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本編・アリスティアの新学期
周章狼狽
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ジークハルトを見送ったアリスティアは彼の帰りを待つ間に夕飯の支度と、またステラにプレゼントする為のクッキーを作っていた。
「ステラ様は…結局、殆ど食べる事なく、ヴァルハイト様に全部あげてしまいましたから…今度はみなさんが食べれるくらいの量を準備しましょう。そうしたらみんなで楽しめますよね。」
アリスティアは袖をまくり意気込む。
クッキーひとつだけでも喜んでくれたステラだったが、アリスティアとしては世話になった彼女に、満足するまで自分の作ったお菓子を堪能して貰いたい気持ちだったのだ。
「さて、お鍋の方はどうかしら」
魔導鉱石コンロの上で、片手鍋はコトコトと音を立てる、湯気は美味しそうな香りをアリスティアへ運ぶ。
『ジークが喜んでくれれば良いな』
アリスティアは、そんな事を想いながら鍋の火加減を見ていた。
鼻歌を歌いながら鍋の中身を愛情込めてゆっくりとかき混ぜる。途中、少量を小皿に移して味見をすると、アリスティアは小さく頷く。
納得のいく仕上がりだった様だ。
根菜とぶつ切り肉が、ごろごろと入ったシチューが鍋の中で出来上がっていた。
「ふふっ…上出来ね…!」
初めてイストに来た頃に比べ、魔力のコントロールがだいぶ上手くなった事をアリスティアは実感していた。
それが自分一人の努力だけでは無く、ジークハルトをはじめとして、イストで出会った様々な人々のおかげである事を感謝しながら
アリスティアはクッキーの焼き上がり具合を確認している。こちらも中々良い感じであり、オーブンからクッキーを取り出した。
─そんな時であった。
「アリスティア様ッ!!」
玄関の外でアリーシャの叫び声が聞こえる。
アリスティアにはそれがとても悲痛な叫びに思えた。
「えっ?一体どうしたのですか?アリーシャ様」
アリスティアが玄関の扉を開けると、目の前に居たアリーシャは、肩で大きく息をしながら、頬を汗と涙でぐしゃぐしゃにしていた。
「助けて…助けて…アリスティア様…」
「アリーシャ様、落ち着いて。一体何があったのですか?」
アリスティアはアリーシャの両肩に手を置いた。アリスティアの目に映る彼女は酷く狼狽している様に見えた。
「このままじゃ…ヴァルハイトが死んじゃう…」
「えっ!?ヴァルハイト様が…?」
アリスティアにはアリーシャが嘘を言っている様には聴こえなかった。
「アリスティア様を今すぐ学園に連れて行かなければ、ヴァルハイトが死んでしまう…。お願い…私と一緒に学園に来て…」
何故アリスティアを学園に連れて行くのか。その理由が解らなかったが、気が動転しているアリーシャに問い訪ねても、多分答えは返って来ないだろうとアリスティアは思った。
「…わかりました、ですが私も留守を任されている身ですので、学園へ向かう準備に、三分だけ時間を下さい。」
アリーシャは返事はせず頷いた。
アリスティアは身支度を整えると共に、ジークハルトへの書き置きをテーブルに残した。
クッキーに被せ布をし、魔導鉱石コンロを切って鍋に蓋をする。
部屋着から動き易い制服に着替え、髪を整えると準備が整った。
「お待たせしましたアリーシャ様。さあ向かいましょう、ヴァルハイト様の元へ。」
「アリスティア様…ありがとう…。」
アリーシャは俯きながら涙をこぼしていた。
アリスティアは、もしもヴァルハイトが怪我か何かならば、自分も役に立てるだろうと思っていた。
だが、アリーシャは何故、学園の先生達ではなく私に直接相談しに来たのだろうか?アリスティアの頭の中で不思議に思った。
ジークハルトが出掛けている件に合わせてとても気になる。
