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火の竜の王との邂逅
火竜の峰にて
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#エダ
ハァ・・・
何故、ワタシは今ここにいるのだろう
いえ。理由は分かってる。また陛下の我儘に振り回されて護衛として付き添っているから・・・。
戻ったらこれまでにないくらい大臣のジェイガン様にお叱りを受けるんだろうなぁ~。今度こそ近衛騎士を降ろされるかも・・・。
先日のお昼のこともかなりこっぴどく怒られた。今でもなぜ近衛騎士を降ろされていないのか不思議なくらいだ。騎士団長がおっしゃるには「陛下はお前達兄妹の能力を買ってくださっている。その御期待に応えられるよう精進するよう。」とのこと。
確かにワタシ達兄妹は陛下の鶴の一声で兵士見習いから騎士団、近衛騎士へと昇進させて頂いた。その恩に報いるため陛下のためならば命をかけて御守りする覚悟ではいるが、こう毎度振り回されているとタメ息が出ても仕方がないでしょう?
「どうした、エダ。遅れているぞ」
「ハッ!?も、申し訳ありません!」
いけない、いけない!呆っとしてしまっていた。ここはもう魔物の棲みか。近衛騎士としてしっかり陛下を御守りせねば。
「エダよ。疲れたか?休憩にでもするとしようか」
「い、いえっ!問題ありません!」
片目と片腕が不自由で歳もワタシの倍以上になる陛下はまったく疲れている様には見えない。流石は陛下!とは思うがここでワタシが先に疲れたなどと言えるわけがない。
「そうか。だがユリアは疲れただろう?この辺りで少し休憩としようではないか」
「はっ!陛下。ただいま準備を致します」
先頭を歩いていた兄さんが背嚢から簡易椅子を用意し飲み物を陛下に差し出す。
「ディーンよ。いつどこで誰に出くわすかわからぬ。外ではフリオと呼べと言っているであろう」
「はっ!も、申し訳ありません。フ、フリオ様・・・」
「あと椅子もいらぬぞ。そんな物を使う冒険者などおらぬ。余計に怪しまれるだけだ」
兄さんは陛下といつものやりとりをしている。ワタシは自分の背嚢から飲み物を取り出してユリアちゃんに手渡す。お皿に水を入れて犬のハリル君にも差し出す。
「エダさん。ありがとうございます」
「ワンッ!」
「もうしばらくしたらお昼にすると思うけどお腹は空いてない?クッキー食べる?」
背嚢からクッキーも取り出して数枚手渡す。
「ありがとうございます。ディーンさんとフリオおじさんはいつもあんな感じなんですか?」
ユリアちゃんは陛下と兄さんのやりとりを楽しそうに見ている。
「そうね。兄さんは真面目なのが取り柄ではあるんだけどねぇ。不器用と表裏一体と言うか・・・。どうしても陛下って呼んでしまうみたいでいつもフリオ様にお叱りを受けているわね」
「フフ。そうなんですね。でもフリオおじさんも面白いですよね」
「どうして?」
「だって、あの変装?バレバレなのに」
ユリアちゃん・・・。それは言ってはいけないのよ。
#ジョルジュ
早朝に炭鉱街を出立し麓の村に馬車を停めた我々はその足で火竜の峰へと入った。火竜の名が付くが、かなり奥地の大空洞内にしか火竜は棲息していない。出くわすのはよく見る魔物ばかりでいてもレッドリザードくらいだ。
