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再び手にした決意
魔法への憧れと盾への自責2
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街を襲ったのは、南の国境沿い帝国側にある洞窟から溢れ出た魔物の群れだったようだ。後から知ったことだが、王国との戦争の始まりともなった魔王召喚の儀式の試しとして、その洞窟で帝国軍が行った悪魔召喚が原因とのことだった。
街を蹂躙した魔物の群れはそのまま北上し、この辺りでは一番大きな南侯爵の治める城塞都市に襲いかかったようだが、冒険者ギルドからの伝達が迅速に伝わり可能な限りの準備を行えたためか、ある程度の被害は出たが、無事に食い止められたそうだ。
俺の父親と母代わりのクレアさんは崩れた家の下から見つかったそうだ。領主様は大怪我を負ってはいたが、何とか一命は取りとめている。街の被害は六割程の建物が壊れ、半数程の人命が失われたそうだ。
ムルカは──あの魔物によって命を落としたようだとヨルニール先生が言っていた。勇敢にも魔物に立ち向かい、習った魔法で魔物に傷も負わせていたそうだ。
俺が足を挫かなければ、一緒にあの場所へ行けていたら、俺が身代わりになれたかも──
なんてことも考えたりもした。
二日後、領主様が話を出来るほどに回復したそうだ。領主様が俺と話をしたいと言っているそうで、ヨルニール先生が俺を呼びに来た。
領主様にはムルカの最後の姿を聞かれた。と、言っても、林での会話と走り去る後ろ姿、倒れていた背中と傷付いた魔物。そのくらいだ。
足を挫いて遅れてしまい、ムルカの身代わりになれなかったと話したら、その場の全員に怒られてしまった。
俺の父親が亡くなったこと、家が壊れてしまったことを領主様も聞いていたようで、家で──領主様の屋敷で暮らさないかとありがたくも提案を頂いたが、俺はその場では考えさせてほしいと返答を濁した。
心に決めたことがあったからだ。
その夜はヨルニール先生とギリアムが借りている宿に一緒に泊めてもらった。二人にお願いがあったのもある。
宿で夕飯を済ませた後、部屋で二人にお願いをした。
内容は──
「えぇっ?!僕らの仲間、つまりパーティに入れて欲しいって?!」
「フェンス・・・冗談ではきかないぞ」
ヨルニール先生は大袈裟に驚く。ギリアムはお願いの内容が予想出来ていたのか、驚きはせず俺の覚悟を尋ねてくる。
「も、もちろんっ!覚悟は出来てる!危険があるってことも、死ぬかもしれないってこともっ!!」
「ん~でもなぁ・・・フェンスの歳じゃまだ冒険者登録も出来ないし」
「えっ?!そ、そうなの・・・」
15歳── 成人となり、加護の儀式を受けてからでないと冒険者登録は出来ないらしい。
「ぼ、冒険者になれなくてもっ!に、荷物持ちでも、飯係りでも・・・なんなら身代わりにでも──
「「フェンスっ!!」」
言葉を遮られ二人に同時に怒られる。
「フェンス・・・二度と自分の命を軽んじるような発言はするな。そんな奴と一緒には居れないし、パーティにも入れたくはない」
ヨルニール先生が真面目なトーンで語りかけてくる。確かにその通りだ。
「・・・ごめんなさい」
その後、しばらく三人とも言葉を発せずにいた。
窓の外から犬の鳴き声が聞こえたタイミングで、落ち着いた声でギリアムが口を開いた。
「フェンス。理由を聞かせてくれ」
「・・・・・・」
俺は両膝の上に乗せた拳を、ギュッと力一杯握り締める。
「お、俺は・・・自分の力のなさが悔しい。ヨルニール先生にあれだけ教わっても、まったく魔法も使えないし、魔法を覚えたい!使いたいって気持ちだけじゃなんの役にも立たない・・・」
ギリアムは、無言で俺の目を正面で見つめている。
「俺は、走り去るムルカの背中を止めることが出来なかった。すぐに、瓦礫をどかせられたら、崩れた家に、つっ・・・潰された、と、父さんと、クレアさんを・・"助けることが、出来たかもしれない。
もっと、もっとっ!早く領主様の屋敷に辿り着けていたら!
