59 / 75
本編・アリスティアの新学期
暗闇
しおりを挟む
他の生徒が誰もいない教室の室内で、ヴァルハイトとアリーシャはサーリャと対峙してた。
「ねえ、何故、王子姫達はまだ生きているのかしら?」
サーリャは不服そうに二人を睨んでいる。
紅蓮の鋭い視線には深い殺気が篭っていた。
「…サーリャ、俺達を騙したな」
ヴァルハイトは臆する事なく、サーリャを睨み付けた。
「何のことかしら?」
おどけた表情でサーリャは返した。
「とぼけないでよ、王子も王子姫もメンダークスの仇じゃないわ。」
「二人は闇の魔法や呪術魔法を嗜む様な悪党共じゃない。」
二人の言葉にサーリャは深くため息をついた。彼女の表情には不気味な笑みが浮かんでいる。
「…そんなに言うなら私に付いて来なさいな、あなた達の知りたい証拠を見せてあげる。」
サーリャは二人の横を通り教室から出ていく。
二人残った教室で、アリーシャはヴァルハイトに小声で尋ねた。
「ヴァルハイト…どうするの?」
「…奴の証拠を確認する。何が起こるのか解らないが、その時はその時だ。」
そうして、サーリャの案内するまま、ヴァルハイトとアリーシャは黙って彼女の背後を歩く。
周囲の生徒の目には貴族の令嬢と、護衛生徒としか映っていない、彼等の確執など梅雨知らず、平凡平和な日常が流れて行く。
「…まあ、取り敢えずここで良いかしら」
サーリャが二人を案内した場所は魔導実験室だった。室内では中級生の生徒が十人程度、自主学習や魔導理論の勉強の為、生徒同士で話し合っている。
サーリャは教室のちょうど中央あたりまで歩くと、ヴァルハイトとアリーシャは彼女の行動を不審な思った。
「…此処の何処に証拠が…?」
「今すぐに見せてあげるわ」
サーリャのその一言で空気が一変した。
教室の扉は自動的に閉まり、窓は黒ずむ、澱んだ闇の空気が漂い始めると、教室にいた中級生達が一人、また一人と苦悶の声を上げて倒れて行く。
「な…何だこれは…?」
「何が起こっているの…?」
ヴァルハイトとアリーシャは目の前で起こる光景に酷く驚いた。目の前で起こっている光景こそ、自分達が追っている仇が織りなす光景であるからだ。
「バカな…これは、あの時の…何故サーリャ…お前が!!」
「そんな…!サーリャはあの時の私たちと一緒に…!!」
「残念だけどこれが答えよ」
問答している間にも生徒達は力を失いその場へうずくまって行く。
「やめてサーリャ!彼等は関係ないわ!!」
「なら、力づくで止めてみなさい」
ヴァルハイトはサーリャに飛びかかった。
「その言葉に甘えさせてもらう!!」
ヴァルハイトは淡い光を纏った手刀を迷い無くサーリャへと振り下ろす。
バキンッ!!
