王子に婚約を迫られましたが、どうせ私のスキル目当てなんでしょう?ちょっと思わせぶりなことしないでください、好きになってしまいます!

宮村香名

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27:突入(2)

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「開けてくれ」

 フィルとカーティスが、王妃の部屋の扉を開ける。ライナスは一歩踏み出し、部屋の中へと入った。

 部屋の中にいた王妃が微笑み、ベッドの淵からするりと降りて立ち上がる。ジョイはどこにいるのか見当たらない。

 いつもであれば、もう王妃の朝の支度に付き添っているはずの時間だ。

「こんな朝からどうしたのかしら、ライナス? いくら母の部屋だからといって、許されることではないわ」
「母上、もう一度申し上げます。あなたの護衛に私の暗殺を計画した嫌疑がかけられています。」
「まあ、恐ろしいわね……。そんな偽りを信じてしまったの? あぁ、ライナス、あなたも明日の式典の前でナーバスになっているのではない?」
「……王妃陛下、私からご説明いたしましょう」

 トレイシーがライナスの隣に立ち、王妃に説明を始める。ライナスは首だけで後ろを振り返り、フィルに視線を向けた。

 すると、フィルは、声を出さずに下を指さす。どうやら、エルシーが下にいると伝えたいようだ。

「……母上、こちらの部屋のどこかに私の婚約者を隠しておいでですね?」
「エルシーのことは昨日も言ったはずよ。話した後、部屋を出ていったわ。どうしたら信じてもらえるのかしら」

 頬に手を当て、困惑する王妃にライナスは笑顔を浮かべ、距離を縮める。
 
「王族の部屋には、その部屋の主人にしか場所を教えられない隠し部屋がありますよね」

 そして、ひらりと洋紙を片手で持つ。

「騎士団から、強制捜査の許可証を取りました」

 ◇

 ジョイは、隙間から部屋の様子を確認する。王妃の私室の外が俄かに騒がしくなってすぐ、王妃から隠れるように言われて、絵画の裏にある隠し部屋に身を隠していたのだ。

 ライナスはジョイが思っていたよりも、優秀だった。こんなにも早く証拠を集めて乗り込んでくるとは。式典前であることや、エルシーがいなくなったことに意識を取られていると思っていた。

 強制捜査などされてしまえば、地下の隠し部屋にいるエルシーが見つかってしまう。

 そうなれば、王妃も自分も捕まってしまうだろう。それでは王妃の願いを叶えることはできない。今すぐにでも王子を殺さなければ。

 ジョイは音を立てないよう注意して、すぐに吹き矢を構える。本当は午後に使う予定だったものだ。

 この隙間であれば、問題なく撃てるはず。王妃と話しているライナスに狙いを定める。隙間は狭いので、吹き矢の場所を調整したら外の様子はわからない。

 ジョイは、ふっと息を吹き込んだ。

 ◇

 スキルで音を感知したフィルが、ライナス目掛けて飛んできた何かを切り伏せる。

 それと同時に、フィルから絵画の辺りに注意しろと囁かれて観察していたカーティスは、わずかな隙間を見つけ、その隙間に向かって手首についていたボタンを引きちぎり投げた。

 カーティスのスキルでボタンは見事に隙間にはまる。それによって隙間から出ていた筒はジョイの方へと押し返された。

「母上、ここは危険なようですね」
「……」

 ライナスはフィルによって二つに刻まれて、床に落ちた矢を見つめる。

 そして、フィルは無言で絵画に触った。絵画は回転して、隠し部屋を露わにする。

 そこには、ジョイがナイフを持って立っていた。

「ジョイ、そこにいたのか。あなたに話を聞きたい」
「……」

 これでは、王妃の願いを叶えられない。ジョイは目にも止まらぬ速さで隠し部屋を飛び出す。そして、みなが気づいた時には、
 
「止まれ。王妃がどうなってもいいのですか?」

 目の前でジョイが王妃を後ろから抱え込んで、ナイフを突きつけていた。

 ジョイはまっすぐライナスを睨みつける。母親を人質にされれば、王子を含め、誰も手出しはできないはずだ。もう今は、王子を殺せればそれでいい。

「ジョイ……」
「王妃陛下、申し訳ありません」
「母上!」
「ライナス王子、武器を捨ててください。私はあなただけに用があります。他の騎士に護衛! おかしな動きをするなら、今ここで王妃を殺す」

 ライナスは、フィルやカーティスに武器を下ろすように仕草で伝える。そして、自身も身につけていた剣を床に置いた。

「そのまま、近くに来てください」

 ライナスは、ジョイと王妃の元へ近づく。ジョイが王妃を解放して、ライナスを捕まえようとした時、床の下から大きな音が鳴り響いた。

 この音を出したのは、捕まっていたエルシーだとライナスは直感する。

 ◇

 エルシーは、体にできるアザも痛みも服の破れも気にせず、ひたすら体当たりし続け、スキルを止めた。

 大きな音と共に、狙い通りドアが開く。
 
「エルシー! ここにいるなら、力を貸してくれ!」

 微かに聞こえたライナスの声に、痛みで朧げになる意識を総動員して、エルシーは再度スキルを使った。
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