【R18】101回目の転生~天然無自覚少女は溺愛に気付かない~

しろ

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76.

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はぁ…やっぱりこうなると思ってたんだ。
101回目の人生も6歳で終わりかぁ…。
優しい家族に恵まれて、初めて家族から愛情をもらった。公爵家という裕福な環境で、食べ物に困った事もないし、着るものや寝る場所にも困る事はなかった。初めて図鑑を読んだし、花を観察するという趣味までできた。
うん、そう考えると今までで一番幸せな人生だったな。

ーー ヒヤッ ーー

ポールさんの持つナイフが首筋に触れ、冷たさにハッと意識が戻る。
正直、こういう展開は初めてではない。過去の転生での死因第一位は餓死だけど、第二位は他殺だった。勿論、今回のように首を切られてっていうパターンも経験済みです…。
でもでもでも!経験済みだからって慣れる訳じゃない。むしろ死を迎える迄の苦痛を知っているからこそ余計怖いのです!転生は慣れているけど、死ぬ事に慣れている訳じゃない。死にたくない、死ぬのは怖い。

ドキドキと心音が早くなり、プルプル震えながら冷や汗をかく。後ろから羽交い締めされた状態で、ポールさんにも伝わってしまいそうだ。

チラリと後ろのポールさんを見れば、ハァハァと息が荒く目も充血していた。

ポールさん…。
そうよね、ポールさんだってこんな事したくてしてる訳じゃないのよね。だからこんなに焦って追い詰められた様子なのね。
そうだ、私もこんな事があった…。何回目の転生か忘れてしまったけれど、私は貴族のお屋敷で働く奴隷で、ある日お嬢様の大切な髪飾りを盗んだと疑われてしまった。私は絶対に盗んだりしてないと必死に伝えたが、お嬢様は私が盗んだと言い張った。結局、私の無実は聞き入れられる事はなかった。罪を侵した奴隷の末路なんて悲惨で、あっという間に命の火は消されてしまった。悲しいけれど、こういう事って事実は関係ないんだ…『誰が言うか』が重要で、お嬢様が真実なんだから。

そっか…。ポールさんも同じ気持ちだよね。
身分の低い立場で疑われて…例え私がパパに説明するって言っても信じられないよね。
ポールさんは全然悪くないっ!

過去の自分とポールさんの状況が重なり、悔しい気持ちや悲しい気持ち、申し訳無い気持ち等様々な感情が入り混じって切なくなる。
気が付けは目には涙が溢れ、目の前でオロオロするサーラの姿が滲んで見えた。

サーラごめんね。こんな事に巻き込んで。
私が殺されても、サーラは悪くないよ。そしてポールさんも悪くない。これは仕方の無い事だったんだと思う。

死ぬのは怖いけど…死を受け入れようと納得した時、突然目の前の空間がバリバリと破れ、カイ兄様と赤い髪の男女が現れた。

「カ…カイ兄様っ!!」

最期に会えるなんて嬉しい。初めてできた兄妹、いつも優しくて、いろんな事を教えてくれるお兄様。死ぬ前に会えて良かった…。
うぅ、涙が止まらない。

そんな私を見てカイ兄様は今まで見た事がない程怒った顔をし、恐ろしく冷たい声で言い放った。

「殺す…」
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