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第3章覚醒の刻
33闇夜に消える
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星空が照らし出す幻想的な空間。
そんな空の下で俺は戦車の上部から、氷華は外の地面の上で2人して星を眺めていた。
早く家に帰りたい。そんな気持ちを胸に秘めながら。
しかし俺はダンジョンから脱出できた、という喜びを噛み締めつつも戦車に戻ろうとしていた。
まだ火憐の容体を確認していないからだ。このダンジョンで彼女が1番ダメージを負っている、放っておけるはずがない。
「氷華ごめん! 石黒さんに感謝と火憐の事、聞かなきゃならないから外で待ってて」
「分かった。急がなくても大丈夫だよ」
「ありがと」
俺は外にいる氷華に対して腕を振り、戦車内へと戻っていった。
俺も火憐も氷華も皆んな無事に脱出する事が出来たんだ。本当に良かった。
でも火憐が心配になる。化け物に足を喰われたって言ってたけど、俺はどのくらいの傷なのかを見てない。
治療班の人達は大丈夫って言ってくれたけど、本当に大丈夫なのかな。
俺はそんな不安を抱えながらも石黒のところへ向かった。
喜びと火憐に対する心配とで俺の表情は少しずつ歪んでいったと思う。ただ石黒にはしっかりとお礼を言ったよ。 彼がいなければ俺達はどうなったか分からないからね。
「石黒さん。ここまで運んでくれてありがとうございました」
「いいのじゃよ。ははは。礼儀正しいのう」
「そんな事ないですよ。あと、一つ聞きたい事があるんですが……」
「なんじゃ?」
石黒は身を乗り出してニコニコしている。なんて人柄の良い人なんだろうか。俺は感動しながら言葉を続けた。
「火憐は今、無事なんでしょうか」
「化け物に襲われた女子の事か……今から会いに行くかな? 疲れてぐっすりと眠っていると報告が入っていたよ」
「はい! お願いします」
「元気がいいのぉ。彼女がいるのは別の戦車じゃ。付いてきてくれ」
石黒は膝に手をつけて立ち上がると、外に向かって歩き始めた。ギィッ、と戦車から外に出て行く時。
俺の表情は徐々に明るくなっていった。火憐という最後の心配事が解消されたからだ。
解放されたかのように体が軽くなっていた。
よし!全員無事に帰還できたんだ。
これで胸を張って、明日から学校に顔を出せる。
正直、鮫島が来るかもしれない。そう思うと高校に行きたくはないけどね。
でも今は虐められるのを恐れているんじゃない。彼の事は憎いんだ。
俺は……俺と火憐を裏切って一人で逃げたあいつを許す気は無い、もし虐めてきても反抗してやる。
そう心に決めた。
(あれ? でもそういえば)
俺はホッとしたのかふとある事に気付いたんだ。。心の中にいるダンフォールに話しかけたよ。
(ダンフォールさん、聞きたいことがあるんだけど)
(なんじゃ。何でも聞いてくれ)
いつでも気さくに答えてくれる。そんなダンフォールさんの声を聴くと口元が緩むようになってしまった。
俺はクスッと笑うと会話を続けた。
(ステータスの能力値って日常生活に影響はないの?)
(んん~。儂のいた世界では影響あったのう。恐らくじゃが影響はあると思うぞ)
(これまでは、無かったんですよ)
(これまではな。儂が少年に話しかけるようになるまで、時間がかかったんじゃ。世界が完全に混ざり合うまでには時間がかかるんじゃろうて)
(時間が進むにつれて、ゲーム世界と混ざり合う……ですか……)
俺は歩きながら顔を歪めた。
もし、能力ステータスが日常生活にも影響するなら、世界が変わりかねないからだ。
自身の能力に幅を利かせて犯罪を犯したり、魔法で何かを創造したりと、大混乱に陥るんじゃないのか?
様々な未来を考え否定してまた考える。
俺がそんな思考を繰り返していくうちに、どうやら火憐の元へと辿り着いたようだ。
石黒が俺に語りかけてきたんだ。
「もう着いたよ。この中で彼女が寝ている」
「あっ……ありがとうございます。では……」
石黒が戦車の入り口を開けてくれると、俺は一人で戦車の中に入った。
すると目の前には布を被せられてぐっすりと眠っている火憐と、側(そば)で看護をしてくれている隊員がいた。
隊員は俺を見るや否やニッコリとした笑顔で話しかけてきた。
「見舞いにきたのかな?」
「そんな感じです。ははは」
「心配しないでね。彼女は大丈夫。しばらくは松葉杖が必要だと思うけど」
「そうですか、じゃあ帰りは……」
俺が尋ねると隊員は軽く笑いながら、自身の胸に手を当てて、安心してくれと言うようなジェスチャーをした。
「はは。流石に一人で帰したりはしないさ。自衛隊が責任を持って彼女を家に届けるよ」
「ありがとうございます」
俺が隊員に少し会釈をした後はそのまま火憐の方に近づいた。
そして、微笑みながら彼女の手を握ったんだ。
「火憐また、学校でな」
「……」
「ん?」
もちろん彼女は声を発しない。
しかし、言葉をかけると手を握り返してくれた。顔も少し微笑んでいるように見えた。彼女も安心しきっているのだろう。
その反応を目にした俺の表情も笑顔になり、その後はゆっくりと手を離して外に出た。
ちょうどその時彼女の声が響いた。少しイラついているような高い声が。
「蓮! 遅いじゃない」
「え……急がなくてもいいって言ってたような。てかお前、鎧を脱がないのかよ」
「そうだっけ? あ、鎧は家に帰ってからね。ここで脱いだら持ち運びが面倒なの」
