チートスキルと無限HP!〜いじめられっ子は最弱職業だが、実は地上最強〜

ボルメテウス

文字の大きさ
13 / 123
第2章ダンジョンの怪物

12令嬢の決断

しおりを挟む
 アァァヴヴヴアアア!!!


 洞穴に響き渡る化け物の呻(うめ)き声。
 その耳障りな音を、俺達三人はただ黙って聞く事しかできなかった。
 特に俺は、自らの拳を握りしめて震えていた。
 俺たちの中で最強のはずの鮫島が渾身の一撃を放ってダメージ100。
 相手のHPは55000なのに……俺達は……。
 もう終わりなのか?



 俺は化け物が以前いた場所へ生気の失った視線を向けた。
 すると、姿そのものは見えないがしっかりと相手ステータスだけは見えたんだ。
 やはり化け物あいつは健在のようである。
 

――――――――――――――――――――――――――
 ●呪猫(カース・キティ)                    
                                                             Lv.45
 ○HP…『54900』
 ○状態…『通常』
 ○殺人カウント…『68』

 闇より生まれた呪われし子猫。
 人間を食い散らかしていくたび、口の数が増えていく。
――――――――――――――――――――――――――


 ステータスには先程のダメージが既に反映されていた。
 HPと記されている箇所が『55000』から『54900』に更新された事が確認できる。
 そしてこれは、俺たちが勝てないという事の証明でもあった。


 こちらへ戻る鮫島の表情を見るに、先程の攻撃は自信があったのだろう。
 戻ってきても何も言わず、何も見ようとしない。
 恐らく、1番攻撃力の高いモノを打ち込んだのだ。
 失意のどん底に落とされた彼に、俺は話しかけた。
 絶望的な状況を打破しなければならない。そんな表情を浮かべながら。


「さ、鮫島君。あの攻撃を何回もやり続ければ勝てるんじゃないか? もうこの方法しか……俺が……盾になり続けるからさ」
「……」


 そうだ。
 単純に考えれば、550回やれば相手のHPを0にする事が出来る。
 馬鹿な提案と思うかもしれないが他に方法がない。
 現状では、敵の攻撃をひたすら蓮が受け続けるという策が最善なのだ。
 幸運な事に俺のステータスを確認すると『HP』の欄には9の数字がズラリと並べられていた。


 俺の目に生気は無くなったが、何も諦めたわけじゃない。
 氷華にもう一度会うまで俺は死ねない。
 ――あの痛みを550回経験する以外に道は無いと。



「鮫島くん。返事してよ」
「……おい。なんか勘違いしてねぇか?」


「え、それはどういう」
「さっきの攻撃は特殊な物理攻撃でな、MPを大量に消費するんだわ。あと2発が限界だ」


「え?……」


 鮫島の発言で一気に血の気が引いてしまった。
 だが、これで諦めるわけにはいかない。俺は身を乗り出して限りなく不可能に近い提案をした。
 自分でも不可能だって分かってはいるけどさ。
 受け入れられないんだ。もう二度と氷華に会えないって現実が。


「通常攻撃ならどう? 1くらいのダメージは与えられるんじゃないか!」


 あの痛みを1000回、いや10000回繰り返す事になるが仕方ないだろう。
 戦闘が終わった後に痛みのせいで廃人になってる可能性は捨てきれないが、やらなければ確実に死ぬだけだ。
 俺は覚悟を決めたつもりだった。
 でも鮫島が言うんだ。
 それも無理だ……って。


「あの攻撃以外にダメージを与えられないんだよ! コマンドにご丁寧に書かれてあったんだ。他の攻撃手段の所に米印でダメージ不可ってな」
「そんな……」
「……」
「……」


 どん詰まりの状況を確認した俺達2人は無言になってしまった。考える事を止めたのだ。
 現状考えうる手段では生き残る道がない。
 もう……何も……考えられない。


 しかし、考える事を止めたと言ってもゲーム自体が止まる事は無い。
 機械音は進行を続けた。


〈プレイヤー『蓮』が『身を守る』を選択致しましたので、『物理防御値』を100にupします〉


「……はは」


 進行を続ける機械音に対して、俺は思わず笑ってしまったよ。
 防御値が100増えるだけという無意味な報告もしてくれるのかって。


「あれ? そういえば……」


 少し落ち着きを取り戻した俺はある事に気付いた。
 先程から松尾の声が聞こえない。
 彼女は、無言のまま地面で足を抱えて動かないでいたのだ。


 おかしい……。


 誘導魔法で俺を指定しているならば、少なくともこのターンに死ぬ事は無いはずだ。
 だから、わずかでも余裕が出来て会話にも参加すると思っていたんだけど。
 いや……待てよ……。
 彼女の態度の理由を、会話に参加する余裕がなかったと仮定するならば一つの可能性が浮上する。


「もしかしたら……」


 俺が松尾の姿を凝視した時、機械音がまた鳴り響いた。



〈プレイヤー『松尾』は『魔法(マジック)』を選択されましたので実行致します〉


〈……『全防御(フル・プロテクト)』を発動します。効果により全プレイヤーの『物理・魔法防御値』が5倍になります〉



 そう。彼女は誘導魔法を選択しなかったのだ。
 命が関わる状況に来て、胸の奥底の優しさがコマンド選択に現れてしまった。
 しかし、優しさに溢れた選択を鮫島が許すはずが無い。
 彼はすぐに松尾を怒鳴りつけた。


