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第2章ダンジョンの怪物
13優しさの末路
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「誰か……助けてよ……うっうぅ……」
化け物から攻撃対象に指定された松尾。彼女は恐怖のあまり泣きだしていた。
「……うっ……うぅ」
松尾の泣き声がダンジョン内に響き渡る。
いや、彼女の声だけじゃない,気色悪い化け物の呻(うめ)き声が地下からこちらへと近づいてくるのが分かる。
『アアァアヴヴヴァ……』
ズズズ…………。
その鳴き声と共に松尾の前方部分の地面が少しずつもりあがっていく。
「なんだよあれ……」
俺は思わず声を出してしまった。
なんたって化け物が松尾の手前の地面から、ゆっくりと姿を現したからだ。
頭を捻(ひね)ったり、体を捻(ひね)ったりしてなんとか地中から出ようと必死な様子を見せている。
そのおぞましい光景を目の当たりにして、俺は頭を抱えていた。
俺のせいだ。誘導魔法を使わないでくれって懇願(こんがん)したから……。
――どうしたら彼女を助けられる?
頭を抱えたまま地面を見つめる俺。
その答えに辿り着くまでに、時間はかからなかった。
誘導魔法で指定されないなら自分から化け物の標的になればいいだけだからな。
急いで化け物の注意を引かなきゃ……って、あれ?松尾さんの泣き声が消えてる……。
化け物の姿を見ていたので気がつかなかったが、松尾の泣き声がいつのまにか消えていた。
どうした?恐怖心がなくなったのか?
俺が恐る恐る彼女の方へ視線を向けると、彼女は地面に横たわっていた。
なんで後ろに逃げないんだ。
意味はないかもしれないが気休め程度にはなるのに。
そう思っても彼女は動こうとはしない。
ん?いや、動けないのか!?彼女は……。
――気絶している。
そう。彼女は極度の恐怖心からパニックを引き起こして、意識を失っているのである。
本来ならばそれが一番良いのかもしれない。
意識がない間にHPが『0』になるのだから。
実際に目の当たりにした事がないので、HPが尽きた後にどうなるのかは誰にも分からない。
その恐怖は、計り知れないだろう。
しかし、ダメージを受けた俺はなんとなく感づいていた。
あの痛みは本物だった。HPが尽きた場合は恐らく死ぬ。
このままだと松尾が死んでしまう。
俺の心配をよそに、化け物は地面から抜け出したようである。
トコトコと松尾の元へ近づき、その無数の口から出る舌で太腿(ふともも)辺りを執拗(しつよう)に舐め回していた。
獲物の味見という事だろうか?
汚らしい光景から少し視線を外すと鮫島が映った。
しかし、彼はその様子をただ黙って見ているだけで何もしようとはしない。
俺はその態度が気に食わなかった。
「鮫島君! 松尾さんを早く助けないと!!」
「知るかよ、俺の言う事を聞かなかったそいつが悪いんだろ」
俺の訴えに耳を貸さない鮫島。
ダメだ。鮫島の奴は松尾を助けるつもりが全くないらしい。
俺1人で何とかしないと。
時間はまだ用意されている……らしい。化け物が一向に攻撃を開始しないからな。
もう一度、視線を化け物に集中させた。
するとなんという事だろうか。化け物は口を器用に使って、彼女の制服上着を脱がせようとしていたんだ。
化け物は、きっと松尾の心臓を狙っているんだと思う。
これまでと桁違いの唾液を分泌しているからな。
『アァアアアヴヴヴゥ……』
化け物が鈍い雄叫びをあげた。
ちょうどその時、松尾が着ていたシャツの最後のボタンが外れたんだ。
もう彼女が着ているのは下着のみ……ここまでくれば、心臓を食い散らかす事が可能だろう。
俺の予想通り機械音は進行を開始した。
〈『呪猫(カース・キティ)』の攻撃、『噛み付く』が実行されます〉
攻撃の合図だ。
あどけない表情の松尾めがけて化け物の歯が、彼女の乳房に突き刺さろうとした。
――その瞬間。
⦅コンッ!⦆
化け物の頭に『何か』が当たった。
まぁ『何か』っていうのは石なんだけどさ。俺が投げた石なんだ。
そりゃ怖かったし、化け物に攻撃されるなんていやだったよ。
けど、俺に気をかけてくれた松尾を見捨てる事なんかできないだろ。
「は!……人自体は動けないけど……他の物質は動けるんだな」
化け物は俺が石を投げた事を悟るとこちらを向いて威嚇(いかく)してきたよ。
もちろん俺も最大限の虚勢を張ったけどさ。
――お前の相手は……俺だろ……。
って。
化け物から攻撃対象に指定された松尾。彼女は恐怖のあまり泣きだしていた。
「……うっ……うぅ」
松尾の泣き声がダンジョン内に響き渡る。
いや、彼女の声だけじゃない,気色悪い化け物の呻(うめ)き声が地下からこちらへと近づいてくるのが分かる。
『アアァアヴヴヴァ……』
ズズズ…………。
その鳴き声と共に松尾の前方部分の地面が少しずつもりあがっていく。
「なんだよあれ……」
俺は思わず声を出してしまった。
なんたって化け物が松尾の手前の地面から、ゆっくりと姿を現したからだ。
頭を捻(ひね)ったり、体を捻(ひね)ったりしてなんとか地中から出ようと必死な様子を見せている。
そのおぞましい光景を目の当たりにして、俺は頭を抱えていた。
俺のせいだ。誘導魔法を使わないでくれって懇願(こんがん)したから……。
――どうしたら彼女を助けられる?
