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第4章過去との決別
34夜明けの始まり
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ダンジョンでの死闘が終わり、俺と氷華は暗闇の中をひたすらに歩いていた――。
街灯が灯る街中。
俺は足が棒になっていても前に出し続けていた。氷華の方が疲労たまっていると思うんだけど彼女は軽い足取りのままだ。
鎧を全身に纏(まと)ったままなのに何で元気なんだ?
氷華の方をチラリと見る俺の表情は少しだけニヤついていた。
しかし笑顔を維持する気力はもう無い。
俺はすぐさま前を向いてその後は横を向くことはなかった。
でも、本当に疲れたな。
火憐が無事だって事がわかったから、緊張の糸が切れたみたいだ。
歩くだけで精一杯。頭も動かないし、心の中も空っぽだ。
暗闇の中、自宅に向かう氷華と俺の2人はただ無言で足を動かしている。
疲れているのだ。俺達は数時間ダンジョン内に居続けていたのだから当然の結果である。
まず俺が自宅に着くと軽く手を振るだけで氷華と別れを告げ玄関を開けた。
「じゃあな氷華」
「うん。おやすみなさい!」
氷華の声を聞いた後は最後の力を振り絞って、俺はドアを開けた。
でもドアを開けても家は暗闇の中だ。
だから、玄関の灯(あか)りをつけようとスイッチに手を伸ばしたんだ……。でも。
【カチャッ】
俺が触れる前にスイッチが入り照明がついた。
その灯(あか)りに照らされ、一瞬で暗闇から目の前に現れた人。それは母親だ。
「ただい……」
「蓮!」
母は怒っていた。
その姿は、死闘から生還した息子を迎える姿ではなかったよ。
いや、俺が悪い。母親にはダンジョンに行くと伝えていないから単なる夜遊びをしてきたと思っているのだろう。
母は腕を組み眉間にしわを寄せて怒っている。
「ちょっと蓮! 遅いわよ。何してたの?」
「かあさん、ただい……ま……」
「質問に答えてないわよ」
「は、はは。ご……めん、でも、少し疲れたんだ」
「何を言ってるの? 遊び疲れたって事?」
「……」
俺の体力はもう限界だった。これ以上、母と喋る体力すらも残っていなかったんだ。
体が後ろに倒れていく。もうダメだ。意識が……。
【ガタッ】
「ちょっと蓮。どうしたの!」
「……」
俺はそのまま玄関で崩れ落ちるように倒れた。母親の声が聞こえるだけで視界が暗くなっていく。
そう。ダンジョンから脱出できた、という喜びのおかげで自宅までは帰ってこれたもののもう体力の限界だったのだ。
暗い闇の中へと意識を沈めていった。
しかし暗闇の中でも母親の声が頭の中に響いてくる。うるさいな母さん。少し眠らせてくれ。
俺はもう疲れたんだ――。
でも、体力が尽きて死ぬように眠る事がこんなに心地いいなんて。
いつもは上手く眠れなかったからね。
実際に俺は深く眠ったんだ。
母親が蓮を一階のソファに引きずっている時も、制服からパジャマに着替えさせている時も、起きる様子もなく体を任せていたみたいだ。
体力をゆっくりと回復させる。本能がそうさせたみたいだ。
彼にとって明日からの高校生活を送る為に必要な事だ。
虐められていた日常とは異なる。新たな生活を開始する為に――。
―翌日の朝―
「ん~。眠い……」
結局、俺が目覚めたのは自分の部屋ではなく、リビングにあるソファの上だった。
窓の外を見てみると、陽の光が差し込んでいるので昨日はどうやら寝ていたらしい。
あれ?俺なんでここで寝ているんだろ。
昨日、玄関に着いた事までは覚えてるんだけどな。
俺は顔をしかめたまま辺りを見回した。
テレビも付いてないし、キッチンの方も料理をしている様子もない。
そんな状況の中、俺は半身を起こし首を傾けていた。
母さん。どこ行ったんだ?
