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14 パラダイス・ロスト◇-1
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「もう聖女は不要だ。国から消えろ」
「お姉様ご心配なく!婚約も解消ですの!」
庭園に訪れた二人、ハインリヒ第三王子と妹のアンナはそう告げた。
「どういう…意味…?」
私が聞き返すと、ハインリヒは舌打ちをした。
「陛下が亡くなった。よって聖女なんて古臭い制度、もういらない。強制されたお前との婚約もこれで終わりだ」
「……?お父様…亡くなった…?」
突然の事で、何が何やら分からない。
「"白痴"のお姉様に分かりやすく言いますの!ハインリヒが皇帝になりますの!」
アンナは微笑みながら説明した。
「……?」
「よーするに、外に出ても良いってことですの!」
けど、何を要約したのか全然分からない。
「外……?」
「お姉様を閉じ込める役職も、怖ぁいお父様も"消え"ましたの!この帝国から出て行くことが出来ますの!」
今更、私を白痴扱いする事に何か思ったりしないけど……消えた……?
「どうして…お父様…消え…る?」
◇◇◇◇◇◇◇◇
「事故ですわ、事故!それは痛ましい事故でしたの!」
何を言われているのか理解できなかった。
ハインリヒは、皇帝になると言う。
お父様……皇帝は事故で消えたと言う。
そして、それを笑顔で話すアンナ。
……ああ、そうか。
「……お父様は、殺──」
「あまり余計な言葉を口にするなよ、マナ」
私の言葉を遮るハインリヒ。
もう十分だった。
……殺したんだ、実の父親を。
血の繋がった私の家族を。
「何故……お父様……は」
「説明する必要があるか?お前に?」
「知らない方が良いこともありますの」
「……っ」
言うつもりは無いらしい。
私は呆然と、ただ、父が亡くなった事実を感じていた。
もう会えないと言う事実だけが、私の目の前にあった。
何もかもから、切り離されたような気がした。
「……わかる、ました…騎士…一人…連れて行くます…いい?」
頼れるのはオードしか思いつかなかった。
「さ、さっさと出て行くといいですの!」
「生かしておくだけで感謝しろ。まあ、宮殿の外に出たところで、暴君の娘が無事に国外まで行けるかは、知った事では無いが、くくっ」
妹のアンナは愉快そうに微笑み、婚約者だったハインリヒは、見下すように言う。
悔しい、でも今は自由を得たこと、それだけで十分だと思うしかなかった。
オードのお陰で彼らが何を言っているのか聞き取れるようにもなった。
もう、私をここへ留めるものは何もない。
唯一の肉親すら、この世から居なくなってしまったんだから。
「なんだ?そら、早く負け惜しみの一言でも言ってみろ」
「…ない…言葉」
「……お姉様、悔しくないんですの?」
「……意味…ない」
「おかしいですの!これだけしてるんですの……なんとか言ったらどうですの!」
『いえ、げるめ、えふしゅふぇけて』
「また訳の分からん言葉か」
「……なんて、言ったんですの?」
「貴方達…それ、を後悔する」
「はははっ!言ってろ!所詮ただの小娘、何するものぞ!」
「……あの正義の味方気取りと、さっさと国を出るといいですの」
嘲笑うハインリヒと、俯いたアンナに背を向けて、私は庭園の外へ一歩を踏み出した。
「お姉様ご心配なく!婚約も解消ですの!」
庭園に訪れた二人、ハインリヒ第三王子と妹のアンナはそう告げた。
「どういう…意味…?」
私が聞き返すと、ハインリヒは舌打ちをした。
「陛下が亡くなった。よって聖女なんて古臭い制度、もういらない。強制されたお前との婚約もこれで終わりだ」
「……?お父様…亡くなった…?」
突然の事で、何が何やら分からない。
「"白痴"のお姉様に分かりやすく言いますの!ハインリヒが皇帝になりますの!」
アンナは微笑みながら説明した。
「……?」
「よーするに、外に出ても良いってことですの!」
けど、何を要約したのか全然分からない。
「外……?」
「お姉様を閉じ込める役職も、怖ぁいお父様も"消え"ましたの!この帝国から出て行くことが出来ますの!」
今更、私を白痴扱いする事に何か思ったりしないけど……消えた……?
「どうして…お父様…消え…る?」
◇◇◇◇◇◇◇◇
「事故ですわ、事故!それは痛ましい事故でしたの!」
何を言われているのか理解できなかった。
ハインリヒは、皇帝になると言う。
お父様……皇帝は事故で消えたと言う。
そして、それを笑顔で話すアンナ。
……ああ、そうか。
「……お父様は、殺──」
「あまり余計な言葉を口にするなよ、マナ」
私の言葉を遮るハインリヒ。
もう十分だった。
……殺したんだ、実の父親を。
血の繋がった私の家族を。
「何故……お父様……は」
「説明する必要があるか?お前に?」
「知らない方が良いこともありますの」
「……っ」
言うつもりは無いらしい。
私は呆然と、ただ、父が亡くなった事実を感じていた。
もう会えないと言う事実だけが、私の目の前にあった。
何もかもから、切り離されたような気がした。
「……わかる、ました…騎士…一人…連れて行くます…いい?」
頼れるのはオードしか思いつかなかった。
「さ、さっさと出て行くといいですの!」
「生かしておくだけで感謝しろ。まあ、宮殿の外に出たところで、暴君の娘が無事に国外まで行けるかは、知った事では無いが、くくっ」
妹のアンナは愉快そうに微笑み、婚約者だったハインリヒは、見下すように言う。
悔しい、でも今は自由を得たこと、それだけで十分だと思うしかなかった。
オードのお陰で彼らが何を言っているのか聞き取れるようにもなった。
もう、私をここへ留めるものは何もない。
唯一の肉親すら、この世から居なくなってしまったんだから。
「なんだ?そら、早く負け惜しみの一言でも言ってみろ」
「…ない…言葉」
「……お姉様、悔しくないんですの?」
「……意味…ない」
「おかしいですの!これだけしてるんですの……なんとか言ったらどうですの!」
『いえ、げるめ、えふしゅふぇけて』
「また訳の分からん言葉か」
「……なんて、言ったんですの?」
「貴方達…それ、を後悔する」
「はははっ!言ってろ!所詮ただの小娘、何するものぞ!」
「……あの正義の味方気取りと、さっさと国を出るといいですの」
嘲笑うハインリヒと、俯いたアンナに背を向けて、私は庭園の外へ一歩を踏み出した。
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