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本編・アリスティアの新学期
晩餐会
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レオルスとルビアーナの計らいにより、晩餐会は盛大に行われる事となった。
アリスティアとジークハルトの元を、絶え間なくイストの王族や来賓の貴族がやって来る。
学園の生徒達とはまた違った雰囲気に、アリスティアは、自分がイストの王族である事を
自覚しはじめていた。
来賓客の中にはローゼリアとレオン、シリウスやアトラ達ルプスハート家の人々。
皆、正礼装に身を包み、いつもと違った出立ちである。
軽く挨拶も終えるとジークハルトは他の男性貴族に囲まれて会話をしている。
その間の事である。アリスティアはこちらを見つめる視線に気がついた。
「…一体何かしら?」
アリスティアとの視線の先に、一人の令嬢が居た。まっすぐこちらを見ている様だった。
容姿端麗な令嬢はイスト王国でもトップクラスの美しさではないだろうか、アリスティアはそう感じていた。
「…あの方はイスト王国の御三家の一つ、セクテット公爵家の末娘。アクティナですわね。」
近くにいたローゼリアがアリスティアに教えてくれた。
「そのアクティナ様がどうしてこちらを…?」
「…アクティナは公爵家の力を使ってジークハルトにずっとアプローチをし続けていると言う噂がありますの。」
「…え?そうなのですか?」
「彼女は手段を選ばない令嬢と話を聞きます。ジークハルトをアクティナに略奪されない様にアリスも重々気を付けるのよ。」
ローゼリアの言葉に、アリスティアは息を呑み、黙って頷いた。
「…とは脅しましたが、もしジークハルトが他の令嬢にうつつを抜かし、不貞の行為を行うなら。私、ローゼリア・オラシオンの名の下に、ジークハルトをはっ倒して差し上げますので安心してくださいませ、アリス。」
「ふふっ、ありがとうロゼ」
アリスティアはローゼリアの頼もしさに顔を綻ばせた。
イストの貴族達が一通り話を終えると、次は王国の家臣達がやってきた。
皆国を支える大切な人達である。アリスティアは彼等のおかげで、自分が今この場に居れる事を感謝し、丁重に出迎える。
家臣の中の一人がジークハルトと握手を交わす。
他の家臣と比べると、一際存在感のあるすらりとした男性。
アリスティアとはまた違った黄金色の髪を靡かせる、透き通った目をたたえ、穏やかな表情の男性であった。
「…私はずっとこの日を待ちわびていました。ジーク坊の想い人にやっと会えて、私はとても嬉しい限りです。」
「エルトシャン…私の妻に自己紹介も忘れるなどとは、少し興奮しすぎではないですか?」
「これは失礼した、なにぶん、本当に嬉しかったものでね。」
エルトシャンと呼ばれた男性はアリスティアに深々と頭を下げた。
「はじめまして、私はイスト王国の宰相をしております。エルトシャン・ラディウスと申します。ジーク坊が幼い頃からアリスティア様のお話を聞いていました。この様な形でお会いできて大変光栄でございます。」
「こちらこそ、これからよろしくお願いしますラディウス卿」
微笑むエルトシャンにアリスティアは丁寧にお辞儀をした。
ジークハルトとエルトシャンが談笑するその光景を、アリスティアのすぐ背後で見ていたマリエルの顔は酷く驚いている様だった。
「どうしたのマリエル?身体の具合が悪いの?」
アリスティアは心配になってマリエルの顔を覗き込む。彼女はどうやらエルトシャンの顔を見て呆然としている様だった。
「い…いえ、お嬢様、決してそう言うわけでは…」
するとジークハルトもアリスティア達に気が付いたのかエルトシャンと共にやってきた。
「アリス、何かあったのかい?」
「気分がすぐれなければ医務室にでも…」
エルトシャンとマリエルの視線が合うと、彼もまたマリエルと同じ様に酷く驚いていた。
「!!…君は…マリー…。」
「…オルフェス…まさかこんな所で…。」
マリエルはエルトシャンから視線を逸らし俯く、微かに頬を赤らめている様で、アリスティアにはマリエルが恥じらっている様に思えた。
「ねえジーク。」
「どうかしたのかい、アリス?」
マリエルとエルトシャンに何かを感じたアリスティアは、ジークハルトの裾を引っ張ると、彼もまた硬直した二人を見て何かを察して頷いた。
「エルトシャン、どうやらアリスの従者だあるマリエルは体調がすぐれないようだ。彼女を医務室とやらに案内してくれるか?」
「え、ええ…わかりました…。」
エルトシャンは少しぎくしゃくしている。
「マリ…エルさん、此方へどうぞ。」
「…は、はい…。」
頷くマリエルも動作がぎこちない。
「ジーク、ハルト王子、それでは失礼します。」
エルトシャンはジークハルトに会釈をすると、マリエルを連れ、その場を後にする。