「……とりあえず、家に帰ろうか」
「うん!」
俺が動き出すと氷華が走ってついてくる。そのまま星空が照らし出す暗闇に俺達2人の影は消えていった。
そんな空の下で俺は戦車の上部から、氷華は外の地面の上で2人して星を眺めていた。
早く家に帰りたい。そんな気持ちを胸に秘めながら。
しかし俺はダンジョンから脱出できた、という喜びを噛み締めつつも戦車に戻ろうとしていた。
まだ火憐の容体を確認していないからだ。このダンジョンで彼女が1番ダメージを負っている、放っておけるはずがない。
「氷華ごめん! 石黒さんに感謝と火憐の事、聞かなきゃならないから外で待ってて」
「分かった。急がなくても大丈夫だよ」
「ありがと」
俺は外にいる氷華に対して腕を振り、戦車内へと戻っていった。
俺も火憐も氷華も皆んな無事に脱出する事が出来たんだ。本当に良かった。
でも火憐が心配になる。化け物に足を喰われたって言ってたけど、俺はどのくらいの傷なのかを見てない。
治療班の人達は大丈夫って言ってくれたけど、本当に大丈夫なのかな。
俺はそんな不安を抱えながらも石黒のところへ向かった。
喜びと火憐に対する心配とで俺の表情は少しずつ歪んでいったと思う。ただ石黒にはしっかりとお礼を言ったよ。 彼がいなければ俺達はどうなったか分からないからね。
「石黒さん。ここまで運んでくれてありがとうございました」
「いいのじゃよ。ははは。礼儀正しいのう」
「そんな事ないですよ。あと、一つ聞きたい事があるんですが……」
「なんじゃ?」
石黒は身を乗り出してニコニコしている。なんて人柄の良い人なんだろうか。俺は感動しながら言葉を続けた。
「火憐は今、無事なんでしょうか」
「化け物に襲われた女子の事か……今から会いに行くかな? 疲れてぐっすりと眠っていると報告が入っていたよ」
「はい! お願いします」
「元気がいいのぉ。彼女がいるのは別の戦車じゃ。付いてきてくれ」
石黒は膝に手をつけて立ち上がると、外に向かって歩き始めた。ギィッ、と戦車から外に出て行く時。
俺の表情は徐々に明るくなっていった。火憐という最後の心配事が解消されたからだ。
解放されたかのように体が軽くなっていた。
よし!全員無事に帰還できたんだ。
これで胸を張って、明日から学校に顔を出せる。
正直、鮫島が来るかもしれない。そう思うと高校に行きたくはないけどね。
でも今は虐められるのを恐れているんじゃない。彼の事は憎いんだ。
俺は……俺と火憐を裏切って一人で逃げたあいつを許す気は無い、もし虐めてきても反抗してやる。
そう心に決めた。
(あれ? でもそういえば)
俺はホッとしたのかふとある事に気付いたんだ。。心の中にいるダンフォールに話しかけたよ。
(ダンフォールさん、聞きたいことがあるんだけど)
(なんじゃ。何でも聞いてくれ)
いつでも気さくに答えてくれる。そんなダンフォールさんの声を聴くと口元が緩むようになってしまった。
俺はクスッと笑うと会話を続けた。
(ステータスの能力値って日常生活に影響はないの?)
(んん~。儂のいた世界では影響あったのう。恐らくじゃが影響はあると思うぞ)
(これまでは、無かったんですよ)
(これまではな。儂が少年に話しかけるようになるまで、時間がかかったんじゃ。世界が完全に混ざり合うまでには時間がかかるんじゃろうて)
(時間が進むにつれて、ゲーム世界と混ざり合う……ですか……)
俺は歩きながら顔を歪めた。
もし、能力ステータスが日常生活にも影響するなら、世界が変わりかねないからだ。
自身の能力に幅を利かせて犯罪を犯したり、魔法で何かを創造したりと、大混乱に陥るんじゃないのか?
様々な未来を考え否定してまた考える。
俺がそんな思考を繰り返していくうちに、どうやら火憐の元へと辿り着いたようだ。
石黒が俺に語りかけてきたんだ。
「もう着いたよ。この中で彼女が寝ている」
「あっ……ありがとうございます。では……」
石黒が戦車の入り口を開けてくれると、俺は一人で戦車の中に入った。
すると目の前には布を被せられてぐっすりと眠っている火憐と、側(そば)で看護をしてくれている隊員がいた。
隊員は俺を見るや否やニッコリとした笑顔で話しかけてきた。
「見舞いにきたのかな?」
「そんな感じです。ははは」
「心配しないでね。彼女は大丈夫。しばらくは松葉杖が必要だと思うけど」
「そうですか、じゃあ帰りは……」
俺が尋ねると隊員は軽く笑いながら、自身の胸に手を当てて、安心してくれと言うようなジェスチャーをした。
「はは。流石に一人で帰したりはしないさ。自衛隊が責任を持って彼女を家に届けるよ」
「ありがとうございます」
俺が隊員に少し会釈をした後はそのまま火憐の方に近づいた。
そして、微笑みながら彼女の手を握ったんだ。
「火憐また、学校でな」
「……」
「ん?」
もちろん彼女は声を発しない。
しかし、言葉をかけると手を握り返してくれた。顔も少し微笑んでいるように見えた。彼女も安心しきっているのだろう。
その反応を目にした俺の表情も笑顔になり、その後はゆっくりと手を離して外に出た。
ちょうどその時彼女の声が響いた。少しイラついているような高い声が。
「蓮! 遅いじゃない」
「え……急がなくてもいいって言ってたような。てかお前、鎧を脱がないのかよ」
「そうだっけ? あ、鎧は家に帰ってからね。ここで脱いだら持ち運びが面倒なの」
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