もう学校へ行く時間じゃないか、いつもなら朝ご飯の支度をして俺を怒鳴りつけるのに。
あれ?もしかして今日は祝日だったかな。
俺は曜日を確認する為、スマホを取り出そうとポケットに手を入れるがそれは無かった。いや、そもそもパジャマになっていたから入ってるわけないか。
そうだ。制服のズボンは母親に着替えさせられているので、スマホの場所が分からない。
仕方なくテレビのニュースで確認しようとするが、テレビ画面に現れた人物に蓮は驚かされてしまった。
【ポチッ】
『えぇ~。本日は、番組の内容を変更してお伝えいたします。政府を代表して、自衛隊の代表の方に来てもらいました。ささ、こちらにどうぞ……』
「え……なんで、この人がテレビに映っているんだ?……」
アナウンサーに誘導されるように1人の老人がテレビ画面の中央へと移動してきた。
この人物を俺はよく知っている。
〈自衛隊の代表〉と紹介されているのだ。恐らく、あの人物である。
衝撃の出来事に俺はテレビ画面に釘付けになってしまった。
なぜならテレビに映っていたのは石黒大将なのだから。
『どうも、私は石黒と言います。本日は政府からの発表……というよりも防衛省単体での発表という事になります。我ら自衛隊は先日のダンジョン探索で多くの仲間を失いました。これ以上、本土防衛兵力をダンジョン探索に割く事が出来ないと判断したため……』
『ダンジョン探索隊を募集致します』
「部隊を募集する。ダンジョンの中で石黒さんが言ってた事は、本当だったのか……でも………」
俺はテレビ画面から目を背(そむ)けた、ダンジョン内の出来事を思い出したからだ。この応募に参加するのかどうしたらいいんだ?そうやって頭を抱えた。
でも、ちょうどその時に玄関の方から大きな声が聞こえた。
この声は母親の声だ。
「蓮何してるの! 氷華ちゃんがもう待ってるわよ」
「は……はい! ちょっと待ってて!!」
母親の声で俺は目が覚めたよ。
またいつもの高校生活が始まる……そう思っていたが、世界が変わってしまったのだ。それを受け入れる必要がある。
良い意味でも悪い意味でも、自分だけが変わらないわけにはいかないのだから。
街灯が灯る街中。
俺は足が棒になっていても前に出し続けていた。氷華の方が疲労たまっていると思うんだけど彼女は軽い足取りのままだ。
鎧を全身に纏(まと)ったままなのに何で元気なんだ?
氷華の方をチラリと見る俺の表情は少しだけニヤついていた。
しかし笑顔を維持する気力はもう無い。
俺はすぐさま前を向いてその後は横を向くことはなかった。
でも、本当に疲れたな。
火憐が無事だって事がわかったから、緊張の糸が切れたみたいだ。
歩くだけで精一杯。頭も動かないし、心の中も空っぽだ。
暗闇の中、自宅に向かう氷華と俺の2人はただ無言で足を動かしている。
疲れているのだ。俺達は数時間ダンジョン内に居続けていたのだから当然の結果である。
まず俺が自宅に着くと軽く手を振るだけで氷華と別れを告げ玄関を開けた。
「じゃあな氷華」
「うん。おやすみなさい!」
氷華の声を聞いた後は最後の力を振り絞って、俺はドアを開けた。
でもドアを開けても家は暗闇の中だ。
だから、玄関の灯(あか)りをつけようとスイッチに手を伸ばしたんだ……。でも。
【カチャッ】
俺が触れる前にスイッチが入り照明がついた。
その灯(あか)りに照らされ、一瞬で暗闇から目の前に現れた人。それは母親だ。
「ただい……」
「蓮!」
母は怒っていた。
その姿は、死闘から生還した息子を迎える姿ではなかったよ。
いや、俺が悪い。母親にはダンジョンに行くと伝えていないから単なる夜遊びをしてきたと思っているのだろう。
母は腕を組み眉間にしわを寄せて怒っている。
「ちょっと蓮! 遅いわよ。何してたの?」
「かあさん、ただい……ま……」
「質問に答えてないわよ」
「は、はは。ご……めん、でも、少し疲れたんだ」
「何を言ってるの? 遊び疲れたって事?」
「……」