激しい炸裂音が部屋中に響くが、ヴァルハイトの手刀はサーリャには届かなく、何か壁の様なものに遮られていた。
「この障壁…並のものじゃない…!!」
「ええ無駄よ、あなたの攻撃は私に一切効かないわ。」
「…サーリャ…お前は一体誰だ?」
ヴァルハイトはサーリャと距離を取った。
彼は得体の知れないサーリャの力に心の底から警戒していた。
─ヴァ…ル…アリィ…逃げ…て。
か細い声が響き渡る、その少女の声はヴァルハイトとアリーシャに聞き覚えのある声であった。
「え…今の…サーリャ…?」
「確かに、聞こえた…何だ…?」
「チッ…あの娘も素直に寝てれば良いのに…」
サーリャの表情が変わった。鋭い紅蓮の瞳こそそのままであるが、黒髪は灰燼に帰した灰のように、頭髪の色素が一気に抜け落ちて行く。彼女のその表情に二人は見覚えがあった。
「…お前…まさか…サーラか…?」
「…何故…サーラは誘拐されて殺されたはず…?何で…サーリャが…?」
ヴァルハイトとアリーシャはとても困惑していた。
サーラと呼ばれた灰髪の女子生徒は顔を歪ませて笑う。
「ふふ、あなた達が会うのは数年ぶりかしら?そう、私は無惨に殺された可哀想なサーラ。ずっとずーっとサーリャと一緒に居たの。あなた達に会えなくてとっても寂しかったわ…。」
「…それでも、お前が呪術魔法を使える理由にはならない!」
「それを私が答える理由はないわ、少なくとも今はね。」
サーラが手をかざすと室内の闇が深みを増し、一気に暗くなって行く。
「さて、期待外れのあなた達にはお仕置きしなきゃね。」
「避けろアリーシャ!!」
「え?ヴァルハ…きゃっ!?」
危険を察知したヴァルハイトはアリーシャを突き飛ばした。刹那、ヴァルハイトの四肢は暗闇の蔦に捉えられて空中に磔にされた。
直後、ヴァルハイトの首を締め付ける様に黒い蔦が巻かれて行く。
「ぐっ…!」
「あら…捕まったのは一人だけか」
「ヴァルハイトッ!!」
サーラはアリーシャを睨んだ直後、満面の笑顔で彼女に微笑んだ。
「ねえ、彼に死んで欲しくなければ、私の言う事聞いてくれる?」
「えっ…?」
「や…めろ…アリーシャ…聞くな…!」
悶えながら呻くヴァルハイト。
サーラはそんな事も気にせず淡々と続けた。
「今すぐこの場にアリスティアを連れて来て。そうしたら彼の拘束を解いてあげる。」
「…わかった…。」
「急ぐ事ね、じゃなきゃそこで転がってる人たちと彼が死ぬことになるから。」
「行く…な…アリーシャ…」
必死に抵抗するヴァルハイト。
「ちょっと黙ってて。」
「ぐああぁぁっ!?」
サーラが軽く指を鳴らすと、拘束されたヴァルハイトの全身に電流が駆け抜けた。
「やめてっ!!」
「ええ、だから早く連れて来てちょうだい。」
「ッ!!」
アリーシャは駆け出して、教室を後にした。
「…アリー…シャ…!」
「あなたはそのまま静かにしていてちょうだいね。」
暗闇の教室の中で、サーラのクスクスと笑う声が木霊していた。
「ねえ、何故、王子姫達はまだ生きているのかしら?」
サーリャは不服そうに二人を睨んでいる。
紅蓮の鋭い視線には深い殺気が篭っていた。
「…サーリャ、俺達を騙したな」
ヴァルハイトは臆する事なく、サーリャを睨み付けた。
「何のことかしら?」
おどけた表情でサーリャは返した。
「とぼけないでよ、王子も王子姫もメンダークスの仇じゃないわ。」
「二人は闇の魔法や呪術魔法を嗜む様な悪党共じゃない。」
二人の言葉にサーリャは深くため息をついた。彼女の表情には不気味な笑みが浮かんでいる。
「…そんなに言うなら私に付いて来なさいな、あなた達の知りたい証拠を見せてあげる。」
サーリャは二人の横を通り教室から出ていく。
二人残った教室で、アリーシャはヴァルハイトに小声で尋ねた。
「ヴァルハイト…どうするの?」
「…奴の証拠を確認する。何が起こるのか解らないが、その時はその時だ。」
そうして、サーリャの案内するまま、ヴァルハイトとアリーシャは黙って彼女の背後を歩く。
周囲の生徒の目には貴族の令嬢と、護衛生徒としか映っていない、彼等の確執など梅雨知らず、平凡平和な日常が流れて行く。
「…まあ、取り敢えずここで良いかしら」
サーリャが二人を案内した場所は魔導実験室だった。室内では中級生の生徒が十人程度、自主学習や魔導理論の勉強の為、生徒同士で話し合っている。
サーリャは教室のちょうど中央あたりまで歩くと、ヴァルハイトとアリーシャは彼女の行動を不審な思った。
「…此処の何処に証拠が…?」
「今すぐに見せてあげるわ」
サーリャのその一言で空気が一変した。
教室の扉は自動的に閉まり、窓は黒ずむ、澱んだ闇の空気が漂い始めると、教室にいた中級生達が一人、また一人と苦悶の声を上げて倒れて行く。
「な…何だこれは…?」
「何が起こっているの…?」
ヴァルハイトとアリーシャは目の前で起こる光景に酷く驚いた。目の前で起こっている光景こそ、自分達が追っている仇が織りなす光景であるからだ。
「バカな…これは、あの時の…何故サーリャ…お前が!!」
「そんな…!サーリャはあの時の私たちと一緒に…!!」
「残念だけどこれが答えよ」
問答している間にも生徒達は力を失いその場へうずくまって行く。
「やめてサーリャ!彼等は関係ないわ!!」
「なら、力づくで止めてみなさい」
ヴァルハイトはサーリャに飛びかかった。
「その言葉に甘えさせてもらう!!」
ヴァルハイトは淡い光を纏った手刀を迷い無くサーリャへと振り下ろす。
バキンッ!!
