快楽の牢獄

真鉄

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快楽の牢獄

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「先生、調子どうだい」

  ごんごんと扉を叩いた後、返答も聞かずに部屋に踏むこむと、真っ赤な顔をしたスヴェンが寝台の上で頭から毛布を被ってうずくまり、驚愕に目を見開いてこちらを見たまま固まっていた。自慰にふけっていたのだろうなあ、と内心可笑しさをこらえつつ、わざと空気を読まずに勝手に椅子を引っ張り出して寝台の隣に腰をかけた。眼鏡を外し、髪も乱した珍しい姿をまじまじと見つめると、スヴェンは何とも居心地悪そうに視線を逸らし、半分顔を枕に埋める。

「……別に、何ともない」
「何ともないってこたぁねえだろ。飯も食わずに部屋にこもっちまってよ」

  そう言って、テオドアは部屋を見回した。宿屋と言うよりはほぼ拠点と言っても差し支えのないほどに、部屋の中は書物や薬草の束で溢れかえっている。そして、充満したあの甘い匂い。それは間違いなくスヴェン本人から漂っていた。紅潮した頬に潤んだ瞳。間違いなく発情しているスヴェンの顔に、再度むらむらと性欲を掻き立てられ、テオドアは居心地悪く椅子の上で座り直した。

「……それで?」
「それで?」
「何か用があるんだろう。早く言え」

  取りつく島もない言葉に鼻白む。この先生はいつもそうだ。澄ましたような顔で、自分よりも知能の劣る者とは相容れないし話もしたくないとお高い態度を無自覚にとる。

「あー、体調が悪いんなら、しばらく休んでいいってよ。それとなぁ、先生」

  そう言うと、テオドアは素早く寝台に乗り上げ、スヴェンが被っていた毛布を力任せに取り去った。

「やめ……っ!」
「アンタ、あの中で媚薬漬けになったんだってな?」

  毛布を取り返そうと伸ばされた手を掴み、テオドアは一瞬でスヴェンの両手を頭上に拘束すると細い身体の上に乗り上げた。思った通り、スヴェンの股間は柔らかな布地のズボンを固く押し上げていた。そうだろう、そうだろう。私は俗物とは違います、なんて澄ました顔をしているが、こうなってしまえば男ははしたなく勃起するしかないのだ。テオドアはしたり顔で溜飲を下げ、軽い冗談でも言って拘束を解いてやろうと口を開きかけて、スヴェンの顔を見て息を呑んだ。

  羞恥に唇を噛み、泣きそうに歪んだ真っ赤な顔でスヴェンは横を向いて枕に顔を埋めている。襟首から覗く桜色に染まった首筋から鎖骨が妙に艶めいて、テオドアは無性に舐めてみたい衝動に駆られた。意趣返しにちょっとからかうだけのつもりだったのだ。それなのに――。

「いや、その、先生も辛いだろうと思ってよ。娼館に誘ってやろうかと思ってだな……」

  しどろもどろになりながら言い訳するテオドアを潤んだ目で見上げ、スヴェンは小さくかぶりを振った。甘い匂いが鼻腔をくすぐり、手首を押さえる手に力がこもった。

「何でだよ。一人でするよかいいだろ?」
「……ないんだ……」
「何?」

  小さな呟きを聞き逃し、テオドアは顔を近づけた。甘い、甘い匂い。思わず溜め息をつくと、くすぐったいのか、強く目を閉じたままスヴェンが身をよじった。その弱々しい動きが妙にテオドアの嗜虐心を煽る。ざわつく心を懸命に落ち着けながら、再度問うと、スヴェンは観念したように小さな声で答えた。

「……射精、できないんだ」
「……こんなにガチガチになってんのにか?」

  ぎゅっと目を閉じたまま、スヴェンが弱々しく首を振った。目の縁に涙が膨れ上がり、一粒頬を滑り落ちていく。その一条の涙に、ぞわぞわとテオドアの背筋を肉欲が駆け上がる。ああ、このままこの弱った獲物を征服して、思う様いたぶりたい。いつの間にか己の股間が痛いほど勃起していることに気づき、テオドアは理性による抵抗をあっさりと放棄した。誰かを抱きたいのではない。この目の前の先生を抱きたいのだ。

