54 / 123
第4章過去との決別
53奴隷王
しおりを挟む鮫島との戦いが終わった。
彼をこの世界から削除するという方法で。
■□■□
門が完全に消滅して機械音が戦闘終了を告げると、ダンフォールさんは床に尻もちをついた。
どうやら体に力が入らない様子で床に大の字に寝そべっている。
そのままダンフォールさんは俺の意識に向かって文句を言ってきた。
(少年よ。お主……Lvをもう少し上げておけ)
(え? はい。そんなに疲れたんですね)
(当たり前じゃ。Lv.1の体でLv.9999で覚える技を使ったのだからな。もう疲れた……意識を交換するぞ)
(分かりました)
俺はダンフォールさんの言う通りに、外へ意識を集中させて体を操る側になった。
すると彼が疲れた、と言った理由がわかった気がしたよ。身体中が痛かったからね。
「痛っ……」
ダンフォールさんの言うように体に負荷がかかったらしい。全身が筋肉痛のような痛みを発している。
自分1人では動けないほどだ。
しかしかろうじて首は動かせるので俺はクラスメイト達や火憐の方に視線を向けた。
鮫島を『消去』しました。って機械音が言ってたからな。
もし違っていたら俺は刑務所行きになってしまう。
するとどうだろう。クラスメイト達は本当に鮫島の存在自体を忘れてしまったらしい。
聞こえてくる会話の内容が、それを物語っている。
「あれ? 私達こんなとこに集まって何してるんだっけ?」
「そうね~。思い出せないわ……」
「あ! あれ見てよ! 蓮が床で大の字になって寝てるわよ」
「何あれ~」
どうやらクラスメイト達は自分達が何で集まっているのかも忘れてしまったようだ。
首を傾げて近くの友人と相談しているがしばらくすると掃けて皆、自分の席へと向かっていった。
俺の方はというと火憐の方向に視線を移そうとした。
でも動かなくても良かったんだ。
火憐はどうしているかなって首を動かそうとしたら、コツコツ。と松葉杖をつきながら彼女がやってきたのだから。
彼女も覚えていないようで不思議そうな顔をしている。
「ちょっと蓮……何でこんな床で寝っ転がってるのよ」
「ははは。ちょっとね。って! 火憐……」
「何?! どうしたの?」
「見えてるから」
「あっ」
顔を赤らめて下を向く火憐。
スカートの中が俺に見えている事に気がついたみたいだ。
でもこれは別に俺が悪いわけじゃない。不可抗力だ。
俺が寝そべっているのにスカートのままこちらに近づいたら見えるに決まっているだろう。
まぁこっちも恥ずかしいからすぐに手で目を覆ったけどさ。
火憐の奴、片方の松葉杖を俺めがけて振り下ろしてきたんだぜ。俺の腹に向かってさ。
【ガッ!】
「サイッッッテイね!!!」
「うっ!」
俺は意味がわからなかったよ。何ならダンジョンの時、半裸の火憐を見ても怒らなかったじゃないか!
俺は情けない声を出した後にある事に気がついた。
視界がぼやけているんだ。
あれ?だんだん視界がぼやけて。
さっきの火憐の松葉杖のせいか?そんな事ないと思うんだけど。でも火憐の顔がぼやけていく。
俺は薄れていく意識の中で火憐の顔を眺めていた。
驚きの表情を浮かべながら、こちらに向かって呼びかけている火憐の姿を。
でもその呼びかけに俺が答える事は無かった、
■□■□
「蓮! どうしたのよ!!」
火憐の声が聞こえる中俺の意識は暗闇に落ちた。
深い暗闇へと――。
しかし深い暗闇の中にあっても俺の意識はしっかりしていたよ。思考出来るくらいにはね。
俺は意識を失ったのかな。
それとも死んだ?それは無いよな。HPは大丈夫だし。まさか火憐のあの攻撃で死ぬわけないし。
そうこう考えていると徐々に体の感触が戻ってきた。しかし気絶前のような体の痛みが一切無い。
不自然なほどに。
もしかして気絶したおかげで痛みもリセットされたのかな?
