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隣の席で
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このままだと、チャイムが鳴るまで居座りそうな勢いだ。
どうしたものかと困っていると…。
――ふと、空気が変わったような気がした。
静電気が発生したかのようなビリッとした感覚が肌に伝わるような。
わたしと同じ感覚を三好くんも察知したのか、マシンガントークが急に止んだ。
そして、三好くんがおそるおそる振り返ると――。
「そこ、俺の席なんだけど」
三好くんの後ろに立っていたのは、なんと一条くんだった…!
驚いた拍子に、三好くんのメガネがずれている。
「いっ…いいい、一条…!?なんで…ここにっ」
「だから、お前が今座ってるその席…、俺のだっつってんだろ」
一条くんに見下ろされていた三好くんが、慌てて立ち上がる。
それは、今まで見たこともない速さだった。
「じゃ…じゃあ、ひらりちゃん!ま…またねっ…!」
三好くんは声を震わせながらそう言うと、あっという間に自分の教室へ戻って行った。
一条くんは、机の上に荒々しくカバンを置くと、さっきまで三好くんが座っていた席にドカッと腰を下ろす。
三好くんがいなくなって、また教室は元の静けさを取り戻す。
「…ねぇねぇっ。もしかして一条くん、ひらりのこと助けてくれたんじゃないの?」
彩奈が、一条くんには聞こえないくらいの声で、わたしにそっと耳打ちをする。
「…えっ?それはないよー。たまたまでしょ?」
「そうかな~?それにしては、タイミングよすぎだったんだけどなー」
またまた~…。
それは、彩奈の考えすぎっ。
自分の席にだれかが座っていたら、声くらいかけるでしょ?
一条くんは、その声のかけ方がほかの人よりもちょっとこわいだけ。
と、三好くんがビビリなだけ。
それに、一条くんに助けてもらうほど、わたしたちは仲がいいわけではないし。
そのあと、1限の数学の授業が始まった。
わたし、…数学って苦手。
授業を聞いているつもりだけど、ちんぷんかんぷん。
なのに、隣の席の一条くんと言ったら――。
心地よい寝息を立てて、爆睡中…!
ノートも取ってないみたいだし、そもそも教科書すら開いていない!
前までは席が離れていたから、普段の一条くんの授業態度なんて知らなかったけど、まさかこんなにあからさまに寝ているとは思わなかった…。
それなのに、当てられる問題はすべて正解。
1限目の数学も、2限目の英語も、3限目の社会も。
寝ているはずなのに、当てられても焦る様子もなく、冷静に答えている。
本当は起きてるのかな…⁉︎
と思って顔を覗き込んでみるけど、…やっぱり寝ているっぽい。
しかも、まるで日向ぼっこをしているネコのように気持ちよさそうな顔をしているから、なんだか起こす気にもなれない。
当てられた問題は、すべて答える一条くん。
だけど、彼にも欠点があった。
それは、4限の国語の時間。
「それじゃあ、一条くん。続きを読んで」
先生が当てたのは問題の回答ではなく、教科書の朗読。
寝起きの一条くんは、まだ完全に起きていないのか、目がとろんとしている。
もちろん、机の上に教科書はない。
すると一条くんは、ぼんやりとした表情でゆっくりとたしの方に顔を向ける。
「これ、借りるよ」
それだけ言うと、勝手にわたしの教科書を奪っていった。
その際に、読むところをシャーペンで指した。
「ありがと」
かすかに聞こえたお礼に、少しだけ胸がドキッとなった。
一条くんが読み終えると、先生はため息を吐く。
「一条くん、自分の教科書は?」
「…忘れました」
「はぁ…。じゃあ、悪いけど花宮さん。一条くんに見せてあげてくれる?」
「は…はい!」
わたしが返事をすると、頭の上に教科書が置かれた。
「ありがと。助かった」
一条くんはわたしに教科書を返すなり、また机に顔を伏しておやすみモード。
「…一条くんっ!教科書、見ないのっ?」
「いいよ、俺は」
…って言われても、先生に見せるように言われたんだけど。
でも、わたしと一条くんの距離は床のタイル2個分離れている。
その間に教科書を浮かせない限り、いっしょに見るには難しい距離だ。
だったら……!
わたしは机の両角を持つと、一気に一条くんの机に引き寄せた。
ピタリとくっつく、わたしと一条くんの机。
その振動で、伏せていた一条くんが顔を上げる。
そして、すぐ隣にいるわたしと目が合う。
「…なに?」
「教科書…。いっしょに見るために」
「だから、俺はいいって言ったじゃん」
「でも、こうして机くっつけたら、いっしょに見れるでしょ?」
「わざわざそんなことしなくていいのに。…変なの、花宮さん」
腕を枕にしながら、眠たそうな表情の一条くんが呟いた。
なにも、変なことはしていない。
ただ、国語の教科書を忘れた隣の人に、自分の教科書を見せてあげてるだけ。
…でも、なんだかちょっと嬉しかったり。
なぜなら、――昨日。
『…花宮ひらり?変な名前っ。…まぁ覚えておくよ。忘れるかもだけど』
って言ってたのに、わたしのこと…『花宮さん』って呼んでくれた。
名前…、覚えててくれていたんだ。
他人には一切興味なさそうな一条くんに、名前を呼んでもらえて…。
たったそれだけのことなのに、すごく嬉しかった。
一匹狼で。
金髪で、ピアスもしてて、不良で。
制服も着崩していて、校則違反だらけで。
無愛想で、こわい人だと思っていたけど――。
実は、聞いてなさそうで授業は聞いていて。
名前なんて覚えるつもりなさそうな言い方して、ちゃんと覚えてくれていて。
隣の席になってみて、わたしが知らない一条くんが少しずつ見つかっていった。
どうしたものかと困っていると…。
――ふと、空気が変わったような気がした。
静電気が発生したかのようなビリッとした感覚が肌に伝わるような。
わたしと同じ感覚を三好くんも察知したのか、マシンガントークが急に止んだ。
そして、三好くんがおそるおそる振り返ると――。
「そこ、俺の席なんだけど」
三好くんの後ろに立っていたのは、なんと一条くんだった…!