もしかすると、この私の行動は悪手なのでは無いのだろうか。ジークハルトを待つべきでは無かったのだろうか。
アリスティアはそんな事を考えながら、アリーシャの案内に従って学園へと目指した。
「ステラ様は…結局、殆ど食べる事なく、ヴァルハイト様に全部あげてしまいましたから…今度はみなさんが食べれるくらいの量を準備しましょう。そうしたらみんなで楽しめますよね。」
アリスティアは袖をまくり意気込む。
クッキーひとつだけでも喜んでくれたステラだったが、アリスティアとしては世話になった彼女に、満足するまで自分の作ったお菓子を堪能して貰いたい気持ちだったのだ。
「さて、お鍋の方はどうかしら」
魔導鉱石コンロの上で、片手鍋はコトコトと音を立てる、湯気は美味しそうな香りをアリスティアへ運ぶ。
『ジークが喜んでくれれば良いな』
アリスティアは、そんな事を想いながら鍋の火加減を見ていた。
鼻歌を歌いながら鍋の中身を愛情込めてゆっくりとかき混ぜる。途中、少量を小皿に移して味見をすると、アリスティアは小さく頷く。
納得のいく仕上がりだった様だ。
根菜とぶつ切り肉が、ごろごろと入ったシチューが鍋の中で出来上がっていた。
「ふふっ…上出来ね…!」
初めてイストに来た頃に比べ、魔力のコントロールがだいぶ上手くなった事をアリスティアは実感していた。
それが自分一人の努力だけでは無く、ジークハルトをはじめとして、イストで出会った様々な人々のおかげである事を感謝しながら
アリスティアはクッキーの焼き上がり具合を確認している。こちらも中々良い感じであり、オーブンからクッキーを取り出した。
─そんな時であった。
「アリスティア様ッ!!」
玄関の外でアリーシャの叫び声が聞こえる。
アリスティアにはそれがとても悲痛な叫びに思えた。
「えっ?一体どうしたのですか?アリーシャ様」
アリスティアが玄関の扉を開けると、目の前に居たアリーシャは、肩で大きく息をしながら、頬を汗と涙でぐしゃぐしゃにしていた。
「助けて…助けて…アリスティア様…」
「アリーシャ様、落ち着いて。一体何があったのですか?」
アリスティアはアリーシャの両肩に手を置いた。アリスティアの目に映る彼女は酷く狼狽している様に見えた。
「このままじゃ…ヴァルハイトが死んじゃう…」
「えっ!?ヴァルハイト様が…?」
アリスティアにはアリーシャが嘘を言っている様には聴こえなかった。
「アリスティア様を今すぐ学園に連れて行かなければ、ヴァルハイトが死んでしまう…。お願い…私と一緒に学園に来て…」
何故アリスティアを学園に連れて行くのか。その理由が解らなかったが、気が動転しているアリーシャに問い訪ねても、多分答えは返って来ないだろうとアリスティアは思った。
「…わかりました、ですが私も留守を任されている身ですので、学園へ向かう準備に、三分だけ時間を下さい。」
アリーシャは返事はせず頷いた。
アリスティアは身支度を整えると共に、ジークハルトへの書き置きをテーブルに残した。
クッキーに被せ布をし、魔導鉱石コンロを切って鍋に蓋をする。
部屋着から動き易い制服に着替え、髪を整えると準備が整った。
「お待たせしましたアリーシャ様。さあ向かいましょう、ヴァルハイト様の元へ。」
「アリスティア様…ありがとう…。」
アリーシャは俯きながら涙をこぼしていた。
アリスティアは、もしもヴァルハイトが怪我か何かならば、自分も役に立てるだろうと思っていた。
だが、アリーシャは何故、学園の先生達ではなく私に直接相談しに来たのだろうか?アリスティアの頭の中で不思議に思った。
ジークハルトが出掛けている件に合わせてとても気になる。
もしかすると、この私の行動は悪手なのでは無いのだろうか。ジークハルトを待つべきでは無かったのだろうか。
アリスティアはそんな事を考えながら、アリーシャの案内に従って学園へと目指した。
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