34 / 123
第3章覚醒の刻
33闇夜に消える
しおりを挟む
星空が照らし出す幻想的な空間。
そんな空の下で俺は戦車の上部から、氷華は外の地面の上で2人して星を眺めていた。
早く家に帰りたい。そんな気持ちを胸に秘めながら。
しかし俺はダンジョンから脱出できた、という喜びを噛み締めつつも戦車に戻ろうとしていた。
まだ火憐の容体を確認していないからだ。このダンジョンで彼女が1番ダメージを負っている、放っておけるはずがない。
「氷華ごめん! 石黒さんに感謝と火憐の事、聞かなきゃならないから外で待ってて」
「分かった。急がなくても大丈夫だよ」
「ありがと」
俺は外にいる氷華に対して腕を振り、戦車内へと戻っていった。
俺も火憐も氷華も皆んな無事に脱出する事が出来たんだ。本当に良かった。
でも火憐が心配になる。化け物に足を喰われたって言ってたけど、俺はどのくらいの傷なのかを見てない。
治療班の人達は大丈夫って言ってくれたけど、本当に大丈夫なのかな。
俺はそんな不安を抱えながらも石黒のところへ向かった。
喜びと火憐に対する心配とで俺の表情は少しずつ歪んでいったと思う。ただ石黒にはしっかりとお礼を言ったよ。 彼がいなければ俺達はどうなったか分からないからね。
「石黒さん。ここまで運んでくれてありがとうございました」
「いいのじゃよ。ははは。礼儀正しいのう」
「そんな事ないですよ。あと、一つ聞きたい事があるんですが……」
「なんじゃ?」
石黒は身を乗り出してニコニコしている。なんて人柄の良い人なんだろうか。俺は感動しながら言葉を続けた。
「火憐は今、無事なんでしょうか」
「化け物に襲われた女子の事か……今から会いに行くかな? 疲れてぐっすりと眠っていると報告が入っていたよ」
「はい! お願いします」
「元気がいいのぉ。彼女がいるのは別の戦車じゃ。付いてきてくれ」
石黒は膝に手をつけて立ち上がると、外に向かって歩き始めた。ギィッ、と戦車から外に出て行く時。
俺の表情は徐々に明るくなっていった。火憐という最後の心配事が解消されたからだ。
解放されたかのように体が軽くなっていた。
よし!全員無事に帰還できたんだ。
これで胸を張って、明日から学校に顔を出せる。
正直、鮫島が来るかもしれない。そう思うと高校に行きたくはないけどね。
でも今は虐められるのを恐れているんじゃない。彼の事は憎いんだ。
俺は……俺と火憐を裏切って一人で逃げたあいつを許す気は無い、もし虐めてきても反抗してやる。
そう心に決めた。
(あれ? でもそういえば)
俺はホッとしたのかふとある事に気付いたんだ。。心の中にいるダンフォールに話しかけたよ。
(ダンフォールさん、聞きたいことがあるんだけど)
(なんじゃ。何でも聞いてくれ)
いつでも気さくに答えてくれる。そんなダンフォールさんの声を聴くと口元が緩むようになってしまった。
俺はクスッと笑うと会話を続けた。
(ステータスの能力値って日常生活に影響はないの?)
(んん~。儂のいた世界では影響あったのう。恐らくじゃが影響はあると思うぞ)
(これまでは、無かったんですよ)
(これまではな。儂が少年に話しかけるようになるまで、時間がかかったんじゃ。世界が完全に混ざり合うまでには時間がかかるんじゃろうて)
(時間が進むにつれて、ゲーム世界と混ざり合う……ですか……)
俺は歩きながら顔を歪めた。
もし、能力ステータスが日常生活にも影響するなら、世界が変わりかねないからだ。
自身の能力に幅を利かせて犯罪を犯したり、魔法で何かを創造したりと、大混乱に陥るんじゃないのか?
