【R18】101回目の転生~天然無自覚少女は溺愛に気付かない~

しろ

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157.~ハリーEND~2

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《ハリーside》

「おはよう、ハリー」

「っ!!あ、あぁ、おはようございます。ミュラお嬢様。」

「どうしたの?なんだか変よ?」

「い、いえ。何でもございません。」

翌朝、ミュラお嬢様の何事も無かったかの様な振る舞いに、拍子抜けしてしまう。

昨夜のアレは何だったのだろうか。
唇に残る感触は本物だけれど…ミュラお嬢様は覚えていない様に思える。
寝ぼけていた?
そもそも俺を求めていたのだろうか?『好き』という言葉もミュラお嬢様は日常的に使われる。恋愛のソレではなく、家族や友達としての『好き』だったのかもしれない。

期待しては駄目だ。
泣き疲れて眠ってしまう程不安定な精神状態の時に、寝ぼけ眼で俺を見てしまい名前を呼んでしまっただけだろう。
幼子が母に愛情を求めるのと変わらない。

ミュラお嬢様が俺を選んでくれた等…勘違いしては駄目だ。

それに万が一、億が一、ミュラお嬢様が俺を選んでくれたとして、一体どうしようというのだ。
爵位も無い、半獣という半端者の俺に、ミュラお嬢様を幸せにできる訳がない。
見た目の年齢差こそ違和感は無くなってきたものの、実年齢は27歳差もある。親子程年が離れているのに…恋人などと夢を見るのもおこがましい。

昨夜の事は忘れよう。
それがお互いの為だ…。

ーーーーーーーーーーーーーー・・・

《ミュラside》

「サーラ、さっきの私変じゃなかった?」

「さっきの…とは?別におかしい所はございませんでしたが??」

「な…ならいいの。」

朝、気持ちの整理がつかないままハリーに廊下で会ってしまったから、平静を装うのに苦労した。

昨夜、ハリーが突然部屋に来たのはびっくりしたけれど、告白するのは今しかないと勇気を出して想いを伝え、ハリーも想いに応えてくれたと思う…。多分…。

あー!!なんで途中で寝ちゃったんだろう。私の馬鹿!!

朝起きたら勿論ハリーは居ないし…。
もしかしたらあれは夢だったのかもしれない…とさえ思えてきた。キスも…夢だったのかな?

泣きそうな心にブレーキをかけるように、私はキッと前を向いた。

ハリーにもう一度…今度はしっかり気持ちを伝えよう。せっかく貰った101回目の人生だもの。自分の気持ちはちゃんと伝えたい。
そうと決まれば、私にはまずするべき事があった。


ーーコンコン。
「パパ、お話したい事があるんだけれど、入ってもよろしいですか?」

パパの執務室の前で声をかけると、ガチャリとドアを開けてくれたのはハリーだった。
ハリーがパパの執務室にいつも居る事は解ってたはずなのに、パチッと目が合った瞬間に息が止まりそうになる。
お、落ち着くのよ私…。
ひっそりと深呼吸をして部屋に入った。


「ミュラ、執務室に来るなんて珍しいね。急ぎの用かな?」

書類が山積みになっている机から、パパは笑顔をこちらに向け、優しく問いかけてくれる。

「パパ、お仕事中にごめんなさい。あの…今いただいている求婚のお申し出なんだけど、全部お断りしたいの。保留でいいと言ってくださっている方に対しても…お断りしたい。」

「ふむ…、理由を聞いてもいいかな?」

「す…好きな人が…いるの」

チラリとハリーに視線を向ければ、目を見開き驚いた表情でこちらを見ていた。

「ミュラの好きな人かぁ。念の為に聞くけど、カインやロイ、ラナンではないね?」

「え?お兄様達…ではないです。勿論家族としては大好きですけど。」

「そうか。ならば私から反対する事はないよ。ミュラが想いを寄せる相手と一緒になれるよう、私も協力しよう。」

「誰かは…聞かないの?」

「はは、そうだなぁ、ミュラの想いが相手に伝わったら報告してくれるかい?」

「うん、わかったわ。パパありがとう。大好きよ。」

「パパもミュラが大好きだよ。」

もう一度ハリーに視線を向けてみたけれど、パッと顔をそらされてしまう。

なんだか………ハリー、困った顔してる。

どうしたらいいかわからず、私はパパにお礼を言って退室した。


はぁ……。迷惑……だったかな…。
どうしよう…。困った…。
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