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「ふぅ、やっとできたぁ!」
「お疲れ様ですミュラお嬢様。とても綺麗な文字で書けましたね。」
今日は朝からお礼のお手紙を書いていた。
文字は一通り書けるようになったけれど、気を抜くと文字がガタガタしてしまうから、ゆっくり1文字ずつ丁寧に書いた。
101回も転生しているけれど、実は文字を読み書きできるようになったのは今回が初めて。教えてもらえる機会がなかったし、何しろ平均寿命5、6歳だったから…。だから勉強はとても楽しい。文字が解れば本が読めるし、こうしてお手紙も書く事ができる。
ちなみに、お手紙を書くこと自体は今日が初めてではない。文字が書けるようになってすぐ、カイ兄様からのリクエストでお手紙を書いた。お手紙といっても『カイ兄様だいすき ミュラより』の一行だけだけど。カイ兄様はとても喜んでくれて、手紙を額に入れて部屋に飾ってくれている。
カイ兄様って本当、育児熱心よね。
今でも私の成長記録をつけていて、毎月身体測定を行っている。身長、体重、胸囲に腹囲、足のサイズまで、体のあらゆるパーツを嬉しそうにメジャーで測っている。
歯のチェックで、寝る前にお口をあーんってする事も頻繁にしているし…ママよりお母さんらしいのではないかしら?
サーラがいれてくれた温かいミルクティーを飲みながら、カイ兄様は将来良いお母さん…じゃなくて良いお父さんになりそうだなぁとぼんやり考えていると、ノックがしてちょうどカイ兄様がお部屋に遊びに来てくれた。
「ミュー、ただいま。」
「お帰りなさい、カイ兄様。」
ぎゅうっとハグをして、ほっぺにキスをし合う。カイ兄様はそのまま私を抱き上げてソファーに向かい、私を膝の上に乗せてくれる。
「今日は手紙を書いていたの?」
「うん、でも字は上手くないし、ポプリも喜んで貰えるか心配だな…」
「ミューが心を込めて贈るものならきっと喜んでもらえるよ。だからそんな不安そうな顔しないで?」
カイ兄様はお話をする時いつも私を横抱きで膝の上に乗せて、ちゅっ、ちゅっ、とほっぺや髪、指先等あらゆる場所にキスしてくれる。産まれた時からずっとされているけど、やっぱり羞恥心は消えず…
「カイ兄様、ちょっと恥ずかし…」
ちゅっ
!?!!?!!
「あ…。ミューが突然振り向くから…。ふふふ。ファーストキス、貰っちゃったね。」
「ひゃ…あ、あ、え?!」
ガシャン!!!
後ろでもの凄い音がして振り向けば、お茶の用意をしていたサーラがティーカップを落として割っていた。
呆然とする私とサーラをよそに、カイ兄様は平然としていて「サーラ、危ないから気を付けて片付けて。」とサラリと良い放った。
サーラが「すみません!」と片付けの為慌てて部屋を出ていき、二人きりになった部屋の中…
「ミュー、どうしたの?こっち向いて?」
ひゃー、恥ずかしくて顔を合わせられない。私がプイと横を向いたま俯いていると、ヒョイと抱き直されてカイ兄様の膝を跨ぎ向かい合う姿勢にされる。
「ほら、黙っていたらわからないよ?」
優しく諭されるように問われ、私はおずおずと疑問を口にする。
「あ、あの…カイ兄様。くちびるへのキスも挨拶でしたり…するの?」
「うーん、挨拶ではしないかな。唇は特別な人だけだよ。」
「特別…。家族も?」
「家族じゃなくて、恋人とかかな。」
「えっと…カイ兄様はキスした事ある?その、くちびるの…キス。」
「さっきのが初めてだよ。ふふ。」
大変だわ…。カイ兄様のファーストキスを奪ってしまった。公爵家の長男であるカイ兄様の大事な唇を私の不注意で…。サァッと顔から血が引くのを感じた。
「ごめんなさい!私が急に振り向いたりしたから…。さっきのは事故…そう、事故だからノーカウントにならないかしら?」
「事故かぁ…。無かった事にするのは悲しいな。でも、確かに初めてのキスが事故だとミューも嫌だよね。」
「私の事は全然気にしなくていいの。カイ兄様本当にごめんなさい。」
「そっか、じゃあやり直ししよう。」
「えっ…」
ちゅっ
カイ兄様の柔らかい唇が、私の唇に優しくゆっくり重なる。
「…これで、事故じゃないよね。」
「は…?えっ?!」
「ミュー、愛してるよ。」
ぎゅっと抱き締められながら、私は『愛ってなんだっけ…』と呆然と考えていた。
「お疲れ様ですミュラお嬢様。とても綺麗な文字で書けましたね。」
今日は朝からお礼のお手紙を書いていた。
文字は一通り書けるようになったけれど、気を抜くと文字がガタガタしてしまうから、ゆっくり1文字ずつ丁寧に書いた。
101回も転生しているけれど、実は文字を読み書きできるようになったのは今回が初めて。教えてもらえる機会がなかったし、何しろ平均寿命5、6歳だったから…。だから勉強はとても楽しい。文字が解れば本が読めるし、こうしてお手紙も書く事ができる。
ちなみに、お手紙を書くこと自体は今日が初めてではない。文字が書けるようになってすぐ、カイ兄様からのリクエストでお手紙を書いた。お手紙といっても『カイ兄様だいすき ミュラより』の一行だけだけど。カイ兄様はとても喜んでくれて、手紙を額に入れて部屋に飾ってくれている。
カイ兄様って本当、育児熱心よね。
今でも私の成長記録をつけていて、毎月身体測定を行っている。身長、体重、胸囲に腹囲、足のサイズまで、体のあらゆるパーツを嬉しそうにメジャーで測っている。
歯のチェックで、寝る前にお口をあーんってする事も頻繁にしているし…ママよりお母さんらしいのではないかしら?
サーラがいれてくれた温かいミルクティーを飲みながら、カイ兄様は将来良いお母さん…じゃなくて良いお父さんになりそうだなぁとぼんやり考えていると、ノックがしてちょうどカイ兄様がお部屋に遊びに来てくれた。
「ミュー、ただいま。」
「お帰りなさい、カイ兄様。」
ぎゅうっとハグをして、ほっぺにキスをし合う。カイ兄様はそのまま私を抱き上げてソファーに向かい、私を膝の上に乗せてくれる。
「今日は手紙を書いていたの?」
「うん、でも字は上手くないし、ポプリも喜んで貰えるか心配だな…」
「ミューが心を込めて贈るものならきっと喜んでもらえるよ。だからそんな不安そうな顔しないで?」
カイ兄様はお話をする時いつも私を横抱きで膝の上に乗せて、ちゅっ、ちゅっ、とほっぺや髪、指先等あらゆる場所にキスしてくれる。産まれた時からずっとされているけど、やっぱり羞恥心は消えず…
「カイ兄様、ちょっと恥ずかし…」
ちゅっ
!?!!?!!
「あ…。ミューが突然振り向くから…。ふふふ。ファーストキス、貰っちゃったね。」
「ひゃ…あ、あ、え?!」
ガシャン!!!
後ろでもの凄い音がして振り向けば、お茶の用意をしていたサーラがティーカップを落として割っていた。
呆然とする私とサーラをよそに、カイ兄様は平然としていて「サーラ、危ないから気を付けて片付けて。」とサラリと良い放った。
サーラが「すみません!」と片付けの為慌てて部屋を出ていき、二人きりになった部屋の中…
「ミュー、どうしたの?こっち向いて?」
ひゃー、恥ずかしくて顔を合わせられない。私がプイと横を向いたま俯いていると、ヒョイと抱き直されてカイ兄様の膝を跨ぎ向かい合う姿勢にされる。
「ほら、黙っていたらわからないよ?」
優しく諭されるように問われ、私はおずおずと疑問を口にする。
「あ、あの…カイ兄様。くちびるへのキスも挨拶でしたり…するの?」
「うーん、挨拶ではしないかな。唇は特別な人だけだよ。」
「特別…。家族も?」
「家族じゃなくて、恋人とかかな。」
「えっと…カイ兄様はキスした事ある?その、くちびるの…キス。」
「さっきのが初めてだよ。ふふ。」
大変だわ…。カイ兄様のファーストキスを奪ってしまった。公爵家の長男であるカイ兄様の大事な唇を私の不注意で…。サァッと顔から血が引くのを感じた。
「ごめんなさい!私が急に振り向いたりしたから…。さっきのは事故…そう、事故だからノーカウントにならないかしら?」
「事故かぁ…。無かった事にするのは悲しいな。でも、確かに初めてのキスが事故だとミューも嫌だよね。」
「私の事は全然気にしなくていいの。カイ兄様本当にごめんなさい。」
「そっか、じゃあやり直ししよう。」
「えっ…」
ちゅっ
カイ兄様の柔らかい唇が、私の唇に優しくゆっくり重なる。
「…これで、事故じゃないよね。」
「は…?えっ?!」
「ミュー、愛してるよ。」
ぎゅっと抱き締められながら、私は『愛ってなんだっけ…』と呆然と考えていた。
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