様々な未来を考え否定してまた考える。
俺がそんな思考を繰り返していくうちに、どうやら火憐の元へと辿り着いたようだ。
石黒が俺に語りかけてきたんだ。
「もう着いたよ。この中で彼女が寝ている」
「あっ……ありがとうございます。では……」
石黒が戦車の入り口を開けてくれると、俺は一人で戦車の中に入った。
すると目の前には布を被せられてぐっすりと眠っている火憐と、側(そば)で看護をしてくれている隊員がいた。
隊員は俺を見るや否やニッコリとした笑顔で話しかけてきた。
「見舞いにきたのかな?」
「そんな感じです。ははは」
「心配しないでね。彼女は大丈夫。しばらくは松葉杖が必要だと思うけど」
「そうですか、じゃあ帰りは……」
俺が尋ねると隊員は軽く笑いながら、自身の胸に手を当てて、安心してくれと言うようなジェスチャーをした。
「はは。流石に一人で帰したりはしないさ。自衛隊が責任を持って彼女を家に届けるよ」
「ありがとうございます」
俺が隊員に少し会釈をした後はそのまま火憐の方に近づいた。
そして、微笑みながら彼女の手を握ったんだ。
「火憐また、学校でな」
「……」
「ん?」
もちろん彼女は声を発しない。
しかし、言葉をかけると手を握り返してくれた。顔も少し微笑んでいるように見えた。彼女も安心しきっているのだろう。
その反応を目にした俺の表情も笑顔になり、その後はゆっくりと手を離して外に出た。
ちょうどその時彼女の声が響いた。少しイラついているような高い声が。
「蓮! 遅いじゃない」
「え……急がなくてもいいって言ってたような。てかお前、鎧を脱がないのかよ」
「そうだっけ? あ、鎧は家に帰ってからね。ここで脱いだら持ち運びが面倒なの」
「……とりあえず、家に帰ろうか」
「うん!」
俺が動き出すと氷華が走ってついてくる。そのまま星空が照らし出す暗闇に俺達2人の影は消えていった。
そんな空の下で俺は戦車の上部から、氷華は外の地面の上で2人して星を眺めていた。
早く家に帰りたい。そんな気持ちを胸に秘めながら。
しかし俺はダンジョンから脱出できた、という喜びを噛み締めつつも戦車に戻ろうとしていた。
まだ火憐の容体を確認していないからだ。このダンジョンで彼女が1番ダメージを負っている、放っておけるはずがない。
「氷華ごめん! 石黒さんに感謝と火憐の事、聞かなきゃならないから外で待ってて」
「分かった。急がなくても大丈夫だよ」
「ありがと」
俺は外にいる氷華に対して腕を振り、戦車内へと戻っていった。
俺も火憐も氷華も皆んな無事に脱出する事が出来たんだ。本当に良かった。
でも火憐が心配になる。化け物に足を喰われたって言ってたけど、俺はどのくらいの傷なのかを見てない。
治療班の人達は大丈夫って言ってくれたけど、本当に大丈夫なのかな。
俺はそんな不安を抱えながらも石黒のところへ向かった。
喜びと火憐に対する心配とで俺の表情は少しずつ歪んでいったと思う。ただ石黒にはしっかりとお礼を言ったよ。 彼がいなければ俺達はどうなったか分からないからね。
「石黒さん。ここまで運んでくれてありがとうございました」
「いいのじゃよ。ははは。礼儀正しいのう」
「そんな事ないですよ。あと、一つ聞きたい事があるんですが……」
「なんじゃ?」
石黒は身を乗り出してニコニコしている。なんて人柄の良い人なんだろうか。俺は感動しながら言葉を続けた。
「火憐は今、無事なんでしょうか」
「化け物に襲われた女子の事か……今から会いに行くかな? 疲れてぐっすりと眠っていると報告が入っていたよ」
「はい! お願いします」
「元気がいいのぉ。彼女がいるのは別の戦車じゃ。付いてきてくれ」
石黒は膝に手をつけて立ち上がると、外に向かって歩き始めた。ギィッ、と戦車から外に出て行く時。
俺の表情は徐々に明るくなっていった。火憐という最後の心配事が解消されたからだ。
解放されたかのように体が軽くなっていた。
よし!全員無事に帰還できたんだ。
これで胸を張って、明日から学校に顔を出せる。
正直、鮫島が来るかもしれない。そう思うと高校に行きたくはないけどね。
でも今は虐められるのを恐れているんじゃない。彼の事は憎いんだ。
俺は……俺と火憐を裏切って一人で逃げたあいつを許す気は無い、もし虐めてきても反抗してやる。
そう心に決めた。
(あれ? でもそういえば)
俺はホッとしたのかふとある事に気付いたんだ。。心の中にいるダンフォールに話しかけたよ。
(ダンフォールさん、聞きたいことがあるんだけど)
(なんじゃ。何でも聞いてくれ)
いつでも気さくに答えてくれる。そんなダンフォールさんの声を聴くと口元が緩むようになってしまった。
俺はクスッと笑うと会話を続けた。
(ステータスの能力値って日常生活に影響はないの?)
