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第6章過去転移
107狩人の思い出
しおりを挟むー15年前・狩人の村ー
ガリア王国軍の襲撃で大多数の同胞を失った狩人であったが、サシャのいる村は王国の外れでひっそりと暮らしていた。
◆◇◆◇◆◇◆◇
「走れぇええええ!」
無邪気に笑う少女サシャ。
この時はまだ幼く、王国軍の侵攻も理解していなかった。
そんな彼女はオオトカゲに跨り前方を指を指し、少女は楽しそうにオオトカゲの首に抱きついている。
村からでるなと釘を刺されているので気晴らしにオオトカゲに乗っているのだ。
本来、幼子はオオトカゲに追いつく事すら困難である。
やはり狩人は筋力や判断力も常人とは比べ物にならないのであろう。
サシャはその強靭な筋力を活かしてオオトカゲの首の向きをコントロールして操っている。
「あはは! 楽しい~」
「ウギィィィィイ!」
オオトカゲにとっては迷惑でしかない。
何が起きているのか分からないオオトカゲは全力疾走のまま森を駆け抜ける。
大樹の根を潜り抜け、ぶら下がるツルを避け、豪快に突き進んでいた。
しかし、しばらくするとオオトカゲは何かにぶつかったのだ。
それは巨大な黒い塊。
オーガである。
「ウギィィィィ……」
鋭い牙に真っ赤な目。
数メートルはあろうである体格を起こしてこちらを睨みつけるそれにオオトカゲは怯えている。
普段は大人しいオオトカゲにとってみればオーガは天敵だからである。
オーガにとってみればオオトカゲなど単なる餌にすぎない。
「あれ? どうしてとまっちゃったの?」
対するサシャはオーガを見てもビクともしなかった。
しかしそれは単なる無知である。
森の中を自由自在に動き回る事のなかった彼女はオーガの危険性など知るよしもない。
彼女はオオトカゲの顔を引っ張ったり、お尻を叩いているが全く動こうとしない。
ただ震えている。
「オォオオ……」
先に動いたのはオーガだった。
ゆっくりと立つと近くにあった木を引っこ抜いて上へと振りかざした。
「わぁ。すごいや」
オオトカゲとサシャをすっぽりと影が覆った。
その時である。
オオトカゲが動いたのは。
「ウギィィィィ!!!」
命の危険を感じたオオトカゲは急いで周り右をして走り出した。
オーガの攻撃が明らかだったからである。
ちょうどそれと同時に振り下ろしたオーガの大木は地面へと振り下ろされた。
ドンッ……。
地面が揺れるほどの衝撃である。
そんな攻撃が立て続けにサシャ達を襲った。
(何この化け物……)
この時はサシャの目にも涙が浮かんでいた。
彼女が振り返ると目に入るのは大きな穴の空いた地面。先程オーガが叩きつけた箇所が原型を留めていない。
(私達も潰されちゃうよ)
サシャがオオトカゲの首をぎゅっと抱きしめると、オオトカゲは悲鳴をあげながら必死に逃げた。
「ウギィィィィ!!!!」
複雑に入り組んだ森をジャンプしたり、滑り込んだりしながらオーガの攻撃を避け続ける。
命のかかった逃亡戦だ。
オーガは厄介だ。
避けても避けても追いかけてくる。
そして、大きな木を叩きつけてくるんだ。
ドンッ。ドンッ。
大地は揺れ、巨大な穴が出現していく。
オーガが近づくと鳥やその他の化け物まで散り散りに去って行くのだ。
命の危機……。
サシャはこの時初めてスキルを発動した。
しかし、その瞳は絶望を表していた。本当は村の場所を確認しようとしただけなのに。
その目に映ったのは。
(何よこれ……)
前方から迫り来るオーガ数匹だったのだ。
少し騒ぎすぎたらしい。
後ろから追いかけてくるオーガの音を聞いて、他のオーガも集まってきたのだろう。
しばらくするとオオトカゲも気づいたようである。
走るのをやめてサシャ達はオーガに囲まれた。
(もう終わりよ)
サシャの目の前が真っ白になりかけたその時である。
頭上の大木の枝から青年の声がした。
透き通った声はサシャが聞いたことのないものだ。少なくとも狩人の村の人間ではない。
「そこまでだ。人が昼寝をしている時に……。うるさいぞ」
サシャが見上げるとそこにいたのは、剣をオーガに向ける勇者アーサーの姿があった。
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