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本編・アリスティアの新学期
暗闇が去った後で
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サーラが何処かへ去った後の教室で、アリスティアとステラは、その場で気を失っていた生徒達を介抱していた。皆、気絶こそしていたものの、命に別状はなかった様だ。
ジークハルトは即座に事の重大性を学園に居た教師達に伝えた。
そして、学園敷地内に騎士団が到着するまでの間、護衛達に各々の主人を守る様に"イスト王国の王子として"声明を出したのだった。
既に日も落ち、辺りはすっかりと暗くなっていた。
バーンはジークハルトを護衛し、彼等は学園敷地内を忙しなく駆け回っていた。
一通り生徒達の介抱が終わった後で、別の教室でヴァルハイトとアリーシャは、アリスティアとステラが見守る中、学園長マナフロアに質問形式で事情を徴収されていたのだった。
内容はヴァルハイトとアリーシャの生い立ちから話は始まる。
二人がまだ独り歩きも出来ない赤子の頃である。
両親の居ない二人は、イストの貴族であるメンダークス伯爵夫妻に拾わた。
二人はメンダークスの双子、サーリャそしてサーラと共にメンダークス伯爵夫妻の実の子の様に育てられ、とても幸せな時を過ごしていた。
それが、崩れ去ったのは二人が五歳の頃。
闇の魔力を持つ何者かが、メンダークス家への襲撃した事より伯爵夫妻は殺害され、使用人達も惨殺された。
燃え盛る屋敷から、命からがら子供達四人は逃げだした。
その最中、アリーシャとヴァルハイトは双子と逸れてしまったのであった。
その後、二人はイスト王国の太陽教会へと転がり込むと、そのまま孤児として引き取られる事となるが、サーリャとサーラの双子は行方不明となった。
学園へと入学する一年前、アリーシャとヴァルハイトが十六の時である。
太陽教会へサーリャが訪ねてきたのだ。
幼少の時の面影こそあったものの、彼女の表情や瞳の奥底には、暗い影が落ちている事を二人はその時に理解した。
彼女はヴァルハイトとアリーシャを見て言う。
「私達の両親を殺した犯人が見つかったわ。イストの王族よ。」
サーリャは、はっきりとそう言った。
ヴァルハイトとアリーシャも犯人の事を恨みはしていたが、イストに長年住んでいる国民でもある。市場でも何度か見かけた事のあるイスト王族は、どう考えても闇の魔法を使う様な人々には見えなかった。
「少し、探らせて欲しい。」
ヴァルハイトがそう提案するとサーリャは笑う。
「イストの王子と王子妃が来年の春頃、イストの学園に入学するそうよ。私達も行けば判断つくでしょう?」
それがヴァルハイトとアリーシャの入学の経緯である。
「…アリーシャ様、ヴァルハイト様…その話は本当であればおかしな事です…私とジークは、元々学園に入学する事は決まっていませんでしたよ?私は王妃様から提案されるまでこの学園の事を知りませんでしたし…。」
「…そうなのです。アリスティア様が"イストに来る前から"サーリャはそう言っていたのです。」
サーリャの予見はまるで未来を見ていた様な物言いである。
「ですが、アリスティア様達も春の入学ではなく秋頃の編入。サーリャの予見も恐らくはアリスティア様達や王城の情勢を見ての発言だったのでしょうか…今ではわかりませんが…。」
俯くヴァルハイト達にマナフロアは尋ねた。
「彼女は本当にメンダークス伯爵令嬢なのですか?」
アリーシャは頷く。
「間違いありません。サーラもまたメンダークスの子ですが…」
「何故サーリャの身体にサーラが居るのか…そして、何故彼女が闇の魔法を扱えるのか俺達にはわかりません。彼女達はそもそも魔法を扱えませんでしたから。」
アリスティアは息を呑む。すると、ジークハルトとバーンが教室へと戻ってきた。
「騎士団を通じ王城へも伝えました。今は令息令嬢の護衛の皆さんが協力して学園敷地内の警備をしてくれています。」
「何から何まで、本当にありがとうジークハルト王子、それにローゼンスフィア公爵。」
マナフロアはジークハルトとバーンに深々とお辞儀をする。
「アリスティア姫もローゼンスフィア公爵夫人も生徒の皆を介抱して頂いて感謝致します。」
今度はアリスティアとステラに深々とお辞儀したり
