を運び込んでいると、疲れからか途端に足がもつれてしまう。
「きゃっ!?」
「危ない!アリス!」
ジークハルトは右手でアリスティアの身体を支え、左手で彼女が落としそうになった荷物を掴み受け取った。
「ご、ごめんなさい、ジーク…。」
「アリス、怪我は有りませんか?」
「だ、だいじょう…ぶ、です。」
思いの外逞しいジークハルトの腕に抱かれたアリスティアは、思わず顔面を紅潮させ、顔を逸らす。
(だ、だめ…っ…私ったら…!)
それと同時に、アリスティアの柔らかな身体に触れたジークハルトもまた、顔面を真っ赤にして天井を見上げていた。
(なんと…なんという事か…!)
それぞれが相手の顔をまともに見れない中で二人は同時に思った
((…こんなの、絶対に心臓が保ちそうにない…!!))
二人の胸の鼓動は駆け抜ける様に加速して行った。
そして、その後は何処か、ぎこちなく、ちぐはくな時間が過ぎていく。
そして、家具の配置も程なくして終わり、そろそろ夕飯時という頃であった。
「アリス、晩御飯は私が準備しますね」
「いいえ、ジークは休んでいて下さい、私が準備します」
「アリスも疲れているでしょう?私は大丈夫ですよ」
「私だって大丈夫です、それに、ジークに甘えるばかりではいきませんから」
その様な押し問答を続け、二人はお互いに譲らない、そうして、しばらくの間、膠着状態の睨めっこが続いた。
「ぷっ、くくく…っ!」
「ふっ、ふふふ…っ!」
珍妙なやり取りに、二人は遂に堪えきれなくなって笑い出していた。二人の微笑む目尻には涙が浮かぶ。
「ふふ、ではジーク、二人で分担しましょう」
「ええ、では私は道具を準備しますね」
アリスティアとジークハルトは仲良くキッチンに立って、二人で話し合いながら夕飯を作る。王城で食べる様な豪華ではない簡単な食事ではあったが、二人で談笑しながら食べる、自分達で作った夕食は何物にも変え難い幸福なひと時をもたらしてくれたのだった。
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