激しい炸裂音が部屋中に響くが、ヴァルハイトの手刀はサーリャには届かなく、何か壁の様なものに遮られていた。
「この障壁…並のものじゃない…!!」
「ええ無駄よ、あなたの攻撃は私に一切効かないわ。」
「…サーリャ…お前は一体誰だ?」
ヴァルハイトはサーリャと距離を取った。
彼は得体の知れないサーリャの力に心の底から警戒していた。
─ヴァ…ル…アリィ…逃げ…て。
か細い声が響き渡る、その少女の声はヴァルハイトとアリーシャに聞き覚えのある声であった。
「え…今の…サーリャ…?」
「確かに、聞こえた…何だ…?」
「チッ…あの娘も素直に寝てれば良いのに…」
サーリャの表情が変わった。鋭い紅蓮の瞳こそそのままであるが、黒髪は灰燼に帰した灰のように、頭髪の色素が一気に抜け落ちて行く。彼女のその表情に二人は見覚えがあった。
「…お前…まさか…サーラか…?」
「…何故…サーラは誘拐されて殺されたはず…?何で…サーリャが…?」
ヴァルハイトとアリーシャはとても困惑していた。
サーラと呼ばれた灰髪の女子生徒は顔を歪ませて笑う。
「ふふ、あなた達が会うのは数年ぶりかしら?そう、私は無惨に殺された可哀想なサーラ。ずっとずーっとサーリャと一緒に居たの。あなた達に会えなくてとっても寂しかったわ…。」
「…それでも、お前が呪術魔法を使える理由にはならない!」
「それを私が答える理由はないわ、少なくとも今はね。」
サーラが手をかざすと室内の闇が深みを増し、一気に暗くなって行く。
「さて、期待外れのあなた達にはお仕置きしなきゃね。」
「避けろアリーシャ!!」
「え?ヴァルハ…きゃっ!?」
危険を察知したヴァルハイトはアリーシャを突き飛ばした。刹那、ヴァルハイトの四肢は暗闇の蔦に捉えられて空中に磔にされた。
直後、ヴァルハイトの首を締め付ける様に黒い蔦が巻かれて行く。
「ぐっ…!」
「あら…捕まったのは一人だけか」
「ヴァルハイトッ!!」
サーラはアリーシャを睨んだ直後、満面の笑顔で彼女に微笑んだ。
「ねえ、彼に死んで欲しくなければ、私の言う事聞いてくれる?」
「えっ…?」
「や…めろ…アリーシャ…聞くな…!」
悶えながら呻くヴァルハイト。
サーラはそんな事も気にせず淡々と続けた。
「今すぐこの場にアリスティアを連れて来て。そうしたら彼の拘束を解いてあげる。」
「…わかった…。」
「急ぐ事ね、じゃなきゃそこで転がってる人たちと彼が死ぬことになるから。」
「行く…な…アリーシャ…」
必死に抵抗するヴァルハイト。
「ちょっと黙ってて。」
「ぐああぁぁっ!?」
サーラが軽く指を鳴らすと、拘束されたヴァルハイトの全身に電流が駆け抜けた。
「やめてっ!!」
「ええ、だから早く連れて来てちょうだい。」
「ッ!!」
アリーシャは駆け出して、教室を後にした。
「…アリー…シャ…!」
「あなたはそのまま静かにしていてちょうだいね。」
暗闇の教室の中で、サーラのクスクスと笑う声が木霊していた。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
101
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる