盾の騎士は魔法に憧れる

めぐ

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水の竜の王の憧憬

偽証

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 #フェンス


「では、二人とも宜しくな」
「ハッ!総隊長もお気をつけて」

  守護隊の揃いの装備のままでは目立ってしまうため冒険者風に扮装をしたカインとドーガは情報収集のため街へと繰り出していく。
 冒険者の格好のほうが、警戒されなく冒険者ギルドや通りの商店などへ話がしやすくなるからだ。騎士風の男から急に話しかけられたら誰だって身構えられてしまう。
 二人とも守護隊内ではとくに人当たりの良い顔をしているほうであるから、そういったことも十分にこなせるだろう。

「さて、儂も行くとするか」

  二人を見送り、儂はひとり街長ゴルドバの屋敷へと向かう。

  通常こういうことは、情報を集め外堀を埋めることが重要になるが、今回はこれが本来の目的ではないため、強引だが直接腹を探ってみることにした。
 相手によってはこちらのほうが有効な場合もあるが、はてさてゴルドバはどうだろうか。

  先程通ったレンガ道にもかなり人が増えていた。

  北西区とはまったく異なり、皆身なりの良い格好をしている。王国貴族や近隣国からの来賓なども来ているのだろう。
 通りの突き当たりにある目的の屋敷の門前に先程会った執事の姿が見えた。十人程の冒険者風の男達と何かを話しているようだ。

  儂は少しわざとらしく大声を出して声をかけた。

「これは執事殿。ちょうど良かった。ゴルドバ殿はいらっしゃるかね?」

  儂に気付いた執事が男達に手早く何か指示を出すと、男達は逃げるようにいなくなった。北西区で見た二人の男の仲間だろうか。

「・・・ヴェロスクード様。何か御用でしょうか?」
「ああ。少しゴルドバ殿に確認したいことが出来ましてな。しかし、お忙しかったですかな?何か慌ただしいようでしたが」

  わざとらしく男達が消えていったほうを見る。取り立てをしていた男達がルーテの魔法で吹き飛ばされたことはもう伝わっているだろうから、少し動揺を誘ってみる。

「・・・いえ、あの者共は大したことではありません。旦那様に確認して参りますので、少々御待ちいただけますでしょうか」

  執事は少しの動揺も見せず、踵を返すと屋敷の中へと消えていった。なかなかに肝の座った人物のようだ。執務に関しても高い能力を持っているのだろう。一街長に雇われている執事としては水準が高すぎる気もするが。




 #ゴルドバ


「 なにっ?!ヴ、ヴェロスクードが来ただとっ!?」

  何をしに来たのだ?!

  あのトカゲ女に会いに行くとは行っていたが何か吹き込まれたのだろうか。そういえばトカゲ女のところに行かせていた奴らが見知らぬ女魔法使いにやられたなどと言っていたな。

  まさか、ヴェロスクードが連れていたあの女か?!

  だとするとトカゲ女や貧乏人どもから何かを聞いているかもしれない・・・け、計画がばれてしまったのだろうか。

「落ち着いてください。そんなに大きな声を出したら外に聞こえてしまいますよ」
「ぐっ・・・いや、しかしだな」

  この男、こんな状況だと言うのに何故こんなにも落ち着いていられるのだ?計画がばれでもしたら立場どころか命まで危うくなるだろうというのに。
  
「先刻、取り立てを行っていた二人に手を出したのは彼らで間違いないでしょうから、大方立ち退き金の不正でも暴きに来たのでしょう。それくらいなら誰かが横領していたことにしてしまえば済む話です。そうですね、その簡単にやられてしまった役立たずの二人に罪を着せてしまえばちょうど良いのでは?」

「・・・そうだな。しかし・・・それで奴が納得するのか?」

  良い案だとは思うが既に疑いを持たれてしまっている。下手に嗅ぎ回られて計画を知られてしまっては元も子もない。

「納得はしないでしょうね。でも、それで良いのです」
「なっ?!どういう意味だ!?」

  言っている意味が分からん。まさか、私を切り捨てる気か!?

「そう理由付けて帰してしまえば良いのです。調べなければすぐには本当のことは分かりません」
「そ、それでは何も解決しないではないかっ!?」

「大丈夫ですよ。ククク・・・この街も大分綺麗になりましたが、まだまだ小汚い盗人や荒くれ者は多くいますから。彼らの泊まる宿が盗賊に襲われないとは限りません。そう、最新鋭の装備を手にした盗賊にね?」

  そうか・・・そうしてしまえば、どうとでも言い訳は立つ。

「そ、そうだな。ついでにあの憎たらしいトカゲ女と貧乏人どもも消してしまえば・・・ハハ、ガハハハハハッ!!」
「ですから、大きな声を出さないでください。聞こえてしまいますよ?」

  立てた指を口元に当て執事姿の男は妖しく微笑んだ。




 #フェンス


  ううむ。

  まったくもって納得いかない。

  立ち退き金が正当な金額で支払われてるのかを問い質したのだが、半分以下になっていたことをあっさりと白状し、それが住民とのやりとりをするために臨時で雇った二人の男が横領していたと言うのだ。

  しかもその二人というのがルーテが吹き飛ばしたあの二人であるらしく、その二人に直接話を聞きたいと申し出たが、街議会側で責任を持って取り調べを行っているからと断れてしまった。

  確かな証拠はないためそれ以上追及も出来ず仕方なく屋敷をあとにしたのだが、これではまた同じことが起こるだけで根本的な解決にはならない。
 カインとドーガが何か証拠を掴んでくれるといいのだが。

  ルーテのことも気にはなるが、行ってもまた追い返されるだけだろうしな。ひとまずは任せておくとしよう。
 二人が情報を仕入れて戻るにもまだ時間はかかるだろう。どこかで昼食でも摂りつつ儂も聞き込みでもするとしよう。
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