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本編
王子の独り言 sideルシアン①
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これはおかしい……。
愛しい精霊姫に会ってからというもの、自分でも自分の気持ちが抑えきれないのだ……。
現在22才の私は、エメラルド国の第一王子として生まれ、次期国王になるべく厳しく育てられてきた。
適齢期になり持ち込まれることが多くなった縁談も、どうしても幼い頃に読んだ絵本の精霊姫様と比べてしまい、いくら容姿が優れていようとも、才色兼備で家柄が良かろうとも、心が動かされることはなく興味が持てずに断るばかりだった。
このまま正妻を迎えることもなく、後継ぎは弟の第二王子に任せようと思っていた。
私が読んだ絵本の精霊姫様はとても美しく気高くて、様々な困難に打ち勝ち国を豊かにし、子孫に強力な魔力を残して下さった。
結婚自体を諦めていた時に、精霊王様から愛し子の存在が知らされた時は、まさに天にも昇る気持ちだった。
まさか私に精霊姫様を娶るチャンスが与えられるなんて……。
願ってはいたが、叶うとは露ほども思っていなかったため舞い上がってしまい、私は他の王族に伝えることなく何も考えずにすぐ、王家に伝わる召喚術を施してしまった。
魔法陣の中に現れたのは、成人より少し前くらいに見える、神秘的な黒い髪と魅惑の茶色の瞳を持つ青年だった。
いきなりのことに戸惑っており、キョロキョロしている姿も何と可愛らしいことか……。
私の方を見て欲しくて声を掛けるけれど、生憎言葉が伝わらないようで、この世界の言語を認識出来る呪文を唱えた。
彼と目が合った瞬間、人生で初めてと言って良いほどの幸福感に包まれた。
そして私自身でも驚いているのだが、上から見た精霊姫様の旋毛が余りにも美しく、無意識に口付けていた。
触れるだけの短い口付けだったが、黒曜石の様に艶やかな精霊姫様の髪の毛の柔らかさや、頭皮の甘い香りを堪能してしまった。
未だ何が起こったのか理解しきれない様子の精霊姫様の手を取り、ソファーへ導いたのですが……。
触れた手の肌の滑らかさや、離しがたい程心地よい温もりを感じ、初めてお会いしたばかりだと言うのに愛しい気持ちが溢れて止まらなくなってしまった。
未だかつて、私の心をここまで虜にしたものなど何一つなかった。
目の前にいる美しい精霊姫様は、私の伴侶になるのだ。
興奮がなかなか冷めず戸惑うものの、落ち着くためにロイにお茶を用意させて、緊張した様子の姫にも勧めた。
姫は椿のように美しく可憐な唇をカップに付けると、美味しそうにお茶を召し上がった。
私はと言えば、平静を装ってはいたが、直ぐにでもその唇を私の唇で塞いでしまいたい衝動を抑えるのが大変で、歴代の騎士団の豪傑たちの顔を思い浮かべて、やっとの思いで昂りを静めていた。
一息つくと、精霊姫様にこの召喚の旨を説明をさせていただいた。
するとなぜか激昂されて、精霊姫様付きの精霊に魔法攻撃を受けてしまった。
すぐさま結界を張り、姫が落ち着くのを待つ。
怒った表情ですら美しい……。
私は22年間生きてきて、一度も他人を美しいと思ったことはなく、素直にそう思えることに驚いた。
感性というものが死滅しているのかとすら思っていたため、私にも人間らしい感性があったことに感動した
姫は男性であるのに、なぜ『姫』と呼ばれるのかが気になる様子だったが、精霊王様の愛し子は性別に関係なく『姫』と呼ぶことになっているため、私たちにも譲ることは出来ず、受け入れて頂くしかないのだ。
お名前を伺えば『玉城 恵都』様だと教えてくださった。
声も低音過ぎず心地よい響きで、魅惑の唇から紡がれた名前まで美しかった。
落ち着いてきたところで、姫が私の伴侶であることを告げる。
すると自身は男であるため、結婚したとしても子供を産むことは出来ないし、異性愛者であるため男の伴侶になることは考えられないと仰った……。
王子である私が子を成すことの重要性まで考えてくださるなんて……。
姫も私の事を思ってくれているのだと感激してしまった。
そこで私は、まだこちらの世界に来て間もない姫は混乱していると思い、子作りの話はまだ出会ったばかりなので、まずはお互いを知っていくことから始めましょうと提案させていただいた。
姫は私が部屋から出たあとに精霊と話したりして過ごされたらしい。
精霊から気に入らない話でも聞いたのか、不機嫌な様子で食堂にやって来た。
ああ、怒っていてもなんて美しいのだろう。
姫に見とれてうっとりしていると、いつの間にかあの至高のブラウンダイヤモンドの瞳で見詰められており、私は初めて頬が赤くなという体験をした。
華奢な身体からは想像のつかない豪快な食べっぷりは清々しく、あっという間に完食してしまい驚かされた。
もしかすると足りなかったかと様子を窺うけれど、どうやら食事自体には満足していただけたらしい。
姫は魔法のない世界から来たため、この世界の魔具を自分で使用することは出来ない。
そのため、私の魔力と愛情を籠めた私の瞳の色の魔石をポワソンに託した。
その日の夜、私は自室で眠りに就いたはずなのに、目覚めると姫のベッドの中で姫に抱き付いた形で眠っていた。
姫は怒っていたけれど、とても良い匂いがして姫の言葉は耳に入ってこなかった。
するとポワソンから『姫に嫌われる』という言葉が聞こえてきたため、それはいけないと慌てて起き上がった。
朝食の席で、魔石の使用感などを伺うと、問題なく使うことが出来ていたようで、私との相性の良さを改めて実感出来た。
朝から感無量で、思わず魔力が溢れて光ってしまい姫を驚かせてしまったのには、自分でも驚いている。
愛しい精霊姫に会ってからというもの、自分でも自分の気持ちが抑えきれないのだ……。
現在22才の私は、エメラルド国の第一王子として生まれ、次期国王になるべく厳しく育てられてきた。
適齢期になり持ち込まれることが多くなった縁談も、どうしても幼い頃に読んだ絵本の精霊姫様と比べてしまい、いくら容姿が優れていようとも、才色兼備で家柄が良かろうとも、心が動かされることはなく興味が持てずに断るばかりだった。
このまま正妻を迎えることもなく、後継ぎは弟の第二王子に任せようと思っていた。
私が読んだ絵本の精霊姫様はとても美しく気高くて、様々な困難に打ち勝ち国を豊かにし、子孫に強力な魔力を残して下さった。
結婚自体を諦めていた時に、精霊王様から愛し子の存在が知らされた時は、まさに天にも昇る気持ちだった。
まさか私に精霊姫様を娶るチャンスが与えられるなんて……。
願ってはいたが、叶うとは露ほども思っていなかったため舞い上がってしまい、私は他の王族に伝えることなく何も考えずにすぐ、王家に伝わる召喚術を施してしまった。
魔法陣の中に現れたのは、成人より少し前くらいに見える、神秘的な黒い髪と魅惑の茶色の瞳を持つ青年だった。
いきなりのことに戸惑っており、キョロキョロしている姿も何と可愛らしいことか……。
私の方を見て欲しくて声を掛けるけれど、生憎言葉が伝わらないようで、この世界の言語を認識出来る呪文を唱えた。
彼と目が合った瞬間、人生で初めてと言って良いほどの幸福感に包まれた。
そして私自身でも驚いているのだが、上から見た精霊姫様の旋毛が余りにも美しく、無意識に口付けていた。
触れるだけの短い口付けだったが、黒曜石の様に艶やかな精霊姫様の髪の毛の柔らかさや、頭皮の甘い香りを堪能してしまった。
未だ何が起こったのか理解しきれない様子の精霊姫様の手を取り、ソファーへ導いたのですが……。
触れた手の肌の滑らかさや、離しがたい程心地よい温もりを感じ、初めてお会いしたばかりだと言うのに愛しい気持ちが溢れて止まらなくなってしまった。
未だかつて、私の心をここまで虜にしたものなど何一つなかった。
目の前にいる美しい精霊姫様は、私の伴侶になるのだ。
興奮がなかなか冷めず戸惑うものの、落ち着くためにロイにお茶を用意させて、緊張した様子の姫にも勧めた。
姫は椿のように美しく可憐な唇をカップに付けると、美味しそうにお茶を召し上がった。
私はと言えば、平静を装ってはいたが、直ぐにでもその唇を私の唇で塞いでしまいたい衝動を抑えるのが大変で、歴代の騎士団の豪傑たちの顔を思い浮かべて、やっとの思いで昂りを静めていた。
一息つくと、精霊姫様にこの召喚の旨を説明をさせていただいた。
するとなぜか激昂されて、精霊姫様付きの精霊に魔法攻撃を受けてしまった。
すぐさま結界を張り、姫が落ち着くのを待つ。
怒った表情ですら美しい……。
私は22年間生きてきて、一度も他人を美しいと思ったことはなく、素直にそう思えることに驚いた。
感性というものが死滅しているのかとすら思っていたため、私にも人間らしい感性があったことに感動した
姫は男性であるのに、なぜ『姫』と呼ばれるのかが気になる様子だったが、精霊王様の愛し子は性別に関係なく『姫』と呼ぶことになっているため、私たちにも譲ることは出来ず、受け入れて頂くしかないのだ。
お名前を伺えば『玉城 恵都』様だと教えてくださった。
声も低音過ぎず心地よい響きで、魅惑の唇から紡がれた名前まで美しかった。
落ち着いてきたところで、姫が私の伴侶であることを告げる。
すると自身は男であるため、結婚したとしても子供を産むことは出来ないし、異性愛者であるため男の伴侶になることは考えられないと仰った……。
王子である私が子を成すことの重要性まで考えてくださるなんて……。
姫も私の事を思ってくれているのだと感激してしまった。
そこで私は、まだこちらの世界に来て間もない姫は混乱していると思い、子作りの話はまだ出会ったばかりなので、まずはお互いを知っていくことから始めましょうと提案させていただいた。
姫は私が部屋から出たあとに精霊と話したりして過ごされたらしい。
精霊から気に入らない話でも聞いたのか、不機嫌な様子で食堂にやって来た。
ああ、怒っていてもなんて美しいのだろう。
姫に見とれてうっとりしていると、いつの間にかあの至高のブラウンダイヤモンドの瞳で見詰められており、私は初めて頬が赤くなという体験をした。
華奢な身体からは想像のつかない豪快な食べっぷりは清々しく、あっという間に完食してしまい驚かされた。
もしかすると足りなかったかと様子を窺うけれど、どうやら食事自体には満足していただけたらしい。
姫は魔法のない世界から来たため、この世界の魔具を自分で使用することは出来ない。
そのため、私の魔力と愛情を籠めた私の瞳の色の魔石をポワソンに託した。
その日の夜、私は自室で眠りに就いたはずなのに、目覚めると姫のベッドの中で姫に抱き付いた形で眠っていた。
姫は怒っていたけれど、とても良い匂いがして姫の言葉は耳に入ってこなかった。
するとポワソンから『姫に嫌われる』という言葉が聞こえてきたため、それはいけないと慌てて起き上がった。
朝食の席で、魔石の使用感などを伺うと、問題なく使うことが出来ていたようで、私との相性の良さを改めて実感出来た。
朝から感無量で、思わず魔力が溢れて光ってしまい姫を驚かせてしまったのには、自分でも驚いている。
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