チートスキルと無限HP!〜いじめられっ子は最弱職業だが、実は地上最強〜

ボルメテウス

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第5章崩れゆく世界

54 全ての元凶

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 鮫島を倒した後に俺は意識を失った。
 戦闘後すぐにじゃないよ。
 火憐に松葉杖で叩かれた事がキッカケでね。
 でも、ただの気絶じゃなかった。


 気がついたら俺の目の前に……。
 ダンフォールさんがいた――。


 彼は王の姿をしていたんだ。


 一体なにが起こっている?いや、目の前のダンフォールさんだけじゃない。
 この場所はどこなんだ?


 不安を押し殺して辺りを見渡した。
 どうやら俺が今いる空間には、数メートルもあろうかという長方形型のテーブルに豪華な椅子がある。
 しかも、なぜか周りには金銀財宝が散らばっている。


 そう。俺は目が醒めるとその豪華な椅子に座っていたんだ。
 状況が全く理解できないけど、またゆっくりと辺りを見回したよ。本当に豪華だった。
 まるで、何処かの国にある王様の宮殿じゃないか、ってくらいの豪華な室内であったのを覚えている。



 ■□■□■□



 俺が困惑の表情を浮かべながら、ここはどこ?、と声を発したらダンフォールさんは答えてくれた。
 少年の意識の深淵じゃよ、と。


 でもさ。そんなの答えになってないじゃないか。
 意味が分からないよ。
 要するにここは俺の夢だって事なのか?じゃあ目の前にいるダンフォールさんは本物か?


 俺は目の前のテーブルを見つめて、目を泳がせていた。
 要するに混乱しているのだ。
 じっとテーブルを見つめて、早く目が覚めないかな、と考えているとダンフォールさんが声をかけてきた。


「少年よ。驚いておるようじゃな」
「当たり前ですよ!」
「ははは。すまんのぅ。これでも飲んで落ち着いてくれ」


【カチャッ】
 ダンフォールさんがこちらに掌を向けると、俺の目の前に紅茶の入ったティーカップが現れた。魔法のようだ。
 それに出されたカップは高級そうな刻印が彫ってあった。


「遠慮せずに飲んでくれ」
「じゃ……じゃあ」


【ズズ】
 俺は差し出された飲み物を飲んでみた。毒でもあるまいし、まぁいいかなと。
 軽率な判断だと注意されるかもしれないが、ここは俺の夢の中だろ?
 なら何の問題もないじゃないか。夢の出来事で死ぬわけないからな。


【ズズ……】
 俺は半分ほど飲み終えると、テーブルの上にティーカップを置いて会話を続けた。


「ダンフォールさん。その姿はなんですか?」
「想像もつかないだろうな。儂は『奴隷スレイヴ』という職業でありながら一国の王じゃった」
「え……何で王になれたんですか」
「……まぁ待て。この話は長くなる。今は少年を呼び出した理由について話したいのじゃ」


 ダンフォールさんは思いつめた顔をした後に、黙り込んでしまった。
 何か重大な事でも伝いたいのだろうか?そう思うと言葉を急かすように、俺は自分から問いかけた。


「呼び出した? この場所に?……」
「そうじゃ。この場所は以前、儂が暮らしておった宮殿をイメージしておる。話すのにはもってこいじゃろ?」
「雰囲気は出ますね。で、なぜ俺を呼び出したんですか?」
「実はな。儂の意識が、以前よりもハッキリとしているんじゃ」


 拍子抜けだった。そんな事どうでもいいじゃないかって。
 俺のこの時の顔はビックリしたような表情だったと思う。
 でも、重要な事だったんだ。


「それだけですか?」
「いや、これは重要な事じゃ。この世界と儂のいた世界……ゲーム世界とが完全に混ざりつつあるという事だと思っての」


 混ざり合う。その言葉を聞いて何とも感じなかった。
 もう既にダンジョンは出現しているし化け物も人を襲っている。
 これ以上、何も起こりようがないじゃないかって。この時は思っていた。


「混ざり合ったらどうなるんですか」
「それはな少年よ。ダンジョンから化物達が出てくるという事じゃ。儂のいた世界では、毎日のように村が襲われていた」


 ダンフォールさんの言葉に俺は言葉を失った。


「そんな。化物が街を襲うって……」
「だからな少年よ。主にはダンジョン攻略を託したい。以前、石黒大将が言っておったダンジョンの封印……無謀とは思うがやるしかない」
「ダンジョンを封印……ですか?………」
「そうじゃな」
「……」
「……」


 俺とダンフォールさんの間に、暫(しば)しの沈黙が訪れた。
 想像もしていなかった提案。
 俺は、以前のダンジョンでの出来事について思い返していた。


 何回死ぬと思ったか……数え切れないほど、死を覚悟したんだ。
 正直、もう二度とダンジョンには入りたくないと思っていた。
 でも。


 俺はテーブルの上に肘を乗せてから拳を握り、それを見つめる。
 鮫島との戦闘を思い返していたんだ。
 キングをも圧倒する俺のスキル。この力なら、化け物からみんなを守れるかもしれない。


「ダンフォールさん」
「覚悟を決めたか?」
「はい。俺ダンジョンの封印に協力します」
「そうか。勧めた儂が言うのもおかしな事だが、なぜじゃ。化け物達の恐ろしさは身に染みているじゃろう?」


「だからこそですよ。あんな思いをするのは俺達だけでいい。化け物達あいつらは外に出しちゃダメだ」
「ははは! そうじゃな」
「え?」
「いや、すまんのう。愚問じゃった! ささ!! 残りの紅茶も飲んでくれ、冷めてしまうからな」
「あ……ありがとうございます」


【カチャ……】
 俺は会話を中断してティーカップに手を伸ばした。
 ダンフォールさん。紅茶が冷めてしまうって思うなら、もう少し早く促(うなが)して欲しかったです。


 伸ばした手から伝わってきたんだ。
 紅茶の生温い温度が。
 俺はぬるくなった紅茶見つめて一気に飲み干した。
 残すなんて失礼だし、ゆっくりと飲んでもいられないしな。


 飲み干した後、俺は再びダンフォールさんに問うた。ダンジョンの時も鮫島と戦っている時も感じていた疑問を。


「でも何で俺に力を貸してくれたんですか?」


 そうだ。意識があったとしても俺を助ける理由にはならないだろう。
 ふと、俺は疑問に感じてしまったのだ。
 するとダンフォールさんは申し訳なさそうに話しを始めた。


「儂らの世界とかの世界が混ざり合ってしまったのには、儂らの世界側に責任があるからなんじゃ」
「え?」


 ダンフォールさんの言葉に俺は耳を疑った。
 確か、昨日の朝のニュースでは某国の研究機関が暴走したのが原因って言っていたはずだからだ。
 ダンフォールさんは俺が困惑している様子を見て話を続けた。


「儂らの世界では大陸に複数の国があってな。その国の一つを治める魔王が厄介な奴だった」
「厄介な奴?」
「うむ。そ奴は全てを支配したかった。儂らの世界では飽き足らず、異世界までもな」
「……」
「だから奴は禁忌を犯して異世界へと侵入した。つまり、儂はこんな世界にしてしまった罪滅ぼしとして、少年に協力しているのじゃよ」
「……」


 俺は混乱していた。
 まさか、この異常事態が人為的に起こされたものだったなんて。
 驚きと共に不安も出てきた。ダンフォールさんの話を聞いているとどうやら、魔王、と呼ばれる者もこの世界に来ているらしい。
 俺は居ても立っても居られなくなってしまったのだ。


「もうそろそろ、意識を戻してもらえませんか?」
「うむ。突然呼び出してすまなかったな。では、さらばだ少年よ」


 ダンフォールさんの言葉が終わると視界が徐々に白くなっていった。
 そのぼやけた視界でも分かる。
 ダンフォールさんは険しい表情でこちらを見ていたのだ。
 まるで、これから先の悲劇を予想するかのように。 
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