盾の騎士は魔法に憧れる

めぐ

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再び手にした決意

対策会議

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 ゴブリンスタンピードに端を発した魔人の襲撃は、多くの被害を出した。襲撃では多くの怪我人を出したが奇跡的に死者は無し。
  先にゴブリンの棲みかとなっていた洞窟を調査していた冒険者三人は残念ではあるが帰らぬ人となった。

  大怪我を負ったヒルダの弟ルシオスは治療も成功し二週間程の静養となるらしい。意識ははっきりしているようなのでしばらくは診療所で姉のヒルダから魔法を教わることだろう。


  ゴブリンスタンピードに端を発した魔人の襲撃は、多くの被害を出した。襲撃では多くの怪我人を出したが奇跡的に死者は無し。
  先にゴブリンの棲みかとなっていた洞窟を調査していた冒険者三人は残念ではあるが帰らぬ人となった。

  大怪我を負ったヒルダの弟ルシオスは治療も成功し二週間程の静養となるらしい。意識ははっきりしているようなのでしばらくは診療所で姉のヒルダから魔法を教わることだろう。

  魔物の侵入箇所となった東門と北門は、とくに北門の被害が大きく。まぁ主にミリアーナの魔法によるのだが、魔法ギルド総出で修復に当たっているらしい。

  ゴブリンの掃討に当たった守護隊の面々も何人かの怪我人は出たが皆無事との報告は入っている。
  街へ侵入した魔物の捜索、討伐には城から騎士団も出てくれていたようだ。北門以外の場所でも街人や家屋にも被害は出ているがこちらは軽微であるとのこと。2番隊と騎士団の対応が迅速だったお陰だろう。
  守護隊の面々には片付けが終わったら労を労ってやらないとな。

  洞窟へ襲撃をかけた冒険者側でも大きな被害は無かったようだ。これだけの規模のゴブリンスタンピードだったわりに棲みかの中にはゴブリンロードはおろかキングすら居なかったという。
  詳しくは冒険者ギルドマスターのグストフに直接確認するとしよう。

  ミリアーナが倒した魔人の遺体は王立魔道院に引き取られたそうだ。ミリアーナも参加して魔人の特性や持ち物等の調査を行うそうだ。我が家を襲った魔人ガグギエラと言ったか?奴が持っていた宝石の様な石のついた首飾りも持っていたようてその解析結果が気になるところだ。

  我が屋敷は直接的な被害といえば入口周りの扉や壁、庭の草木や地面が抉れたぐらいではあるが、一番被害を受けているのは儂の自由意思ではないだろうか・・・。

  今、屋敷の広間には、儂とユリア、ミリアーナも魔道院での調査を切り上げて来ている。冒険者ギルドマフターのグストフ、何故かこの国の王フリオニールまで来ている。王城で集まればいいのでは?

  そして聖杖教会の枢機卿でもあり、かつての旅の仲間でもあり、儂の妻でもあるマリアがいる。

「フェンス、再度言うが守護隊の指揮及び魔人の撃退ご苦労だったな。民と街への被害が少なかったのは君のお陰だ。王として礼を言おう」
「陛下、既に申し上げましたが私ひとりの手柄ではありません」
「・・・わたしも魔人倒したし」

  ミリアーナが文句を言う。
  魔人をひとり倒したミリアーナが一番の貢献者だと儂は思うが。

「分かっているさ。それとフェンス。ここは城ではないのだからその口調はやめてくれないか?調子が狂う」

  そう。何故儂の屋敷でこんな集まりが行われているかというと、王城では家臣の耳目があるため儂やミリアーナ、マリアも元パーティメンバーとはいえ畏まらなければならない。
  フリオニールはそれがどうにも落ち着かないらしく、ことあるごとに儂の屋敷へとお忍びでやってくる。変装しているからとは言うが、右腕が無く右目に眼帯を付けた人物などそういるはずがないから、きっと誰から見てもバレバレだろう。

  何度も近衛騎士団長に文句を言われている。

「なぁフェンス・・・。俺なんかが同席しちまっていいのかよ?俺もお前に話はあるけれど後で構わないぜ?」
「ギルドマスター殿。気にはしなくて良いぞ。初めて会った日のようにしてくれて構わない」

  フリオニールもちゃんとグストフのことを覚えてるんだな。言われた本人は青醒めてしまっているが。

「フリオニール・・・。それは流石に酷だろう」

「陛下。冗談はそのくらいに。アナタ、そろそろ本題を進めては?」
「ん?あ、ああ。そ、そうだな」

  マリアはいつだって冷静だ。出会った頃からしっかり者ではあったがあの頃はもっと清楚で可愛らしかったのだが・・・。そんなことは死んでも言えない。

「アナタ?何かありますか?」
「いや?!なにも!」

  そんなやり取りを見るのも久しぶりだからか、儂の横でユリアがクスッと笑いを堪えている。あのあと丸一日眠っていたのだが、もうすっかり元気なようだ。

「マリアの言う通りだな。この面子が揃うのも久しぶりだからか調子に乗ってしまったようだ。
  では、まずはスタンピードの原因であろう棲みかとなっていた洞窟の調査報告から伺おうか。ギルドマスター殿。宜しく頼む」
「はっ!はいっ!!」

  あ~あ、可哀想に。
  フリオニールが急に王らしい威厳ある雰囲気になったからか、先程言われた冗談も気にしているだろうグストフは飛び跳ねるように立ち上がった。

「着席で構わんぞ?」
「は、はっ!で、では、失礼して・・・」

  見てられないくらいに動作がぎこちない。助け船を出しておくか。

「グストフ。フリオニールも構わないと言っているんだ。普段の話し方で構わないぞ?お前のその口調は聞くに耐えない」
「なっ?!てめぇ!お、俺がどれだけ緊張してると思ってんだ!?王様だぞ?!王様!知らなかったとはいえ昔、下手な口きいちまったことまで覚えられてんだぞっ!?
  ここで更に下手やってみろ。俺の人性終わっちまうだろぉが!!」

  よし。上手く緊張はほぐせたようだな。

「はっはっは!その調子で構わないぞ。ギルドマスター殿。いや、私もグストフと呼ぼうか!」
「えっ!?い、いや・・・あの、そのっ」

「ククク・・・」

  普段、冒険者に偉そうな顔をしてるとは思えないな。エナにも見せてやりたいくらいだ。

「あぁ──っ!もう!!どうにでもなれっ!!」
「オホンッ!」

「「「・・・・・・」」」

  マリアの咳払いに三人とも身体を硬直させる。少し悪ふざけが過ぎたか・・・。その微笑みが魔人より怖い。

「・・・皆様。時間は有限なものです。意義のある話し合いをしましょう」

「「「・・・はい・・・」」」

「ぷっ!」
「・・・バカばっかり」





「で、まぁ結局はスタンピードが起きた原因は分からずじまいだ。普通だったらいるはずの上位種がいないなんて、前代未聞だ」

  東門の確認をしていたときに偶然会ったクフルトの話通り洞窟に上位種はいなかったようだ。確かにロードやキングがいれば食糧を求めて畑や家畜の被害があるだろうし、群を維持するために子供を産む女を求めるはず。今回そういった被害は出ていないそうだ。

  しかし、ただのゴブリンだけでスタンピードが起きるはすがないし少ないながらもホブやファイターなどが居たのも確かだ。

「しばらくは洞窟及び北門からの侵入経路の調査を続けるが、まぁ何か新たな発見があるとは思ってはいない」

  報告を再開したグストフは最初はまだ慣れない口調で話していたが、話しているうちにリラックスしてきたのか本人は気付いてないようだが普段の話し方に戻っている。
  まぁ宣言通りフリオニールも気にしてないようだしそのままにしておこう。

「うむ。そうか・・・。北門に関しては魔法ギルド員が門外で何やら見たことのない魔道具を発見したと聞いている。ミリアーナ、解析はどうなっている?」
「・・・ん?」

  グストフの報告を眠そうに聞いていた、いや明らかに眠っていたミリアーナは少し面倒臭そうだ。

「・・・ん~。魔道具はまだ解析中。内部に魔法の術式が刻まれてるは見つけたんだけど、何なのかはまだ分からない。これまでに無い術式の組み合わせだから・・・まずはそれを再現して実験から」

  なかなか複雑そうだな。一度見てみたいな。
  専門家に任せるのが最適だが凄く興味を引かれる。

「魔人が持っていた首飾りはどうだ?」

  こちらは更に興味がある。実物も別の魔人のものだが見ているし、効果も確認している。あれを全ての魔人が持っているのならかなりの脅威になる。

「・・・あれは『魔封石』と呼ばれるもの。魔道具にも使われる魔物の体内で生成される魔石に近いものだけど・・・、まぁこちらも詳しくは分かってない」

  ミリアーナの知識に王立魔道院の魔法使い達でも一筋縄ではいかないか。どちらも今回の襲撃の鍵を握るものであるし、今後の魔人の動きにも係わってくる。
  大変だとは思うがなんとか早めに解析してもらわねばな。

「・・・このふたつに関しては今ある資料では、調べる限界がありそう。外部資料が必要」
「分かった。それはこちらで手配を検討するとしよう」

「・・・ん。ヨロシク」

  言い終わったミリアーナは何故か儂を見る。

「ん?何だ」
「・・・首飾りなんて、面倒臭いもの見つけたフェンスも責任取って。どうせヒマしてるんだから、無駄知識でも役立てて」

「・・・はいはい、わかったよ」

  何かと思えばコイツは・・・。ユリアの力を借りてだが術式の多重展開すらやってのけた儂の知識をなめるなよ!今に吠え面かかせてやる。

「フェンスからは既に色々と報告を貰っているがこの場で何か話しておくことはあるか?」
「ん?ああ、そうだな・・・」

  気になることはいくらでもある。
  同時に起きたスタンピードと魔人の襲撃は間違いなく魔人の仕業だと思うがそこは大きな問題ではない。
  発見された魔道具と首飾りに関しては、ひとまずミリアーナと王立魔道院に任せるべきだろう。こう見えて儂も暇ではない。
  一番気になるのは魔人の目的についてだろう。

「魔人は明確に『神器』を狙っていた。今回は撃退出来たが襲撃は間違いなくまた来るだろう。それに関してはどう動いている?」
「それについては、枢機卿マリアから話してもらおうか」
「はい。陛下」

  流石は一国の王と巨大な組織力を誇る聖杖教会の枢機卿である。すでに動いていたようだ。

「ここにいる皆さまはもう御存じかとは思いますが魔人の襲撃は一週間程前にマルセーヌ国でも起きております。マルセーヌ国を襲った魔人は一体のみでなんとか撃退出来たようですが、狙われた理由はまだ不明です。
 こちらシャルマートでははっきりと『神器』を狙ってきています。防御策として各国の協力のもと教会側はマルセーヌ、シャルマート両国と近隣の狙われる恐れのある国への聖大結界の構築を準備しております」

  聖大結界とは、魔人に対してマリアが使おうとしていた聖属性の結界魔法の大規模版である。規模にもよるが最低10人以上の司祭によって発動され、外部からの邪悪なものの侵入を拒み内部では邪悪なものを弱体化させる結界魔法である。

「それに関しては既に教会側から連絡をもらっている。我が王国も最大限の協力をすると誓おう。合わせて魔人の目的を明らかにする調査も必要となるがそれについて教会側はどう動いている?」

  魔人の目的は何なのか・・・。

  まぁ、聖大結界があればそう簡単に魔人も手を出せなくなるだろう。だが聖大結界の構築には大型の触媒が必要だったはずだが、魔人に対抗出来るほどの触媒をいくつも用意出来ているのだろうか。

「ええ。魔人の目的調査及び今回入手した物品の解析に関しては、本教会からも分析官を手配しております。聖大結界構築のための司祭団も一緒に近日中には到着するでしょう」
「迅速な対応感謝する。それで結界構築のための触媒の用意についてだが・・・」

「ええ。マルセーヌ国用の触媒はすでに準備が出来ておりますが、シャルマート国用のものがまだ準備出来ておりません。王国側でその触媒の手配をお願い出来ればと思います」

  この国分の触媒はまだ用意出来ていないのか。どうするつもりだ?聖大結界の触媒になるほどの魔結晶はそうそう簡単に手に入るものではない。
  この辺りであるとすれば南にある炭鉱街の更に奥、火竜の峰などだろうか。

「それは構わないが触媒となる魔結晶が取れる場所となれば近くでは火竜の峰になるだろうが、火竜の群を躱しながら運んで来るのは騎士団でもそれなりの時間がかかってしまうだろう。それで間に合うのか?」

  やはり火竜の峰になるか。確かに高熱の火竜のブレスを防ぎながら取って帰ってくるのはかなり危険度が高いだろう。如何に王国騎士団とはいえ時間はかかると思われる。

「ええ。それに関しては適任がいるではありませんか」

  マリアはそう言うと儂の顔を見てニコリと微笑む。

「・・・ん?!」

「アナタ、もう一度盾を持つと決めたのでしょう?ならアナタ以外に適任はいません。宜しくお願いしますね」

  そう言ってマリアはもう一度ニコリと微笑んだ──
  
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