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第3章覚醒の刻
29来訪者
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松明の灯りだけがほのかに照らす薄暗い洞穴。化け物を倒したばかりの俺と火憐はそこに依然としていたんだ。
そしてそこに、けたたましい戦車の走行音が近づいてきていた。
【キュララララ】
もの凄い音だ。耳の鼓膜が破れるかと思うほどの大音量。火憐の方を見ると両耳を抑えて地面にうずくまっていた。
「大丈夫か!」
「う、うん。でも何この音!」
「分からない!」
大声を張り上げてやっと相手に届くかどうかである。それほどに戦車から発する音は大きかったのだ。
恐らく、複数の戦車が用意されているのだろう。一台だけでこの爆音は考えにくい。
でも、なぜ戦車が大群でダンジョン内に入るのか理解できない。
確かにダンジョンの調査と言われれば、その通りかもしれないが先発隊が全滅しているの可能性もあるのだ。
それでもダンジョンに入り込むというのは、相当の理由があるとみて良いだろう。
戦車のエンジン音が鳴り響く方向に目を向けると、砂煙を立ててこちらに前進してくる戦車部隊が見えてくる。
10台程であろうか。
緑色をした戦車が綺麗な一列になって直進する。
【キュラララ、ラ……】
戦車は俺たちの元へ近づくと停止し、中から自衛隊の隊員と思しき人物が戦車上方から出てきた。
緑色のヘルメット、緑色の軍服を着用しているその人物は階級の高い人物のように思える。
胸辺りには勲章のような貴金属がひかり、顔つきも老人であるが立派な髭を加えており、とてもじゃないが一般兵には見えない。
こんな人相手に話すのなんて初めてだ。どんなふうに対応したら良いか分からない。
俺は右往左往してから結局、敬礼をする事に落ち着く。
それを見た高齢な自衛官も敬礼を返してくれた。
「君達! 怪我はないかね?」
「俺は大丈夫です。けど、後ろにいる女の子が怪我をしてます」
「ほう……分かった。ちょっと待ってくれ」
その自衛官は優しく微笑むと顔を下に向け、トランシーバーに向かって声を出した。
「医療部隊! 前方の女性を救出せよ!」
「イエッサー!」
戦車内から聞こえる無数の声。何の目的でダンジョンに侵入したのかは分からないが、火憐の治療を請け負ってくれるようで安心した。
すぐに後方の戦車群から、数人の自衛官が出てこちらに向かってきた。
火憐の事はひとまずこれで安心だろう。
ひと段落ついた、と感じた俺は高齢な自衛官にダンジョンに侵入している理由について質問した。
「自衛官のおじさん!」
「ん? なんだい?」
「どうして、ダンジョンに入ってるんですか?」
「……ダンジョンを封印するためじゃよ」
「え?」
「先程、政府からの通達で、ダンジョンを封印する事が正式に決定したんじゃ。そうじゃ! お主も協力せんか」
「俺が……ですか……?」
「もちろんじゃ。政府は一般市民の中からもダンジョン攻略部隊として募集を募るらしいでな。あっ、儂は本作戦の自衛隊第一軍を任されておる大将『石黒』じゃ」
「はぁ」
俺は困惑の表情を見せていた。自衛隊がここまで本格的にダンジョン攻略に乗り出すとは考えていなかったからだ。しかも急な勧誘。
目を瞑ってどう答えようか考えていると、またあの声が聞こえてきた。
(少年よ。ダンジョンを全て封印するというのは、正気では無いと思うぞ)
(そもそもダンジョンは、封印出来るんですか?)
