21 / 123
第2章ダンジョンの怪物
20希望の光
しおりを挟む
最後のターンが始まってしまった。遂に俺達は最後の賭けにでる。
あの化け猫を倒せるかもしれない。そんな局面へと。
残された希望は俺が有していた謎のコマンド『呪怨(じゅおん)』しかないけどさ。あるだけマシだ。
そう、これはあくまでも可能性にすぎない。
化け物に有効なダメージを与えられないかもしれないんだ。
こんな博打みたいな事に命を託すなんてな。
俺は微(かす)かな希望を胸に、火憐の方を見つめた。
もうこれで最後かもしれない。そう思うと一目だけでも見たかったんだ。
俺を信用してくれた彼女を。
そんな彼女は心配そうに俺を見つめていたんだ。
逃げないって言ってくれたけどさ。
火憐も怖いんだろう、これから先の不安定な未来が。
でも、心配しなくていいよ。もしダメなら火憐に逃げてもらうつもりだから。
こんな場所で死ぬのは俺だけでいい。
俺は火憐を見つめ返して微笑(ほほえ)んだ。
これで最期だったとしても悔いはない。火憐が優しさを教えてくれたから。
逃げ出さず俺に協力してくれた。それだけで十分だ。
「どうしたのよ?……蓮……」
「……」
俺が無言でが微笑み返したその時。機械音が、俺達の最期の攻撃を告げた。
〈ジジッ……〉
〈『呪怨(じゅおん)』を……実……行致……しま………す〉
ノイズが強くかかった不吉な音声。その音声の後に、周りが一斉に暗くなった。何も見えない……深淵へと……。
スゥゥゥゥゥゥ……。
松明の光も何も感じる事のできない漆黒の闇。状況が分からない。
でも、音だけは聞こえるんだ。
すぐに火憐(かれん)が震える声を出しているのが分かった。
「ちょっと蓮。あなた何したのよ」
「……ごめん。自分でもよく分からないんだ」
「そうなの。でも、まだ私達は生きているわ」
「そう。問題はこれから何が起きるかだね」
「……」
「……」
極限の緊張で俺達は2人とも言葉が出なくなっていた。
視界が真っ暗になって何も分からないし、前方から化け物の呻(うめ)き声が聞こえる。
『アゥゥゥヴヴア!』
「……」
「……」
そんな状況で気軽に会話なんか出来るわけない。
出来ることと言えばせいぜい生唾(なまつば)を飲むくらいだよ。
でもさすぐに会話が出来るようになったんだ。
ん?なぜかって?それは沈黙が少し経った後、機械音が教えてくれたからだよ。
もう終わりだ、ってさ。
〈ジジッ……〉
〈……戦闘を……終了……致しま……す……〉
「「え?……」」
突然の機械音。突然の戦闘終了の知らせ。
それは暗闇の中の俺達を混乱させた。
「火憐(かれん)聞こえた? 今の機械音」
「えぇ……聞こえたけど。本当に終わったの? まだ何も見えないわ」
「俺もだ。まだ何も見えない」
「……」
彼女の言う通りだ。
機械音は戦闘終了を告げたが、まだ視界は奪われたまま。
本当に安心できるのか分からない。ましてや、化け物の呻(うめ)き声が聞こえるんだから。
『アヴヴアアア!』
「ちょっと蓮。化け物まだ近くにいるみたいよ」
「いや、大丈夫だ火憐。呻(うめ)き声の方向を見てくれ」
「何よ! 何も見えないじゃない!!」
「そう。だから大丈夫なんだ」
「え?……どう言う事?……」
「前までは見えてたじゃないか。化け物のステータスが」
「……あっほんとだ。消えてる」
その声は恐怖ではなく安堵(あんど)の感情を表していた。
声を聞いて分かったよ。火憐も戦闘が終了したって気がついたみたいだ。
そう思った理由は簡単さ。見えなくなっていたんだ。
化け物のステータスが。
でもこれだけじゃ足りない。
俺は『戦闘が終了した』という確証がどうしても欲しかったんだ。
だから彼女に叫んだ。
「火憐(かれん)! 何でもいいから音を出し続けて!!」
「音?……分かったわ、ちょっと待って」
【カッカッカッ……】
石と石とがぶつかり合う音が響く。
「これでいいかしら! 何故か分からないけど足元にいっぱい石が転がっていたの!!」
「うん。これでいいよ。ありがとう!」
「教えてよ。何するつもり?」
「内緒。静かにしてて」
「うん。分かった」
「……」
【カッカッカッ……】
石がぶつかり合う音。俺はその方向に向かっていたんだ。
本当に戦闘が終了したならさ、自由に動けるはずなんだから。
少し歩くと音の鳴るすぐ側(そば)まで来れた。あとはゆっくりと手を伸ばすだけだ。
ゆっくり……ゆっくりと音の鳴る方へ。
ガッ!