二人の背中を見送るアリスティアは心の中で「頑張れ!」とマリエルにエールを送っていた。
アリスティアとジークハルトの元を、絶え間なくイストの王族や来賓の貴族がやって来る。
学園の生徒達とはまた違った雰囲気に、アリスティアは、自分がイストの王族である事を
自覚しはじめていた。
来賓客の中にはローゼリアとレオン、シリウスやアトラ達ルプスハート家の人々。
皆、正礼装に身を包み、いつもと違った出立ちである。
軽く挨拶も終えるとジークハルトは他の男性貴族に囲まれて会話をしている。
その間の事である。アリスティアはこちらを見つめる視線に気がついた。
「…一体何かしら?」
アリスティアとの視線の先に、一人の令嬢が居た。まっすぐこちらを見ている様だった。
容姿端麗な令嬢はイスト王国でもトップクラスの美しさではないだろうか、アリスティアはそう感じていた。
「…あの方はイスト王国の御三家の一つ、セクテット公爵家の末娘。アクティナですわね。」
近くにいたローゼリアがアリスティアに教えてくれた。
「そのアクティナ様がどうしてこちらを…?」
「…アクティナは公爵家の力を使ってジークハルトにずっとアプローチをし続けていると言う噂がありますの。」
「…え?そうなのですか?」
「彼女は手段を選ばない令嬢と話を聞きます。ジークハルトをアクティナに略奪されない様にアリスも重々気を付けるのよ。」
ローゼリアの言葉に、アリスティアは息を呑み、黙って頷いた。
「…とは脅しましたが、もしジークハルトが他の令嬢にうつつを抜かし、不貞の行為を行うなら。私、ローゼリア・オラシオンの名の下に、ジークハルトをはっ倒して差し上げますので安心してくださいませ、アリス。」
「ふふっ、ありがとうロゼ」
アリスティアはローゼリアの頼もしさに顔を綻ばせた。
イストの貴族達が一通り話を終えると、次は王国の家臣達がやってきた。
皆国を支える大切な人達である。アリスティアは彼等のおかげで、自分が今この場に居れる事を感謝し、丁重に出迎える。
家臣の中の一人がジークハルトと握手を交わす。
他の家臣と比べると、一際存在感のあるすらりとした男性。
アリスティアとはまた違った黄金色の髪を靡かせる、透き通った目をたたえ、穏やかな表情の男性であった。
「…私はずっとこの日を待ちわびていました。ジーク坊の想い人にやっと会えて、私はとても嬉しい限りです。」
「エルトシャン…私の妻に自己紹介も忘れるなどとは、少し興奮しすぎではないですか?」
「これは失礼した、なにぶん、本当に嬉しかったものでね。」
エルトシャンと呼ばれた男性はアリスティアに深々と頭を下げた。
「はじめまして、私はイスト王国の宰相をしております。エルトシャン・ラディウスと申します。ジーク坊が幼い頃からアリスティア様のお話を聞いていました。この様な形でお会いできて大変光栄でございます。」
「こちらこそ、これからよろしくお願いしますラディウス卿」
微笑むエルトシャンにアリスティアは丁寧にお辞儀をした。
ジークハルトとエルトシャンが談笑するその光景を、アリスティアのすぐ背後で見ていたマリエルの顔は酷く驚いている様だった。
「どうしたのマリエル?身体の具合が悪いの?」
アリスティアは心配になってマリエルの顔を覗き込む。彼女はどうやらエルトシャンの顔を見て呆然としている様だった。
「い…いえ、お嬢様、決してそう言うわけでは…」
するとジークハルトもアリスティア達に気が付いたのかエルトシャンと共にやってきた。
「アリス、何かあったのかい?」
「気分がすぐれなければ医務室にでも…」
エルトシャンとマリエルの視線が合うと、彼もまたマリエルと同じ様に酷く驚いていた。
「!!…君は…マリー…。」
「…オルフェス…まさかこんな所で…。」
マリエルはエルトシャンから視線を逸らし俯く、微かに頬を赤らめている様で、アリスティアにはマリエルが恥じらっている様に思えた。
「ねえジーク。」
「どうかしたのかい、アリス?」
マリエルとエルトシャンに何かを感じたアリスティアは、ジークハルトの裾を引っ張ると、彼もまた硬直した二人を見て何かを察して頷いた。
「エルトシャン、どうやらアリスの従者だあるマリエルは体調がすぐれないようだ。彼女を医務室とやらに案内してくれるか?」
「え、ええ…わかりました…。」
エルトシャンは少しぎくしゃくしている。
「マリ…エルさん、此方へどうぞ。」
「…は、はい…。」
頷くマリエルも動作がぎこちない。
「ジーク、ハルト王子、それでは失礼します。」
エルトシャンはジークハルトに会釈をすると、マリエルを連れ、その場を後にする。
二人の背中を見送るアリスティアは心の中で「頑張れ!」とマリエルにエールを送っていた。
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