「いえ、イストの王子として、生徒会長として当然の事をしたまでですよ。それよりも…」
ジークハルトはヴァルハイトとアリーシャを見た。二人は暗い顔で俯いている。
マナフロアは厳格な表情でいた。
「さて、二人の今後の処遇ですが…。」
マナフロアが重く口を開くとヴァルハイトはその場に跪いた。
「俺は学園の生徒、そして、イスト王家に多大な損害を与えました。アリスティア様を生命の危機に晒し、一歩間違えば殺されていたかもしれない。どの様な罰でも全て俺が受けます。ですので、どうかアリーシャだけは」
ヴァルハイトが頭を垂れるとアリーシャもまた跪いた。
「アリスティア様をここへ連れて来たのは私です。その罪をヴァルハイト一人にだけに押し付ける気は毛頭ありません。」
「…ジーク…。」
ジークハルトを見つめるアリスティア。
彼女は二人にどの様な経緯があれど、彼等もまた被害者であると考えていた。
一間の静寂が流れると、バーンが一歩でた。
「王子、学園長。」
「ローゼンスフィア公爵?」
「どうしたのですか?」
ジークハルトとマナフロアはバーンに尋ねると、彼は静かな口調で話す。
「この度の件、どうか寛容にしてはもらえないだろうか?私の顔に免じて、どうか二人を許してもらえないだろうか…?」
「バーン…あなた…」
バーンは深く頭を下げていた。
意外な人物からの申し出に、ジークハルトもアリスティアもマナフロアも驚いていた。
これには妻であるステラも驚いている。
「…アリスと私の恩人でもある、ローゼンスフィア公爵にお願いされるのであれば無碍にはできません。」
「ジーク…それじゃあ…!」
「私も、被害者である彼等を罰する事をしたくありませんし、ローゼンスフィア公爵が申し出て下さったので、王国の体裁も保てますし…後は学園としての対応ですが…。」
マナフロアはため息を吐いて頷いた。
「…これは外部から何者かが侵入した事による犯行…という事が一番波風を立たせないですかね…。」
「…そもそも、今回の件、私とアリスを狙っていたのです。メンダークス家の者達を利用して、国家転覆を狙った行為とも言えましょう。」
ジークハルトは改めてヴァルハイトとアリーシャを見た。
「この件において二人を不問とし、話を外へ出す事を禁止にします。学園長も皆様もそれでを良いですね?」
否定する声はなく、皆、納得した様に頷いていた。
ジークハルトは即座に事の重大性を学園に居た教師達に伝えた。
そして、学園敷地内に騎士団が到着するまでの間、護衛達に各々の主人を守る様に"イスト王国の王子として"声明を出したのだった。
既に日も落ち、辺りはすっかりと暗くなっていた。
バーンはジークハルトを護衛し、彼等は学園敷地内を忙しなく駆け回っていた。
一通り生徒達の介抱が終わった後で、別の教室でヴァルハイトとアリーシャは、アリスティアとステラが見守る中、学園長マナフロアに質問形式で事情を徴収されていたのだった。
内容はヴァルハイトとアリーシャの生い立ちから話は始まる。
二人がまだ独り歩きも出来ない赤子の頃である。
両親の居ない二人は、イストの貴族であるメンダークス伯爵夫妻に拾わた。
二人はメンダークスの双子、サーリャそしてサーラと共にメンダークス伯爵夫妻の実の子の様に育てられ、とても幸せな時を過ごしていた。
それが、崩れ去ったのは二人が五歳の頃。
闇の魔力を持つ何者かが、メンダークス家への襲撃した事より伯爵夫妻は殺害され、使用人達も惨殺された。
燃え盛る屋敷から、命からがら子供達四人は逃げだした。
その最中、アリーシャとヴァルハイトは双子と逸れてしまったのであった。
その後、二人はイスト王国の太陽教会へと転がり込むと、そのまま孤児として引き取られる事となるが、サーリャとサーラの双子は行方不明となった。
学園へと入学する一年前、アリーシャとヴァルハイトが十六の時である。
太陽教会へサーリャが訪ねてきたのだ。
幼少の時の面影こそあったものの、彼女の表情や瞳の奥底には、暗い影が落ちている事を二人はその時に理解した。
彼女はヴァルハイトとアリーシャを見て言う。
「私達の両親を殺した犯人が見つかったわ。イストの王族よ。」
サーリャは、はっきりとそう言った。
ヴァルハイトとアリーシャも犯人の事を恨みはしていたが、イストに長年住んでいる国民でもある。市場でも何度か見かけた事のあるイスト王族は、どう考えても闇の魔法を使う様な人々には見えなかった。
