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第一幕
19 ウェイクアップ・リトル・マナ.1◇
しおりを挟む何か鈍い音が響いた。
「──っ!!」
「振り…向くな!走れ……!走ってくれ!」
そのオードの声は必死に絞り出したような掠れ声だった。
動悸は激しい、息が苦しい。初めて踏む橋の上は冷たくて硬い。
急に動かした足は、慣れない運動で悲鳴を上げている。
ほんの少ししか走っていないのに、この短い時間がまるで永遠のように感じる。
振り返れば、きっともうここを渡り切る事は出来ない、私は行かなきゃならない。
彼の声に私は振り返っちゃいけないんだ。
外に踏み出す為には、彼を置いて……。
置いて……?私が?
「オードぉぉぉ!!」
……私は彼を置いていけない。
脇目も振らず、私は怪物へ向かって走り出す。
置いて行かれた私が、誰かを置いていくことなんて出来ない……!
もし、誰かが私のことを白痴だと言うのなら、馬鹿だと言うのなら。
全く否定できないし、否定しない。
彼が開いた血路を無駄にするなんて正気じゃない。そんなこと分かってる。
私が引き返して何になると言う。
何も出来ない私が。
石ころに過ぎない私が。
でも、もしも、私に出来る事が何かあるのなら。
私の"役目"が偽物じゃなかったのなら。
『るぅなふ!いぶるぐんとむ!ぶくとらぐる!』
唱えたのは、ただのおまじない…でしかない。
願掛けに言うだけの、誰にも理解されなかった私達の言葉。
遠く海を回遊する孤独な鯨と同じ、私だけの言語。
魔術、魔法なんて、今や迷信で影も形も無い、誰一人として信じていない。
誰も信じなくても、私はそれを信じよう。
きっと……同じことなんだから。
「《──夢よ!私の願いに応えよ!》」
たった一度だけでもいい。
私に夢を──!
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