チートスキルと無限HP!〜いじめられっ子は最弱職業だが、実は地上最強〜

ボルメテウス

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第5章崩れゆく世界

68商人のスキル

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 石黒大将の演説。
 それは、ダンジョン攻略部隊への応募者の士気を上げた。
 自分達が亡き自衛官達の跡を継ぐのだと。


 ◆◇◆◇◆◇◆


 石黒の演説が終わるとグラウンドは静まり返っていた。
 皆、彼の次なる言葉を待っているのだ。
 ダンジョン攻略を開始する、という言葉を。しかし、その言葉を石黒は発さなかった。
 代わりに彼は、もう少し待ってくれと言ってきたんだ。
 決意を決めた俺達に向かって。


「諸君ら全員に死なない覚悟があるようじゃな。よし! もうしばし待ってくれ。じきに号令をかける」
「「「イエッサー!」」」


 自衛官の声がグラウンド中に響き渡る。
 石黒はそれを聴くと再度敬礼し、十字架から地面へと飛び降りた。


 スタッ……。


 そして右手を巨大な十字架にかざしたんだ。するとその十字架の様子が変わった。


 スゥゥゥゥゥゥゥ……。


 彼が十字架に手をかざすと徐々に小さくなっていく。まるで手品みたいだ。
 最終的には片手に収まる程の大きさになった。


 石黒はそれを自らのポケットに入れる。そのポケットには他にも光に反射する物質が見えたんだ。
 恐らく、十字架以外にも貴金属類があるんだと思う。


「なぁ蓮くん」


 俺が彼のポケットに注目していると話しかけてきたよ。
 こちらを振り向かず、西園寺が横たわっている方を向いて。


「儂は今から西園寺かれを治療するつもりじゃ」
「あの様子だと戦えそうにありませんからね」


 俺がそう言うと石黒はニンマリとした表情でこちらを見てきた。


「いや。戦ってもらうつもりじゃよ」
「え?……。でも、さっき治療って……」


 俺の困惑した表情を見て石黒は笑っていた。
 腹を抱えながら顔をほころばせている。


「ははは。なにも病院で治療しようってわけじゃないさ。儂の治癒魔法で治すんじゃよ」
「治癒魔法? そんな便利な魔法があるんですか」
「使える者は少ないけどな。蓮君もさっき見たじゃろう? 儂が十字架のサイズを変えたのを」
「……」
「あれも魔法の一種なのじゃよ。儂は、騎士ナイトでありながら魔法が得意での」
「じゃあ、スキルも西園寺のような……」
「ははは。魔法系のスキルという事かな? それは違うぞ。まぁ、ダンジョン攻略の時に分かるじゃろうて」
「そうですか」


 石黒は思い出したように西園寺の元へと顔を向けた。


「おっと……。じゃあ儂は治癒魔法をかけてくるかの。主も早く後ろを向いてやったらどうじゃ? 彼女らが心配してあるぞ」
「え?」


 そう言うと石黒は西園寺を治療するために歩いていった。
 俺の方を向かずにゆっくりと。



「お~い」
「ちょっと蓮!」


 石黒が歩いて行くと、ちょうど俺の後ろから氷華や火憐の声が聞こえてきたんだ。


 ガシャンガシャンガシャン!

 コツ……コツ……コツ……。


「蓮大丈夫だった? 怪我はない?」
「また無茶して……怪我したらどうするのよ」


 彼女達の声と鳴り響く鎧の音。俺はすぐに気づいたよそれで振り向いたらさ。
 大剣を背中に装備して走ってくる氷華に、少し怒りながら心配してくれる火憐がいたんだ。
 俺は二人に向かって先に話しかけた。



