ニート希望の補欠勇者は男なんてお呼びじゃない

こゆき

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「お待ちしてました! あなたは勇者に選ばれました!」
「すんません、そういう設定っすか?」
 
 え、この国確かにオタク国家だけど1番重い刑罰がコレなの? ちょっとどうかと思う。
 軽くドン引いていたら、妖精がほっぺを膨らませた。胸しか見てなかったけど、よく見たらかわいいな、こいつ。
 
「ちがいますよーう! ほんとに、ほんとに勇者様なんです! ……と言っても、あなたは補欠なのですが」
「おっと聞き捨てならねえな? どういう事だ」
 
 妖精、もといティアの話をまとめると、こうなる。
 
 これは祖国がとち狂ってる訳ではなく、ガチで異世界のアレコレに俺が巻き込まれているということ。
 そして、ティアのいる異世界では4人の勇者が色んな世界から集められ、力を与えられ魔王を倒すために旅をすることになったということ。
 ちなみに魔王は度々復活するので、定期的に起こるイベントらしい。まじかー。
 
 そんでもって、ココ一番大事。
 俺は、その勇者の、『補欠』だということ。
 
「なんで補欠がいるんだよ! 必要なってから呼べよ!!」
「上からの命令なんですうー!」
「やっぱ労働はゴミ」
 
 とはいえ、だ。
 
「……まあ、いい。とりあえず、色々言いたいことはあるが、いい」
 
 地下労働施設への強制送還よかよっぽどいい。
 
「で? 俺はなんの力貰えんの?」
「えっ、ありません」
「は??????」
 
 訂正。異世界もゴミ。
 
「あなたはあくまでも『補欠』なので……勇者様に繰り上げになったら、能力を頂けると思います!」
「ふっっっっざけんなよ。異世界に拉致なんてしたんだから能力のバフくらい寄越すのが礼儀だろうが。羽毟んぞてめぇ」
「やだこの人こわい」
「俺は本気だ」
「怖い!!!!」
 
 手をワキワキとさせにじり寄ると、ティアは自分の体を抱きしめて後退る。
 豊満なおっぱいが白く細い腕に潰されて大変よろしい。ちょっと俺の機嫌は直った。
 
「というか、どんな能力が欲しいんですか?」
「え、希望制なの?」
「いえ、普通なら他の勇者様と被らないように上が決めるんですけど……」
「あー、魔王倒す時に色んな方面から攻撃出来るように?」
「いえ、キャラ被り防止で」
 
 聞きたくなかったわそんなメタい話。
 つーか、欲しい能力、ねえ……。
 
「欲しいというか、したいことなんだけど」
「はい」
「えっちな女の子とたくさんえっちなことがしたい」
「いい顔で言うことじゃないですよね!?」
 
 サイテーですようこの人ー! なんてティアが叫んでるけど男なんてこんなもんだぞ。
 
 魔王とかいるタイプの異世界ってことは、アレだろ?
 エルフとか魔法使いとかいるんだろ? 何それ最高。男の夢と書いてロマンだろ!!
 
「俺は!! えっちな女の子とたくさんえっちなことをしたい!!!」
「ダメだこの人!!!」
 
 ティアは頭を抱えた。本気でダメだこの人。
 
 なんでこんな人が勇者様候補なんだろう。こんなのに救われなくちゃいけないんですか? うちの世界。もういっそ滅んだ方よくない?
 勇者様の選出が完全ランダムガチャ仕様なのは知ってましたけども! それにしたってこれは酷い。
 
 というかこの人このまま適当な能力つけて放り出したら自分の世界が危うい気がする。主に風紀的な意味で。
 かと言って何も付けなかったら私の羽がご臨終ですしー!!
 
 ティアはこの時初めて「労働はゴミ」という補欠勇者の言葉に納得しかけた。確かにこれは嫌になる。おうちに帰りたいですう……。
 
 だが、ティアは最愛たる上司に怒られるのも嫌だった。
 羽を毟られるのも嫌だった。
 
 どうすればと必死に頭を働かせ、思いついた。
 思いついてしまった。
 
 
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