「少し、探らせて欲しい。」
ヴァルハイトがそう提案するとサーリャは笑う。
「イストの王子と王子妃が来年の春頃、イストの学園に入学するそうよ。私達も行けば判断つくでしょう?」
それがヴァルハイトとアリーシャの入学の経緯である。
「…アリーシャ様、ヴァルハイト様…その話は本当であればおかしな事です…私とジークは、元々学園に入学する事は決まっていませんでしたよ?私は王妃様から提案されるまでこの学園の事を知りませんでしたし…。」
「…そうなのです。アリスティア様が"イストに来る前から"サーリャはそう言っていたのです。」
サーリャの予見はまるで未来を見ていた様な物言いである。
「ですが、アリスティア様達も春の入学ではなく秋頃の編入。サーリャの予見も恐らくはアリスティア様達や王城の情勢を見ての発言だったのでしょうか…今ではわかりませんが…。」
俯くヴァルハイト達にマナフロアは尋ねた。
「彼女は本当にメンダークス伯爵令嬢なのですか?」
アリーシャは頷く。
「間違いありません。サーラもまたメンダークスの子ですが…」
「何故サーリャの身体にサーラが居るのか…そして、何故彼女が闇の魔法を扱えるのか俺達にはわかりません。彼女達はそもそも魔法を扱えませんでしたから。」
アリスティアは息を呑む。すると、ジークハルトとバーンが教室へと戻ってきた。
「騎士団を通じ王城へも伝えました。今は令息令嬢の護衛の皆さんが協力して学園敷地内の警備をしてくれています。」
「何から何まで、本当にありがとうジークハルト王子、それにローゼンスフィア公爵。」
マナフロアはジークハルトとバーンに深々とお辞儀をする。
「アリスティア姫もローゼンスフィア公爵夫人も生徒の皆を介抱して頂いて感謝致します。」
今度はアリスティアとステラに深々とお辞儀したり
「いえ、イストの王子として、生徒会長として当然の事をしたまでですよ。それよりも…」
ジークハルトはヴァルハイトとアリーシャを見た。二人は暗い顔で俯いている。
マナフロアは厳格な表情でいた。
「さて、二人の今後の処遇ですが…。」
マナフロアが重く口を開くとヴァルハイトはその場に跪いた。
「俺は学園の生徒、そして、イスト王家に多大な損害を与えました。アリスティア様を生命の危機に晒し、一歩間違えば殺されていたかもしれない。どの様な罰でも全て俺が受けます。ですので、どうかアリーシャだけは」
ヴァルハイトが頭を垂れるとアリーシャもまた跪いた。
「アリスティア様をここへ連れて来たのは私です。その罪をヴァルハイト一人にだけに押し付ける気は毛頭ありません。」
「…ジーク…。」
ジークハルトを見つめるアリスティア。
彼女は二人にどの様な経緯があれど、彼等もまた被害者であると考えていた。
一間の静寂が流れると、バーンが一歩でた。
「王子、学園長。」
「ローゼンスフィア公爵?」
「どうしたのですか?」
ジークハルトとマナフロアはバーンに尋ねると、彼は静かな口調で話す。
「この度の件、どうか寛容にしてはもらえないだろうか?私の顔に免じて、どうか二人を許してもらえないだろうか…?」
「バーン…あなた…」
バーンは深く頭を下げていた。
意外な人物からの申し出に、ジークハルトもアリスティアもマナフロアも驚いていた。
これには妻であるステラも驚いている。
「…アリスと私の恩人でもある、ローゼンスフィア公爵にお願いされるのであれば無碍にはできません。」
「ジーク…それじゃあ…!」
「私も、被害者である彼等を罰する事をしたくありませんし、ローゼンスフィア公爵が申し出て下さったので、王国の体裁も保てますし…後は学園としての対応ですが…。」
マナフロアはため息を吐いて頷いた。
「…これは外部から何者かが侵入した事による犯行…という事が一番波風を立たせないですかね…。」
「…そもそも、今回の件、私とアリスを狙っていたのです。メンダークス家の者達を利用して、国家転覆を狙った行為とも言えましょう。」
ジークハルトは改めてヴァルハイトとアリーシャを見た。
「この件において二人を不問とし、話を外へ出す事を禁止にします。学園長も皆様もそれでを良いですね?」
否定する声はなく、皆、納得した様に頷いていた。
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