(んん~。儂のいた世界では影響あったのう。恐らくじゃが影響はあると思うぞ)
(これまでは、無かったんですよ)
(これまではな。儂が少年に話しかけるようになるまで、時間がかかったんじゃ。世界が完全に混ざり合うまでには時間がかかるんじゃろうて)
(時間が進むにつれて、ゲーム世界と混ざり合う……ですか……)
俺は歩きながら顔を歪めた。
もし、能力ステータスが日常生活にも影響するなら、世界が変わりかねないからだ。
自身の能力に幅を利かせて犯罪を犯したり、魔法で何かを創造したりと、大混乱に陥るんじゃないのか?
様々な未来を考え否定してまた考える。
俺がそんな思考を繰り返していくうちに、どうやら火憐の元へと辿り着いたようだ。
石黒が俺に語りかけてきたんだ。
「もう着いたよ。この中で彼女が寝ている」
「あっ……ありがとうございます。では……」
石黒が戦車の入り口を開けてくれると、俺は一人で戦車の中に入った。
すると目の前には布を被せられてぐっすりと眠っている火憐と、側(そば)で看護をしてくれている隊員がいた。
隊員は俺を見るや否やニッコリとした笑顔で話しかけてきた。
「見舞いにきたのかな?」
「そんな感じです。ははは」
「心配しないでね。彼女は大丈夫。しばらくは松葉杖が必要だと思うけど」
「そうですか、じゃあ帰りは……」
俺が尋ねると隊員は軽く笑いながら、自身の胸に手を当てて、安心してくれと言うようなジェスチャーをした。
「はは。流石に一人で帰したりはしないさ。自衛隊が責任を持って彼女を家に届けるよ」
「ありがとうございます」
俺が隊員に少し会釈をした後はそのまま火憐の方に近づいた。
そして、微笑みながら彼女の手を握ったんだ。
「火憐また、学校でな」
「……」
「ん?」
もちろん彼女は声を発しない。
しかし、言葉をかけると手を握り返してくれた。顔も少し微笑んでいるように見えた。彼女も安心しきっているのだろう。
その反応を目にした俺の表情も笑顔になり、その後はゆっくりと手を離して外に出た。
ちょうどその時彼女の声が響いた。少しイラついているような高い声が。
「蓮! 遅いじゃない」
「え……急がなくてもいいって言ってたような。てかお前、鎧を脱がないのかよ」
「そうだっけ? あ、鎧は家に帰ってからね。ここで脱いだら持ち運びが面倒なの」
「……とりあえず、家に帰ろうか」
「うん!」
俺が動き出すと氷華が走ってついてくる。そのまま星空が照らし出す暗闇に俺達2人の影は消えていった。
0
あなたにおすすめの小説
最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~
ある中管理職
ファンタジー
勤続10年目10度目のレベルアップ。
人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。
すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。
なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。
チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。
探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。
万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。
『異世界ガチャでユニークスキル全部乗せ!? ポンコツ神と俺の無自覚最強スローライフ』
チャチャ
ファンタジー
> 仕事帰りにファンタジー小説を買った帰り道、不運にも事故死した38歳の男。
気がつくと、目の前には“ポンコツ”と噂される神様がいた——。
「君、うっかり死んじゃったから、異世界に転生させてあげるよ♪」
「スキル? ステータス? もちろんガチャで決めるから!」
最初はブチギレ寸前だったが、引いたスキルはなんと全部ユニーク!
