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第2章ダンジョンの怪物
19ともだち
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俺は希望を瞳に宿していた。これで『呪怨(じゅおん)』が使用できるってさ。
そのまま高鳴る鼓動を抑えて『コマンド』を選択したんだ。
俺達の最後の希望を。
――――――――――――――――――――――――――
選択時間:5秒
●物理攻撃
→ ●呪怨(じゅおん) ※MP移譲が行われる予定の為、可能
●身を守る
●アイテム ――――――――――――――――――――――――――
「頼む……」
口から自然と漏れ出る願望。
頼む。これでダメなら他に方法が無いんだ。
MPを分けてくれた松尾のためにも俺は、成功させなきゃならない。
そのまま目を瞑(つむ)った。
〈プレイヤー側の選択が終わりましたので、プレイヤーのターンを開始いたします〉
機械音の言葉が実質的な最後のターンを開始した。
もうこれ以上、化け物の攻撃を受けきれない。
次の攻撃を受ければ、俺の意識が飛ぶだろう。
〈プレイヤー『松尾』は、『魔法(マジック)』を選択されましたので実行致します〉
〈『移転魔法(トランス・マジック)』を発動します。効果により『松尾』の『MP値500』を全て『蓮』に移転させます〉
「え?……」
俺は驚いて彼女の方向を向いてしまった。
『魔道士(メイジ)』である松尾にとって、MPは最重要でだと思う。
それほど重要なMPを全て分け与えてくれるとは思っていなかったんだ。
それどころか、俺の慌てた顔を見ると彼女は少し笑っていた。
「あはは。いいのよ、私の全部あげるわ。ずっと化け物の攻撃から庇(かば)ってくれたんでしょ?」
「いいんですか……松尾さん……」
「いいわよ! あとその松尾さんって呼び方やめてよね、これからは火憐(かれん)って呼びなさいよ」
「え、は、はい。火憐(かれん)……さん」
「もう! さん付けはやめてよね!」
「分かったよ火憐(かれん)……」
「ふふっ、それでいいのよ」
「……」
満面の笑みを浮かべる松尾。学校生活で見る事の無かった表情だ。
急にどうしたんだろうか、俺を虐めていた時とは全然違う。
ピリピリとした雰囲気じゃない。優しい表情だ。
そんな彼女を見ていると調子が狂う。なんて反応すればいいか分からないからだ。
そのまま何も言えずに黙っていると、彼女の方から会話を続けてきた。
「私の裸見たでしょ?」
「え……」
「ふふっ。分かりやすいリアクションね」
「ごめん」
「まぁ……いいわよ」
「!!?」
「気を失いかけるまで、私の事を庇ってくれたんでしょう? そんなあなたを責める気にはなれないわ」
「……」
気を失いかけるまでか。確かに俺は、何回も何回も化け物から彼女を守ってきた。
おかげで俺の周りにはもう石が無い。
終盤は、靴や腕時計を投げて化け物の注意を引いたんだ。
俺は、先程までの記憶を辿っていた。
良くも悪くもこのターンで全てが終わる。いや、違う!
俺には火憐に伝えなきゃならない事がある。
それはもし『呪怨(じゅおん)』で化け物を倒せなかった時の事だ。
俺は声のトーンを変えて、松尾を見つめた。
「ねぇ火憐(かれん)」
「何?……」
「逃げてくれ」
「……え、私だけ逃げろって事?…」
「うん。この状況を変えられないかもしれないんだ。せめて火憐だけでも……確実に……」
「変な事言わないでよ。それに『逃げる』を選んでも、実際に逃げられるとは限らないんじゃない?」
「多分……大丈夫だと思う。鮫島くんがそれで逃げてたから」
「そっか。だから鮫島は居ないのか」
松尾の表情が険しいものへと変わっていく。仲間に裏切られたのだから無理もない。
――たとえ鮫島の全てを信用していなくともね。
落ち込む彼女を見て俺は申し訳なくなった。
鮫島に裏切られた事は今言うべきじゃなかったかな、って。
だから、この嫌な雰囲気を変えるためにわざと明るいトーンで彼女に話しかけたんだ。
「ごめん。鮫島も、何か考えがあって」
「いいのよ。もともと鮫島の事はあまり信用はしてなかったの! 彼とつるんでいたのは皆から孤立しちゃったのが理由なんだから!!」
彼女は顔を上げると俺の顔を見つめた。そして再び笑顔をみせたんだ。
俺が見とれてしまうほどにね。
「とりあえず鮫島の事なんてどうでもいいわ。でも、これで私の友達は、蓮だけになっちゃったってわけ!」
「へ?……」
「だ・か・ら、あなたが居なくなると困るのよ! 『逃げろ』なんて言わないでよね」
「ありがとう」
あなたが居なくなると困る。――そんな言葉言われたことなかった。
俺はゆっくりと化け物の方へ体を向ける。
化け物を捉えた瞳は、覚悟を決めた獅子(しし)のようだった。
〈プレイヤー『蓮』が『戦う』を選択致しましたので、『呪猫(カース・キティ)』に対する攻撃を始めます〉
