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第一幕
06 デイ・ドリーム・ビリーバー.2◆
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「どうしたの?おーど?」
聖女様は首を傾げた。
「聖女様、この部屋のお香はいつからあるんだ?」
「ずっと前…これあると…いつも頭…はっきりしない…でも…なくなる…頭痛い…吐きそう」
この香りは、スラムでよく嗅いだことがあるものだ。
まさか宮殿にはないだろう、という先入観で、すぐには気が付かなかった。
漂う煙は麻薬の類、庭園に植えられた植物もよく見ると一部は原料になる物。
そして、中毒者がどうなるのかも俺はよく知っていた。
やる気がなくなり、外へ出ず、そして会話は出来ても、まともな返答が出来なくなる。
さらに常用者には中毒症状が起こる。
まさしく聖女が語ったように。
「聖女様、この香りはあまり吸わない方がいい、頭が痛くなっても我慢するんだ」
「私…病気だから…お父様…用意…した…これ無い…調子悪い…頭痛い」
これを陛下が用意しているとなると、いよいよキナ臭い。
……あまり強引に言ってはダメか……まさか父親の所為だとは言えないしな。
唯一の肉親の所為で苦しめられているなんてことを、どうして説明できるだろう。
理解できない者ならまだしも、言い方に気を付けなければ、その含意を彼女が察してしまうだろうし。
「……いいか、これは薬でも使い過ぎると身体に悪い。今は使い過ぎている。少しずつ量を減らそう」
「そう…わかった…でも…いつも食べ物…同じ匂いする…どうするの?」
食事に混ぜて常に摂取させているのか……
「俺が食料を持ってくる。運ばれてくるのは食べたフリをして捨てよう、あとは俺がいる間は、あのお香を消すんだ。少しずつ火を点けている時間を減らしていこう」
他に方法は無い、料理人が知らない筈も無いからな。
……我ながら下らない正義感だとは思う、これで彼女を救える訳では無い。
皇帝が彼女を閉じ込めているのは間違い無いし、彼女が多少正気を手にした所でここにいる限りは吸わされ続けるのだから。
「やふぁいおぐ」
よく分からない事を呟いて微笑むマナ。
全く聞いた覚えが無い響きだった。
──この国の言語は殆ど把握している筈なのに。
「……今なんて言ったんだ?」
「私達…言葉…ありがとう…言葉」
私達?……両親は共に、この国の人間の筈だ。
それに……陛下は一体何を考えてこんな事をしている?
加えて……彼女について知っている人間が殆ど居ないにも関わらず、何故"白痴の姫"として民衆に認識されているのだろうか。
民衆がデマを信じるのは良くあることだが、一度も姿を見せていないのなら、それは何か不自然では無いだろうか?
疑問は尽きる事が無かった。
◆◆◆◆◆◆◆◆
この時の俺は、気が付かなかった。
自分の生半可な正義感で踏み入れてしまったのが一体何だったのか。
それが、人生で二つ目の過ちだ。
それにさえ気が付いていれば俺達は、"あんな"結末にはならずに済んだのかもしれない。
聖女様は首を傾げた。
「聖女様、この部屋のお香はいつからあるんだ?」
「ずっと前…これあると…いつも頭…はっきりしない…でも…なくなる…頭痛い…吐きそう」
この香りは、スラムでよく嗅いだことがあるものだ。
まさか宮殿にはないだろう、という先入観で、すぐには気が付かなかった。
漂う煙は麻薬の類、庭園に植えられた植物もよく見ると一部は原料になる物。
そして、中毒者がどうなるのかも俺はよく知っていた。
やる気がなくなり、外へ出ず、そして会話は出来ても、まともな返答が出来なくなる。
さらに常用者には中毒症状が起こる。
まさしく聖女が語ったように。
「聖女様、この香りはあまり吸わない方がいい、頭が痛くなっても我慢するんだ」
「私…病気だから…お父様…用意…した…これ無い…調子悪い…頭痛い」
これを陛下が用意しているとなると、いよいよキナ臭い。
……あまり強引に言ってはダメか……まさか父親の所為だとは言えないしな。
唯一の肉親の所為で苦しめられているなんてことを、どうして説明できるだろう。
理解できない者ならまだしも、言い方に気を付けなければ、その含意を彼女が察してしまうだろうし。
「……いいか、これは薬でも使い過ぎると身体に悪い。今は使い過ぎている。少しずつ量を減らそう」
「そう…わかった…でも…いつも食べ物…同じ匂いする…どうするの?」
食事に混ぜて常に摂取させているのか……
「俺が食料を持ってくる。運ばれてくるのは食べたフリをして捨てよう、あとは俺がいる間は、あのお香を消すんだ。少しずつ火を点けている時間を減らしていこう」
他に方法は無い、料理人が知らない筈も無いからな。
……我ながら下らない正義感だとは思う、これで彼女を救える訳では無い。
皇帝が彼女を閉じ込めているのは間違い無いし、彼女が多少正気を手にした所でここにいる限りは吸わされ続けるのだから。
「やふぁいおぐ」
よく分からない事を呟いて微笑むマナ。
全く聞いた覚えが無い響きだった。
──この国の言語は殆ど把握している筈なのに。
「……今なんて言ったんだ?」
「私達…言葉…ありがとう…言葉」
私達?……両親は共に、この国の人間の筈だ。
それに……陛下は一体何を考えてこんな事をしている?
加えて……彼女について知っている人間が殆ど居ないにも関わらず、何故"白痴の姫"として民衆に認識されているのだろうか。
民衆がデマを信じるのは良くあることだが、一度も姿を見せていないのなら、それは何か不自然では無いだろうか?
疑問は尽きる事が無かった。
◆◆◆◆◆◆◆◆
この時の俺は、気が付かなかった。
自分の生半可な正義感で踏み入れてしまったのが一体何だったのか。
それが、人生で二つ目の過ちだ。
それにさえ気が付いていれば俺達は、"あんな"結末にはならずに済んだのかもしれない。
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