俺の体力はもう限界だった。これ以上、母と喋る体力すらも残っていなかったんだ。
体が後ろに倒れていく。もうダメだ。意識が……。
【ガタッ】
「ちょっと蓮。どうしたの!」
「……」
俺はそのまま玄関で崩れ落ちるように倒れた。母親の声が聞こえるだけで視界が暗くなっていく。
そう。ダンジョンから脱出できた、という喜びのおかげで自宅までは帰ってこれたもののもう体力の限界だったのだ。
暗い闇の中へと意識を沈めていった。
しかし暗闇の中でも母親の声が頭の中に響いてくる。うるさいな母さん。少し眠らせてくれ。
俺はもう疲れたんだ――。
でも、体力が尽きて死ぬように眠る事がこんなに心地いいなんて。
いつもは上手く眠れなかったからね。
実際に俺は深く眠ったんだ。
母親が蓮を一階のソファに引きずっている時も、制服からパジャマに着替えさせている時も、起きる様子もなく体を任せていたみたいだ。
体力をゆっくりと回復させる。本能がそうさせたみたいだ。
彼にとって明日からの高校生活を送る為に必要な事だ。
虐められていた日常とは異なる。新たな生活を開始する為に――。
―翌日の朝―
「ん~。眠い……」
結局、俺が目覚めたのは自分の部屋ではなく、リビングにあるソファの上だった。
窓の外を見てみると、陽の光が差し込んでいるので昨日はどうやら寝ていたらしい。
あれ?俺なんでここで寝ているんだろ。
昨日、玄関に着いた事までは覚えてるんだけどな。
俺は顔をしかめたまま辺りを見回した。
テレビも付いてないし、キッチンの方も料理をしている様子もない。
そんな状況の中、俺は半身を起こし首を傾けていた。
母さん。どこ行ったんだ?
もう学校へ行く時間じゃないか、いつもなら朝ご飯の支度をして俺を怒鳴りつけるのに。
あれ?もしかして今日は祝日だったかな。
俺は曜日を確認する為、スマホを取り出そうとポケットに手を入れるがそれは無かった。いや、そもそもパジャマになっていたから入ってるわけないか。
そうだ。制服のズボンは母親に着替えさせられているので、スマホの場所が分からない。
仕方なくテレビのニュースで確認しようとするが、テレビ画面に現れた人物に蓮は驚かされてしまった。
【ポチッ】
『えぇ~。本日は、番組の内容を変更してお伝えいたします。政府を代表して、自衛隊の代表の方に来てもらいました。ささ、こちらにどうぞ……』
「え……なんで、この人がテレビに映っているんだ?……」
アナウンサーに誘導されるように1人の老人がテレビ画面の中央へと移動してきた。
この人物を俺はよく知っている。
〈自衛隊の代表〉と紹介されているのだ。恐らく、あの人物である。
衝撃の出来事に俺はテレビ画面に釘付けになってしまった。
なぜならテレビに映っていたのは石黒大将なのだから。
『どうも、私は石黒と言います。本日は政府からの発表……というよりも防衛省単体での発表という事になります。我ら自衛隊は先日のダンジョン探索で多くの仲間を失いました。これ以上、本土防衛兵力をダンジョン探索に割く事が出来ないと判断したため……』
『ダンジョン探索隊を募集致します』
「部隊を募集する。ダンジョンの中で石黒さんが言ってた事は、本当だったのか……でも………」
俺はテレビ画面から目を背(そむ)けた、ダンジョン内の出来事を思い出したからだ。この応募に参加するのかどうしたらいいんだ?そうやって頭を抱えた。
でも、ちょうどその時に玄関の方から大きな声が聞こえた。
この声は母親の声だ。
「蓮何してるの! 氷華ちゃんがもう待ってるわよ」
「は……はい! ちょっと待ってて!!」
母親の声で俺は目が覚めたよ。
またいつもの高校生活が始まる……そう思っていたが、世界が変わってしまったのだ。それを受け入れる必要がある。
良い意味でも悪い意味でも、自分だけが変わらないわけにはいかないのだから。
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