驚いた拍子に、三好くんのメガネがずれている。
「いっ…いいい、一条…!?なんで…ここにっ」
「だから、お前が今座ってるその席…、俺のだっつってんだろ」
一条くんに見下ろされていた三好くんが、慌てて立ち上がる。
それは、今まで見たこともない速さだった。
「じゃ…じゃあ、ひらりちゃん!ま…またねっ…!」
三好くんは声を震わせながらそう言うと、あっという間に自分の教室へ戻って行った。
一条くんは、机の上に荒々しくカバンを置くと、さっきまで三好くんが座っていた席にドカッと腰を下ろす。
三好くんがいなくなって、また教室は元の静けさを取り戻す。
「…ねぇねぇっ。もしかして一条くん、ひらりのこと助けてくれたんじゃないの?」
彩奈が、一条くんには聞こえないくらいの声で、わたしにそっと耳打ちをする。
「…えっ?それはないよー。たまたまでしょ?」
「そうかな~?それにしては、タイミングよすぎだったんだけどなー」
またまた~…。
それは、彩奈の考えすぎっ。
自分の席にだれかが座っていたら、声くらいかけるでしょ?
一条くんは、その声のかけ方がほかの人よりもちょっとこわいだけ。
と、三好くんがビビリなだけ。
それに、一条くんに助けてもらうほど、わたしたちは仲がいいわけではないし。
そのあと、1限の数学の授業が始まった。
わたし、…数学って苦手。
授業を聞いているつもりだけど、ちんぷんかんぷん。
なのに、隣の席の一条くんと言ったら――。
心地よい寝息を立てて、爆睡中…!
ノートも取ってないみたいだし、そもそも教科書すら開いていない!
前までは席が離れていたから、普段の一条くんの授業態度なんて知らなかったけど、まさかこんなにあからさまに寝ているとは思わなかった…。
それなのに、当てられる問題はすべて正解。
1限目の数学も、2限目の英語も、3限目の社会も。
寝ているはずなのに、当てられても焦る様子もなく、冷静に答えている。
本当は起きてるのかな…⁉︎
と思って顔を覗き込んでみるけど、…やっぱり寝ているっぽい。
しかも、まるで日向ぼっこをしているネコのように気持ちよさそうな顔をしているから、なんだか起こす気にもなれない。
当てられた問題は、すべて答える一条くん。
だけど、彼にも欠点があった。
それは、4限の国語の時間。
「それじゃあ、一条くん。続きを読んで」
先生が当てたのは問題の回答ではなく、教科書の朗読。
寝起きの一条くんは、まだ完全に起きていないのか、目がとろんとしている。
もちろん、机の上に教科書はない。
すると一条くんは、ぼんやりとした表情でゆっくりとたしの方に顔を向ける。
「これ、借りるよ」
それだけ言うと、勝手にわたしの教科書を奪っていった。
その際に、読むところをシャーペンで指した。
「ありがと」
かすかに聞こえたお礼に、少しだけ胸がドキッとなった。
一条くんが読み終えると、先生はため息を吐く。
「一条くん、自分の教科書は?」
「…忘れました」
「はぁ…。じゃあ、悪いけど花宮さん。一条くんに見せてあげてくれる?」
「は…はい!」
わたしが返事をすると、頭の上に教科書が置かれた。
「ありがと。助かった」
一条くんはわたしに教科書を返すなり、また机に顔を伏しておやすみモード。
「…一条くんっ!教科書、見ないのっ?」
「いいよ、俺は」
…って言われても、先生に見せるように言われたんだけど。
でも、わたしと一条くんの距離は床のタイル2個分離れている。
その間に教科書を浮かせない限り、いっしょに見るには難しい距離だ。
だったら……!
わたしは机の両角を持つと、一気に一条くんの机に引き寄せた。
ピタリとくっつく、わたしと一条くんの机。
その振動で、伏せていた一条くんが顔を上げる。
そして、すぐ隣にいるわたしと目が合う。
「…なに?」
「教科書…。いっしょに見るために」
「だから、俺はいいって言ったじゃん」
「でも、こうして机くっつけたら、いっしょに見れるでしょ?」
「わざわざそんなことしなくていいのに。…変なの、花宮さん」
腕を枕にしながら、眠たそうな表情の一条くんが呟いた。
なにも、変なことはしていない。
ただ、国語の教科書を忘れた隣の人に、自分の教科書を見せてあげてるだけ。
…でも、なんだかちょっと嬉しかったり。
なぜなら、――昨日。
『…花宮ひらり?変な名前っ。…まぁ覚えておくよ。忘れるかもだけど』
って言ってたのに、わたしのこと…『花宮さん』って呼んでくれた。
名前…、覚えててくれていたんだ。
他人には一切興味なさそうな一条くんに、名前を呼んでもらえて…。
たったそれだけのことなのに、すごく嬉しかった。
一匹狼で。
金髪で、ピアスもしてて、不良で。
制服も着崩していて、校則違反だらけで。
無愛想で、こわい人だと思っていたけど――。
実は、聞いてなさそうで授業は聞いていて。
名前なんて覚えるつもりなさそうな言い方して、ちゃんと覚えてくれていて。
隣の席になってみて、わたしが知らない一条くんが少しずつ見つかっていった。
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