レッドリザードの素材はそれなりの稼ぎになるので出来れば回収したいが今は任務の最中。冒険者だった頃の欲は忘れろ。
道中はまったく危なげなく進んだ。俺がスカウトとして先行し索敵を行う。進路を塞ぐ場合や襲われた場合のみ戦闘をする。
城の騎士二人とアベル隊長の三人でほぼ戦闘は終わってしまうため俺の出番はほぼないが、まぁ矢が節約出来ていいか。
総隊長の腕を是非とも拝見したいところだが、貧相な魔道院の魔法使いのカバーばかりしていてそのチャンスは無さそうだ。
「ジョルジュ。大空洞の入口は見えたか?」
「はい。先の大岩を越えたところです」
偵察から戻り総隊長へと報告をする。
「ご苦労。よし、ではここに拠点を築き少し休憩としよう。以後はここを探索の拠点とする。魔物避けの魔道具も忘れずにな」
「「「「はっ!」」」」
大木の根と岩場が丁度洞穴の様になっている場所を利用して拠点築く。アベル隊長と騎士のひとりが足場の整備を、俺ともうひとりの騎士で穴を囲むための枝葉の収集を担当する。
「人違いでしたら申し訳ありませんが貴方は『隼眼』のジョルジュ殿ではありませんか?」
騎士のひとり、確かロディといったか。枝をナイフで切り落としていた俺に話しかけてきた。
「・・・ああ。昔の名だが、それが何か?」
『隼眼』とは俺が冒険者をしていたときの通り名だ。周りが勝手に名付けたものだがそれなりに気に入っていた。隼は好きな鳥だ。
「やはりそうでしたか!いえ、昔のことですし大したことではないのでお忘れかとは思いますが、私は北方の騎士領の出なのですが8年ほど前に魔物に襲われたことがありまして。居合わせた冒険者パーティによって撃退されたのですがその冒険者の中にジョルジュ殿がいらしたので」
8年前・・・。あの魔物か──
「今更かとは思いますがお礼を言わせてください。あの時の冒険者の強さに憧れて、今こうして騎士となることが出来ました」
「あいつを撃退したのは俺の仲間だった奴だ。俺は何もしていない」
そう・・・。魔物を撃退したのはあいつだ。
その冒険者生命と引き替えに・・・。
「さぁ。無駄話しはこのくらいにしよう。枝葉もこのくらいあれば大丈夫だ。戻るとしよう」
「え・・・?は、はいっ」
こんなところであの時の話が出るとは思わなかったな。
俺が冒険者を辞めて今こうしている切っ掛けの出来事の──
ハァ・・・
何故、ワタシは今ここにいるのだろう
いえ。理由は分かってる。また陛下の我儘に振り回されて護衛として付き添っているから・・・。
戻ったらこれまでにないくらい大臣のジェイガン様にお叱りを受けるんだろうなぁ~。今度こそ近衛騎士を降ろされるかも・・・。
先日のお昼のこともかなりこっぴどく怒られた。今でもなぜ近衛騎士を降ろされていないのか不思議なくらいだ。騎士団長がおっしゃるには「陛下はお前達兄妹の能力を買ってくださっている。その御期待に応えられるよう精進するよう。」とのこと。
確かにワタシ達兄妹は陛下の鶴の一声で兵士見習いから騎士団、近衛騎士へと昇進させて頂いた。その恩に報いるため陛下のためならば命をかけて御守りする覚悟ではいるが、こう毎度振り回されているとタメ息が出ても仕方がないでしょう?
「どうした、エダ。遅れているぞ」
「ハッ!?も、申し訳ありません!」
いけない、いけない!呆っとしてしまっていた。ここはもう魔物の棲みか。近衛騎士としてしっかり陛下を御守りせねば。
「エダよ。疲れたか?休憩にでもするとしようか」
「い、いえっ!問題ありません!」
片目と片腕が不自由で歳もワタシの倍以上になる陛下はまったく疲れている様には見えない。流石は陛下!とは思うがここでワタシが先に疲れたなどと言えるわけがない。
「そうか。だがユリアは疲れただろう?この辺りで少し休憩としようではないか」
「はっ!陛下。ただいま準備を致します」
先頭を歩いていた兄さんが背嚢から簡易椅子を用意し飲み物を陛下に差し出す。
「ディーンよ。いつどこで誰に出くわすかわからぬ。外ではフリオと呼べと言っているであろう」
「はっ!も、申し訳ありません。フ、フリオ様・・・」
「あと椅子もいらぬぞ。そんな物を使う冒険者などおらぬ。余計に怪しまれるだけだ」
兄さんは陛下といつものやりとりをしている。ワタシは自分の背嚢から飲み物を取り出してユリアちゃんに手渡す。お皿に水を入れて犬のハリル君にも差し出す。
「エダさん。ありがとうございます」
「ワンッ!」
「もうしばらくしたらお昼にすると思うけどお腹は空いてない?クッキー食べる?」
背嚢からクッキーも取り出して数枚手渡す。
「ありがとうございます。ディーンさんとフリオおじさんはいつもあんな感じなんですか?」
ユリアちゃんは陛下と兄さんのやりとりを楽しそうに見ている。
「そうね。兄さんは真面目なのが取り柄ではあるんだけどねぇ。不器用と表裏一体と言うか・・・。どうしても陛下って呼んでしまうみたいでいつもフリオ様にお叱りを受けているわね」
「フフ。そうなんですね。でもフリオおじさんも面白いですよね」
「どうして?」
「だって、あの変装?バレバレなのに」
ユリアちゃん・・・。それは言ってはいけないのよ。
#ジョルジュ
早朝に炭鉱街を出立し麓の村に馬車を停めた我々はその足で火竜の峰へと入った。火竜の名が付くが、かなり奥地の大空洞内にしか火竜は棲息していない。出くわすのはよく見る魔物ばかりでいてもレッドリザードくらいだ。
レッドリザードの素材はそれなりの稼ぎになるので出来れば回収したいが今は任務の最中。冒険者だった頃の欲は忘れろ。
道中はまったく危なげなく進んだ。俺がスカウトとして先行し索敵を行う。進路を塞ぐ場合や襲われた場合のみ戦闘をする。
城の騎士二人とアベル隊長の三人でほぼ戦闘は終わってしまうため俺の出番はほぼないが、まぁ矢が節約出来ていいか。
総隊長の腕を是非とも拝見したいところだが、貧相な魔道院の魔法使いのカバーばかりしていてそのチャンスは無さそうだ。
「ジョルジュ。大空洞の入口は見えたか?」
「はい。先の大岩を越えたところです」
偵察から戻り総隊長へと報告をする。
「ご苦労。よし、ではここに拠点を築き少し休憩としよう。以後はここを探索の拠点とする。魔物避けの魔道具も忘れずにな」
「「「「はっ!」」」」
大木の根と岩場が丁度洞穴の様になっている場所を利用して拠点築く。アベル隊長と騎士のひとりが足場の整備を、俺ともうひとりの騎士で穴を囲むための枝葉の収集を担当する。
「人違いでしたら申し訳ありませんが貴方は『隼眼』のジョルジュ殿ではありませんか?」
騎士のひとり、確かロディといったか。枝をナイフで切り落としていた俺に話しかけてきた。
「・・・ああ。昔の名だが、それが何か?」
『隼眼』とは俺が冒険者をしていたときの通り名だ。周りが勝手に名付けたものだがそれなりに気に入っていた。隼は好きな鳥だ。
「やはりそうでしたか!いえ、昔のことですし大したことではないのでお忘れかとは思いますが、私は北方の騎士領の出なのですが8年ほど前に魔物に襲われたことがありまして。居合わせた冒険者パーティによって撃退されたのですがその冒険者の中にジョルジュ殿がいらしたので」
8年前・・・。あの魔物か──
「今更かとは思いますがお礼を言わせてください。あの時の冒険者の強さに憧れて、今こうして騎士となることが出来ました」
「あいつを撃退したのは俺の仲間だった奴だ。俺は何もしていない」
そう・・・。魔物を撃退したのはあいつだ。
その冒険者生命と引き替えに・・・。
「さぁ。無駄話しはこのくらいにしよう。枝葉もこのくらいあれば大丈夫だ。戻るとしよう」
「え・・・?は、はいっ」
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俺が冒険者を辞めて今こうしている切っ掛けの出来事の──
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