チートスキルと無限HP!〜いじめられっ子は最弱職業だが、実は地上最強〜

ボルメテウス

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第2章ダンジョンの怪物

14未来への一投

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 やっちまった……。
 だってしょうがないだろ? 体が勝手に動いちゃったんだから。
 今まで俺を虐めてた松尾が、気を使って誘導魔法を使わなかったってさ!凄い嬉しいんだよ。


 それに、今彼女が命の危険に晒(さらさ)されているのは、俺を守ったからなんだ
 そんな人を見捨てる事は出来ない。
 だから、俺は注意を引くために化け物目掛けて石を投げたんだ。例えそれが、死に近づく行為であったとしても構わない。


(なんとか頭に当たってくれたようだけど……さて、ここからどうするか)


 そう、通常ならばこの程度で化け物の気を引く事は出来ない。
 ――はずなのだが。


『ヴヴヴヴヴヴウゥ』


 化け物の様子が急におかしくなった。
 まるで食事を邪魔された時に、怒りを表す猫のようだ。



(あと、もう1発石を投げればいけるか?)


 俺は、足元にある石を拾ったんだけど、それは無意味になっちまった。
 なぜなら、化け物がこっちに向かってきたからだ。


〈ブーッ!〉
〈『呪猫(カース・キティ)は、攻撃対象を『蓮』に変更致しました』〉


 突然響いた機械音に少し驚いてしまったが、すぐに俺の顔はニヤついてしまった。これで彼女を救う事ができる。


 やった。成功したんだ、ってさ。


 たしかに狙い通り松尾は救われた。だが、俺はまたあの苦痛に耐えなくてはならない。


〈『呪猫(カース・ケティ)』は『蓮』に『噛み付く』をした〉


 化け物は先程と同じように、全く同一箇所を噛んできたんだ。
 嫌がらせか?って思ったよ。
 まただ。化け物の多数の口がほくそ笑んでいるように見える。


「そんなに面白いのかよ……」


 本当の試練はここからだ。
 これからまた、あの堪え難い痛みに耐えなければならない。
 俺は歯をガッシリと食いしばって機械音の進行を待った。
 この時間は永遠に思える。しかし、永遠ではないとすぐに体験する事になるのだ。


〈ジジッ!…〉


 来た!機械音が。あの痛みがまたやってくる。俺の顔はまた歪んでしまった。


〈『蓮』に『3500000』のダメージ〉
〈今からダメージをプレイヤーに貫通させます〉


 機械音の後に噛まれた箇所がジワジワと痛くなってくる。
 そして、何回も骨を折られ、火に直接つけられたような痛みや熱を感じるのだ。
 クソ!…またか…


「く、あぁああああぁあああ」


 俺は今、痛みに耐えかねて地面の上でのたうち回っている。これは何度も耐えられるものじゃないぞ。
 でもさ、あいつは笑ってるんだ。それを笑いながら見ているのは鮫島なんだ。


「ハハハハハ!」


(お前は何をそんなに笑っているんだ)


 俺の目は憎しみに満ちている。
 松尾を助けようともしなかった奴が、何笑ってるんだ。
 鮫島は上を向いて笑っているので俺の強烈な視線を感じることはないのだろう。
 何もなかったみたいに軽い調子で話しかけてきた。


「お前もよくやるわ。もしかして松尾のこと好きなのか? ははは」
「違う……」


 ダメだ、この男が憎い。いつまでヘラヘラしているんだ
 松尾の命なんて、お前にとってはどうでもいいのか?


 会話中は特に俺の怒りの眼(まなこ)が目立つみたいだ。
 視線に気づいた鮫島は、雰囲気をかえるために真面目な話に切り替えてきた。


「で、どうするよこの後、奴隷君に何か考えはあるか? 俺は一応、用意して……」
「……あるよ。ねぇ鮫島君、MPを味方に移す『魔法(マジック)』って存在する?」


 俺は昂(たか)ぶる気持ちを抑えきれずに、鮫島の言葉と被せた。
 まだ、俺には攻撃手段が残っている事に気付いたのだ。
 HPがバグっているように他の能力もバグっている可能性がある。


 そう、俺が気になっていた『コマンド』はMPを消費するだ。


「あるけど、そんなんどうするんだ?」
「少し試してみたい事があってね。3人とも助かる方法は、これしか無いと思う」


 俺の力の事は鮫島には濁して伝えた。
 だって、それは存在しないはずの『コマンド』、『呪怨』なんだから
 言ってもどうせ信用してくれない。
 俺はその時、以前に見たコマンドを思い浮かべていた。

 ――――――――――――――――――――――――――
   選択時間:20秒
→ ●物理攻撃
  ●呪怨(じゅおん) ※MPが0のため使用不可
  ●身を守る
  ●アイテム――――――――――――――――――――――――――


 一体何なのか分からないけど、もうこれに頼るしかないか
 あれ?そういえば


 俺は何かを思い出したみたいに鮫島に向かって質問をした。あいつはさっき何かを言おうとしていたんだ。


「そういえば鮫島君! さっき君にも何か考えがあるって言おうとしてたような」
「ん?、いや! 何でもないわ。俺の勘違いだった」
「そうなんだ。 あっ、さっきは被せて話しちゃってごめんね」


 俺が視線を外すと、鮫島は化け物のように口角を上げてニヤついていた。
 今ならわかる。あいつがなんて言っていたかが。
 そう。あの時のあいつの口元はこう動いていた気がする。


「奴隷はお人好しだな」

  
 ――全員で生還できるわけないだろ。
 ってさ。
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