チートスキルと無限HP!〜いじめられっ子は最弱職業だが、実は地上最強〜

ボルメテウス

文字の大きさ
20 / 123
第2章ダンジョンの怪物

19ともだち

しおりを挟む
 俺は希望を瞳に宿していた。これで『呪怨(じゅおん)』が使用できるってさ。
 そのまま高鳴る鼓動を抑えて『コマンド』を選択したんだ。
 俺達の最後の希望を。

――――――――――――――――――――――――――
   選択時間:5秒
  ●物理攻撃
→ ●呪怨(じゅおん) ※MP移譲が行われる予定の為、可能
  ●身を守る
  ●アイテム ――――――――――――――――――――――――――


「頼む……」


 口から自然と漏れ出る願望。
 頼む。これでダメなら他に方法が無いんだ。
 MPを分けてくれた松尾のためにも俺は、成功させなきゃならない。
 そのまま目を瞑(つむ)った。


〈プレイヤー側の選択が終わりましたので、プレイヤーのターンを開始いたします〉


 機械音の言葉が実質的な最後のターンを開始した。
 もうこれ以上、化け物あいつの攻撃を受けきれない。
 次の攻撃を受ければ、俺の意識が飛ぶだろう。


〈プレイヤー『松尾』は、『魔法(マジック)』を選択されましたので実行致します〉
〈『移転魔法(トランス・マジック)』を発動します。効果により『松尾』の『MP値500』を全て『蓮』に移転させます〉


「え?……」



 俺は驚いて彼女の方向を向いてしまった。
『魔道士(メイジ)』である松尾にとって、MPは最重要でだと思う。
 それほど重要なMPを全て分け与えてくれるとは思っていなかったんだ。
 それどころか、俺の慌てた顔を見ると彼女は少し笑っていた。


「あはは。いいのよ、私の全部あげるわ。ずっと化け物の攻撃から庇(かば)ってくれたんでしょ?」
「いいんですか……松尾さん……」
「いいわよ! あとその松尾さんって呼び方やめてよね、これからは火憐(かれん)って呼びなさいよ」
「え、は、はい。火憐(かれん)……さん」
「もう! さん付けはやめてよね!」
「分かったよ火憐(かれん)……」
「ふふっ、それでいいのよ」
「……」


 満面の笑みを浮かべる松尾。学校生活で見る事の無かった表情だ。
 急にどうしたんだろうか、俺を虐めていた時とは全然違う。
 ピリピリとした雰囲気じゃない。優しい表情だ。
 そんな彼女を見ていると調子が狂う。なんて反応すればいいか分からないからだ。
 そのまま何も言えずに黙っていると、彼女の方から会話を続けてきた。


「私の裸見たでしょ?」
「え……」
「ふふっ。分かりやすいリアクションね」
「ごめん」
「まぁ……いいわよ」
「!!?」


「気を失いかけるまで、私の事を庇ってくれたんでしょう? そんなあなたを責める気にはなれないわ」
「……」


 気を失いかけるまでか。確かに俺は、何回も何回も化け物あいつから彼女を守ってきた。
 おかげで俺の周りにはもう石が無い。
 終盤は、靴や腕時計を投げて化け物あいつの注意を引いたんだ。
 俺は、先程までの記憶を辿っていた。
 良くも悪くもこのターンで全てが終わる。いや、違う!
 俺には火憐に伝えなきゃならない事がある。


 それはもし『呪怨(じゅおん)』で化け物あいつを倒せなかった時の事だ。
 俺は声のトーンを変えて、松尾を見つめた。


「ねぇ火憐(かれん)」
「何?……」
「逃げてくれ」
「……え、私だけ逃げろって事?…」


「うん。この状況を変えられないかもしれないんだ。せめて火憐だけでも……確実に……」
「変な事言わないでよ。それに『逃げる』を選んでも、実際に逃げられるとは限らないんじゃない?」
「多分……大丈夫だと思う。鮫島くんがそれで逃げてたから」
「そっか。だから鮫島あいつは居ないのか」


 松尾の表情が険しいものへと変わっていく。仲間に裏切られたのだから無理もない。
 ――たとえ鮫島かれの全てを信用していなくともね。



 落ち込む彼女を見て俺は申し訳なくなった。
 鮫島に裏切られた事は今言うべきじゃなかったかな、って。
 だから、この嫌な雰囲気を変えるためにわざと明るいトーンで彼女に話しかけたんだ。


「ごめん。鮫島かれも、何か考えがあって」
「いいのよ。もともと鮫島の事はあまり信用はしてなかったの! 彼とつるんでいたのは皆から孤立しちゃったのが理由なんだから!!」


 彼女は顔を上げると俺の顔を見つめた。そして再び笑顔をみせたんだ。
 俺が見とれてしまうほどにね。
  

「とりあえず鮫島の事なんてどうでもいいわ。でも、これで私の友達は、あなただけになっちゃったってわけ!」
「へ?……」
「だ・か・ら、あなたが居なくなると困るのよ! 『逃げろ』なんて言わないでよね」
「ありがとう」



 あなたが居なくなると困る。――そんな言葉言われたことなかった。
 俺はゆっくりと化け物の方へ体を向ける。
 化け物を捉えた瞳は、覚悟を決めた獅子(しし)のようだった。


〈プレイヤー『蓮』が『戦う』を選択致しましたので、『呪猫(カース・キティ)』に対する攻撃を始めます〉
〈『蓮』の攻撃、MPを『250』消費して『呪怨(じゅおん)』が実行されます〉


 最後のターンが始まる――。
 俺はそう思った。
しおりを挟む
感想 28

あなたにおすすめの小説

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

『異世界ガチャでユニークスキル全部乗せ!? ポンコツ神と俺の無自覚最強スローライフ』

チャチャ
ファンタジー
> 仕事帰りにファンタジー小説を買った帰り道、不運にも事故死した38歳の男。 気がつくと、目の前には“ポンコツ”と噂される神様がいた——。 「君、うっかり死んじゃったから、異世界に転生させてあげるよ♪」 「スキル? ステータス? もちろんガチャで決めるから!」 最初はブチギレ寸前だったが、引いたスキルはなんと全部ユニーク! 本人は気づいていないが、【超幸運】の持ち主だった! 「冒険? 魔王? いや、俺は村でのんびり暮らしたいんだけど……」 そんな願いとは裏腹に、次々とトラブルに巻き込まれ、無自覚に“最強伝説”を打ち立てていく! 神様のミスで始まった異世界生活。目指すはスローライフ、されど周囲は大騒ぎ! ◆ガチャ転生×最強×スローライフ! 無自覚チートな元おっさんが、今日も異世界でのんびり無双中!

異世界帰りの勇者、今度は現代世界でスキル、魔法を使って、無双するスローライフを送ります!?〜ついでに世界も救います!?〜

沢田美
ファンタジー
かつて“異世界”で魔王を討伐し、八年にわたる冒険を終えた青年・ユキヒロ。 数々の死線を乗り越え、勇者として讃えられた彼が帰ってきたのは、元の日本――高校卒業すらしていない、現実世界だった。

アラフォーおっさんの週末ダンジョン探検記

ぽっちゃりおっさん
ファンタジー
 ある日、全世界の至る所にダンジョンと呼ばれる異空間が出現した。  そこには人外異形の生命体【魔物】が存在していた。  【魔物】を倒すと魔石を落とす。  魔石には膨大なエネルギーが秘められており、第五次産業革命が起こるほどの衝撃であった。  世は埋蔵金ならぬ、魔石を求めて日々各地のダンジョンを開発していった。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

貧乏冒険者で底辺配信者の生きる希望もないおっさんバズる~庭のFランク(実際はSSSランク)ダンジョンで活動すること15年、最強になりました~

喰寝丸太
ファンタジー
おっさんは経済的に、そして冒険者としても底辺だった。 庭にダンジョンができたが最初のザコがスライムということでFランクダンジョン認定された。 そして18年。 おっさんの実力が白日の下に。 FランクダンジョンはSSSランクだった。 最初のザコ敵はアイアンスライム。 特徴は大量の経験値を持っていて硬い、そして逃げる。 追い詰められると不壊と言われるダンジョンの壁すら溶かす酸を出す。 そんなダンジョンでの15年の月日はおっさんを最強にさせた。 世間から隠されていた最強の化け物がいま世に出る。

追放された最強ヒーラーは、美少女令嬢たちとハーレム生活を送る ~公爵令嬢も義妹も幼馴染も俺のことを大好きらしいので一緒の風呂に入ります~

軽井広@北欧美少女 書籍化!
ファンタジー
白魔道師のクリスは、宮廷魔導師団の副団長として、王国の戦争での勝利に貢献してきた。だが、国王の非道な行いに批判的なクリスは、反逆の疑いをかけられ宮廷を追放されてしまう。 そんなクリスに与えられた国からの新たな命令は、逃亡した美少女公爵令嬢を捕らえ、処刑することだった。彼女は敵国との内通を疑われ、王太子との婚約を破棄されていた。だが、無実を訴える公爵令嬢のことを信じ、彼女を助けることに決めるクリス。 クリスは国のためではなく、自分のため、そして自分を頼る少女のために、自らの力を使うことにした。やがて、同じような境遇の少女たちを助け、クリスは彼女たちと暮らすことになる。 一方、クリスのいなくなった王国軍は、隣国との戦争に負けはじめた……。

処理中です...