身代わりとは言わないっ!!ムルカを助けられたかもしれないっ!!」
流れ出した涙を両手でゴシゴシとこする。
「・・・もう、こんな想いをするのは嫌なんだ・・・。俺が弱いせいで、俺が何も出来ないせいで、出来なかったこと。守れなかったものを──
守れるようになりたいんだっ!!!」
想いを、本心を、おもいきり叫んだ。
走ったわけでもないのに息が上がる。
ゆっくりと立ち上がったギリアムが俺の前でひざまづき、優しく肩を叩く。
「・・・フェンス、わかった。お前が加護の儀式を受ける歳になるまで、パーティに入れてやろう」
「っ?!ギリアム?!ち、ちょっと勝手に決めないでよっ」
「お前も気持ちは一緒だろ?」
「~~っ!ん~~まぁ、そうなんだけどね」
「!!じ、じゃあ──」
「但し!約束しろ。
ひとつ、絶対に自分の命を軽んじないこと。最後まで生きることにこだわれ。
ひとつ、強くなるためにやれることは教わるだけでなく、貪欲に自分からも取り組むこと。但し、成年するまでは必ず相談するように。
最後に、パーティに入るということは仲間だ。仲間とはお互いに尊重しあい、背中を預けあい、苦しみも喜びも分かち合うということだ。上も下もない。対等な関係だ」
すっと、拳を目の前に突き出してくる。俺も強く握り過ぎて、じんじんと痛む拳をコツンとぶつける。
ギリアムの後ろからヨルニール先生も拳を合わせる。
「対等ではあるけれど、何かを教わるときは謙虚にな?」
「は、はいっ!!」
そうして、俺はヨルニール先生とギリアムのパーティに入れてもらえることになった。
冒険者の依頼がないときは、屋敷でやっていた様に魔法の勉強と、相変わらず上達はしないが魔法の訓練を行う。 依頼で街の外に出るときは、ギリアムに剣と盾の戦い方を教わる。
これまではヨルニール先生の魔法ばかりであったが、ギリアムもかなりの戦士である。こちらもとても勉強になる。
盾騎士としての技術の基礎はこのときに学んだ。
空いた時間は、街の教会や魔道ギルドにも足を運び、ヨルニール先生が苦手としている聖属性や無属性についても勉強をする。
冒険では、ダンジョンで遭難しかけたり、罠にかかって流石にもうダメかと思うことも、岩山の様な馬鹿デカイ魔物に追いかけられたことも──
それは別の機会に。
そうして七年の月日が流れた──
街を蹂躙した魔物の群れはそのまま北上し、この辺りでは一番大きな南侯爵の治める城塞都市に襲いかかったようだが、冒険者ギルドからの伝達が迅速に伝わり可能な限りの準備を行えたためか、ある程度の被害は出たが、無事に食い止められたそうだ。
俺の父親と母代わりのクレアさんは崩れた家の下から見つかったそうだ。領主様は大怪我を負ってはいたが、何とか一命は取りとめている。街の被害は六割程の建物が壊れ、半数程の人命が失われたそうだ。
ムルカは──あの魔物によって命を落としたようだとヨルニール先生が言っていた。勇敢にも魔物に立ち向かい、習った魔法で魔物に傷も負わせていたそうだ。
俺が足を挫かなければ、一緒にあの場所へ行けていたら、俺が身代わりになれたかも──
なんてことも考えたりもした。
二日後、領主様が話を出来るほどに回復したそうだ。領主様が俺と話をしたいと言っているそうで、ヨルニール先生が俺を呼びに来た。
領主様にはムルカの最後の姿を聞かれた。と、言っても、林での会話と走り去る後ろ姿、倒れていた背中と傷付いた魔物。そのくらいだ。
足を挫いて遅れてしまい、ムルカの身代わりになれなかったと話したら、その場の全員に怒られてしまった。
俺の父親が亡くなったこと、家が壊れてしまったことを領主様も聞いていたようで、家で──領主様の屋敷で暮らさないかとありがたくも提案を頂いたが、俺はその場では考えさせてほしいと返答を濁した。
心に決めたことがあったからだ。
その夜はヨルニール先生とギリアムが借りている宿に一緒に泊めてもらった。二人にお願いがあったのもある。
宿で夕飯を済ませた後、部屋で二人にお願いをした。
内容は──
「えぇっ?!僕らの仲間、つまりパーティに入れて欲しいって?!」
「フェンス・・・冗談ではきかないぞ」
ヨルニール先生は大袈裟に驚く。ギリアムはお願いの内容が予想出来ていたのか、驚きはせず俺の覚悟を尋ねてくる。
「も、もちろんっ!覚悟は出来てる!危険があるってことも、死ぬかもしれないってこともっ!!」
「ん~でもなぁ・・・フェンスの歳じゃまだ冒険者登録も出来ないし」
「えっ?!そ、そうなの・・・」
15歳── 成人となり、加護の儀式を受けてからでないと冒険者登録は出来ないらしい。
「ぼ、冒険者になれなくてもっ!に、荷物持ちでも、飯係りでも・・・なんなら身代わりにでも──
「「フェンスっ!!」」
言葉を遮られ二人に同時に怒られる。
「フェンス・・・二度と自分の命を軽んじるような発言はするな。そんな奴と一緒には居れないし、パーティにも入れたくはない」
ヨルニール先生が真面目なトーンで語りかけてくる。確かにその通りだ。
「・・・ごめんなさい」
その後、しばらく三人とも言葉を発せずにいた。
窓の外から犬の鳴き声が聞こえたタイミングで、落ち着いた声でギリアムが口を開いた。
「フェンス。理由を聞かせてくれ」
「・・・・・・」
俺は両膝の上に乗せた拳を、ギュッと力一杯握り締める。
「お、俺は・・・自分の力のなさが悔しい。ヨルニール先生にあれだけ教わっても、まったく魔法も使えないし、魔法を覚えたい!使いたいって気持ちだけじゃなんの役にも立たない・・・」
ギリアムは、無言で俺の目を正面で見つめている。
「俺は、走り去るムルカの背中を止めることが出来なかった。すぐに、瓦礫をどかせられたら、崩れた家に、つっ・・・潰された、と、父さんと、クレアさんを・・"助けることが、出来たかもしれない。
もっと、もっとっ!早く領主様の屋敷に辿り着けていたら!
身代わりとは言わないっ!!ムルカを助けられたかもしれないっ!!」
流れ出した涙を両手でゴシゴシとこする。
「・・・もう、こんな想いをするのは嫌なんだ・・・。俺が弱いせいで、俺が何も出来ないせいで、出来なかったこと。守れなかったものを──
守れるようになりたいんだっ!!!」
想いを、本心を、おもいきり叫んだ。
走ったわけでもないのに息が上がる。
ゆっくりと立ち上がったギリアムが俺の前でひざまづき、優しく肩を叩く。
「・・・フェンス、わかった。お前が加護の儀式を受ける歳になるまで、パーティに入れてやろう」
「っ?!ギリアム?!ち、ちょっと勝手に決めないでよっ」
「お前も気持ちは一緒だろ?」
「~~っ!ん~~まぁ、そうなんだけどね」
「!!じ、じゃあ──」
「但し!約束しろ。
ひとつ、絶対に自分の命を軽んじないこと。最後まで生きることにこだわれ。
ひとつ、強くなるためにやれることは教わるだけでなく、貪欲に自分からも取り組むこと。但し、成年するまでは必ず相談するように。
最後に、パーティに入るということは仲間だ。仲間とはお互いに尊重しあい、背中を預けあい、苦しみも喜びも分かち合うということだ。上も下もない。対等な関係だ」
すっと、拳を目の前に突き出してくる。俺も強く握り過ぎて、じんじんと痛む拳をコツンとぶつける。
ギリアムの後ろからヨルニール先生も拳を合わせる。
「対等ではあるけれど、何かを教わるときは謙虚にな?」
「は、はいっ!!」
そうして、俺はヨルニール先生とギリアムのパーティに入れてもらえることになった。
冒険者の依頼がないときは、屋敷でやっていた様に魔法の勉強と、相変わらず上達はしないが魔法の訓練を行う。 依頼で街の外に出るときは、ギリアムに剣と盾の戦い方を教わる。
これまではヨルニール先生の魔法ばかりであったが、ギリアムもかなりの戦士である。こちらもとても勉強になる。
盾騎士としての技術の基礎はこのときに学んだ。
空いた時間は、街の教会や魔道ギルドにも足を運び、ヨルニール先生が苦手としている聖属性や無属性についても勉強をする。
冒険では、ダンジョンで遭難しかけたり、罠にかかって流石にもうダメかと思うことも、岩山の様な馬鹿デカイ魔物に追いかけられたことも──
それは別の機会に。
そうして七年の月日が流れた──
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