そして俺は手を掴んだんだ。音を鳴らしている主。火憐の手をね。
「キャッ!……」
「驚いた?」
「その声は……蓮?」
「そうだよ。早く逃げよう。俺がここまで来れたって事はさ。本当に戦いは終わったんだ」
「終わったのね。うっ……」
「泣いてるの?」
「うっ……違うわよ……私が泣くわけないでしょ」
「そっか。あ! 1箇所だけ明るくなってる箇所があるよ!」
「ど……どこ?」
「こっちだよ。ほら、ついてきて」
「うん……」
「……」
俺は火憐の手を握ったまま歩き出した。微(かす)かな灯(あか)りが見える方へとね。まるでそれは希望の光のようだった。
「蓮……」
「……うん」
歩いている最中(さなか)、彼女は震える体を俺に押し付けてきた。
それに応えるように俺は手を強く握ったんだ。
■□■□■□
コツコツコツ……。
そのまま歩いていくと、松明(たいまつ)が辺りを照らす空間にたどり着いた。
そう。この場所は俺達がいるこの場所は、何も変わっちゃいない。ダンジョンの中だった。
そして暗闇から抜け出すと一気に力が抜けたんだ。
「本当に……終わったのね」
「そうだね。何かもう……すごい疲れた……」
「私も……」
「……」
ズズズ……。
俺達は2人して肩を寄せ合いながら、地面に倒れていった。
疲れているんだ。精神的にも肉体的にも。
松尾なんか俺の肩に頭を乗せて眠り出したほどなんだぞ。
「眠い……」
「寝ないでよ? まだ後ろの暗闇から、アイツが来るかもしれないんだから」
「分かってるわよ……だけど、もう少しこうさせて」
「はいはい」
松尾が休憩している間、俺は後方の暗闇を見ていた。
実を言うと、まだ暗闇が晴れていないんだ。
ダンジョンをこれ以上進むには、暗闇を通る必要がある。
幸(さいわ)いな事に、出口へと通じるルートには暗闇はかかっていないけどね。
でも、余計に分からなくなった。『呪怨(じゅおん)』の効果とは一体何なのだろうか?
疑問が深まる中、暗闇の中から聞き覚えのある鳴き声が聞こえた。
『アアアアヴヴァ』
化け物の声。まだ暗闇の中にいるみたいだ。
俺が渋い顔をすると、ちょうど松尾の顔が俺の胸へと移動してきた。
彼女も化け物の鳴き声が聞こえたんだろう。体を震わせていたんだ。
「蓮。さっきのやつまだいるの?……」
「そうみたいだね。でも、様子がおかしい」
そう。化け物の様子がおかしい。
化け物はまだ、暗闇の中で何かと戦っているみたいなんだ……呻(うめ)き声を上げて何かに向かって吠えている。
俺の直感は正しかった。
後で分かった事だが『呪怨(じゅおん)』の効果とは相手に幻を見せる事。
そしてそれを囮として戦闘を強制終了させる事だからだ。なので化け物はまだ暗闇の中で戦っている。
――実態のない幻と、終わりのない争いを。
しかし『呪怨(じゅおん)』の効果を知らない俺達は、万が一に備えてその場から離れようとしていた。
「火憐(かれん)、もう大丈夫か?」
「うん。なんとか立てる」
「少し暗闇から離れよう」
「……分かったわ」
松尾の肩を支えながらゆっくりと出口の方へ進んだ。
唇を噛みながらダンジョンから出る事を決意したんだ。
なぜ唇を噛むのかって?氷華の捜索を断念せざるを得ないからだよ!
俺だって本当はこのまま氷華を探し続けたい。
でも奥に進む体力はないんだ!
いや、出口に辿り着ける体力すらないかもしれない。
はっ……今、化け物に出くわしたら終わりだな。
俺がそう思った瞬間だった。
洞穴の大きな一本道からではなく、無数にある小さな横道の1つ。
その中から、ガシャンガシャンという音が聞こえたのだ。
「火憐。今の音聞こえたか? 俺が足止めするから早く逃げ……むぐっ!?……」
俺の言葉の途中で、火憐が口を両手で塞いだんだ。怒った様子で口を膨らませながらね。
「さっきも言ったでしょ。逃げろなんて言わないでって!」
「……はは…そうだったな」
俺は馬鹿だった。
彼女の目は真剣そのものだったんだ。
「次それ言ったら、殴るからね!」
「もう二度と言わないから、大丈夫だよ。それより……」
「うん。分かってるわ。音が近づいてくる」
「……」
コツ……。
俺達は、音の方向に注意して足を止めた。
するとすぐに、横穴からあれが出てきたんだ。
「「え?」」
【ガシャン!ガシャン!ガシャン!】
鉄と鉄が擦(こす)れる音。その金属音を響かせながら近づいてくる。その正体は全身武装した騎士だったんだ。
体全てが鎧に覆(おお)われ、まるで中世の騎士のような姿。
いやそれだけではない。大剣が背中に装備されている。
理解が追いつかない俺達。そんな状況で、先に言葉を発したのは火憐であった。
「あれ?敵なのかしら?」
「……さぁ? 俺には何とも」
敵なのかは分からない。ただこちらに近づいてくる事は確かだ。
俺達は騎士相手に身構えて戦闘に備えた。
しかしあれは敵じゃなかったんだ。いや、むしろ仲間だったんだ。
騎士は身構える俺達を見ると立ち止まって声をかけてきた。
「蓮じゃん! もうこんな奥まで来たんだ」ってさ。
この声の主を俺は知っている。
あの騎士は氷華だ。
あの化け猫を倒せるかもしれない。そんな局面へと。
残された希望は俺が有していた謎のコマンド『呪怨(じゅおん)』しかないけどさ。あるだけマシだ。
そう、これはあくまでも可能性にすぎない。
化け物に有効なダメージを与えられないかもしれないんだ。
こんな博打みたいな事に命を託すなんてな。
俺は微(かす)かな希望を胸に、火憐の方を見つめた。
もうこれで最後かもしれない。そう思うと一目だけでも見たかったんだ。
俺を信用してくれた彼女を。
そんな彼女は心配そうに俺を見つめていたんだ。
逃げないって言ってくれたけどさ。
火憐も怖いんだろう、これから先の不安定な未来が。
でも、心配しなくていいよ。もしダメなら火憐に逃げてもらうつもりだから。
こんな場所で死ぬのは俺だけでいい。
俺は火憐を見つめ返して微笑(ほほえ)んだ。
これで最期だったとしても悔いはない。火憐が優しさを教えてくれたから。
逃げ出さず俺に協力してくれた。それだけで十分だ。
「どうしたのよ?……蓮……」
「……」
俺が無言でが微笑み返したその時。機械音が、俺達の最期の攻撃を告げた。
〈ジジッ……〉
〈『呪怨(じゅおん)』を……実……行致……しま………す〉
ノイズが強くかかった不吉な音声。その音声の後に、周りが一斉に暗くなった。何も見えない……深淵へと……。
スゥゥゥゥゥゥ……。
松明の光も何も感じる事のできない漆黒の闇。状況が分からない。
でも、音だけは聞こえるんだ。
すぐに火憐(かれん)が震える声を出しているのが分かった。
「ちょっと蓮。あなた何したのよ」
「……ごめん。自分でもよく分からないんだ」
「そうなの。でも、まだ私達は生きているわ」
「そう。問題はこれから何が起きるかだね」
「……」
「……」
極限の緊張で俺達は2人とも言葉が出なくなっていた。
視界が真っ暗になって何も分からないし、前方から化け物の呻(うめ)き声が聞こえる。
『アゥゥゥヴヴア!』
「……」
「……」
そんな状況で気軽に会話なんか出来るわけない。
出来ることと言えばせいぜい生唾(なまつば)を飲むくらいだよ。
でもさすぐに会話が出来るようになったんだ。
ん?なぜかって?それは沈黙が少し経った後、機械音が教えてくれたからだよ。
もう終わりだ、ってさ。
〈ジジッ……〉
〈……戦闘を……終了……致しま……す……〉
「「え?……」」
突然の機械音。突然の戦闘終了の知らせ。
それは暗闇の中の俺達を混乱させた。
「火憐(かれん)聞こえた? 今の機械音」
「えぇ……聞こえたけど。本当に終わったの? まだ何も見えないわ」
「俺もだ。まだ何も見えない」
「……」
彼女の言う通りだ。
機械音は戦闘終了を告げたが、まだ視界は奪われたまま。
本当に安心できるのか分からない。ましてや、化け物の呻(うめ)き声が聞こえるんだから。
『アヴヴアアア!』
「ちょっと蓮。化け物まだ近くにいるみたいよ」
「いや、大丈夫だ火憐。呻(うめ)き声の方向を見てくれ」
「何よ! 何も見えないじゃない!!」
「そう。だから大丈夫なんだ」
「え?……どう言う事?……」
「前までは見えてたじゃないか。化け物のステータスが」
「……あっほんとだ。消えてる」
その声は恐怖ではなく安堵(あんど)の感情を表していた。
声を聞いて分かったよ。火憐も戦闘が終了したって気がついたみたいだ。
そう思った理由は簡単さ。見えなくなっていたんだ。
化け物のステータスが。
でもこれだけじゃ足りない。
俺は『戦闘が終了した』という確証がどうしても欲しかったんだ。
だから彼女に叫んだ。
「火憐(かれん)! 何でもいいから音を出し続けて!!」
「音?……分かったわ、ちょっと待って」
【カッカッカッ……】
石と石とがぶつかり合う音が響く。
「これでいいかしら! 何故か分からないけど足元にいっぱい石が転がっていたの!!」
「うん。これでいいよ。ありがとう!」
「教えてよ。何するつもり?」
「内緒。静かにしてて」
「うん。分かった」
「……」
【カッカッカッ……】
石がぶつかり合う音。俺はその方向に向かっていたんだ。
本当に戦闘が終了したならさ、自由に動けるはずなんだから。
少し歩くと音の鳴るすぐ側(そば)まで来れた。あとはゆっくりと手を伸ばすだけだ。
ゆっくり……ゆっくりと音の鳴る方へ。
ガッ!
そして俺は手を掴んだんだ。音を鳴らしている主。火憐の手をね。
「キャッ!……」
「驚いた?」
「その声は……蓮?」
「そうだよ。早く逃げよう。俺がここまで来れたって事はさ。本当に戦いは終わったんだ」
「終わったのね。うっ……」
「泣いてるの?」
「うっ……違うわよ……私が泣くわけないでしょ」
「そっか。あ! 1箇所だけ明るくなってる箇所があるよ!」
「ど……どこ?」
「こっちだよ。ほら、ついてきて」
「うん……」
「……」
俺は火憐の手を握ったまま歩き出した。微(かす)かな灯(あか)りが見える方へとね。まるでそれは希望の光のようだった。
「蓮……」
「……うん」
歩いている最中(さなか)、彼女は震える体を俺に押し付けてきた。
それに応えるように俺は手を強く握ったんだ。
■□■□■□
コツコツコツ……。
そのまま歩いていくと、松明(たいまつ)が辺りを照らす空間にたどり着いた。
そう。この場所は俺達がいるこの場所は、何も変わっちゃいない。ダンジョンの中だった。
そして暗闇から抜け出すと一気に力が抜けたんだ。
「本当に……終わったのね」
「そうだね。何かもう……すごい疲れた……」
「私も……」
「……」
ズズズ……。
俺達は2人して肩を寄せ合いながら、地面に倒れていった。
疲れているんだ。精神的にも肉体的にも。
松尾なんか俺の肩に頭を乗せて眠り出したほどなんだぞ。
「眠い……」
「寝ないでよ? まだ後ろの暗闇から、アイツが来るかもしれないんだから」
「分かってるわよ……だけど、もう少しこうさせて」
「はいはい」
松尾が休憩している間、俺は後方の暗闇を見ていた。
実を言うと、まだ暗闇が晴れていないんだ。
ダンジョンをこれ以上進むには、暗闇を通る必要がある。
幸(さいわ)いな事に、出口へと通じるルートには暗闇はかかっていないけどね。
でも、余計に分からなくなった。『呪怨(じゅおん)』の効果とは一体何なのだろうか?
疑問が深まる中、暗闇の中から聞き覚えのある鳴き声が聞こえた。
『アアアアヴヴァ』
化け物の声。まだ暗闇の中にいるみたいだ。
俺が渋い顔をすると、ちょうど松尾の顔が俺の胸へと移動してきた。
彼女も化け物の鳴き声が聞こえたんだろう。体を震わせていたんだ。
「蓮。さっきのやつまだいるの?……」
「そうみたいだね。でも、様子がおかしい」
そう。化け物の様子がおかしい。
化け物はまだ、暗闇の中で何かと戦っているみたいなんだ……呻(うめ)き声を上げて何かに向かって吠えている。
俺の直感は正しかった。
後で分かった事だが『呪怨(じゅおん)』の効果とは相手に幻を見せる事。
そしてそれを囮として戦闘を強制終了させる事だからだ。なので化け物はまだ暗闇の中で戦っている。
――実態のない幻と、終わりのない争いを。
しかし『呪怨(じゅおん)』の効果を知らない俺達は、万が一に備えてその場から離れようとしていた。
「火憐(かれん)、もう大丈夫か?」
「うん。なんとか立てる」
「少し暗闇から離れよう」
「……分かったわ」
松尾の肩を支えながらゆっくりと出口の方へ進んだ。
唇を噛みながらダンジョンから出る事を決意したんだ。
なぜ唇を噛むのかって?氷華の捜索を断念せざるを得ないからだよ!
俺だって本当はこのまま氷華を探し続けたい。
でも奥に進む体力はないんだ!
いや、出口に辿り着ける体力すらないかもしれない。
はっ……今、化け物に出くわしたら終わりだな。
俺がそう思った瞬間だった。
洞穴の大きな一本道からではなく、無数にある小さな横道の1つ。
その中から、ガシャンガシャンという音が聞こえたのだ。
「火憐。今の音聞こえたか? 俺が足止めするから早く逃げ……むぐっ!?……」
俺の言葉の途中で、火憐が口を両手で塞いだんだ。怒った様子で口を膨らませながらね。
「さっきも言ったでしょ。逃げろなんて言わないでって!」
「……はは…そうだったな」
俺は馬鹿だった。
彼女の目は真剣そのものだったんだ。
「次それ言ったら、殴るからね!」
「もう二度と言わないから、大丈夫だよ。それより……」
「うん。分かってるわ。音が近づいてくる」
「……」
コツ……。
俺達は、音の方向に注意して足を止めた。
するとすぐに、横穴からあれが出てきたんだ。
「「え?」」
【ガシャン!ガシャン!ガシャン!】
鉄と鉄が擦(こす)れる音。その金属音を響かせながら近づいてくる。その正体は全身武装した騎士だったんだ。
体全てが鎧に覆(おお)われ、まるで中世の騎士のような姿。
いやそれだけではない。大剣が背中に装備されている。
理解が追いつかない俺達。そんな状況で、先に言葉を発したのは火憐であった。
「あれ?敵なのかしら?」
「……さぁ? 俺には何とも」
敵なのかは分からない。ただこちらに近づいてくる事は確かだ。