頭を抱えたまま地面を見つめる俺。
その答えに辿り着くまでに、時間はかからなかった。
誘導魔法で指定されないなら自分から化け物の標的になればいいだけだからな。
急いで化け物の注意を引かなきゃ……って、あれ?松尾さんの泣き声が消えてる……。
化け物の姿を見ていたので気がつかなかったが、松尾の泣き声がいつのまにか消えていた。
どうした?恐怖心がなくなったのか?
俺が恐る恐る彼女の方へ視線を向けると、彼女は地面に横たわっていた。
なんで後ろに逃げないんだ。
意味はないかもしれないが気休め程度にはなるのに。
そう思っても彼女は動こうとはしない。
ん?いや、動けないのか!?彼女は……。
――気絶している。
そう。彼女は極度の恐怖心からパニックを引き起こして、意識を失っているのである。
本来ならばそれが一番良いのかもしれない。
意識がない間にHPが『0』になるのだから。
実際に目の当たりにした事がないので、HPが尽きた後にどうなるのかは誰にも分からない。
その恐怖は、計り知れないだろう。
しかし、ダメージを受けた俺はなんとなく感づいていた。
あの痛みは本物だった。HPが尽きた場合は恐らく死ぬ。
このままだと松尾が死んでしまう。
俺の心配をよそに、化け物は地面から抜け出したようである。
トコトコと松尾の元へ近づき、その無数の口から出る舌で太腿(ふともも)辺りを執拗(しつよう)に舐め回していた。
獲物の味見という事だろうか?
汚らしい光景から少し視線を外すと鮫島が映った。
しかし、彼はその様子をただ黙って見ているだけで何もしようとはしない。
俺はその態度が気に食わなかった。
「鮫島君! 松尾さんを早く助けないと!!」
「知るかよ、俺の言う事を聞かなかったそいつが悪いんだろ」
俺の訴えに耳を貸さない鮫島。
ダメだ。鮫島の奴は松尾を助けるつもりが全くないらしい。
俺1人で何とかしないと。
時間はまだ用意されている……らしい。化け物が一向に攻撃を開始しないからな。
もう一度、視線を化け物に集中させた。
するとなんという事だろうか。化け物は口を器用に使って、彼女の制服上着を脱がせようとしていたんだ。
化け物は、きっと松尾の心臓を狙っているんだと思う。
これまでと桁違いの唾液を分泌しているからな。
『アァアアアヴヴヴゥ……』
化け物が鈍い雄叫びをあげた。
ちょうどその時、松尾が着ていたシャツの最後のボタンが外れたんだ。
もう彼女が着ているのは下着のみ……ここまでくれば、心臓を食い散らかす事が可能だろう。
俺の予想通り機械音は進行を開始した。
〈『呪猫(カース・キティ)』の攻撃、『噛み付く』が実行されます〉
攻撃の合図だ。
あどけない表情の松尾めがけて化け物の歯が、彼女の乳房に突き刺さろうとした。
――その瞬間。
⦅コンッ!⦆
化け物の頭に『何か』が当たった。
まぁ『何か』っていうのは石なんだけどさ。俺が投げた石なんだ。
そりゃ怖かったし、化け物に攻撃されるなんていやだったよ。
けど、俺に気をかけてくれた松尾を見捨てる事なんかできないだろ。
「は!……人自体は動けないけど……他の物質は動けるんだな」
化け物は俺が石を投げた事を悟るとこちらを向いて威嚇(いかく)してきたよ。
もちろん俺も最大限の虚勢を張ったけどさ。
――お前の相手は……俺だろ……。
って。
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