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本編

ルシアンのしたいようにしていいよ①

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 俺が部屋に戻って少し落ち込んでいると、ルシアンが入ってきた。
 ポワソン少年とポプラさんに部屋から出てもらえるようにお願いして、しばらくの間人払いを頼んだ。

 ソファーに座る俺の隣に腰掛けると、退出前にポワソン少年が用意してくれたお茶を勧める。
 大人しい俺の様子を見て不安そうな顔をしているルシアンは、マリオンとの間に何かがあったのではと心配しているのだろう。
 
 ――マリオンとの間には何もなかったよ。
 ただ俺が思っていたよりも、マリオンは俺のことを思っていてくれていたのに、勝手にその気持ちを軽いものと決めつけて傷つけてしまった俺の浅はかさを悔いているだけなんだ……。
 でもそれをルシアンに言うのは、マリオンに対して失礼な事だと思うから、俺の中で消化しなければならない。
 最後のハグで、俺への気持ちにケリをつけたと宣言してくれたマリオンの優しさに報いるためにも。

 心配そうなルシアンに、マリオンにちゃんと魔石を返したことを伝えるとホッとしたようだった。
 やはり俺が落ち込んでいるから、何かがあったのではと心配してくれたらしい。

「あとは王様に言わないといけないな……」

「父上は分かってくださると思いますが、謁見の申し込みをしないといけませんね」

 俺が塔から出てからは夕食を一緒に食べることも無くなり、話す機会がまるっきりなくなってしまったため、どうやって伝えようかと考えているところだった。
 前よりは関係性が近くなったから、謁見の間みたいな畏まった感じでなくても良いらしいけど、王様は忙しいから時間を決めないとなかなか会えないらしい。
 王様に関してはそこまで気負ってはいないんだけど、マリオンの様に決めつけて傷つけることになったらと思うと怖気づいてしまう……。

「姫、本当に私で宜しいのですか? いえ、失礼しました……。姫の決断を疑うつもりはないのですが、自分に自信が持てないのです……。はぁ……。――私は姫に情けない姿ばかり見せておりますね。姫が私のためにマリオンや父上のことで悩んでくださっているというのに、私以外の男のことを考えていると思うと……、醜い嫉妬が沸々と湧き上がってくるのです」

「あはははっ! ルシアンはそうだよな‼ ルシアンはそのままで良いよ。嫌だったらその時に言うしさ。今みたいに素直に気持ちを話してくれた方が俺も安心出来る。溜め込んで爆発するのも体調崩すのも良くないからな。マリオンとは、今まで通り友達として付き合っていけたらいいなと思ってる……。でもそれは、マリオンに委ねるつもりだ。直ぐには無理かもしれないけど、マリオンはちゃんと俺の話を聞いてくれたから。だからルシアンが心配するようなことはないから、そこは安心して欲しい。王様だって俺の父親と同じくらいの年齢差があるから最初から対象外だったし、何より俺はルシアンを選んだんだからさ」

 まだ不安そうなルシアンを見て、さっきまではルシアンが心配してくれていたのになと思ったら笑ってしまった。
 ルシアンは普段はしっかりしているけど、俺が絡むと途端にポンコツになる。
 でもそんなところも良いと思ってしまうんだから、恋って怖いと思う……。

「ルシアン、俺に触っていいよ。だからおいで」

 両手を広げてそう言うと、シュンとしていたルシアンは顔を上げて素直に俺の腕の中に納まった。
 といっても、ルシアンの方が俺よりデカいからスッポリとはいかないし、体勢的にキツイかもしれないけど、頭を撫でてやれば嬉しそうにしているのが分かる。
 顔は見えないけど、きっと頬っぺたが赤くなっているんだろうな。
 それから今度は逆にルシアンに抱きしめてもらった。
 こっちの方が納まりが良いし安心すると思うのは俺だけの秘密だ。
 抱きしめている時にルシアンがマリオンの匂いがすると言う。
 マリオンの俺への気持ちにケリをつけるための行動をルシアンに話すつもりはないから、苦しいかもしれないけど友達に戻るために別れのハグだけしたと伝える。
 そう口にすると、みるみる嫉妬心で落ち込みだしたから、俺はルシアンを宥めなくてはならなくなった。

「――ルシアン。これから伴侶として俺に触っても良いのはルシアンだけなんだから。だからそんなに不安な顔するなよ。俺が抱きしめるのも、俺を抱きしめるのもルシアンだけだ」

「そうですね……。姫は私の伴侶になってくださるんでした……。本当に夢のようです……。幸せ過ぎていつ死んでもいいです!」

「おい、せっかく両想いになったのに死なれたら困るんだけどな。俺を一人にする気か?」

「――ハッ! そうでした。申し訳ありません‼ 危うく姫に寂しい思いをさせてしまうところでした……」

「分かってくれたならそれでいいから、今はお前のしたいようにしていいよ?」

 正式に婚姻の儀が終わるまではキスもセックスも出来ないのだし、召喚当時のあの変態的な行為は俺への変な想いを拗らせていた結果だと思っていたから、軽い気持ちで言ってしまったことを俺はすぐに後悔することになる。

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