日常探偵団

髙橋朔也

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稲穂祭と予言者 その壱

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 稲穂祭が始まった。稲穂祭では各部がひとつの出し物をする。文芸部では文集だ。そして、部室に文集を置くから、三人うち一人は店番だ。
「私は行きたいところがあるから、店番はキツい...」
「俺もっす」
「俺は行きたいところとかないんで、店番してるよ」
 こうして、新島が店番をすることになった。といっても、客などほとんど来ないというのが文芸部の考えだった。
「はあ。本でも読むか」
 新島は二人が部室を出た後で、売り物の文集を開いた。新島はシナリオを担当したから作品は書いていない。土方の作品は二つで、高田の作品が一つだ。新島は高田の作品が載っているページを開いた。
「タイトル『日常探偵団』。内容は偽札事件や五十円玉二十枚の謎、You lied to me.。完全に文芸部の話しじゃないか」
 新島は高田の作品を読み進めた。さすがに前回のストーカー事件を小説には出来ないが、新島は我ながら良い出来だと自画自賛した。
 新島は文集を元の位置に戻すと、本棚に向かった。本棚にはズラッと本が並んでいた。その一冊を取り出した。
「新聞の切り抜きか」
 新島は新聞のスクラップを読み始めた。そのスクラップは八坂中学校に起こった事件をまとめていた。これは、土方が一人で行っていた。
───────────────────────
平成十八年十月十日 「千葉県のある中学校の前の道路で事故多発!」
───────────────────────
 千葉県のある中学校の前にある大通りで三日間事故が多発した。警察も動いて調査が始まったが、四日目には事故は起こらなかった。近隣住人に話しを聞くと、事故といっても軽傷程度のようだった。                 〈了〉
───────────────────────
 新島はスクラップを閉じた。

 高田は手紙を持って、学校の屋上に行った。断っておくが、ラブレターを持って告白されに屋上に行く、というベタな展開ではない。もっと重要なことだ。高田は予言の手紙を持って、予言された場所に向かっている。断っておくが、オカルトではない。
「ここか」
 高田は屋上に立った。予言の手紙には

『我、見通す者なり。文芸部の貴殿に、話がある。稲穂祭初日の屋上から見えるところである事件が起こっている。ある事件、とは見ればわかる』

 とあったのだ。高田はある事件が起こるか、ゆっくりと待っていた。すると、奥の電柱が倒れていた。高田は急いで降りて、職員を探した。
「先生!」
「どうした、高田?」
「あの電柱が倒れてますよね?」
「ああ」
「いつからですか?」
「ああ、あれか...。あれは昨日の七時くらいに倒れていたよ」
「ほ、本当ですか!」
「ああ、本当だよ」
 高田の持っていた手紙にある消印はおとといであった。つまり、一日先のことを予言したことになる。高田は急いで文芸部部室に向かった。

 新島はスクラップを本棚に戻すと、ソファに寝転がった。それからため息をついていると、扉が開いた。新島は焦って起き上がると、そこには高田がいた。
「新島!」
「どうした、高田」
「予言者だ」
「予言者だぁ?」
「ああ。俺の家におととい手紙が来たんだ。それで、内容が次の日の話だった」
「手紙?」
「これだ」
 新島は高田から手紙を受け取って中身を見た。それから窓の外を見た。
「七不思議の一番目より先に、予言者の謎を解かなきゃな...」
「だよな。それより、犯人の狙いは何なんだ?」
「わからん」
 新島と高田は手紙と電柱を交互に見て、絶句した。


 十数年ぶりの軽音楽部のライブが行われていて、そのライブに土方は来ていた。速いテンポにつられて、土方はリズムを取って体を上下させていた。土方は音楽を聴くのが好きなようだった。
 ライブが一時休憩すると、土方は急いで文芸部部室に向かった。新島に店番をさせるのは心が痛むようだ。部室に入ると、高田もいて、二人とも絶句していた。
「おい、二人とも!」
「あ、ああ。先輩...」
「高田...、どうした?」
「あの...予言者が現れたんすよ」
「予言者?」
 高田は土方に予言者の手紙の件を話した。土方も少し頭を抱(かか)えた。
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