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第2章ダンジョンの怪物
10無謀な提案
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巨大なダメージを受けても生きている俺。
そんな俺に対して虐めっ子の二人は疑念を抱いていた。
当たり前だ。普通ならHPが0になるはずだからな。
特に鮫島は、怒鳴り声に近い大きな声量で訴えかけてきた。
「おい奴隷! なんで生きてるんだよ!!!」
「鮫島は落ち着いて……ほら! 奴隷君も何とか言ってよ」
「………」
二人から責め立てられる俺の表情は、苦痛とまではいかなくとも苦い表情へと変わっていった。
『350万』のダメージを受けてもまだ死なないのだ。
彼らは俺の事を得体の知れない存在だと恐れているのだろうか。
俺が何か良い案はないかと黙り込んでいると、鮫島がシビれを切らしたらしい。
大声でこちらに向かって怒鳴ってきた。
「おいなんとか言えよ! お前も協力しねぇと全滅だぞ」
「……ご、ごめん。鮫島君」
俺はなぜか、鮫島の言葉を聞いてニヤけてしまった。
普通この場面でこの反応は異常かもしれない。でも、思ってしまったんだ。
鮫島の口から『協力』なんて言葉が出る日がくるなんて、ってさ。
鮫島もこの状況に相当ビビっているんだろう。俺はゆっくりと横を向くと腕を組んで話した。
――ほぼ無限のHPの事を。
どのみち生きて帰れるか分からないしな。それなら教えてやるよ、って思ったんだ。
今回は恐る恐るじゃない。鮫島の目をしっかりと見て。
「……HPだけバグってるんだよ」
「バグってる? どういう事だ」
「ずっと9の数字が並んでて先が見えないんだ」
「ほ、本当か!」
「そういえば鮫島君って、学校で俺のステータス見てたよね? HPは見なかったの?……」
「あの魔法の事か? あれは相手の『職業』しか見れねぇんだわ」
「HPが無限ってこと? すごいじゃない!」
俺達が会話をしていると松尾が入ってきた。
ステータスの高い『王(キング)』と、HPがバグっている『奴隷(スイレヴ)』。この二人がいれば何とかなると思っているのだろう。
彼女の目は希望で満ちていた。
だが、鮫島の方を覗いてみると先程までの表情と変わらず険しいままだ。
彼も気づいているのだろう。
HPがいくらあったとしてもそれは死期を延ばしているにすぎないと。
鮫島は俺達から視線を外すと、力無い言葉で会話を続けた。
「ダメだ。あの化け物を倒す方法が見つからねぇ」
「そ……そんな事ないでしょ鮫島! もっとよく考えてよ、私まだ死にたくないよ……」
鮫島の死刑宣告にも似た発言。
現実を突きつけられた松尾は泣き出してしまった。
彼女も学校では令嬢として、強気な性格を振舞っているとはいえ女の子だ。
泣き出してしまっても仕方ない。
それに『王(キング)』である鮫島や、『HPがバグっている』俺とは違って彼女は通常の『魔道士(メイジ)』だ。
俺が受けた攻撃をまともに受ければ、彼女のHPは『0』になる事は誰もが理解していた。
いや、この3人の中で一番死ぬ確率が高いのが自分だと彼女自身が最も感じていたんじゃないかな。
――でも。
もう少し考えれば何か解決の糸口が見つかるかもしれない。
鮫島だけではなく、俺も戦略に入れられる事が判明したのだ。
先程よりは希望が持てるという事も、また事実である。
何か解決策を見いだせるかもしれない。ただ、それは考える時間があればの話だが。
もちろん、現実はそう待ってくれないのだ。
無情な機械音が再び3人の脳内に響きだす。
【『2』ターン目・《プレイヤー側》】
〈コマンドを選択してください〉
―――――――――――――――――――――――
選択時間:1分
→ ●戦う
●逃げる
―――――――――――――――――――――――
鮫島は悔しさのあまり、その場で地面を蹴っていた。
「クソ時間がねぇ! 時間さえあれば……」
「ど、どうするのよ鮫島…… 私、何を選んだら」
松尾は縋(すが)るような目で俺と鮫島の方を見ている。
俺は何も言い出せなかったが、鮫島は哀れな彼女に向かって驚くべき事を口にした。
「松尾! お前、誘導魔法使えたよな」
「使えるけど。それがどうしたの?…」
鮫島の顔つきが変わった。
何か危険な事を考えている目つきだ。俺を虐めていた時と一緒の……。
嫌な予感がした。
彼が今考えている事を、俺が必死に考えようとした程だ。
でもそんな必要無かった。無限のHPと誘導魔法。この二つがあれば、する事は一つしかない。
(おい……まさか)
――鮫島の奴……俺を殺す気か?
