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94.~カインside.~
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まだ陽が昇りきらない内に、静まり返った廊下を進む。お目当てのミューの部屋の前にハリーが佇んでいるのが見えそっとため息をついた。いつもこの時間はサーラが控えているのだが、おそらく俺に話があるのだろう。
「おはよ、ハリーが居るなんて珍しいね。」
「おはようございます、カイン様。わたくしが来ることは解っていたのではございませんか?」
「はは、まぁね。監視カメラを見たんだろう?言いたい事は解っているよ。」
「そうでしょうか…?わたくしにはそうは見受けられませんが。」
かろうじて笑顔と敬語は保っているものの、いつも感情を表に出さないハリーが珍しく声を低くした。
「ハリー、覗き見するのは構わないが、説教は結構だ。」
「……ミュラお嬢様の未来を奪うのだけは、やめていただきたい。」
苦痛の表情を浮かべるハリーの瞳はシルバーからゴールドに変わっていた。半獣のハリーは興奮状態になると瞳の色が変わる。
ミューの事になると度々感情を制御出来ていない事をハリーは自覚しているのだろうか。その気持ちに気付かない振りをしているならそれでもいい。どちらにせよ、ミューを渡すつもりはないのだから。
「ミューの今も未来も、ミューのものだ。俺はただその隣に居るだけ。…でも、ハリー。お前は違うよ。お前ではミューの隣は無理だ。」
ハッキリと言い捨てれば、ハリーの瞳が一瞬揺らぎ視線をそらされる。
「っ…。…5分後にサーラが参ります。失礼致します。」
逃げるように立ち去るハリーの後ろ姿を見送り、俺は深く息を吐き出してから気持ちを切り替える。
静かにドアを開ければ、部屋は薔薇の香りで満たされていた。レースの天蓋付きの大きなベッドに眠るミューは童話に出て来るお姫様のようだ。
ミューのピンクの唇にそっと指で触れる。
キスは…まだするつもりじゃなかった。あれは本当に故意では無かったけれど、初めてを無かった事にされたくなくて、もう一度してしまった。ミューの気持ちが大切だなんて言っておいて、自分の気持ちを優先してしまった。最低だな。
指で唇をふにふにと触れば、うっすらと口が開き「んっ」と吐息が漏れる。
最低でもいい。
大人になった時、ミューに罵られても構わない。どんなに嫌われたって俺はミューの側にいる。
ハリー、お前にはこんな覚悟ないだろ?
俺はミューを愛してる。
誰よりもミューを想ってる。
この気持ちは、誰にも負けるつもりはない。
「ごめんね…誰にも渡したくないや…」
そっと唇を重ね、3回目のキスをした。
眠る彼女は気付かないだろう。
このキスも、俺の気持ちも。
「おはよ、ハリーが居るなんて珍しいね。」
「おはようございます、カイン様。わたくしが来ることは解っていたのではございませんか?」
「はは、まぁね。監視カメラを見たんだろう?言いたい事は解っているよ。」
「そうでしょうか…?わたくしにはそうは見受けられませんが。」
かろうじて笑顔と敬語は保っているものの、いつも感情を表に出さないハリーが珍しく声を低くした。
「ハリー、覗き見するのは構わないが、説教は結構だ。」
「……ミュラお嬢様の未来を奪うのだけは、やめていただきたい。」
苦痛の表情を浮かべるハリーの瞳はシルバーからゴールドに変わっていた。半獣のハリーは興奮状態になると瞳の色が変わる。
ミューの事になると度々感情を制御出来ていない事をハリーは自覚しているのだろうか。その気持ちに気付かない振りをしているならそれでもいい。どちらにせよ、ミューを渡すつもりはないのだから。
「ミューの今も未来も、ミューのものだ。俺はただその隣に居るだけ。…でも、ハリー。お前は違うよ。お前ではミューの隣は無理だ。」
ハッキリと言い捨てれば、ハリーの瞳が一瞬揺らぎ視線をそらされる。
「っ…。…5分後にサーラが参ります。失礼致します。」
逃げるように立ち去るハリーの後ろ姿を見送り、俺は深く息を吐き出してから気持ちを切り替える。
静かにドアを開ければ、部屋は薔薇の香りで満たされていた。レースの天蓋付きの大きなベッドに眠るミューは童話に出て来るお姫様のようだ。
ミューのピンクの唇にそっと指で触れる。
キスは…まだするつもりじゃなかった。あれは本当に故意では無かったけれど、初めてを無かった事にされたくなくて、もう一度してしまった。ミューの気持ちが大切だなんて言っておいて、自分の気持ちを優先してしまった。最低だな。
指で唇をふにふにと触れば、うっすらと口が開き「んっ」と吐息が漏れる。
最低でもいい。
大人になった時、ミューに罵られても構わない。どんなに嫌われたって俺はミューの側にいる。
ハリー、お前にはこんな覚悟ないだろ?
俺はミューを愛してる。
誰よりもミューを想ってる。
この気持ちは、誰にも負けるつもりはない。
「ごめんね…誰にも渡したくないや…」
そっと唇を重ね、3回目のキスをした。
眠る彼女は気付かないだろう。
このキスも、俺の気持ちも。
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