俺達は騎士相手に身構えて戦闘に備えた。
しかしあれは敵じゃなかったんだ。いや、むしろ仲間だったんだ。
騎士は身構える俺達を見ると立ち止まって声をかけてきた。
「蓮じゃん! もうこんな奥まで来たんだ」ってさ。
この声の主を俺は知っている。
あの騎士は氷華だ。
0
あなたにおすすめの小説
最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~
ある中管理職
ファンタジー
勤続10年目10度目のレベルアップ。
人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。
すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。
なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。
チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。
探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。
万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。
『異世界ガチャでユニークスキル全部乗せ!? ポンコツ神と俺の無自覚最強スローライフ』
チャチャ
ファンタジー
> 仕事帰りにファンタジー小説を買った帰り道、不運にも事故死した38歳の男。
気がつくと、目の前には“ポンコツ”と噂される神様がいた——。
「君、うっかり死んじゃったから、異世界に転生させてあげるよ♪」
「スキル? ステータス? もちろんガチャで決めるから!」
最初はブチギレ寸前だったが、引いたスキルはなんと全部ユニーク!
本人は気づいていないが、【超幸運】の持ち主だった!
「冒険? 魔王? いや、俺は村でのんびり暮らしたいんだけど……」
そんな願いとは裏腹に、次々とトラブルに巻き込まれ、無自覚に“最強伝説”を打ち立てていく!
神様のミスで始まった異世界生活。目指すはスローライフ、されど周囲は大騒ぎ!
◆ガチャ転生×最強×スローライフ!
無自覚チートな元おっさんが、今日も異世界でのんびり無双中!
異世界帰りの勇者、今度は現代世界でスキル、魔法を使って、無双するスローライフを送ります!?〜ついでに世界も救います!?〜
沢田美
ファンタジー
かつて“異世界”で魔王を討伐し、八年にわたる冒険を終えた青年・ユキヒロ。
数々の死線を乗り越え、勇者として讃えられた彼が帰ってきたのは、元の日本――高校卒業すらしていない、現実世界だった。
アラフォーおっさんの週末ダンジョン探検記
ぽっちゃりおっさん
ファンタジー
ある日、全世界の至る所にダンジョンと呼ばれる異空間が出現した。
そこには人外異形の生命体【魔物】が存在していた。
【魔物】を倒すと魔石を落とす。
魔石には膨大なエネルギーが秘められており、第五次産業革命が起こるほどの衝撃であった。
世は埋蔵金ならぬ、魔石を求めて日々各地のダンジョンを開発していった。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
パーティーを追放されるどころか殺されかけたので、俺はあらゆる物をスキルに変える能力でやり返す
名無し
ファンタジー
パーティー内で逆境に立たされていたセクトは、固有能力取得による逆転劇を信じていたが、信頼していた仲間に裏切られた上に崖から突き落とされてしまう。近隣で活動していたパーティーのおかげで奇跡的に一命をとりとめたセクトは、かつての仲間たちへの復讐とともに、助けてくれた者たちへの恩返しを誓うのだった。
貧乏冒険者で底辺配信者の生きる希望もないおっさんバズる~庭のFランク(実際はSSSランク)ダンジョンで活動すること15年、最強になりました~
喰寝丸太
ファンタジー
おっさんは経済的に、そして冒険者としても底辺だった。
庭にダンジョンができたが最初のザコがスライムということでFランクダンジョン認定された。
そして18年。
おっさんの実力が白日の下に。
FランクダンジョンはSSSランクだった。
最初のザコ敵はアイアンスライム。
特徴は大量の経験値を持っていて硬い、そして逃げる。
追い詰められると不壊と言われるダンジョンの壁すら溶かす酸を出す。
そんなダンジョンでの15年の月日はおっさんを最強にさせた。
世間から隠されていた最強の化け物がいま世に出る。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる