66 / 91
水の竜の王の憧憬
魔道ゴーレム
しおりを挟む
・・・これが、ゴーレムだと──?
ゴーレムには身体が樹で出来たウッドゴーレムや、泥のマッドゴーレム、鉄鉱石で出来たアイアンゴーレムなど様々な種類が存在している。
その成り立ちは不明な点が多く魔物学者などが研究を続けているが、まだそのほとんどが解明していないと言われている。
その体内には魔石が存在しているため魔物の一種と考えられているが、一般的な魔物とは異なり魔人などが様々な物質に魔石と魔力を込め造り出したのでは──というのが現在で最も有力な説となっている。
今、目の前にいる巨大なそれは、ミスリルが身体を構成するための主体となっているようだがところどころに黒鉄なども混じっているようだ。
ここまで巨大で複数の鉱石が混じったゴーレムなどこれまでに見たことも聞いたこともない。
それに、まるで同化してしまったかのようなゴルドバはいったい・・・。
ゴーレムは体高に比べて異様に長いその右手を頭上高く持ち上げる。
「いかんっ!カイン、横に跳べっ!!」
強く地面を蹴り飛び退く。瞬間、恐ろしいほどの速さで振り下ろされたゴーレムの手が下にあった小屋を粉々に吹き飛ばした。
転がりつつも体勢を立て直し少し距離を取る。
反対側へ跳んだカインも同様に逃げてくる。
「そ、総隊長・・・こいつは倒せルン、ですかね?」
カインは声を裏返しながらその巨体を見上げる。
「・・・ううむ」
ゴーレムは身体を構成する物質によってそれぞれ弱点が異なる。
ウッドゴーレムなら燃やせばいいし、マッドゴーレムなら熱風で乾燥させてしまえばいい。アイアンゴーレムなどの鉱石系であればそれより硬い鉱石で造られた武器で斬ってしまえばいいのだが。
しかし、このゴーレムはおそらくミスリル──
ミスリルより硬い鉱石など伝説の武具の素材と言われているオリハルコン・・・、それこそフリオニールが持つ聖剣くらいのものだろう。
魔法でも破壊出来ないことはないが、ただでさえミスリルは魔法抵抗値が高い。生半可な魔法では効果はない。
「ううむ。こういうときだけはフリオニールを連れてくれば良かったと心底思うな・・・」
有効な攻撃手段が思い浮かばない。
儂の剣ではミスリルを貫けはしないだろうし、勿論魔法も使えない。ユリアが居ればどうにかなったかもしれんが・・・。
いかんいかん!
ユリアには基礎からしっかりと教えると決めたばかりではないか。こんな通常ではありえない相手と戦わせてばかりいたらユリアのためにならない。
今ここに居ないものばかり考えても仕方がない。なんとか時間を稼いで手を考えなければ。
ところでミリアーナは何処に消えたんだ?
あいつがいれば少しはやりようがあるんだが。
「ククク・・・ヒャーハッハッハッハッ!!
あの魔王をも討伐した英雄ヴェロスクードが、私の造った魔道ゴーレムに手も足も出ないとはなぁ!実に愉快だ!」
いつの間にかゴーレムの手から地上へと降りていた執事は狂ったかのような嗤い声を上げている。昼間見たときとはまるで違う人物のようだ。
「お前がこれを造っただと?!」
「ああ!そうだ!これで完成というわけではないがな。だが、老いぼれた元英雄ごときにはこのくらいで十分過ぎる程だなぁ!!ヒャーハッハッハッハッ!!」
人間の手でゴーレムを造り出すなど、魔道具に関して門外漢な儂でも今の技術では絶対に不可能だろうことは分かる。
そんなことが可能なのはそれこそ魔人だけだろう。
この男の性質はまさに邪悪ではあるがまさか魔人とは言うまい。魔人が持つ特有の禍々しさは感じない。
「・・・魔人の手を借りたとでも言うのか?」
かつての戦争の際、帝国軍が使い連合軍に壊滅的な損害をもたらした魔道剣も魔人から齎されたと言われている。
ここ最近活発になっている魔人の動向もある。この件にも何かしらの関与をしているのだろうか。
「魔人・・・だとぉ?」
そう言った男の表情は先程までの狂喜は消え、強い怒りの感情を顕にする。
「偉大なる我が王よりその叡智を賜り造り上げた我が騎士を・・・あの卑しく浅ましい魔人からなどと、戯れ言をほざくなぁっ!!」
男が放つ強烈な怒気に思わず気圧される。ただの人間がこれ程までの威圧を放てるものなのか。まるで魔人並だ。
「奴等にこれ程のものを造れる感性などあるはずがないっ!見よ!この美しく力強い姿を!これぞまさに芸術っ!」
確かに星明りに照らされ白銀の輝きを放つその体躯は他のゴーレムの簡素な造形とは異なり、その姿と意匠はまるで帝国重装騎士かの様な強靭さと美しさを兼ね備えている。
それだけに頭頂部のゴルドバがより異質に見える。
「あぁ・・・ですが、『核』としてちょうど良かったとはいえ、あのような醜い豚を使ったことだけは美しくないですね」
男の表情は強い苛立ちを見せたかと思えば、陶酔しきった表情でゴーレムを見つめ、その次は心から残念そうにその頭部を見上げる。
まるで劇役者でも観ているようだ。
「お前はいったい、何者なんだ・・・」
気になることはあまりにも多い。
ゴーレムに魔道剣、『偉大なる王』といった存在や、多分ゴルドバのことだろう『核』というもの。
これだけのことをただの人間が出来る筈がない。
「・・・私が誰かだと?確かに貴様は私を知らないだろう。私から魔道剣を奪い、私の輝かしい未来を奪い、父の命をも奪った貴様を、貴様等をっ!クラーゼルをっ!私がどれだけ怨み憎んでいるかもなぁ!!」
父──?魔道剣を奪った──?
そういえば先程ゴルドバが将軍という言葉を口にしていた。まさかこの男は──
「・・・ルードヴィング」
「ほぉ!分かったか。そうだ、私の名はルーファス・フォン・ルードヴィング。我が父、栄光あるシャルマート帝国魔道将軍オードウィン・フォン・ルードヴィング、その遺志を継ぎ、その無念を晴らすものだっ!!」
やはりか・・・。
三十数年前──魔王を討伐したあとも帝国軍残党は各地で抵抗を続け、それを率いていた将の中にルードヴィング家の者がいたことは知っていたが、その反乱は夜襲奇襲と手段を問わず乱戦を極め、誰が何処で捕縛されどのように死亡したかなど確めようもない状況だった。
名だたる貴族や将の何人かは未だにその消息が分からないものも少なくないという。
ルードヴィングもそのひとりであったが、まさかこれ程王都の近くに潜伏していたとは。
「ククク・・・しかし、計画とは大分ずれてしまったが、まさかこんなところでこうも簡単に怨敵のひとりを殺せるチャンスが巡ってくるとは想わなかったなぁ」
自らが造り出したゴーレムによっぽどの自信があるのだろう。執事・・・いや。ルードヴィングは、既に勝ったつもりのようだ。
「可笑しなことを言うな?儂等はまだ生きているぞ。それにまだこちらは攻撃すらしてもいないのにもう勝ったつもりか?」
言ってはみたもののまだ起死回生の手は浮かんでいない。
会話を引き延ばしつつ頭の中であらゆる手で試行錯誤を行ってはみたものの、どうしても火力不足だ。確実な勝筋は見えてこない。
魔法耐性の高いミスリルとはいえ金属には変わらない。大空洞でも使った『焼入れ』が一番効果的かと思うが、あの時とは状況が違うからな。
「可笑しなことぉ??それは、貴様だろぉ!!ヴェロスクードぉ!!かつてのお仲間が一緒でない貴様など、攻撃を防ぐしか能がないただの老いぼれじゃないか。あぁ?!!
それに、自慢の盾の神器も持ってないようだしなぁ。どう考えても貴様の死は明確だろうが!!」
「・・・やってみなけりゃ分からんよ」
切り札を使ったアイギスはまだ小さいまま。翌日まで元には戻らない。
「ヒヒ・・・ヒャーハッハッハッハッ!!
やれるものならやってみろよぉっ!!!」
「ウォォォオオオオオォォォォ!!!」
ルードヴィングの声に呼応しゴーレムと頭上のゴルドバが、強風が深い谷間を吹き抜けるかの様に低く唸るような叫びを響かせ、その両腕を高々と振り上げる。
普通に考えれば、ここは一度退き体勢を立て直して挑むべきだが、それではゴーレムによって街に大きな被害が出てしまうだろう。
なんとか耐え忍び、癪だがミリアーナが来るのを待つしかあるまい。
「カイン!お前は逃げろっ!今の儂では守りきれんっ!」
「そ、総隊長をひとりには出来ませんっ!及ばずながら囮にでもなる覚悟はあります!」
「バ、バカを言うなっ!!さっさと逃げろ──
先程の様な力任せな攻撃ではなく、固く握られた巨大な拳が確実に儂らを狙い放たれる。
「チッ!『シールドバッシュッ!』
「──なっ?!グハッ!!」
咄嗟に横に居たカインを下から掬い上げるように盾の突進技で吹き飛ばす。カインはものの見事に吹き飛ぶ。
そのまま身体を捻り身体を回転させゴーレムに向け盾を構える。
真っ黒な猛威はもう眼前に迫っていた。
これ程の巨大な質量相手に成功するかは分からないが、『パリング』で受け流すしかあるまい。
頼むぞ!アイギスッ!!
『・・・クリムゾンブラスト』
盾と拳がぶつかろうとさした瞬間──
少し眠たそうで、それでいて何処か怒気の籠った聞き慣れた声が静かに響く。
ゴーレムの目の前で凝縮された濃密な魔力が猛烈な炎と爆風を弾けさせる。これは、火と風の複合魔法。
鼻の先まで迫っていた暴威は力の法則を無視するかの様に真後ろへと吹き飛ばされた。
「おいおい・・・また儂を巻き込むつもりか?」
「・・・さっきも言ったけど当たってないでしょ?」
後ろを振り向くとそこには、猫耳大魔道士ミリアーナ。
隣にはロディに支えられたルーテが居た。
その胸には静かに蒼い輝きを放つ、大きな竜結晶が抱えられていた──
ゴーレムには身体が樹で出来たウッドゴーレムや、泥のマッドゴーレム、鉄鉱石で出来たアイアンゴーレムなど様々な種類が存在している。
その成り立ちは不明な点が多く魔物学者などが研究を続けているが、まだそのほとんどが解明していないと言われている。
その体内には魔石が存在しているため魔物の一種と考えられているが、一般的な魔物とは異なり魔人などが様々な物質に魔石と魔力を込め造り出したのでは──というのが現在で最も有力な説となっている。
今、目の前にいる巨大なそれは、ミスリルが身体を構成するための主体となっているようだがところどころに黒鉄なども混じっているようだ。
ここまで巨大で複数の鉱石が混じったゴーレムなどこれまでに見たことも聞いたこともない。
それに、まるで同化してしまったかのようなゴルドバはいったい・・・。
ゴーレムは体高に比べて異様に長いその右手を頭上高く持ち上げる。
「いかんっ!カイン、横に跳べっ!!」
強く地面を蹴り飛び退く。瞬間、恐ろしいほどの速さで振り下ろされたゴーレムの手が下にあった小屋を粉々に吹き飛ばした。
転がりつつも体勢を立て直し少し距離を取る。
反対側へ跳んだカインも同様に逃げてくる。
「そ、総隊長・・・こいつは倒せルン、ですかね?」
カインは声を裏返しながらその巨体を見上げる。
「・・・ううむ」
ゴーレムは身体を構成する物質によってそれぞれ弱点が異なる。
ウッドゴーレムなら燃やせばいいし、マッドゴーレムなら熱風で乾燥させてしまえばいい。アイアンゴーレムなどの鉱石系であればそれより硬い鉱石で造られた武器で斬ってしまえばいいのだが。
しかし、このゴーレムはおそらくミスリル──
ミスリルより硬い鉱石など伝説の武具の素材と言われているオリハルコン・・・、それこそフリオニールが持つ聖剣くらいのものだろう。
魔法でも破壊出来ないことはないが、ただでさえミスリルは魔法抵抗値が高い。生半可な魔法では効果はない。
「ううむ。こういうときだけはフリオニールを連れてくれば良かったと心底思うな・・・」
有効な攻撃手段が思い浮かばない。
儂の剣ではミスリルを貫けはしないだろうし、勿論魔法も使えない。ユリアが居ればどうにかなったかもしれんが・・・。
いかんいかん!
ユリアには基礎からしっかりと教えると決めたばかりではないか。こんな通常ではありえない相手と戦わせてばかりいたらユリアのためにならない。
今ここに居ないものばかり考えても仕方がない。なんとか時間を稼いで手を考えなければ。
ところでミリアーナは何処に消えたんだ?
あいつがいれば少しはやりようがあるんだが。
「ククク・・・ヒャーハッハッハッハッ!!
あの魔王をも討伐した英雄ヴェロスクードが、私の造った魔道ゴーレムに手も足も出ないとはなぁ!実に愉快だ!」
いつの間にかゴーレムの手から地上へと降りていた執事は狂ったかのような嗤い声を上げている。昼間見たときとはまるで違う人物のようだ。
「お前がこれを造っただと?!」
「ああ!そうだ!これで完成というわけではないがな。だが、老いぼれた元英雄ごときにはこのくらいで十分過ぎる程だなぁ!!ヒャーハッハッハッハッ!!」
人間の手でゴーレムを造り出すなど、魔道具に関して門外漢な儂でも今の技術では絶対に不可能だろうことは分かる。
そんなことが可能なのはそれこそ魔人だけだろう。
この男の性質はまさに邪悪ではあるがまさか魔人とは言うまい。魔人が持つ特有の禍々しさは感じない。
「・・・魔人の手を借りたとでも言うのか?」
かつての戦争の際、帝国軍が使い連合軍に壊滅的な損害をもたらした魔道剣も魔人から齎されたと言われている。
ここ最近活発になっている魔人の動向もある。この件にも何かしらの関与をしているのだろうか。
「魔人・・・だとぉ?」
そう言った男の表情は先程までの狂喜は消え、強い怒りの感情を顕にする。
「偉大なる我が王よりその叡智を賜り造り上げた我が騎士を・・・あの卑しく浅ましい魔人からなどと、戯れ言をほざくなぁっ!!」
男が放つ強烈な怒気に思わず気圧される。ただの人間がこれ程までの威圧を放てるものなのか。まるで魔人並だ。
「奴等にこれ程のものを造れる感性などあるはずがないっ!見よ!この美しく力強い姿を!これぞまさに芸術っ!」
確かに星明りに照らされ白銀の輝きを放つその体躯は他のゴーレムの簡素な造形とは異なり、その姿と意匠はまるで帝国重装騎士かの様な強靭さと美しさを兼ね備えている。
それだけに頭頂部のゴルドバがより異質に見える。
「あぁ・・・ですが、『核』としてちょうど良かったとはいえ、あのような醜い豚を使ったことだけは美しくないですね」
男の表情は強い苛立ちを見せたかと思えば、陶酔しきった表情でゴーレムを見つめ、その次は心から残念そうにその頭部を見上げる。
まるで劇役者でも観ているようだ。
「お前はいったい、何者なんだ・・・」
気になることはあまりにも多い。
ゴーレムに魔道剣、『偉大なる王』といった存在や、多分ゴルドバのことだろう『核』というもの。
これだけのことをただの人間が出来る筈がない。
「・・・私が誰かだと?確かに貴様は私を知らないだろう。私から魔道剣を奪い、私の輝かしい未来を奪い、父の命をも奪った貴様を、貴様等をっ!クラーゼルをっ!私がどれだけ怨み憎んでいるかもなぁ!!」
父──?魔道剣を奪った──?
そういえば先程ゴルドバが将軍という言葉を口にしていた。まさかこの男は──
「・・・ルードヴィング」
「ほぉ!分かったか。そうだ、私の名はルーファス・フォン・ルードヴィング。我が父、栄光あるシャルマート帝国魔道将軍オードウィン・フォン・ルードヴィング、その遺志を継ぎ、その無念を晴らすものだっ!!」
やはりか・・・。
三十数年前──魔王を討伐したあとも帝国軍残党は各地で抵抗を続け、それを率いていた将の中にルードヴィング家の者がいたことは知っていたが、その反乱は夜襲奇襲と手段を問わず乱戦を極め、誰が何処で捕縛されどのように死亡したかなど確めようもない状況だった。
名だたる貴族や将の何人かは未だにその消息が分からないものも少なくないという。
ルードヴィングもそのひとりであったが、まさかこれ程王都の近くに潜伏していたとは。
「ククク・・・しかし、計画とは大分ずれてしまったが、まさかこんなところでこうも簡単に怨敵のひとりを殺せるチャンスが巡ってくるとは想わなかったなぁ」
自らが造り出したゴーレムによっぽどの自信があるのだろう。執事・・・いや。ルードヴィングは、既に勝ったつもりのようだ。
「可笑しなことを言うな?儂等はまだ生きているぞ。それにまだこちらは攻撃すらしてもいないのにもう勝ったつもりか?」
言ってはみたもののまだ起死回生の手は浮かんでいない。
会話を引き延ばしつつ頭の中であらゆる手で試行錯誤を行ってはみたものの、どうしても火力不足だ。確実な勝筋は見えてこない。
魔法耐性の高いミスリルとはいえ金属には変わらない。大空洞でも使った『焼入れ』が一番効果的かと思うが、あの時とは状況が違うからな。
「可笑しなことぉ??それは、貴様だろぉ!!ヴェロスクードぉ!!かつてのお仲間が一緒でない貴様など、攻撃を防ぐしか能がないただの老いぼれじゃないか。あぁ?!!
それに、自慢の盾の神器も持ってないようだしなぁ。どう考えても貴様の死は明確だろうが!!」
「・・・やってみなけりゃ分からんよ」
切り札を使ったアイギスはまだ小さいまま。翌日まで元には戻らない。
「ヒヒ・・・ヒャーハッハッハッハッ!!
やれるものならやってみろよぉっ!!!」
「ウォォォオオオオオォォォォ!!!」
ルードヴィングの声に呼応しゴーレムと頭上のゴルドバが、強風が深い谷間を吹き抜けるかの様に低く唸るような叫びを響かせ、その両腕を高々と振り上げる。
普通に考えれば、ここは一度退き体勢を立て直して挑むべきだが、それではゴーレムによって街に大きな被害が出てしまうだろう。
なんとか耐え忍び、癪だがミリアーナが来るのを待つしかあるまい。
「カイン!お前は逃げろっ!今の儂では守りきれんっ!」
「そ、総隊長をひとりには出来ませんっ!及ばずながら囮にでもなる覚悟はあります!」
「バ、バカを言うなっ!!さっさと逃げろ──
先程の様な力任せな攻撃ではなく、固く握られた巨大な拳が確実に儂らを狙い放たれる。
「チッ!『シールドバッシュッ!』
「──なっ?!グハッ!!」
咄嗟に横に居たカインを下から掬い上げるように盾の突進技で吹き飛ばす。カインはものの見事に吹き飛ぶ。
そのまま身体を捻り身体を回転させゴーレムに向け盾を構える。
真っ黒な猛威はもう眼前に迫っていた。
これ程の巨大な質量相手に成功するかは分からないが、『パリング』で受け流すしかあるまい。
頼むぞ!アイギスッ!!
『・・・クリムゾンブラスト』
盾と拳がぶつかろうとさした瞬間──
少し眠たそうで、それでいて何処か怒気の籠った聞き慣れた声が静かに響く。
ゴーレムの目の前で凝縮された濃密な魔力が猛烈な炎と爆風を弾けさせる。これは、火と風の複合魔法。
鼻の先まで迫っていた暴威は力の法則を無視するかの様に真後ろへと吹き飛ばされた。
「おいおい・・・また儂を巻き込むつもりか?」
「・・・さっきも言ったけど当たってないでしょ?」
後ろを振り向くとそこには、猫耳大魔道士ミリアーナ。
隣にはロディに支えられたルーテが居た。
その胸には静かに蒼い輝きを放つ、大きな竜結晶が抱えられていた──
0
あなたにおすすめの小説
3歳で捨てられた件
玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。
それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。
キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします
夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。
アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。
いわゆる"神々の愛し子"というもの。
神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。
そういうことだ。
そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。
簡単でしょう?
えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか??
−−−−−−
新連載始まりました。
私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。
会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。
余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。
会話がわからない!となるよりは・・
試みですね。
誤字・脱字・文章修正 随時行います。
短編タグが長編に変更になることがございます。
*タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました
雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。
気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。
剣も魔法も使えないユウにできるのは、
子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。
……のはずが、なぜか料理や家事といった
日常のことだけが、やたらとうまくいく。
無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。
個性豊かな子供たちに囲まれて、
ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。
やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、
孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。
戦わない、争わない。
ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。
ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、
やさしい異世界孤児院ファンタジー。
最愛の番に殺された獣王妃
望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。
彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。
手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。
聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。
哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて――
突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……?
「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」
謎の人物の言葉に、私が選択したのは――
人質5歳の生存戦略! ―悪役王子はなんとか死ぬ気で生き延びたい!冤罪処刑はほんとムリぃ!―
ほしみ
ファンタジー
「え! ぼく、死ぬの!?」
前世、15歳で人生を終えたぼく。
目が覚めたら異世界の、5歳の王子様!
けど、人質として大国に送られた危ない身分。
そして、夢で思い出してしまった最悪な事実。
「ぼく、このお話知ってる!!」
生まれ変わった先は、小説の中の悪役王子様!?
このままだと、10年後に無実の罪であっさり処刑されちゃう!!
「むりむりむりむり、ぜったいにムリ!!」
生き延びるには、なんとか好感度を稼ぐしかない。
とにかく周りに気を使いまくって!
王子様たちは全力尊重!
侍女さんたちには迷惑かけない!
ひたすら頑張れ、ぼく!
――猶予は後10年。
原作のお話は知ってる――でも、5歳の頭と体じゃうまくいかない!
お菓子に惑わされて、勘違いで空回りして、毎回ドタバタのアタフタのアワアワ。
それでも、ぼくは諦めない。
だって、絶対の絶対に死にたくないからっ!
原作とはちょっと違う王子様たち、なんかびっくりな王様。
健気に奮闘する(ポンコツ)王子と、見守る人たち。
どうにか生き延びたい5才の、ほのぼのコミカル可愛いふわふわ物語。
(全年齢/ほのぼの/男性キャラ中心/嫌なキャラなし/1エピソード完結型/ほぼ毎日更新中)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる