【R18】101回目の転生~天然無自覚少女は溺愛に気付かない~

しろ

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昼食を終え食後の紅茶を飲んでいる時、私は横にいたサーラにコソッと話しかける。

「サーラ、この後お庭に行ってもいいかしら?パパに新しい植物図鑑を貰ったから、いつもの薔薇園じゃなくて、門の方まで行ってみたいんだけど…。」

新しい植物図鑑には草花が中心で、花壇の美しい花とは違った可愛らしい花が沢山載っていた。いつも行く花壇は手入れが行き届いており、所謂雑草や野花と言われるようなものは見当たらない。だから、門の方まで行けば見られるんじゃないかと思ったのだ。

「あら、いいじゃない。なんだったら屋敷の外の公園にでも行ってみたらどぅお?」

サーラより先に答えたのはママだった。
「今日はお天気もいいし、ミュラちゃんも屋敷の中ばかりじゃつまんないわよね~。」と笑顔だ。

「えっ…お外に出てもいいの?」

ママの予想外の回答に驚いていたのは私だけじゃなく、昼食を一緒にしていたパパも同様だった。隣をチラリと見ればサーラが焦った様子でハリーを見ているし…ハリーも困り顔だ。

そんな皆の様子なんてお構い無しでママは言葉を続ける。
「もちろんよぉ!ね、いいわよね?ルイズ。」

「いやぁ…急にはなぁ…。なぁハリー?」

「え、えぇ。そうですね…。あぁ!そうだ。外出するにはミュラお嬢様のお洋服を新しく仕立てなければいけませんね。いつもの御召し物も勿論素敵ですがあくまで室内用ですので…。つばの広いお帽子などもご用意しなければなりませんし。ね、ルイズ様。」

「そ、そうだな!外出用の洋服が必要だな!それにミュラは色白だし、長時間日に当たったら日焼けしてしまう。帽子や日傘も必要だな。よし、仕立て屋を呼ばなければならないな。うんうん。ハリー、近日中に手配を頼むよ。」

何故か凄く早口でパパとハリーの会話が繰り広げられる。二人とも息がピッタリ。

「うーん、それもそうねぇ…。」
ママは少し納得がいっていないという顔で、パパを上目遣いで睨む。睨んだ顔もママはとても可愛い。その証拠にパパは甘い笑みをママに向けている。本当にパパとママは仲良しだ。

「レイラもミュラと一緒に洋服を仕立てればいいさ。そうだ、お揃いなんかも可愛いんじゃないか?」

パパの提案にママはパアッと顔が明るくなる。
「お揃い…!良いわね!王都で人気のデザイナーを呼びましょう!うふふ、楽しみだわ~」

「レイラ様、かしこまりました。すぐにお手配いたします。」
先程までの焦った様子はどこへやら、ハリーはいつもの落ち着いた口調で柔らかい笑顔を見せたものの…
次のママの一言に皆が顔をひきつらせた。

「ミュラちゃん!残念だけど今日は門の付近で我慢してね。」

「レイラ、門の付近は危ないんじゃないか?」

「何が危ないの?危険なものなど何もないわ?…ルイズ、何か隠しているの?」
ママのジト目、やっぱり可愛い。

「まさか!レイラに隠し事などある訳ないじゃないか。そうだな、門の手前くらいまでなら…。」
パパは渋々といった様子で許可を出してくれる。

「わぁ…パパありがとう。」
いつも危ないから近づいてはいけないと言われている場所なだけに、ダメ元のお願いではあったけど、まさか許可がおりるとは…。すごく楽しみ!

「ミュラ、気をつけて行くんだぞ。サーラの元を離れないようにな?あと、門の外には行ってはいけないよ。パパとのお約束だ。」

「はい、パパ。お約束します。」

「よし、ミュラはいい子だね。」
パパは頭を撫でながらほっぺにキスをしてくれる。

「サーラ、よろしく頼むよ。何かあれば魔道具ですぐ呼ぶように。」

「はい、承知いたしました!必ずミュラお嬢様をお守りいたします!」

意気込むサーラだけど…門の付近ってそんなに危ないのかな?もしかして動物がいるとか?…あ!猫ちゃんがいたらいいなぁ。
うふふ、楽しみ!
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