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第5章崩れゆく世界
58 最弱の自信
しおりを挟む「デース?」
ダンジョン攻略部隊。俺は自衛隊が募集している部隊に入ろうと受付に訪れた。
危険なのは分かってる。でも、やらなきゃ……。
そう決心を決めて俺は受付の近くにいた自衛官に話しかけたんだ。
その時だったよ。
彼女に出会ったのは。
◆◇◆◇◆◇◆
彼女の名前はグリーシャさん。ロシア人らしい。この時は知らなかったけどね。
いきなり、笑顔で自己紹介してきたからさ。出会いはよく覚えているんだ。
「私。グリーシャとイイマース! よろしくデース!」
「は……はぁ……」
俺がタジタジになるほどの積極性。横で見ている火憐は、怖い視線を浴びせているが気にしない事にしよう。
そうやって、俺がビクビクしているとグリーシャさんからも質問が来た。
「お兄さんもダンジョン攻略しに来たんデスカ?」
「そうですね」
ものすごいハイテンションじゃないか。外国の人は、こんなんばっかなのか?
俺は苦笑いをしながら応えたよ。早く受付を済ませなきゃならなかったしね。
それにほら、火憐だけじゃなくて俺達が話しかけた自衛官もこちらをジロジロと見ている。
当たり前か、話しかけられたと思ったら違う人物と会話しているんだから。
「あの。グリーシャさん?」
「何デスカ?!!」
「早く受付しましょうよ!」
「Oh~! ジャパニーズはやっぱり真面目デスネ。私、生のジャパニーズを見るの初めてだからもっと会話したいデス!」
ハイテンションだけじゃなくて、軽い。一言一言がシャボン玉のように軽い女性だ。
俺は呆気にとられながらも会話を続けた。
「生のジャパニーズって。そんなに日本語上手いなら、何回も日本に来てるんでしょ?」
「NO! 日本語はアニメで学びました。初来日デス☆ 上司からこの部隊に参加すれば日本に滞在する金は出すと言われたのデス!」
彼女はニッコリとした笑顔をしてピースサインまでしてきた。
本当に日本に来れて嬉しい。そんな感情が感じ取れる表情だ。
彼女を見ているともう少し会話をしてもいいかなぁと思えてくるのだが、受付を早く済ませなければならない。
「ちょっと蓮。なにニヤついてるのよ」
「ご、ごめん」
横にいる火憐もなんか不機嫌になってるし。
グリーシャさんには悪いけど俺は会話を中断して、先程からこちらを見ている自衛官に話しかけた。
「受付ってどうすれば良いんですか?」
「あぁ。君も応募者かね。この紙に名前と職業を書いてくれ」
「わかりました。あと、もう一枚貰ってもいいですか?」
「友達と受けるのか? ほらよ、ペンも貸してやる。書き終わったら俺に渡してくれ。受付付近にいるからさ」
「ありがとうございます」
俺は自衛官に一礼すると急いで後ろを振り返ったよ。グリーシャさんとの会話を急に止めちゃったからね。
そしたら案の定、彼女は悲しい目をしながら俺を見つめていた。
「ジャパニーズ。私の話つまらなかったデスカ?」
「いや!そんな事ないですよ。それよりほら! 応募用紙です」
「Oh! 私ジャパニーズやっぱり好きデス」
「あはは。お互い、選考頑張りましょうね!」
「頑張りマス!」
彼女は笑っていた。
でも、隣にいる火憐は笑ってなかったんだ。松葉杖で俺の膝を叩いてきた。
「私の分は?……」
「ははは。ごめんごめん」
火憐の後ろから禍々しいオーラが見えるような気がしていた。
俺は火憐に書いてもらってから紙を受け取った。そしてついでに。
「書いたら俺が受付に出しときますよ。はいペン」
「ありがとうございマース!」
グリーシャは俺から紙とペンを受け取るとその場で急いで名前と職業を書いた。
その紙をチラリと見ると、流石に字までは上手く書けないらしい。全てひらがなで書いてある。
ん。なになに?……【職業】商人?
「書けマシタ! お願いしマス!」
「は……はい」
彼女は書き終わると元気よく俺に紙を渡してきた。
商人か。そう言えば初めて見る職業だな。
俺は首を傾げながら自身の紙にも記入して、受付の自衛官の元へと向かった。
そして紙を渡すとさ、応募者が少ない事もあって最初は感謝してくれるんだ。ありがとって。
でも、自衛官は俺達の職業を見ると馬鹿にし始めたんだ。
「あの! 書き終わりました」
「どうもありがとね。どれどれ【職業】商人に魔導師と……奴隷?」
明らかに自衛官の態度が変わった。顔をニヤつかせて下を向いたのだ。
「どうしたんですか? どこか記入漏れでも」
「いや。記入漏れじゃないんだけどさ。君ほんとにいいの? 死ぬよ?」
「はい?」
「もうそろそろ発表されると思うんだけどさ。今からやるのは選考っていうより、実戦なんだよ」
自衛官は腰に手を当ててバカにしたように話してくる。
奴隷はいらない、そんな表情だ。
「はぁ」
「君はダンジョンに入った事が無さそうだから、分からないと思うけど、ダンジョンでは装備品が重要なんだ。だから今回は、早速ダンジョンに侵入してもらって装備品を探してもらう」
「自分達で、ですか?」
「もちろんさ。でも安心してくれ、こっちで応募者を3人1組の班に分けるからさ。その為に職業を書いて貰ったんだ。戦力を均等にさせる為にね」
「なら、大丈夫ですよ」
「何が大丈夫なんだ?君、奴隷なんだろ?」
自衛官の問いに一呼吸置いてから俺は答えた。
「俺はただの奴隷じゃありませんから」
自衛官の疑念の瞳を俺はジッと見つめていた。
何でだろうな。自信が湧いてきたんだ。
ダンジョンで神猫を倒したのもあるけど、何よりも王である鮫島に勝ったっていう事実。
その事実が俺の自信を支えていたんだ。
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