「松尾何やってんだ! 次のターンに化け物が俺かお前を選択したら死ぬぞぉ!!」
「……だって……私のせいで人が苦しむのは嫌なのよ」


 体育座りのまま顔を伏せているので、表情は分からないが泣いているのだろう。
 微(かす)かだが鼻をすする音が聞こえた。


「お前! いつも蓮のこと虐めてるじゃねぇか!」
「それとこれとは違うでしょ。もうあんな悲鳴……聞きたくないの……」


 驚き怒り狂う鮫島であったが彼女の発言を聞いて1番驚いてるのは俺だ。
 なんで松尾は俺に誘導魔法をかけなかったんだ?
 俺は嬉しいというよりも困惑していた。 
 意味がわからないからだ。あいつら虐めっ子は自分の事しか考えない。


 これまでずっとそうだったじゃないか……。
 なんで?……なんで?……俺を……。


「松尾さ……」
〈ジジッ…………〉


 俺が松尾に声をかけようとした時、機械音が進行を始めた。


〈呪猫(カース・キティ)のターン、『戦う』でプレイヤー『松尾』を選択致しましたので〉


〈これより呪猫(カース・キティ)の攻撃ターンに入ります〉



「え?……嘘でしょ……なんで私なのよ……」


 不幸な事に化け物が選択したのは命を軽視する鮫島ではなく、慈悲の心を有する若き女性であった。
 化け物の攻撃対象とされた彼女は、ゆっくりと顔を前方に向け悲痛な表情を浮かべる。


「誰か助けてよ……」


 溢れる涙とともに――。
しおりを挟む
感想 28

あなたにおすすめの小説

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

『異世界ガチャでユニークスキル全部乗せ!? ポンコツ神と俺の無自覚最強スローライフ』

チャチャ
ファンタジー
> 仕事帰りにファンタジー小説を買った帰り道、不運にも事故死した38歳の男。 気がつくと、目の前には“ポンコツ”と噂される神様がいた——。 「君、うっかり死んじゃったから、異世界に転生させてあげるよ♪」 「スキル? ステータス? もちろんガチャで決めるから!」 最初はブチギレ寸前だったが、引いたスキルはなんと全部ユニーク! 本人は気づいていないが、【超幸運】の持ち主だった! 「冒険? 魔王? いや、俺は村でのんびり暮らしたいんだけど……」 そんな願いとは裏腹に、次々とトラブルに巻き込まれ、無自覚に“最強伝説”を打ち立てていく! 神様のミスで始まった異世界生活。目指すはスローライフ、されど周囲は大騒ぎ! ◆ガチャ転生×最強×スローライフ! 無自覚チートな元おっさんが、今日も異世界でのんびり無双中!

異世界帰りの勇者、今度は現代世界でスキル、魔法を使って、無双するスローライフを送ります!?〜ついでに世界も救います!?〜

沢田美
ファンタジー
かつて“異世界”で魔王を討伐し、八年にわたる冒険を終えた青年・ユキヒロ。 数々の死線を乗り越え、勇者として讃えられた彼が帰ってきたのは、元の日本――高校卒業すらしていない、現実世界だった。

アラフォーおっさんの週末ダンジョン探検記

ぽっちゃりおっさん
ファンタジー
 ある日、全世界の至る所にダンジョンと呼ばれる異空間が出現した。  そこには人外異形の生命体【魔物】が存在していた。  【魔物】を倒すと魔石を落とす。  魔石には膨大なエネルギーが秘められており、第五次産業革命が起こるほどの衝撃であった。  世は埋蔵金ならぬ、魔石を求めて日々各地のダンジョンを開発していった。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

パーティーを追放されるどころか殺されかけたので、俺はあらゆる物をスキルに変える能力でやり返す

名無し
ファンタジー
 パーティー内で逆境に立たされていたセクトは、固有能力取得による逆転劇を信じていたが、信頼していた仲間に裏切られた上に崖から突き落とされてしまう。近隣で活動していたパーティーのおかげで奇跡的に一命をとりとめたセクトは、かつての仲間たちへの復讐とともに、助けてくれた者たちへの恩返しを誓うのだった。

貧乏冒険者で底辺配信者の生きる希望もないおっさんバズる~庭のFランク(実際はSSSランク)ダンジョンで活動すること15年、最強になりました~

喰寝丸太
ファンタジー
おっさんは経済的に、そして冒険者としても底辺だった。 庭にダンジョンができたが最初のザコがスライムということでFランクダンジョン認定された。 そして18年。 おっさんの実力が白日の下に。 FランクダンジョンはSSSランクだった。 最初のザコ敵はアイアンスライム。 特徴は大量の経験値を持っていて硬い、そして逃げる。 追い詰められると不壊と言われるダンジョンの壁すら溶かす酸を出す。 そんなダンジョンでの15年の月日はおっさんを最強にさせた。 世間から隠されていた最強の化け物がいま世に出る。

処理中です...