「……じゃあ、俺がやってやるよ」
「な、……ンあっ!」

  押さえ込んでいた手首を片手で軽々と押さえ込むと、空いた片手で柔らかな布の上から屹立を撫で上げた。それだけで面白いほどに身体をビクつかせるスヴェンの反応に、テオドアは餌を前にした獣のように自分の唇を舐めた。楽しい。楽しくてたまらない。

  下穿きを力任せにずり下げると、固い肉竿がぶるんと揺れ、薄く引き締まった下腹を打ちつけた。己のグロテスクな陰茎と違って、すんなりとしたスヴェンのそれは、艶々と張り詰めた陰嚢と相まって、まるで何かの果実のように見えた。散々にしごいたのか全体的に赤く充血しているせいもあるのだろう。

「先走りでぬるぬるじゃねえか。これでもイケねえってのか?」

  諦めたのか抵抗がやんだので手の拘束を外し、細い太腿部の上に軽く腰を下ろして、スヴェンの固く張り詰めた肉茎を観察する。鈴口がぱくぱくと開き、粘性の雫が一筋とろりと下腹へ落ちていく。ひくひくと上下する屹立の裏を指で撫で上げると、面白いほどにスヴェンの薄い腹が痙攣した。

「……くぅっ!」

  今度は真っ赤に充血した亀頭を握り込み、溢れた先走りを潤滑油代わりに全体をしごく。手の中のスヴェンはひどく熱く、どくどくと脈打っていた。他人のモノを手コキするのは初めてだが、まあ自分でするのとそんなに変わらないだろう、そう思って手を滑らせたが、自分でするのとは逆向きでどうにも感覚が分からない。

「……先生、こっち来い」
「え、ちょ……」

  テオドアは上からどくと、寝台の上に胡座をかき、足の間に引っ張り込んだスヴェンを背中から抱き込んだ。肉の薄い背と、がっしりと隆起した胸筋が布越しに密着し、互いの体温が伝わる。漂う甘い匂いに誘われ、スヴェンの耳の裏に鼻先を突っ込んですんすんと嗅いだ。甘い、甘いあの匂い。たまらず、テオドアは目の前の真っ赤に熟れた耳にかじりついた。

「ひっ、あ……!」

  こりこりと耳の軟骨を甘噛みしながら、再びスヴェンの屹立に手を伸ばす。全体的にしごきながら、片手で張り詰めた陰嚢を柔らかく揉むと、腕の中のスヴェンが身体を引きつらせたのがあますことなく伝わった。

「どうだい、先生。イケそうかい?」

  ぬちゃぬちゃとわざと大きな音をたてながらしごき、低い声を吹き込むように耳元で囁く。スヴェンは口元に手を当て、半ば顔を隠してただ震えている。なあ? と熱い耳の縁を舐め上げてやれば、息を詰めて一際大きく震えた後、恥じらいながら小さく頷いた。

「よし、いいからそのままイッちまいな」
「……っ、う、んんっ……!」

  大きなストロークで張り詰めた肉竿をしごき続けると、手の動きに合わせて次第にスヴェンの腰がいやらしく揺れ始めた。垂れ落ちた先走りが陰嚢までもしとどに濡れるほど大量に溢れ始める。そろそろか、とテオドアが思った時、腕の中のスヴェンが何度も身体を引きつらせた。

「あっ、あっ、イク……!」

  小さな叫びと共に、テオドアの大きな手のひらの中で肉竿をはびくびくと脈打ったが、透明な先走りに濡れるだけで肝心の精液は全く放出されていなかった。腹筋を引きつらせ、震える息を吐くスヴェンの顔は苦しげだった。

「え、今……イッたよな?」
「ひっ、や、触るなっ……!」

  未だに固さを失わずにそそり立っている屹立をしごくと、たまらずスヴェンがその手を押さえ込んだ。要望どおり手の動きを止めてやると、スヴェンの手は力なく脇へと落ちていった。荒い息をともすすり泣きともつかない引きつった呼吸音が聞こえる。

「うーん……。刺激が足んねえのかな」
「刺激だと……? これ以上、どうしろって言うんだ」

  洟をすすりながら小さな声でスヴェンは吐き捨てた。自暴自棄のような態度に少し苛立つ。だが、ここを訪ねるまで、この終わりの見えない絶頂を一人で何度試したのだろう。叶わなければ叶わないほど、行き場のない欲望は出口を求めて暴れまわるものだ。そう考えると、何だか可哀想になってきた。
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