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第3章覚醒の刻
30帰還の騎士
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俺と自衛官が話し終わった頃……。
戦車のエンジン音が消えてダンジョン内には再び静寂が広がっていた。
そんな空間で俺と火憐は戦車十数台の前にいた。
戦車のライトが明るく前方を照らし出し、その先で火憐が自衛官の人達に治療されている。
彼女の体を地面に寝かせて、包帯を巻いて出血を防いでいるようだ。
「うっ! 痛い……」
「!?」
後ろから痛々しい声が聞こえて、俺は少し振り向いてしまった。
石黒という自衛官との会話中であったが、どうしても彼女の容態が気になる。
「火憐、大丈夫か?」
洞穴に響く大きな声。
治療中の自衛官が、それに気づいてくれたようだ。
こちらを向いて、火憐の代わりに答えてくれる。
「足から出血はしていますが大丈夫ですよ。戦車に乗せるので心配しないでください」
「ありがとうございます」
彼女の安否を聞いてホッとした俺は肩を下げた。
だが、まだ俺には決める事があったんだ。石黒大将が、後ろから優しく語りかけてきた。
俺からの答えを急かすように。
「女の子が無事で良かったの。で、返事はどうする? ダンジョン攻略部隊に参加するかの?」
「……」
「まぁ、すぐには決められんか。戦車に乗っている時に気が向いたら、儂に声をかけてくれ」
「すみません。もう少し考えてから決めます」
俺は振り向いて一礼をした。
戦車がここを通らなければ、俺達はダンジョンから出られなかったかもしれない。
傷ついた火憐を治療も無しに数時間、洞穴を歩かせるのは危険だからだ。自衛隊の方々には本当に感謝している。
だが、攻略部隊に参加するかどうかは、この短時間では決めかねる。
それに今ここには俺と火憐がいるが氷華がまだ帰ってきていないのだ。自衛官達に事情を説明すると快く引き受けてくれた。
氷華の『職業』や『装備』から考えると、モンスターにやられている事は考えられないので急がずに戦車の中で待つ事にした。
「もう出発してもいいかな?」
「すみません。仲間がまだ帰ってこないので、もう少しだけ出発を待っていただけませんか」
「10分ほどなら待とう。それ以降はキツいのう」
「分かり……ました」
10分ほどの猶予を貰うことができた。
短いと思うかもしれないが、ここはダンジョンの中。至る所に危険が潜んでいるこの場所を考えると大将の判断は良心的だと言えるだろう。
最悪の10分が過ぎたとしても俺だけが残ればいい。『スキル』を身につけた今ならどんな敵でも倒せるだろう。
少なくともこのダンジョンのボスを倒したのだ。
ここで死ぬ事はないはず。
そう思いながらも心配性な俺は、頭の中の『声』に語りかけた。
(ダンフォールさん聞こえますか?……)
(聞こえとるぞ! 何のようじゃ)
(1人だけで、ダンジョンに残ったとしても死なないですよね?)
(ふっ……何回言わせるんじゃ。少年は『最強』なのだぞ。儂は戦闘では、一度も負けた事がないでのう)
(そ、そうでしたね)
老人の言葉が本当か嘘なのかは分からない。ただ最強に限りなく近い事は、自分自身でも分かっているつもりだ。
俺は戦車を前にしたまま微笑んだ。
これで『死』を意識せずとも良いと。
「君、危ないぞ。戦車に早く乗り込まないかね?」
「すみません! 今、行きます」
自分の力について意識し過ぎてしまったようだ。周りを見渡しても既に誰もいない。気づかない間に火憐も後方の戦車に連れていかれたらしい。
石黒は戦車の上部から上半身を出して手を後ろに組んでいる。
にこやかな表情に見えるが、俺が早く乗り込まない為にイラついているようにも見えた。しきりに自らの髭に触れている。
俺は、これは不味いことをした、と急いで戦車の方向へ足を向けた。
その瞬間……。
あいつの声がした。頭の中に響く老人の声では無い。透き通る様な女性の声。
氷華の声だ。
「蓮待った? 火憐ちゃんの装備持ってきたよ~」
【ガシャンガシャン】
全身鎧に身を包み手を振って戦車の奥から走ってくる氷華。
その異様な光景は石黒の視界にも入った。顔をしかめながら蓮の方を見つめる。
「あれはなんだ?……『蓮』とは君の名前か?」
「はい。俺の友人です」
戦車のエンジン音が消えてダンジョン内には再び静寂が広がっていた。
そんな空間で俺と火憐は戦車十数台の前にいた。
戦車のライトが明るく前方を照らし出し、その先で火憐が自衛官の人達に治療されている。
彼女の体を地面に寝かせて、包帯を巻いて出血を防いでいるようだ。
「うっ! 痛い……」
「!?」
後ろから痛々しい声が聞こえて、俺は少し振り向いてしまった。
石黒という自衛官との会話中であったが、どうしても彼女の容態が気になる。
「火憐、大丈夫か?」
洞穴に響く大きな声。
治療中の自衛官が、それに気づいてくれたようだ。
こちらを向いて、火憐の代わりに答えてくれる。
「足から出血はしていますが大丈夫ですよ。戦車に乗せるので心配しないでください」
「ありがとうございます」
彼女の安否を聞いてホッとした俺は肩を下げた。
だが、まだ俺には決める事があったんだ。石黒大将が、後ろから優しく語りかけてきた。
俺からの答えを急かすように。
「女の子が無事で良かったの。で、返事はどうする? ダンジョン攻略部隊に参加するかの?」
「……」
「まぁ、すぐには決められんか。戦車に乗っている時に気が向いたら、儂に声をかけてくれ」
「すみません。もう少し考えてから決めます」
俺は振り向いて一礼をした。
戦車がここを通らなければ、俺達はダンジョンから出られなかったかもしれない。
傷ついた火憐を治療も無しに数時間、洞穴を歩かせるのは危険だからだ。自衛隊の方々には本当に感謝している。
だが、攻略部隊に参加するかどうかは、この短時間では決めかねる。
それに今ここには俺と火憐がいるが氷華がまだ帰ってきていないのだ。自衛官達に事情を説明すると快く引き受けてくれた。
氷華の『職業』や『装備』から考えると、モンスターにやられている事は考えられないので急がずに戦車の中で待つ事にした。
「もう出発してもいいかな?」
「すみません。仲間がまだ帰ってこないので、もう少しだけ出発を待っていただけませんか」
「10分ほどなら待とう。それ以降はキツいのう」
「分かり……ました」
10分ほどの猶予を貰うことができた。
短いと思うかもしれないが、ここはダンジョンの中。至る所に危険が潜んでいるこの場所を考えると大将の判断は良心的だと言えるだろう。
最悪の10分が過ぎたとしても俺だけが残ればいい。『スキル』を身につけた今ならどんな敵でも倒せるだろう。
少なくともこのダンジョンのボスを倒したのだ。
ここで死ぬ事はないはず。
そう思いながらも心配性な俺は、頭の中の『声』に語りかけた。
(ダンフォールさん聞こえますか?……)
(聞こえとるぞ! 何のようじゃ)
(1人だけで、ダンジョンに残ったとしても死なないですよね?)
(ふっ……何回言わせるんじゃ。少年は『最強』なのだぞ。儂は戦闘では、一度も負けた事がないでのう)
(そ、そうでしたね)
老人の言葉が本当か嘘なのかは分からない。ただ最強に限りなく近い事は、自分自身でも分かっているつもりだ。
俺は戦車を前にしたまま微笑んだ。
これで『死』を意識せずとも良いと。
「君、危ないぞ。戦車に早く乗り込まないかね?」
「すみません! 今、行きます」
自分の力について意識し過ぎてしまったようだ。周りを見渡しても既に誰もいない。気づかない間に火憐も後方の戦車に連れていかれたらしい。
石黒は戦車の上部から上半身を出して手を後ろに組んでいる。
にこやかな表情に見えるが、俺が早く乗り込まない為にイラついているようにも見えた。しきりに自らの髭に触れている。
俺は、これは不味いことをした、と急いで戦車の方向へ足を向けた。
その瞬間……。
あいつの声がした。頭の中に響く老人の声では無い。透き通る様な女性の声。
氷華の声だ。
「蓮待った? 火憐ちゃんの装備持ってきたよ~」
【ガシャンガシャン】
全身鎧に身を包み手を振って戦車の奥から走ってくる氷華。
その異様な光景は石黒の視界にも入った。顔をしかめながら蓮の方を見つめる。
「あれはなんだ?……『蓮』とは君の名前か?」
「はい。俺の友人です」
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