「大丈夫。ちょっと手を切っちゃったけどね。ははは」
「「もうっ……大丈夫じゃないよ。ほら見せて!」」
「えっ!? ちょ」


 氷華と火憐は俺の手首を掴むと手前に引いて傷口を見てきたんだ。
 西園寺の刀を掴んだ時にできた傷をね。


 ドロッ……。


 思ったよりも傷口は深かった。
 やはり、無装備の状態で装備有の相手と戦うのは分が悪いらしい。


 その傷を見た氷華は驚き、火憐は怒っていた。



「ちょっとした傷じゃないよ……」
「怪我してるじゃない!」
「あはは。そうだね……思ったより深い……か」
「ごめんね……私のせいで……」
「いや、俺が引き受けた勝負だし! それに石黒大将に頼めば治療してくれると思うから」
「……」


 氷華は責任を感じているようだ。顔を地面に向けたまま上げようとしない。
 横からジッと見ている火憐も何か言いたげだが、グッと押し殺している様子だ。
 火憐も分かっているのだ、氷華が悪くないことを。
 でも。

 どうしよう……。気まずいな。正直、痛くもなんとも無いんだけど。


 俺がどうしようかと悩んでいたその時だった。俺達が話している横から人影が見えたんだ。
 スラッとした体型の女性。
 俺と西園寺の戦闘をワクワクしながら見ていたグリーシャさんが近づいていたのだ。



「OH! これは痛そうデスネ」
「グリーシャ……さん?……」


 その人影の正体はやっぱりグリーシャさん。横から腕を組んで、手の傷を見てきたんだよ。
 その表情は明るくて血を見ても動揺していなかった。


「やっぱりサムライとの戦いは、無事じゃ済まないデスネ。私が治療シマショウカ?」
「え?……。グリーシャさんも治癒魔法が使えるんですか」
「治癒魔法? HAHAHA! 使えマセンヨ。その代わりにこれがありマース!」
「これって」

 トポッ……。


 グリーシャさんはそう言うと俺に見せてきたんだ。ゲームでよく見るアイテムのポーションだ。


 彼女は笑顔のまま会話を続ける。



「これは回復ポーションデース! ロシアのダンジョンに潜った時に取ってきマシタ!」
「こんなアイテムがあるんですね。でも、どこからだしたんですか?」


 グリーシャさんは、よくぞ聞いてくれた、と言わんばかりにニヤつきながら教えてくれた。
 彼女の持つスキルを。


「それはデスネ。見ててクダサイ!!」


 グリーシャさんは何も無いはずの空間へと手を伸ばした。
 すると彼女の手の周りが歪んでいくではないか。歪んだ中にさらに手を入れると何処かに入ったかのように手が見えなくなっていく。


 ズズズ……。


「ありマシタ!」


 そこからゆっくりと手を引くと、彼女の手にはもう1つポーションがあった。


「グリーシャさんってマジシャンなんですか?」
「NO! 違いマース! これは私のスキル……空間保存セーブデース!」
「すごいな。そんなスキルもあるのか」
「早くポーション使いマショウ? 血が出てマス」


 トポッ……トポッ……トポッ……。


 グリーシャさんはフラスコを傾けて、ポーションを傷口にかけてくれた。
 するとどうだろう。手品みたいに傷口が治っていくんだ。


 スゥゥゥ……。


 傷口から白い煙を出しながら徐々に傷口が塞がっていく。それを見る氷華と火憐はホッとした表情を見せていた。


「よかったぁ」
「ふっ。よかったわね」


 そして、安堵している俺に代わって氷華がグリーシャさんにお礼を言っていたんだ。


「ありがとう。グリーシャさん。ほんとは、私が治療しなきゃダメだと思うけど。でも、ポーションは貴重なんじゃないの?」


 氷華は少し心配そうな顔でグリーシャさんを見つめている。
 確かに、ダンジョンを探索している氷華ですら発見出来なかったアイテムだ。
 ポーションといえども貴重なんじゃないのかな?


 俺も申し訳ないなと思い、グリーシャさんを見つめた。
 でも、グリーシャさんかのじょはそんな俺達の心配を笑い飛ばしたんだ。


「HAHAHA! 安心してクダサーイ。ロシアのアイテム保管庫から勝手に出してマース!」



「「え?……」」



 グリーシャさんの言葉を聞いて、俺と氷華と火憐の表情は固まった。
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