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第29話 面子
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ミゲイルは面白くない。
(何故あのような取柄もない男を庇うのか)
エレオノーラもグロリアもルピシアも、一体レナードのどこが良いというのか。さっぱり理解が出来ない。
(話せる言語が多いというのは確かにすごいが、この男がそれを有効活用できるとは思えんな)
交渉とは時に強気に出なくてはならぬというのに、レナードはエレオノーラの陰に隠れているだけではないか。
(こんな男がエレオノーラにふさわしいわけがない)
なのにエレオノーラの友人である二人はレナードを認めている。
ミゲイルにはあのように親しみを込めて話しかけることはないし、むしろわざとエレオノーラに近づけさせないようにもしていた。
その二人の信頼を勝ち取ったレナードに対してミゲイルはますます苛立ち、強くあたり始める。
「エレオノーラ殿下は優秀な人で、アドガルム国との交易も大事なものだ。だから俺としてはこのような男があなたの配偶者になるとは認められない。気が弱く、力もないこんな男よりも殿下にはもっと相応しい男性がいるだろう」
ミゲイルの言葉にエレオノーラは動揺することなく静かに口を開く。
「お言葉ですがミゲイル陛下、わたくしはもうレナード以外を伴侶にする気はありません。彼こそがわたくしの運命の人なのですから」
エレオノーラはミゲルの強い口調に圧され、固まってしまったレナードの腕を取り、そっと寄り添う。
「この国を導くのはわたくしです。けれどそのわたくしを支えてくれるのはレナード以外おりませんわ。他の誰よりも誠実でわたくしを想ってくれて、拠り所になってくれる。わたくしが欲しいのは武力やお金ではありません、真実の愛ですわ。レナードは王族としてではなく、一人の女性としてわたくしを見てくれる。そんなところに惹かれていますの」
エレオノーラの言葉に鼻白む。
ミゲイルだってエレオノーラを一人の女性として見ているが、その能力とそして地位を全く見ていないわけではない。
打算も少なからずあるわけだが、エレオノーラはそこを見透かして言っているようだ。
「……そんなものまやかしだろう。どうせお金や目先の欲で変わるものだ」
レナードとて同じだろうと揶揄するがエレオノーラは全く動じない。
「あらそんな事はありませんよ。ねぇレナード?」
「もちろんです!」
エレオノーラの鋭い視線にレナードは姿勢を正し、はっきりと言い切る。
「早速尻に敷かれちゃって、でもまぁそれくらいがいいのかな」
エレオノーラ達の後ろでグロリアはくすくすと笑い、ルピシアもそれを受けて微笑む。
「打算があるようでしたら、エレオノーラも選びませんよ。そもそもこの婚約はエレオノーラから持ちかけたもの、レナード様から無理矢理押して、というものではありません」
ミゲイルとてこの婚約話自体については前々から聞いていた。
エレオノーラについての情報は逐一密偵から報告を受けていたからだ。けれどまさかエレオノーラを射止めるものがいるとはと半信半疑であった。
今こうして目の前にしてもレナードの何が魅力なのかわからない。
(こんな吹けば飛びそうな優男が、何故彼女を掴めたのか)
全くもって信じられないのだが、けれどエレオノーラ以外の、彼女の友人達すらも認めている。
無理矢理に引き離そうとすれば尚更自分に心を開いてはくれないだろうと、ミゲイルは自身の激情を治めるようにように深呼吸し、表情を正す。
「失礼した。エレオノーラ殿下達が認めるのならば、俺も言葉を下げよう」
「いえ……ミゲイル陛下が心配なされるのも無理はありません。僕には確かに力はないですから。けれど、僕もエレオノーラ様を支えられるように増々精進していきます。より一層研鑽を深め、エレオノーラ様の為に、ひいてはアドガルム国の為に尽力していきますのでどうぞこれからもよろしくお願いします」
ミゲルからの圧は一向に減らないが、レナードは気圧されつつも負けじと言葉を返す。
「皆からの期待を裏切ることがない事を祈るよ」
ミゲイルはそう言うと煮え滾る気持ちを抑え、他へ挨拶に行くとその場を離れる。
(認めるわけにはいかないな)
欲したものは何でも手に入れてきたミゲイルが唯一手に出来なかったものを、レナードは簡単に手に入れた。
レナードがミゲイルよりも強く、そして力あるものであれば諦めたかもしれないが……そうでないからミゲイルの怒りは収まらなかった。
「あのような男の手に落ちるなど、認めない」
自分が愛した気高き女性が生ぬるい男のものになるなど、断じて許せるものではない。
ミゲイルは固い表情をしたまま部下にある事を命令し、会場を離れる。
暗い目の奥には激しく灼ける激情が映し出されていた。
(何故あのような取柄もない男を庇うのか)
エレオノーラもグロリアもルピシアも、一体レナードのどこが良いというのか。さっぱり理解が出来ない。
(話せる言語が多いというのは確かにすごいが、この男がそれを有効活用できるとは思えんな)
交渉とは時に強気に出なくてはならぬというのに、レナードはエレオノーラの陰に隠れているだけではないか。
(こんな男がエレオノーラにふさわしいわけがない)
なのにエレオノーラの友人である二人はレナードを認めている。
ミゲイルにはあのように親しみを込めて話しかけることはないし、むしろわざとエレオノーラに近づけさせないようにもしていた。
その二人の信頼を勝ち取ったレナードに対してミゲイルはますます苛立ち、強くあたり始める。
「エレオノーラ殿下は優秀な人で、アドガルム国との交易も大事なものだ。だから俺としてはこのような男があなたの配偶者になるとは認められない。気が弱く、力もないこんな男よりも殿下にはもっと相応しい男性がいるだろう」
ミゲイルの言葉にエレオノーラは動揺することなく静かに口を開く。
「お言葉ですがミゲイル陛下、わたくしはもうレナード以外を伴侶にする気はありません。彼こそがわたくしの運命の人なのですから」
エレオノーラはミゲルの強い口調に圧され、固まってしまったレナードの腕を取り、そっと寄り添う。
「この国を導くのはわたくしです。けれどそのわたくしを支えてくれるのはレナード以外おりませんわ。他の誰よりも誠実でわたくしを想ってくれて、拠り所になってくれる。わたくしが欲しいのは武力やお金ではありません、真実の愛ですわ。レナードは王族としてではなく、一人の女性としてわたくしを見てくれる。そんなところに惹かれていますの」
エレオノーラの言葉に鼻白む。
ミゲイルだってエレオノーラを一人の女性として見ているが、その能力とそして地位を全く見ていないわけではない。
打算も少なからずあるわけだが、エレオノーラはそこを見透かして言っているようだ。
「……そんなものまやかしだろう。どうせお金や目先の欲で変わるものだ」
レナードとて同じだろうと揶揄するがエレオノーラは全く動じない。
「あらそんな事はありませんよ。ねぇレナード?」
「もちろんです!」
エレオノーラの鋭い視線にレナードは姿勢を正し、はっきりと言い切る。
「早速尻に敷かれちゃって、でもまぁそれくらいがいいのかな」
エレオノーラ達の後ろでグロリアはくすくすと笑い、ルピシアもそれを受けて微笑む。
「打算があるようでしたら、エレオノーラも選びませんよ。そもそもこの婚約はエレオノーラから持ちかけたもの、レナード様から無理矢理押して、というものではありません」
ミゲイルとてこの婚約話自体については前々から聞いていた。
エレオノーラについての情報は逐一密偵から報告を受けていたからだ。けれどまさかエレオノーラを射止めるものがいるとはと半信半疑であった。
今こうして目の前にしてもレナードの何が魅力なのかわからない。
(こんな吹けば飛びそうな優男が、何故彼女を掴めたのか)
全くもって信じられないのだが、けれどエレオノーラ以外の、彼女の友人達すらも認めている。
無理矢理に引き離そうとすれば尚更自分に心を開いてはくれないだろうと、ミゲイルは自身の激情を治めるようにように深呼吸し、表情を正す。
「失礼した。エレオノーラ殿下達が認めるのならば、俺も言葉を下げよう」
「いえ……ミゲイル陛下が心配なされるのも無理はありません。僕には確かに力はないですから。けれど、僕もエレオノーラ様を支えられるように増々精進していきます。より一層研鑽を深め、エレオノーラ様の為に、ひいてはアドガルム国の為に尽力していきますのでどうぞこれからもよろしくお願いします」
ミゲルからの圧は一向に減らないが、レナードは気圧されつつも負けじと言葉を返す。
「皆からの期待を裏切ることがない事を祈るよ」
ミゲイルはそう言うと煮え滾る気持ちを抑え、他へ挨拶に行くとその場を離れる。
(認めるわけにはいかないな)
欲したものは何でも手に入れてきたミゲイルが唯一手に出来なかったものを、レナードは簡単に手に入れた。
レナードがミゲイルよりも強く、そして力あるものであれば諦めたかもしれないが……そうでないからミゲイルの怒りは収まらなかった。
「あのような男の手に落ちるなど、認めない」
自分が愛した気高き女性が生ぬるい男のものになるなど、断じて許せるものではない。
ミゲイルは固い表情をしたまま部下にある事を命令し、会場を離れる。
暗い目の奥には激しく灼ける激情が映し出されていた。
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