チートスキルと無限HP!〜いじめられっ子は最弱職業だが、実は地上最強〜

ボルメテウス

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第5章崩れゆく世界

75守り神

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「なんで私のペットを殺したの?」


 床に座っていた俺。そんな俺の前に突然少女が現れたんだ。
 赤いワンピースを着て俺を見下ろす少女は悪魔のような笑みを浮かべている。
 まるで。


 ――人間じゃないみたいに。


 ◆◇◆◇◆◇◆



「はぁ……」


 俺はため息をついた。
 せっかくケルベロスを倒して一息つけると思ったのに、ゆっくり出来なさそうだったのにさ。ため息をついてもしょうがないだろ?
 顔を歪ませながらもその少女の問いに応えたよ。


 もし化け物ならケルベロスの時みたいに倒せばいいかなって、この時は思っていたから。


「自衛官達を守る為だ」
「あの人達……あの人達のせい?……」


 すると少女は俺の後ろを指差し自衛官を見つめている。
 その表情は怒りに満ちていた。
 興奮を隠せずに目を見開いて一心に見つめている。


「あんなザコ達のせいで……死んじゃったのか……」


 そんな少女は前を見つめたまま小さな声で呟(つぶや)いたんだ。悲しそうな声だった。
 そんな彼女は前かがみになって俺に近づいてくる。


 ピタッ……。


 終いに彼女は俺におでこを押し付けて囁(ささや)いたのだ。
 先程までとは違い無邪気な声で。


「お兄ちゃん奴隷スレイヴなんだ。あんなに強かったのに。ふふふ。後で……遊ぼうね」


 不気味な事を言う。
 女の子に俺は後ずさってしまった。得体の知れない化け物に俺の心は動揺していたんだ。


「……君は……何者なんだ?……」
「ふふっ」


 俺が質問をすると彼女はニッコリとした笑顔でこちらを見つめるだけで何も言わなかった。
 不自然なくらいの笑顔で違和感を感じるほどだ。
 そんな時だった。
 俺と少女に向かって足音が聞こえたんだ。恐らく、一人の自衛官だと思う。
 さっき俺が声をかけたからな……。


 ダッダッダッダッダッ!


「おい! 大丈夫かい?」


 足音共に聞こえる自衛官の声。


「こっちへ来るな!」


 俺は振り向いて警告した。
 でも、もう手遅れだった。俺の声はもう聞こえていないのだろうから。


「え? それってどういう……え……」


 俺は後ろを振り向いて自衛官に警告した。
 でも……。


 願いは叶わなかった……。


 コツ……。


 足音が止んだ。
 自衛官は立ち止まってくれたのだが、俺の警告を信じて立ち止まったんじゃない。
 立ち止まらざるを得なかったのだ。


 振り向いた先で俺の目に写ったのは自衛官と……。


 ――少女だった。


「カハッ……」 
「おじさん。私に気づかなかったみたいね」


 ズボッ……。


「化け物め……」
「なにその言い方。おじさんのせいで私のケルベロスが死んだんだよ?」


 冷淡な口調で語る少女。
 俺は目を疑ったよ。自衛官の前に少女が移動していたんだ。
 しかも彼女の腕が彼の腹部を貫通していた。即死するほどまで深く……。
 少女は自衛官が絶命するのを見ると高らかに馬鹿にしていた。


「おじさん弱いね。あっ……村人ヴィレジャーか~。死んで当たり前だね!」


 彼女の表情はここからでは見えないが声は明るく楽しげであった。
 そして腹部を貫かれた自衛官は徐々に白く。透明になっていく。
 どうやら、プレイヤー側も死ぬと消えるようだ。結局、その自衛官は光となって消えた。


「ハハハ……。ハハハハハハハハハ!」


 突然笑い出す少女。
 彼女の黒く長い髪が金色に……赤いワンピースが黒いドレスになっていく。


「なんだ。あのステータスは……」


 そして、その少女のステータスが見えたんだ。
 胸に手を置いてもらわなきゃ見えないはずのステータス、何もせずに見えたという事は、あの少女は化け物側だって事。
 そのステータスを見て俺は震えたよ。


 ――全滅するんじゃないかって。


―――――――――――――――――――――――
 ● 皇女【リリアン】                                                                     Lv.500
 ○HP…『Error』
 ○状態…『物質無効』
 ○殺人カウント…『Error』

 憂国ゆうこくの皇女。元々はたみから慕われる統治者であった。
 しかし、老いてゆく自身の姿に絶望し、若さを維持する為に禁忌を犯した……人外となる禁忌を……。
―――――――――――――――――――――――


(嘘だろ……Errorって何だよ)


 俺がステータスを見た時には自衛官達も少女が仲間を殺害したことに気づいたようだ。
 しかし、自衛官達はステータスがまだ見れないのかもしれない。
 少女と彼等の間には距離が存在するからだ。
 そのせいか本来なら撤退すべきはずなのに、石黒大将の合図で一斉に銃口を向けた。


(ダメだ。逃げろ……逃げてくれ……)


 俺は床から立ち上がると彼らに向かって大声で叫んだ。


「逃げてくれ!!」


 と。
 しかし忠告は聞き入れられなかったんだ。


「大丈夫だ蓮君、儂達と少女の間には距離があるからのぅ」


 石黒大将は俺の忠告を無視して命令を続行する。


「総員! 構えろ!」
「「イエッサー!!」」


 カチャカチャカチャ……。


 銃口を一斉に向けられた彼女。
 しかし、そんな状況にも関わらず銃口の先にいる彼女は腕を組んで首を傾(かし)げていたんだ。
 その表情は恐怖ではなく疑問を表していた。


「おじさん達、そんなオモチャで私と遊ぶつもり?」
「オモチャだと? 試してみるか」


 自衛官の一人が少女を威嚇(いかく)した。
 しかし彼らは言葉とは裏腹に手が震えていたんだ。当たり前か……あんな死に方を見れば誰でもそうなる。


 俺も恐怖で体が動かなかったんだから。


 そんな緊張感が漂(ただよ)う中で少女は突然笑い出したんだ。まさに悪魔の笑い声だったよ。
 腹を抱えながら笑うその姿は天使のようだったけどさ。


「ハハハハハハ!!!」
「な……何が面白い!」
「オモチャで私を倒せると思ってるなんておかしいでしょ?」
「……何だと」


 自衛官の怒りは対照的に女の子はニヤリと笑うと両手を挙げて挑発した。


「うん……。まぁいいよ。遊んであげる」
「構えろ!」


 カチャカチャカチャ!


 その挑発は成功したようだ。彼女に向かって隊員全員が銃口を向ける。
 そして……。


「打て!」


 パパパパパパパパパパパパパパパパ!


 銃声が響き渡る。
 自衛官達はどうやら俺の事など気にしていないようだ。
 まぁケルベロスとの戦いを見て俺に銃弾が効かないって分かったんだろうな。


 俺は急いでスキルを発動したよ。
 集中が切れてケルベロスを倒した時の状態が解けていたんだ。


ALL CHANGEオール・チェンジ発動します】
【HPから防御値に10万移動します】


 キンキンキンッ。


 スキルを発動した俺にとって銃弾は意味をなさない。全て弾(はじ)き返す。


 でも……。


 俺だけじゃなかった。少女にとっても銃弾は意味をなさなかったんだ。


「な、なんだあれは……」


 自衛官が困惑の表情を浮かべる。
 なぜなら少女は笑顔のまま銃撃の中で立っていたからだ。
 しかも弾(はじ)いてるんじゃない。銃弾がとおりぬけている。


(あれはケルベロスの数百倍手強いぞ)


 その光景を見て俺は足を前に進めたんだ。
 もう怖いとか言っている場合じゃない。少女が動き出す前に倒さないと……。



ALL CHANGEオール・チェンジ発動します】
【HPから攻撃値に1000万移動……防御値に……】


 俺がスキルを発動しようとしている。その時だった。


「お兄ちゃん? 後で遊ぶって言ったでしょ?」
「え?……」


 少女が急に俺の前に現れたんだ。
 ジャンプしたのか分らないが目の前に彼女の顔があった。しかもその表情は冷たいものだったのだ。


 そして……。


 ドガッッッ……!!


 横腹に一蹴り。その勢いは凄(すさ)まじく俺は壁に叩きつけられたんだ。
 まだ十分な数値を防御値に割り振っていないのにさ。


「カハァッ……」


 久し振りにまともな攻撃を喰らったよ。


 パラ……パラ……。


 そしてそのまま床に落ちた俺は脇腹を抑えながら少女の背中に手を伸ばしたんだ。
 銃弾の雨の中で自衛官達にむかって歩く少女の後ろ姿に向かって。
 そんな銃撃の中……。少女は大声で自衛官達に問うた。
 なぜ逃げないのかと。


「おじさん達? 今の見ても逃げないの? ケルベロスを倒したお兄ちゃんを吹き飛ばしたんだよ?」
「だからこそだよ。お前みたいな奴を放置するわけにはいかねぇだろ! それに俺らは単なる一般人じゃねぇ! 俺らは守り神なんだ!」


 それを聞いた少女は口に手を当ててニヤリと笑った。


「おじさん達……本当に面白いね……」


 少女は自衛官の答えを聞くと少し下を向いた後に満面の笑みを浮かべて前を向いた。


「じゃあその守り神とやらは何秒戦えるのかな?」


 ――悪魔のような笑みを浮かべて。
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