最悪のシナリオが頭に浮かんだ瞬間、俺は鮫島に向かって叫んでいた。
自分の身を守るために。
「待って鮫島君。その案はやめて!」
「ほう……流石に自分の扱われ方に気付き始めたかぁ」
「え? どういう事、2人とも何言ってるの?……」
松尾は俺と鮫島の必死なやり取りの意図を理解していないようだった。
左右を交互に見て顔を歪めているだけだ。
そんな中で鮫島は松尾の方に顔を向けた。俺の訴えを無視して作戦を伝えるために。
「松尾! 誘導魔法でこれからずっと、相手の攻撃対象を蓮に指定しろ!!」
「やめて! HPは持つかもしれないけど、あの痛みに耐えきれない。――松尾さんもさっき聞いたでしょ、この先も毎ターンずっとあの叫びを聞きたいの?」
俺は松尾に向かって膝をついて、縋(すが)るような目で見つめた。
カッコいいとかカッコ悪いとかそんな事を言っている場合ではないんだ。
あんな攻撃を何回も受けていたら、俺の精神がもたない。
そんな俺の視線の先で彼女は狼狽(うろた)えていた。
誘導魔法を使って指定するという事は、彼女が俺を死に追いやる可能性があるからだろう。
単なるゲームだと思ってダンジョンに侵入した彼女には、覚悟がなかったのかもしれない。
松尾は、目の前のコマンドを呆然(ぼうぜん)と見つめて、コマンド表示を見つめているだけだった。
「私どうしたらいいの?……」
と、困惑の声を上げながら。
―――――――――――――――――――――――
選択時間:30秒
→ ●戦う
●逃げる ―――――――――――――――――――――――
そんな俺に対して虐めっ子の二人は疑念を抱いていた。
当たり前だ。普通ならHPが0になるはずだからな。
特に鮫島は、怒鳴り声に近い大きな声量で訴えかけてきた。
「おい奴隷! なんで生きてるんだよ!!!」
「鮫島は落ち着いて……ほら! 奴隷君も何とか言ってよ」
「………」
二人から責め立てられる俺の表情は、苦痛とまではいかなくとも苦い表情へと変わっていった。
『350万』のダメージを受けてもまだ死なないのだ。
彼らは俺の事を得体の知れない存在だと恐れているのだろうか。
俺が何か良い案はないかと黙り込んでいると、鮫島がシビれを切らしたらしい。
大声でこちらに向かって怒鳴ってきた。
「おいなんとか言えよ! お前も協力しねぇと全滅だぞ」
「……ご、ごめん。鮫島君」
俺はなぜか、鮫島の言葉を聞いてニヤけてしまった。
普通この場面でこの反応は異常かもしれない。でも、思ってしまったんだ。
鮫島の口から『協力』なんて言葉が出る日がくるなんて、ってさ。
鮫島もこの状況に相当ビビっているんだろう。俺はゆっくりと横を向くと腕を組んで話した。
――ほぼ無限のHPの事を。
どのみち生きて帰れるか分からないしな。それなら教えてやるよ、って思ったんだ。
今回は恐る恐るじゃない。鮫島の目をしっかりと見て。
「……HPだけバグってるんだよ」
「バグってる? どういう事だ」
「ずっと9の数字が並んでて先が見えないんだ」
「ほ、本当か!」
「そういえば鮫島君って、学校で俺のステータス見てたよね? HPは見なかったの?……」
「あの魔法の事か? あれは相手の『職業』しか見れねぇんだわ」
「HPが無限ってこと? すごいじゃない!」
俺達が会話をしていると松尾が入ってきた。
ステータスの高い『王(キング)』と、HPがバグっている『奴隷(スイレヴ)』。この二人がいれば何とかなると思っているのだろう。
彼女の目は希望で満ちていた。
だが、鮫島の方を覗いてみると先程までの表情と変わらず険しいままだ。
彼も気づいているのだろう。
HPがいくらあったとしてもそれは死期を延ばしているにすぎないと。
鮫島は俺達から視線を外すと、力無い言葉で会話を続けた。
「ダメだ。あの化け物を倒す方法が見つからねぇ」
「そ……そんな事ないでしょ鮫島! もっとよく考えてよ、私まだ死にたくないよ……」
鮫島の死刑宣告にも似た発言。
現実を突きつけられた松尾は泣き出してしまった。
彼女も学校では令嬢として、強気な性格を振舞っているとはいえ女の子だ。
泣き出してしまっても仕方ない。
それに『王(キング)』である鮫島や、『HPがバグっている』俺とは違って彼女は通常の『魔道士(メイジ)』だ。
俺が受けた攻撃をまともに受ければ、彼女のHPは『0』になる事は誰もが理解していた。
いや、この3人の中で一番死ぬ確率が高いのが自分だと彼女自身が最も感じていたんじゃないかな。
――でも。
もう少し考えれば何か解決の糸口が見つかるかもしれない。
鮫島だけではなく、俺も戦略に入れられる事が判明したのだ。
先程よりは希望が持てるという事も、また事実である。
何か解決策を見いだせるかもしれない。ただ、それは考える時間があればの話だが。
もちろん、現実はそう待ってくれないのだ。
無情な機械音が再び3人の脳内に響きだす。
【『2』ターン目・《プレイヤー側》】
〈コマンドを選択してください〉
―――――――――――――――――――――――
選択時間:1分
→ ●戦う
●逃げる
―――――――――――――――――――――――
鮫島は悔しさのあまり、その場で地面を蹴っていた。
「クソ時間がねぇ! 時間さえあれば……」
「ど、どうするのよ鮫島…… 私、何を選んだら」
松尾は縋(すが)るような目で俺と鮫島の方を見ている。
俺は何も言い出せなかったが、鮫島は哀れな彼女に向かって驚くべき事を口にした。
「松尾! お前、誘導魔法使えたよな」
「使えるけど。それがどうしたの?…」
鮫島の顔つきが変わった。
何か危険な事を考えている目つきだ。俺を虐めていた時と一緒の……。
嫌な予感がした。
彼が今考えている事を、俺が必死に考えようとした程だ。
でもそんな必要無かった。無限のHPと誘導魔法。この二つがあれば、する事は一つしかない。
(おい……まさか)
――鮫島の奴……俺を殺す気か?
最悪のシナリオが頭に浮かんだ瞬間、俺は鮫島に向かって叫んでいた。
自分の身を守るために。
「待って鮫島君。その案はやめて!」
「ほう……流石に自分の扱われ方に気付き始めたかぁ」
「え? どういう事、2人とも何言ってるの?……」
松尾は俺と鮫島の必死なやり取りの意図を理解していないようだった。
左右を交互に見て顔を歪めているだけだ。
そんな中で鮫島は松尾の方に顔を向けた。俺の訴えを無視して作戦を伝えるために。
「松尾! 誘導魔法でこれからずっと、相手の攻撃対象を蓮に指定しろ!!」
「やめて! HPは持つかもしれないけど、あの痛みに耐えきれない。――松尾さんもさっき聞いたでしょ、この先も毎ターンずっとあの叫びを聞きたいの?」
俺は松尾に向かって膝をついて、縋(すが)るような目で見つめた。
カッコいいとかカッコ悪いとかそんな事を言っている場合ではないんだ。
あんな攻撃を何回も受けていたら、俺の精神がもたない。
そんな俺の視線の先で彼女は狼狽(うろた)えていた。
誘導魔法を使って指定するという事は、彼女が俺を死に追いやる可能性があるからだろう。
単なるゲームだと思ってダンジョンに侵入した彼女には、覚悟がなかったのかもしれない。
松尾は、目の前のコマンドを呆然(ぼうぜん)と見つめて、コマンド表示を見つめているだけだった。
「私どうしたらいいの?……」
と、困惑の声を上げながら。
―――――――――――――――――――――――
選択時間:30秒
→ ●戦う
●逃げる ―――――――――――――――――――――――
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