(出来る。けどな、この方法を知っているのは異世界からの記憶を有している者だけじゃ。もしかしたら前にいる老人も、少年と同じく特殊な『職業』を有しておるかもしれん)
(聞いてみますか……)
俺は閉じた目を開けて恐る恐る目の前の老齢な自衛官に尋ねた。正直、こんな事を聞くなんて常識はずれだとは思う。けどこんな機会じゃないと聞けないからな。
「あの自衛官さん。あなたの『職業』ってなんですか?」
「急にどうした?……わしは一応、『騎士(ナイト)』じゃよ」
「そう……ですか……」
返答する態度が明らかにおかしかった。
高齢な自衛官は一度目を斜め上に逸らしてから考えていたのだ。その反応を確認すると俺は少し微笑んでしまった。
もしかしたらこの自衛官も俺と同じく、異世界からの魂と会話できるのかもしれない。
そう感じたからだ。
そしてそこに、けたたましい戦車の走行音が近づいてきていた。
【キュララララ】
もの凄い音だ。耳の鼓膜が破れるかと思うほどの大音量。火憐の方を見ると両耳を抑えて地面にうずくまっていた。
「大丈夫か!」
「う、うん。でも何この音!」
「分からない!」
大声を張り上げてやっと相手に届くかどうかである。それほどに戦車から発する音は大きかったのだ。
恐らく、複数の戦車が用意されているのだろう。一台だけでこの爆音は考えにくい。
でも、なぜ戦車が大群でダンジョン内に入るのか理解できない。
確かにダンジョンの調査と言われれば、その通りかもしれないが先発隊が全滅しているの可能性もあるのだ。
それでもダンジョンに入り込むというのは、相当の理由があるとみて良いだろう。
戦車のエンジン音が鳴り響く方向に目を向けると、砂煙を立ててこちらに前進してくる戦車部隊が見えてくる。
10台程であろうか。
緑色をした戦車が綺麗な一列になって直進する。
【キュラララ、ラ……】
戦車は俺たちの元へ近づくと停止し、中から自衛隊の隊員と思しき人物が戦車上方から出てきた。
緑色のヘルメット、緑色の軍服を着用しているその人物は階級の高い人物のように思える。
胸辺りには勲章のような貴金属がひかり、顔つきも老人であるが立派な髭を加えており、とてもじゃないが一般兵には見えない。
こんな人相手に話すのなんて初めてだ。どんなふうに対応したら良いか分からない。
俺は右往左往してから結局、敬礼をする事に落ち着く。
それを見た高齢な自衛官も敬礼を返してくれた。
「君達! 怪我はないかね?」
「俺は大丈夫です。けど、後ろにいる女の子が怪我をしてます」
「ほう……分かった。ちょっと待ってくれ」
その自衛官は優しく微笑むと顔を下に向け、トランシーバーに向かって声を出した。
「医療部隊! 前方の女性を救出せよ!」
「イエッサー!」
戦車内から聞こえる無数の声。何の目的でダンジョンに侵入したのかは分からないが、火憐の治療を請け負ってくれるようで安心した。
すぐに後方の戦車群から、数人の自衛官が出てこちらに向かってきた。
火憐の事はひとまずこれで安心だろう。
ひと段落ついた、と感じた俺は高齢な自衛官にダンジョンに侵入している理由について質問した。
「自衛官のおじさん!」
「ん? なんだい?」
「どうして、ダンジョンに入ってるんですか?」
「……ダンジョンを封印するためじゃよ」
「え?」
「先程、政府からの通達で、ダンジョンを封印する事が正式に決定したんじゃ。そうじゃ! お主も協力せんか」
「俺が……ですか……?」
「もちろんじゃ。政府は一般市民の中からもダンジョン攻略部隊として募集を募るらしいでな。あっ、儂は本作戦の自衛隊第一軍を任されておる大将『石黒』じゃ」
「はぁ」
俺は困惑の表情を見せていた。自衛隊がここまで本格的にダンジョン攻略に乗り出すとは考えていなかったからだ。しかも急な勧誘。
目を瞑ってどう答えようか考えていると、またあの声が聞こえてきた。
(少年よ。ダンジョンを全て封印するというのは、正気では無いと思うぞ)
(そもそもダンジョンは、封印出来るんですか?)
(出来る。けどな、この方法を知っているのは異世界からの記憶を有している者だけじゃ。もしかしたら前にいる老人も、少年と同じく特殊な『職業』を有しておるかもしれん)
(聞いてみますか……)
俺は閉じた目を開けて恐る恐る目の前の老齢な自衛官に尋ねた。正直、こんな事を聞くなんて常識はずれだとは思う。けどこんな機会じゃないと聞けないからな。
「あの自衛官さん。あなたの『職業』ってなんですか?」
「急にどうした?……わしは一応、『騎士(ナイト)』じゃよ」
「そう……ですか……」
返答する態度が明らかにおかしかった。
高齢な自衛官は一度目を斜め上に逸らしてから考えていたのだ。その反応を確認すると俺は少し微笑んでしまった。
もしかしたらこの自衛官も俺と同じく、異世界からの魂と会話できるのかもしれない。
そう感じたからだ。
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