〈『蓮』の攻撃、MPを『250』消費して『呪怨(じゅおん)』が実行されます〉
最後のターンが始まる――。
俺はそう思った。
そのまま高鳴る鼓動を抑えて『コマンド』を選択したんだ。
俺達の最後の希望を。
――――――――――――――――――――――――――
選択時間:5秒
●物理攻撃
→ ●呪怨(じゅおん) ※MP移譲が行われる予定の為、可能
●身を守る
●アイテム ――――――――――――――――――――――――――
「頼む……」
口から自然と漏れ出る願望。
頼む。これでダメなら他に方法が無いんだ。
MPを分けてくれた松尾のためにも俺は、成功させなきゃならない。
そのまま目を瞑(つむ)った。
〈プレイヤー側の選択が終わりましたので、プレイヤーのターンを開始いたします〉
機械音の言葉が実質的な最後のターンを開始した。
もうこれ以上、化け物の攻撃を受けきれない。
次の攻撃を受ければ、俺の意識が飛ぶだろう。
〈プレイヤー『松尾』は、『魔法(マジック)』を選択されましたので実行致します〉
〈『移転魔法(トランス・マジック)』を発動します。効果により『松尾』の『MP値500』を全て『蓮』に移転させます〉
「え?……」
俺は驚いて彼女の方向を向いてしまった。
『魔道士(メイジ)』である松尾にとって、MPは最重要でだと思う。
それほど重要なMPを全て分け与えてくれるとは思っていなかったんだ。
それどころか、俺の慌てた顔を見ると彼女は少し笑っていた。
「あはは。いいのよ、私の全部あげるわ。ずっと化け物の攻撃から庇(かば)ってくれたんでしょ?」
「いいんですか……松尾さん……」
「いいわよ! あとその松尾さんって呼び方やめてよね、これからは火憐(かれん)って呼びなさいよ」
「え、は、はい。火憐(かれん)……さん」
「もう! さん付けはやめてよね!」
「分かったよ火憐(かれん)……」
「ふふっ、それでいいのよ」
「……」
満面の笑みを浮かべる松尾。学校生活で見る事の無かった表情だ。
急にどうしたんだろうか、俺を虐めていた時とは全然違う。
ピリピリとした雰囲気じゃない。優しい表情だ。
そんな彼女を見ていると調子が狂う。なんて反応すればいいか分からないからだ。
そのまま何も言えずに黙っていると、彼女の方から会話を続けてきた。
「私の裸見たでしょ?」
「え……」
「ふふっ。分かりやすいリアクションね」
「ごめん」
「まぁ……いいわよ」
「!!?」
「気を失いかけるまで、私の事を庇ってくれたんでしょう? そんなあなたを責める気にはなれないわ」
「……」
気を失いかけるまでか。確かに俺は、何回も何回も化け物から彼女を守ってきた。
おかげで俺の周りにはもう石が無い。
終盤は、靴や腕時計を投げて化け物の注意を引いたんだ。
俺は、先程までの記憶を辿っていた。
良くも悪くもこのターンで全てが終わる。いや、違う!
俺には火憐に伝えなきゃならない事がある。
それはもし『呪怨(じゅおん)』で化け物を倒せなかった時の事だ。
俺は声のトーンを変えて、松尾を見つめた。
「ねぇ火憐(かれん)」
「何?……」
「逃げてくれ」
「……え、私だけ逃げろって事?…」
「うん。この状況を変えられないかもしれないんだ。せめて火憐だけでも……確実に……」
「変な事言わないでよ。それに『逃げる』を選んでも、実際に逃げられるとは限らないんじゃない?」
「多分……大丈夫だと思う。鮫島くんがそれで逃げてたから」
「そっか。だから鮫島は居ないのか」
松尾の表情が険しいものへと変わっていく。仲間に裏切られたのだから無理もない。
――たとえ鮫島の全てを信用していなくともね。
落ち込む彼女を見て俺は申し訳なくなった。
鮫島に裏切られた事は今言うべきじゃなかったかな、って。
だから、この嫌な雰囲気を変えるためにわざと明るいトーンで彼女に話しかけたんだ。
「ごめん。鮫島も、何か考えがあって」
「いいのよ。もともと鮫島の事はあまり信用はしてなかったの! 彼とつるんでいたのは皆から孤立しちゃったのが理由なんだから!!」
彼女は顔を上げると俺の顔を見つめた。そして再び笑顔をみせたんだ。
俺が見とれてしまうほどにね。
「とりあえず鮫島の事なんてどうでもいいわ。でも、これで私の友達は、蓮だけになっちゃったってわけ!」
「へ?……」
「だ・か・ら、あなたが居なくなると困るのよ! 『逃げろ』なんて言わないでよね」
「ありがとう」
あなたが居なくなると困る。――そんな言葉言われたことなかった。
俺はゆっくりと化け物の方へ体を向ける。
化け物を捉えた瞳は、覚悟を決めた獅子(しし)のようだった。
〈プレイヤー『蓮』が『戦う』を選択致しましたので、『呪猫(カース・キティ)』に対する攻撃を始めます〉
〈『蓮』の攻撃、MPを『250』消費して『呪怨(じゅおん)』が実行されます〉
最後のターンが始まる――。
俺はそう思った。
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