俺はそう思いながら目を開けるとそこは教室では無かった。見知らぬ空間で火憐の姿も、他のクラスメイト達もいない。
「なんだここ?……」
いや、というかそもそも何も見えないんだ。
うっすらと松明(たいまつ)の灯りがついてはいるが暗くてよく見えない。
かろうじて認識出来るのは俺が椅子に座っていて前には長い長いテーブルがあるって事くらいだ。
しかもそのテーブルや椅子はまるで王様が使っている様な豪華な装飾が施されているみたいで、高校の制服を着ている俺が座ると何とも似合わない。
いや、そんな事はどうでもいいか。
「夢なら覚めてくれ!!」
大声で今の気持ちを吐き出した。女子高生に一発攻撃されただけで気絶するなんて恥ずかしいじゃないか……。
でも叫んで良かったのかもしれない。この言葉であの人が現れたんだ。
それに部屋に備え付けられた松明(たいまつ)も点火されたからね。
【ボッボッボッ!】
俺が叫んだ後に松明(たいまつ)の火が自動的に点火され、ここが何処なのかを教えてくれた。
松明の灯りが部屋全体を照らしてくれるんだ。
その灯りを頼りにして俺は周りを見渡した。
やっぱり俺の目に映ったよ。
部屋の至る所にある銅像や金貨、床に敷かれている赤いカーペット。この場所はやはり王様の宮殿だ。
という事は。
王様がいるはずだ――。
俺が前方を注意深く見つめると人影らしきモノがあったんだ。
確かに長い長いテーブルの先には誰かが座っていた。
その人物は王冠を被り、肩からは獣の毛皮で作られたマントを羽織っていた。その姿はまるで本物の王様のようだ。
じっくりと見つめていると松明が全て点火されたようで目の前の人物の表情も見えた。
優しいお爺さんだ。長い白髪や髭。失礼だが一見すると王様の容姿には見えない。
俺がまじまじと見ていると彼の方から話しかけてきた。
「お主が少年か。儂が以前『奴隷(スレイヴ)』をやっとった『ブレイン・ダンフォール』じゃりこの姿で会うのは初めてじゃな。よく民から奴隷王と呼ばれておったよ。なつかしいのぉ」
奴隷なのに王様?
え……なんだこれ?結局これは夢なのか?
俺は状況を理解できなかった。ひとまず目の前のダンフォールさんと名乗る人に直接聞いたよ。
本物のダンフォールさんなのかそれとも単なる夢なのかを確認したかったからね。
「あの……ここって夢の中ですか?」
「ははは。違うぞ少年よ」
ここは少年の意識の深淵じゃ――。
0
あなたにおすすめの小説
最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~
ある中管理職
ファンタジー
勤続10年目10度目のレベルアップ。
人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。
すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。
なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。
チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。
探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。
万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。
『異世界ガチャでユニークスキル全部乗せ!? ポンコツ神と俺の無自覚最強スローライフ』
チャチャ
ファンタジー
> 仕事帰りにファンタジー小説を買った帰り道、不運にも事故死した38歳の男。
気がつくと、目の前には“ポンコツ”と噂される神様がいた——。
「君、うっかり死んじゃったから、異世界に転生させてあげるよ♪」
「スキル? ステータス? もちろんガチャで決めるから!」
最初はブチギレ寸前だったが、引いたスキルはなんと全部ユニーク!
本人は気づいていないが、【超幸運】の持ち主だった!
「冒険? 魔王? いや、俺は村でのんびり暮らしたいんだけど……」
そんな願いとは裏腹に、次々とトラブルに巻き込まれ、無自覚に“最強伝説”を打ち立てていく!
神様のミスで始まった異世界生活。目指すはスローライフ、されど周囲は大騒ぎ!
◆ガチャ転生×最強×スローライフ!
無自覚チートな元おっさんが、今日も異世界でのんびり無双中!
異世界帰りの勇者、今度は現代世界でスキル、魔法を使って、無双するスローライフを送ります!?〜ついでに世界も救います!?〜
沢田美
ファンタジー
かつて“異世界”で魔王を討伐し、八年にわたる冒険を終えた青年・ユキヒロ。
数々の死線を乗り越え、勇者として讃えられた彼が帰ってきたのは、元の日本――高校卒業すらしていない、現実世界だった。
アラフォーおっさんの週末ダンジョン探検記
ぽっちゃりおっさん
ファンタジー
ある日、全世界の至る所にダンジョンと呼ばれる異空間が出現した。
そこには人外異形の生命体【魔物】が存在していた。
【魔物】を倒すと魔石を落とす。
魔石には膨大なエネルギーが秘められており、第五次産業革命が起こるほどの衝撃であった。
世は埋蔵金ならぬ、魔石を求めて日々各地のダンジョンを開発していった。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
貧乏冒険者で底辺配信者の生きる希望もないおっさんバズる~庭のFランク(実際はSSSランク)ダンジョンで活動すること15年、最強になりました~
喰寝丸太
ファンタジー
おっさんは経済的に、そして冒険者としても底辺だった。
庭にダンジョンができたが最初のザコがスライムということでFランクダンジョン認定された。
そして18年。
おっさんの実力が白日の下に。
FランクダンジョンはSSSランクだった。
最初のザコ敵はアイアンスライム。
特徴は大量の経験値を持っていて硬い、そして逃げる。
追い詰められると不壊と言われるダンジョンの壁すら溶かす酸を出す。
そんなダンジョンでの15年の月日はおっさんを最強にさせた。
世間から隠されていた最強の化け物がいま世に出る。
パーティーを追放されるどころか殺されかけたので、俺はあらゆる物をスキルに変える能力でやり返す
名無し
ファンタジー
パーティー内で逆境に立たされていたセクトは、固有能力取得による逆転劇を信じていたが、信頼していた仲間に裏切られた上に崖から突き落とされてしまう。近隣で活動していたパーティーのおかげで奇跡的に一命をとりとめたセクトは、かつての仲間たちへの復讐とともに、助けてくれた者たちへの恩返しを誓うのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる