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第2章ダンジョンの怪物
09なんで生きてんだよ
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〈今からダメージを、プレイヤーに貫通させます〉
機械音が現実を突きつける。
それを聞いたらさ、体の震えが止まらなくなったよ。
ダメージをプレイヤーに貫通させる。そんなゲーム存在しないんだから仕方ないだろ?
怖いんだよ。
しかも『350万』というダメージを貫通させるんだぜ。
もし数値を正確に痛みに換算したなら『350万』というダメージ。俺は正気を保っていられるのだろうか。
気の遠くなるような数字だ。
自然と身構えてしまう。
実際に先程噛まれた箇所から異常な痛みが出てきた。
まるで体の内部から食い散らかされるような、激しく鈍い痛み。
ズシャッッッ……。
立っていられないほどだ。
俺はその場で倒れて、噛まれた足に触れないようにその場でのたうち回った。
みっともないと思われるかもしれない。
でもそうでもしないと、気がおかしくなりそうだったんだ。
「うぁあああああああ!!!」
ヤバい、なんだこれ。意識が飛びそうだ……。
ダンジョン中に響き渡るような断末魔は、5秒ほど続いた。
たかが5秒と思うかもしれない。しかし俺にとっては永遠に続くような時間、それほど長く感じられた。
〈ダメージ貫通、終了いたしました〉
機械音が終了を告げた頃には、俺は地面でグッタリとしていたよ。体に力が入らないんだ。
痛みが続いている訳じゃないけどさ、精神的に参ってしまったんだ。
それに次のターンにも攻撃を受けるかもしれない。そう考えると、何もかもが嫌になるんだ。
もう嫌だ。帰りたい……。
俺は地面にうつ伏せになり、誰にも聞こえない声量で泣き始めた。
もちろん、絶望に打ちひしがれているのは俺だけじゃない。
隣に位置する松尾はパニック状態に陥っているようだ。
表情は見えないが、声を荒げている様子は理解できる。
「ちょっと鮫島! 話が違うじゃない!!! このゲームは、『単なるゲーム』だから命には関わらないって」
「はぁ? そんな事言ったか」
「言ってたわよ。あなたも、奴隷君の叫び声を聞いたでしょ! 本当に死んじゃうわよ」
(はは……そうだったのか……)
2人の会話を聞いていて分かった事がある。
さっき俺が化け物に襲われている時、冷たい視線を向けていたのはそういう事だったのだ。
彼女達はこれを『単なるゲーム』だと思って油断していた。まさか死ぬ事はないと。
俺がわずかにニヤけている時も、2人の会話は続いていた。
興奮状態の松尾に向かって鮫島はゆったりとした口調で語りかけている。
「なぁ松尾。どのみち全員が『逃げる』事は出来ないみたいだ。戦うしかねぇだろ」
「そうだけど」
鮫島の言う通りだ。
もしみんなが『逃げる』コマンドを押し続ければ、こちらのターンは強制終了され、ただ相手に攻撃されるだけになる。
「そうね……戦うしか……ないわよね」
「そうだ。あと1つ言っておくが『逃げる』コマンドを絶対に押すなよ。――もし仮に仲間を裏切って逃げたとしたも、残った奴があの化け物に瞬殺されて追ってくるぞ!」
「分かってるわよ、裏切るようなことはしないわ」
この時の鮫島の声量は不自然に大きかった。
恐らく、地面に寝そべっている俺にも聞こえるように話したのだろう。
でも、少なくとも俺は裏切るようなマネはしないから大丈夫さ。
攻撃値『0』の俺が1人になったら、確実に死ぬだけだからな。
「……まだ……少し……痛い……」
攻撃された足をさすりながら、俺はようやく体を起こし始めた。
生まれたての子鹿のように。
そんなフラフラと立ち上がる姿を鮫島は見ていたようだ。
目を大きく開けてこちらを睨(にら)んでいる。
「おい奴隷! 何も表示されてないから死んじゃいねぇと思ったが、やっぱりか」
「本当に良かったわ… …私は、てっきり死んだものかと……」
「いや、そうじゃねえ松尾! なんでお前生きてんだよ!『350万』もダメージ食らってるのによぉ!!」
「鮫島、落ち着いて。無事だったんだからよかったじゃない……ほら、奴隷君も何か言ってあげて」
「………」
「奴隷君?」
そう。機械音に響く音声は、戦闘中であれば仲間全員が共有できる仕組みになっていたのだ。
そんな事も気づかずに俺は、『350万』のダメージを受けても平然と立ち上がってしまった。
このままだとHPの秘密がバレてしまう。
今ここで鮫島達に白状すべきなのか?それとも、ごまかしてシラを切り通すべきなのか?
そうやって考えているせいで、すぐには松尾の問いかけに反応出来なかったんだ。
機械音が現実を突きつける。
それを聞いたらさ、体の震えが止まらなくなったよ。
ダメージをプレイヤーに貫通させる。そんなゲーム存在しないんだから仕方ないだろ?
怖いんだよ。
しかも『350万』というダメージを貫通させるんだぜ。
もし数値を正確に痛みに換算したなら『350万』というダメージ。俺は正気を保っていられるのだろうか。
気の遠くなるような数字だ。
自然と身構えてしまう。
実際に先程噛まれた箇所から異常な痛みが出てきた。
まるで体の内部から食い散らかされるような、激しく鈍い痛み。
ズシャッッッ……。
立っていられないほどだ。
俺はその場で倒れて、噛まれた足に触れないようにその場でのたうち回った。
みっともないと思われるかもしれない。
でもそうでもしないと、気がおかしくなりそうだったんだ。
「うぁあああああああ!!!」
ヤバい、なんだこれ。意識が飛びそうだ……。
ダンジョン中に響き渡るような断末魔は、5秒ほど続いた。
たかが5秒と思うかもしれない。しかし俺にとっては永遠に続くような時間、それほど長く感じられた。
〈ダメージ貫通、終了いたしました〉
機械音が終了を告げた頃には、俺は地面でグッタリとしていたよ。体に力が入らないんだ。
痛みが続いている訳じゃないけどさ、精神的に参ってしまったんだ。
それに次のターンにも攻撃を受けるかもしれない。そう考えると、何もかもが嫌になるんだ。
もう嫌だ。帰りたい……。
俺は地面にうつ伏せになり、誰にも聞こえない声量で泣き始めた。
もちろん、絶望に打ちひしがれているのは俺だけじゃない。
隣に位置する松尾はパニック状態に陥っているようだ。
表情は見えないが、声を荒げている様子は理解できる。
「ちょっと鮫島! 話が違うじゃない!!! このゲームは、『単なるゲーム』だから命には関わらないって」
「はぁ? そんな事言ったか」
「言ってたわよ。あなたも、奴隷君の叫び声を聞いたでしょ! 本当に死んじゃうわよ」
(はは……そうだったのか……)
2人の会話を聞いていて分かった事がある。
さっき俺が化け物に襲われている時、冷たい視線を向けていたのはそういう事だったのだ。
彼女達はこれを『単なるゲーム』だと思って油断していた。まさか死ぬ事はないと。
俺がわずかにニヤけている時も、2人の会話は続いていた。
興奮状態の松尾に向かって鮫島はゆったりとした口調で語りかけている。
「なぁ松尾。どのみち全員が『逃げる』事は出来ないみたいだ。戦うしかねぇだろ」
「そうだけど」
鮫島の言う通りだ。
もしみんなが『逃げる』コマンドを押し続ければ、こちらのターンは強制終了され、ただ相手に攻撃されるだけになる。
「そうね……戦うしか……ないわよね」
「そうだ。あと1つ言っておくが『逃げる』コマンドを絶対に押すなよ。――もし仮に仲間を裏切って逃げたとしたも、残った奴があの化け物に瞬殺されて追ってくるぞ!」
「分かってるわよ、裏切るようなことはしないわ」
この時の鮫島の声量は不自然に大きかった。
恐らく、地面に寝そべっている俺にも聞こえるように話したのだろう。
でも、少なくとも俺は裏切るようなマネはしないから大丈夫さ。
攻撃値『0』の俺が1人になったら、確実に死ぬだけだからな。
「……まだ……少し……痛い……」
攻撃された足をさすりながら、俺はようやく体を起こし始めた。
生まれたての子鹿のように。
そんなフラフラと立ち上がる姿を鮫島は見ていたようだ。
目を大きく開けてこちらを睨(にら)んでいる。
「おい奴隷! 何も表示されてないから死んじゃいねぇと思ったが、やっぱりか」
「本当に良かったわ… …私は、てっきり死んだものかと……」
「いや、そうじゃねえ松尾! なんでお前生きてんだよ!『350万』もダメージ食らってるのによぉ!!」
「鮫島、落ち着いて。無事だったんだからよかったじゃない……ほら、奴隷君も何か言ってあげて」
「………」
「奴隷君?」
そう。機械音に響く音声は、戦闘中であれば仲間全員が共有できる仕組みになっていたのだ。
そんな事も気づかずに俺は、『350万』のダメージを受けても平然と立ち上がってしまった。
このままだとHPの秘密がバレてしまう。
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そうやって考えているせいで、すぐには松尾の問いかけに反応出来なかったんだ。
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