本人は気づいていないが、【超幸運】の持ち主だった!
「冒険? 魔王? いや、俺は村でのんびり暮らしたいんだけど……」
そんな願いとは裏腹に、次々とトラブルに巻き込まれ、無自覚に“最強伝説”を打ち立てていく!
神様のミスで始まった異世界生活。目指すはスローライフ、されど周囲は大騒ぎ!
◆ガチャ転生×最強×スローライフ!
無自覚チートな元おっさんが、今日も異世界でのんびり無双中!
異世界帰りの勇者、今度は現代世界でスキル、魔法を使って、無双するスローライフを送ります!?〜ついでに世界も救います!?〜
沢田美
ファンタジー
かつて“異世界”で魔王を討伐し、八年にわたる冒険を終えた青年・ユキヒロ。
数々の死線を乗り越え、勇者として讃えられた彼が帰ってきたのは、元の日本――高校卒業すらしていない、現実世界だった。
アラフォーおっさんの週末ダンジョン探検記
ぽっちゃりおっさん
ファンタジー
ある日、全世界の至る所にダンジョンと呼ばれる異空間が出現した。
そこには人外異形の生命体【魔物】が存在していた。
【魔物】を倒すと魔石を落とす。
魔石には膨大なエネルギーが秘められており、第五次産業革命が起こるほどの衝撃であった。
世は埋蔵金ならぬ、魔石を求めて日々各地のダンジョンを開発していった。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
貧乏冒険者で底辺配信者の生きる希望もないおっさんバズる~庭のFランク(実際はSSSランク)ダンジョンで活動すること15年、最強になりました~
喰寝丸太
ファンタジー
おっさんは経済的に、そして冒険者としても底辺だった。
庭にダンジョンができたが最初のザコがスライムということでFランクダンジョン認定された。
そして18年。
おっさんの実力が白日の下に。
FランクダンジョンはSSSランクだった。
最初のザコ敵はアイアンスライム。
特徴は大量の経験値を持っていて硬い、そして逃げる。
追い詰められると不壊と言われるダンジョンの壁すら溶かす酸を出す。
そんなダンジョンでの15年の月日はおっさんを最強にさせた。
世間から隠されていた最強の化け物がいま世に出る。
追放された最強ヒーラーは、美少女令嬢たちとハーレム生活を送る ~公爵令嬢も義妹も幼馴染も俺のことを大好きらしいので一緒の風呂に入ります~
軽井広@北欧美少女 書籍化!
ファンタジー
白魔道師のクリスは、宮廷魔導師団の副団長として、王国の戦争での勝利に貢献してきた。だが、国王の非道な行いに批判的なクリスは、反逆の疑いをかけられ宮廷を追放されてしまう。
そんなクリスに与えられた国からの新たな命令は、逃亡した美少女公爵令嬢を捕らえ、処刑することだった。彼女は敵国との内通を疑われ、王太子との婚約を破棄されていた。だが、無実を訴える公爵令嬢のことを信じ、彼女を助けることに決めるクリス。
クリスは国のためではなく、自分のため、そして自分を頼る少女のために、自らの力を使うことにした。やがて、同じような境遇の少女たちを助け、クリスは彼女たちと暮らすことになる。
一方、クリスのいなくなった王国軍は、隣国との戦争に負けはじめた……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる