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第5章崩れゆく世界
76暗闇に潜む皇女
しおりを挟む「くそ。何で、何でだ!」
パパパパパパパパパパ!
耳障りな銃撃音が地下鉄構内に響き渡る。
リリアンと呼ばれる少女に鉛玉をぶち込もうとしているが、通過してしまうのだ。
そこには人の悲鳴も血しぶきが上がる音も聞こえない。聞こえるのは自衛官達の困惑する声のみだった。
◆◇◆◇◆◇◆◇
「い……石黒大将! これからどうしますか!」
俺がリリアンは吹き飛ばされて脇腹を抑えている間ら自衛官の一人が石黒大将の判断を仰いでいた。
リリアンという少女が刻一刻と前に進んでいるのからだ。
少女はその状況を楽しんでいるように見える。両手を広げながら自衛官達と会話をしていた。
「おじさん達。いつまでもそのオモチャに頼ってないで、肉弾戦しましょうよ」
「黙れ! ふざけたステータスしやがって!」
少し黙った後にリリアンはニヤついた。
「私のステータス見えたの? へぇ。もうそんな位置まで近づけたんだぁ」
「あぁ。バッチリ見えてるさ!」
「でも、あなた達ほんとうに逃げ出さないんだね」
「言っただろ。俺らは守り神。何としても国民を守らなきゃならねぇ! お前みたいな奴はここで食い止める!」
「「おおっ!」」
自衛官一人のセリフに他の隊員も同調する。それを白(しら)けた顔で眺めていたのは少女であった。
「元気だね~。じゃあ、もうそろそろ本気を出させてもらおうかな?」
コツ……。
少女は銃弾の中で目を瞑り静かに立ち止まった。
階段側からくる吹き抜ける風が彼女の金色の髪をたなびかせる。
そして……。
「じゃあ、まずはそのおじさんから行こうかな」
「なにっ?」
少女は目をゆっくり開けると真ん中の自衛官を指差した。ニッコリとした笑顔で。
バッ……!
「ふふっ。こんにちは」
すると急に指を指された自衛官の目の前に少女が移動してきたのだ。
「「え?……」」
パパパパ……パ……。
自衛官達全員の視線が真ん中の少女へと集まる。この時に彼等は銃撃するのを諦めてしまった。
もう無駄だと悟ったのだろう。
その視線の先にいる少女は笑顔のままゆっくりと手を自衛官の腹に近づける。
ゆっくり……ゆっくりと……。
少女の手が自衛官の腹に触れそうになるその時。
黒い影が少女に迫っていた。
俺はスキルを発動したんだ。
【ALL CHANGE発動します】
【HPから防御値へ1000万ずつ移動します】
何とか間に合った。少女に迫り来る黒い影。それは。
――俺だ。
「やめろよ。これ以上殺すな」
俺は少女の背中まで飛んで、勢いよく脇腹を殴ってやろうと思った。さっきのお返しだ。
力を込めて右拳を振り抜く……。
しかし……。
スカッ。
右拳は少女を通り抜けた。彼女の髪にすら触れることが出来ていない。
驚く俺。それを見る彼女は微笑(ほほえ)んでいる。
「お兄ちゃん。バカなの? 私に物質攻撃は効かないから」
そう言うと少女は俺の横腹に回転蹴りを食らわせてきたんだ。
勢いよく俺の腹に命中したよ。
でもね。もうあまり効かないんだ……。
スキルを発動しているから。
ガッ!
鈍い音が鳴り響く。
それを聞いた少女は驚いた顔をしていたよ。
何で吹き飛ばないんだ? って顔でさ。
「お兄ちゃん。何したの?」
「さぁね」
「ふ~ん。でもさどうするの? 私はお兄ちゃんを倒せないみたいだし……お兄ちゃんは私を倒せないよ……」
「攻めは守り神にお願いするさ」
リリアンは驚いた顔で自衛官達を指差した。
「え? あのザコ達に任せる気!?」
「あぁ。そうだ!」
「ハハハハハ! 人間って本当に面白いなぁ!」
嘲笑(あざわら)う少女。俺はその先にいる石黒大将を見つめていた。
すると彼は地面に向けた顔をゆっくりと上げて、部下達に指令を下したんだ。
「総員! 儂にMPを!」
「「イエッサー!」」
隊員達の返事を聞いて石黒大将は微笑(ほほえ)む。
しかしその表情はどこか寂しげだったんだ。恐らく、先程殺された自衛官を思っていたんだろう。
そんな石黒大将は少女を睨(にら)みつけながら呟いた。
「守り神の力……見せてやろうかの……」
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