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本編
婚姻の儀(後)①
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赤い絨毯の真ん中をセインに手を引かれてゆっくりと進んでいく。
儀式に立ち会えるのは、この国の王族と要職に就いている者に限られているらしい。
ポワソン少年とポプラさんは王族ではないけれど、精霊姫の専属侍従と専属騎士なので参加出来ることになった。
本当はダメなようなことを宰相のおじさんは言っていたけど、セインから精霊王に確認してもらったら特別にOKをもらうことが出来たんだ。
だってポワソン少年はこの世界での親友と言ってもいいくらい大切な友達だし、ポプラさんも俺を護るだけじゃなくて一緒に鍛練をしてくれたりするお兄ちゃん的な感じで、二人には絶対に立ち会ってもらいたかったんだ。
ルシアンとこうなる前から、心身ともに支えてくれた二人だから。
いつも一緒に居るし家族みたいなものだとも思う。
絨毯の先にある祭壇の手前にある長椅子の前に、王様とマリオンとキャサリンちゃんのお父さんである王様の弟が並んで立っていて、その隣の長椅子の前に宰相のおじさんと神官長だという若そうな人だけがいる。
その後ろにも長椅子が並べられていて、貴族の要職の人が偉い順に席が決められているらしい。
キャサリンちゃんは、王族ではあるけど王弟の娘という微妙な位置なので参加出来ないらしく、残念がってはいたけれど別の場所で祝福していると言ってくれた。
でも本当は、キャサリンちゃんが参加出来ないのは、俺を襲撃した時のことが絡んでいるらしい。
それを聞いた俺は、「当事者の俺が許しているのに何でいまさら!」とちょっとキレちゃったんだけど、どうやらキャサリンちゃんから言い出したことなんだって。
無力な精霊姫である俺をいきなり襲撃したのに、処罰は魔法を使うことが出来なくなるだけで、何故か被害者であるはずの俺と仲良くしているのをよく思わない貴族とかが、少なからずいるんだとか……。
精霊姫と接点を持ちたいと思っても、ルシアンの許可が下りないし、常に専属騎士が側にいて声を掛けるどころか近付くことすら出来ない。
なのに王弟の娘とはいえ、一度精霊姫を害そうとした者が自由に会えるのはおかしいっていう声が上がっていて、ここで婚姻の儀にまで参加するのはそういった貴族たちの不満を煽ることになりかねないからと、参加する王族を王弟までということに決めたらしい。
俺としては仲良くする人は自分で決めるし、妹の様に大事に思っているキャサリンちゃんを悪く言われるのは腹が立つ。
でも貴族には貴族の事情があるんだろうから下手に口出しはしないけど、この婚姻の儀以降にまだキャサリンちゃんのことを悪く言う奴がいたら、タダじゃ済ませないつもりだ。
ちなみにこの儀式のあと、『恩赦』という制度が使えるらしいから、キャサリンちゃんの犯した罪は完全に償ったものとして魔法を封じる魔具を外してもらえるようにルシアンに頼む予定なのだ。
――話が逸れてしまったけど、参列の王族や役職付きの人たちは長椅子の前で立って、俺がルシアンのところまで行くのを静かに見守ってくれていた。
キャサリンちゃんのことを思い出して少し気持ちがささくれ立ったけど、セインの小さくて温かい手に励まされて俺の到着を待つルシアンの元へ歩みを進めた。
神殿の中は、大きくて綺麗なステンドグラスや存在感の凄いパイプオルガンが設置されていて、思わず見惚れてしまうくらい神聖というか神々しかった。
その祭壇の前で俺の到着を待つルシアンはいつにも増してキラキラしく、どこからどう見ても王子様(実際には王太子様)で、その伴侶が俺だと思うと少し居た堪れない気持ちもあるけどやっぱり嬉しい気持ちが大きくて誇らしかった。
たった一人俺だけを求めて愛してくれるルシアンと、何だかんだルシアンを甘やかして幸せにしてやりたい俺は、きっと成るべくしてなった関係なのだろう。
ここまで来たらもう腹を括って、俺はルシアンと結婚して幸せになってやる!
母ちゃんにもこの式や俺の晴れ姿を見せてあげたかったけどそれは叶わないから、俺が幸せになることが親孝行だと気持ちを割り切ることにしたんだ。
儀式に立ち会えるのは、この国の王族と要職に就いている者に限られているらしい。
ポワソン少年とポプラさんは王族ではないけれど、精霊姫の専属侍従と専属騎士なので参加出来ることになった。
本当はダメなようなことを宰相のおじさんは言っていたけど、セインから精霊王に確認してもらったら特別にOKをもらうことが出来たんだ。
だってポワソン少年はこの世界での親友と言ってもいいくらい大切な友達だし、ポプラさんも俺を護るだけじゃなくて一緒に鍛練をしてくれたりするお兄ちゃん的な感じで、二人には絶対に立ち会ってもらいたかったんだ。
ルシアンとこうなる前から、心身ともに支えてくれた二人だから。
いつも一緒に居るし家族みたいなものだとも思う。
絨毯の先にある祭壇の手前にある長椅子の前に、王様とマリオンとキャサリンちゃんのお父さんである王様の弟が並んで立っていて、その隣の長椅子の前に宰相のおじさんと神官長だという若そうな人だけがいる。
その後ろにも長椅子が並べられていて、貴族の要職の人が偉い順に席が決められているらしい。
キャサリンちゃんは、王族ではあるけど王弟の娘という微妙な位置なので参加出来ないらしく、残念がってはいたけれど別の場所で祝福していると言ってくれた。
でも本当は、キャサリンちゃんが参加出来ないのは、俺を襲撃した時のことが絡んでいるらしい。
それを聞いた俺は、「当事者の俺が許しているのに何でいまさら!」とちょっとキレちゃったんだけど、どうやらキャサリンちゃんから言い出したことなんだって。
無力な精霊姫である俺をいきなり襲撃したのに、処罰は魔法を使うことが出来なくなるだけで、何故か被害者であるはずの俺と仲良くしているのをよく思わない貴族とかが、少なからずいるんだとか……。
精霊姫と接点を持ちたいと思っても、ルシアンの許可が下りないし、常に専属騎士が側にいて声を掛けるどころか近付くことすら出来ない。
なのに王弟の娘とはいえ、一度精霊姫を害そうとした者が自由に会えるのはおかしいっていう声が上がっていて、ここで婚姻の儀にまで参加するのはそういった貴族たちの不満を煽ることになりかねないからと、参加する王族を王弟までということに決めたらしい。
俺としては仲良くする人は自分で決めるし、妹の様に大事に思っているキャサリンちゃんを悪く言われるのは腹が立つ。
でも貴族には貴族の事情があるんだろうから下手に口出しはしないけど、この婚姻の儀以降にまだキャサリンちゃんのことを悪く言う奴がいたら、タダじゃ済ませないつもりだ。
ちなみにこの儀式のあと、『恩赦』という制度が使えるらしいから、キャサリンちゃんの犯した罪は完全に償ったものとして魔法を封じる魔具を外してもらえるようにルシアンに頼む予定なのだ。
――話が逸れてしまったけど、参列の王族や役職付きの人たちは長椅子の前で立って、俺がルシアンのところまで行くのを静かに見守ってくれていた。
キャサリンちゃんのことを思い出して少し気持ちがささくれ立ったけど、セインの小さくて温かい手に励まされて俺の到着を待つルシアンの元へ歩みを進めた。
神殿の中は、大きくて綺麗なステンドグラスや存在感の凄いパイプオルガンが設置されていて、思わず見惚れてしまうくらい神聖というか神々しかった。
その祭壇の前で俺の到着を待つルシアンはいつにも増してキラキラしく、どこからどう見ても王子様(実際には王太子様)で、その伴侶が俺だと思うと少し居た堪れない気持ちもあるけどやっぱり嬉しい気持ちが大きくて誇らしかった。
たった一人俺だけを求めて愛してくれるルシアンと、何だかんだルシアンを甘やかして幸せにしてやりたい俺は、きっと成るべくしてなった関係なのだろう。
ここまで来たらもう腹を括って、俺はルシアンと結婚して幸せになってやる!
母ちゃんにもこの式や俺の晴れ姿を見せてあげたかったけどそれは叶わないから、俺が幸せになることが親孝行だと気持ちを割り切ることにしたんだ。
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