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蓮side/so far
苺/蓮side.3
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省吾からのメールには美優の写真も何枚か添付されていた。学校行事の公式的な写真から、盗撮と思われるものまで。どの瞬間も美優はニコニコ笑っていて可愛い。だけど盗撮した奴は特定してシメる必要があるな。後で省吾に連絡しようと心に決めて、交遊関係からSNSで美優の写真を漁る。
美優本人のSNSにはあまり投稿はなく、時々投稿される写真はスイーツや景色だけで、本人はおろか親友の伊村由妃の写真もなかった。恥ずかしがり屋なのか、読モしてる伊村由妃に対しての配慮からなのか…。伊村由妃のSNSも仕事用と思われる自撮りの他はスイーツ等の写真のみで、美優の写真はなかった。
もっといろんな顔が見たいな。
あの可愛らしい声もしっかり聞いてみたい。
女の子に対してこんな風に思うのは初めてかもしれない。今までセフレしかいなかったから、好きとか興味を持つっていう感情を持ち合わせていなかったし、セフレが俺をどう思っていたのか全然興味ない。
女の子は可愛いと思うし、セックスは気持ちがいい。ただ‘特別’は居なかったし、誰でも良かったってだけ。
セックスも誘われて気が向いたらするけど、自分から抱きたいと願った女の子は一人もいない。
「美優は抱いたらどんな顔をするのかな…?」
え?!うわ…やばい。
ポロリと呟いた一言に自分で赤面してしまう。
ちょっと想像しただけで鼓動が速くなる。
何コレ…一瞬会っただけなのに、急速に心を占めていく存在に対して戸惑いを隠せない。
とにかく、もう一度会ってみたい。
これがまだ恋とは決まった訳じゃない。
ーーーーーーーーーーーーーー・・・
翌日の放課後、俺は省吾と一緒に美優の通う並木中まで来ていた。校門の近くに立っていると、ほとんどの女の子が俺と省吾を見て顔を赤らめながらチラチラ視線を送ってくる。
「あのぉ、世田中の相澤蓮君と上野省吾君ですよね?もし良かったら一緒に遊びませんか?」
派手な見た目の女の子3人組が声をかけてきた。
いつもなら適当に遊ぶ所だが、今日は気分が乗らない。喋るのも面倒で無視を決め込む。
「っ!…あ、あー!ごめんね、今日は予定があるんだ。また今度ね」
空気を読んだのか、省吾が慌ててフォローしていた。
そうこうしている内に、美優と伊村由妃が校舎から出てくるのが見えた。
美優は話に夢中で全然こちらに気付かない。
一方、伊村由妃はこちらの存在に気づきギロリと一瞬睨んだあと、美優の視線がこちらに向かないように自然とポジションを変更した。
「うわぁ、女の子に睨まれたの久しぶりかも…」
省吾はショック!とばかりにオーバーにリアクションをしている。
「確かに。ああやって美優に近づく虫をガードしてるんだろうな」
「伊村ちゃんも可愛いんだから、自分に向けられた好意だとは思わないのかな?」
「どうかな?それさえも嫌悪してるのか、美優に向けられた視線に敏感なのか…」
まぁ、多分両方だろうな。
「蓮、どうする?甘音ちゃん達行っちゃったよ?追いかけて声かける?」
「声はかけない。尾行する」
「……尾行…」
「文句あんの?」
「いや…無いけど…。声かけずについてくの?」
「それが尾行だろ?」
「いや、尾行の意味は知ってるけど、そうじゃなくて…」
「ほら、見失う前に行くぞ」
「…はぁ…。はいはい、行きますよ」
何か言いたげな顔の省吾を無視して美優の後を着けていく。
美優達が駅前のファミレスに入ったのを追って、俺達も入店し美優の後ろの席を陣取る。
「なぁ蓮、コレ何してんの?」
「ウルサイ。今から会話禁止。余計な音入れたくないから」
「……それ…何?」
「ボイスレコーダー。見れば解るだろ。もう黙って。どうしても必要な会話はtalkで送って」
省吾のあきれた視線をよそに、俺はテーブルの上にボイスレコーダーを2つセッティングし、もう1つはポケットの中に入れた。
席の間仕切りが高く美優の姿は見えないが、可愛らしい声が聞こえてくる。
話題は来週の美優の誕生日の事のようだった。
「でね、誕生日に伊織がケーキを作ってくれる事になったの。最近伊織の料理レベル凄いから、由妃ちゃんも期待しててね」
「あはは。伊織君ついにお菓子作りまで始めたんだね。美優の誕生日パーティー楽しみにしてるね」
「うん。大ちゃんも来るからみんなでゲームしようね。あ、私ドリンクバー取りに行ってくる」
「うん、どうぞ。私席で荷物みてるね」
「ありがとう」と言いながら美優が席を立ったので、俺も跡をつけてドリンクバーに向かう。
ドリンクバーの前で美優は何にしようかキョロキョロしていた。俺もドリンクを選ぶ振りをして、その姿を後ろからそっと見つめる。腰まであるロングヘアは癖が無くストレートでサラサラだ。シャンプーの香りなのか、ほのかに甘い香りがする。
美優がホットココアを入れている横で、俺はホットコーヒーを入れる。
チラチラと見つめていたのに気付いたのか、美優がパッとこちらを向いた。
「…っ!!ぅわっ!アチッ!!」
「え!?だ、大丈夫ですか??」
至近距離で上目遣いの美優と目が合って、動揺して指先にコーヒーをかけてしまう。何やってんだ俺…。カッコ悪っ。
「これ、良かったら使ってください」
「え…?」
美優の手には可愛らしいハンカチが握られていた。
「これ、ガーゼ生地のハンカチなんです。返さなくて大丈夫なので、氷を包んで冷やすのに使ってください」
「え、あ……ありがとう」
「どういたしまして。お大事に」
ニコッと笑って美優は席に戻って行った。
呆然とする俺の手には、某有名ブランドのワイルドストロベリーが刺繍されたハンカチが残っていた。
「苺……」
美優本人のSNSにはあまり投稿はなく、時々投稿される写真はスイーツや景色だけで、本人はおろか親友の伊村由妃の写真もなかった。恥ずかしがり屋なのか、読モしてる伊村由妃に対しての配慮からなのか…。伊村由妃のSNSも仕事用と思われる自撮りの他はスイーツ等の写真のみで、美優の写真はなかった。
もっといろんな顔が見たいな。
あの可愛らしい声もしっかり聞いてみたい。
女の子に対してこんな風に思うのは初めてかもしれない。今までセフレしかいなかったから、好きとか興味を持つっていう感情を持ち合わせていなかったし、セフレが俺をどう思っていたのか全然興味ない。
女の子は可愛いと思うし、セックスは気持ちがいい。ただ‘特別’は居なかったし、誰でも良かったってだけ。
セックスも誘われて気が向いたらするけど、自分から抱きたいと願った女の子は一人もいない。
「美優は抱いたらどんな顔をするのかな…?」
え?!うわ…やばい。
ポロリと呟いた一言に自分で赤面してしまう。
ちょっと想像しただけで鼓動が速くなる。
何コレ…一瞬会っただけなのに、急速に心を占めていく存在に対して戸惑いを隠せない。
とにかく、もう一度会ってみたい。
これがまだ恋とは決まった訳じゃない。
ーーーーーーーーーーーーーー・・・
翌日の放課後、俺は省吾と一緒に美優の通う並木中まで来ていた。校門の近くに立っていると、ほとんどの女の子が俺と省吾を見て顔を赤らめながらチラチラ視線を送ってくる。
「あのぉ、世田中の相澤蓮君と上野省吾君ですよね?もし良かったら一緒に遊びませんか?」
派手な見た目の女の子3人組が声をかけてきた。
いつもなら適当に遊ぶ所だが、今日は気分が乗らない。喋るのも面倒で無視を決め込む。
「っ!…あ、あー!ごめんね、今日は予定があるんだ。また今度ね」
空気を読んだのか、省吾が慌ててフォローしていた。
そうこうしている内に、美優と伊村由妃が校舎から出てくるのが見えた。
美優は話に夢中で全然こちらに気付かない。
一方、伊村由妃はこちらの存在に気づきギロリと一瞬睨んだあと、美優の視線がこちらに向かないように自然とポジションを変更した。
「うわぁ、女の子に睨まれたの久しぶりかも…」
省吾はショック!とばかりにオーバーにリアクションをしている。
「確かに。ああやって美優に近づく虫をガードしてるんだろうな」
「伊村ちゃんも可愛いんだから、自分に向けられた好意だとは思わないのかな?」
「どうかな?それさえも嫌悪してるのか、美優に向けられた視線に敏感なのか…」
まぁ、多分両方だろうな。
「蓮、どうする?甘音ちゃん達行っちゃったよ?追いかけて声かける?」
「声はかけない。尾行する」
「……尾行…」
「文句あんの?」
「いや…無いけど…。声かけずについてくの?」
「それが尾行だろ?」
「いや、尾行の意味は知ってるけど、そうじゃなくて…」
「ほら、見失う前に行くぞ」
「…はぁ…。はいはい、行きますよ」
何か言いたげな顔の省吾を無視して美優の後を着けていく。
美優達が駅前のファミレスに入ったのを追って、俺達も入店し美優の後ろの席を陣取る。
「なぁ蓮、コレ何してんの?」
「ウルサイ。今から会話禁止。余計な音入れたくないから」
「……それ…何?」
「ボイスレコーダー。見れば解るだろ。もう黙って。どうしても必要な会話はtalkで送って」
省吾のあきれた視線をよそに、俺はテーブルの上にボイスレコーダーを2つセッティングし、もう1つはポケットの中に入れた。
席の間仕切りが高く美優の姿は見えないが、可愛らしい声が聞こえてくる。
話題は来週の美優の誕生日の事のようだった。
「でね、誕生日に伊織がケーキを作ってくれる事になったの。最近伊織の料理レベル凄いから、由妃ちゃんも期待しててね」
「あはは。伊織君ついにお菓子作りまで始めたんだね。美優の誕生日パーティー楽しみにしてるね」
「うん。大ちゃんも来るからみんなでゲームしようね。あ、私ドリンクバー取りに行ってくる」
「うん、どうぞ。私席で荷物みてるね」
「ありがとう」と言いながら美優が席を立ったので、俺も跡をつけてドリンクバーに向かう。
ドリンクバーの前で美優は何にしようかキョロキョロしていた。俺もドリンクを選ぶ振りをして、その姿を後ろからそっと見つめる。腰まであるロングヘアは癖が無くストレートでサラサラだ。シャンプーの香りなのか、ほのかに甘い香りがする。
美優がホットココアを入れている横で、俺はホットコーヒーを入れる。
チラチラと見つめていたのに気付いたのか、美優がパッとこちらを向いた。
「…っ!!ぅわっ!アチッ!!」
「え!?だ、大丈夫ですか??」
至近距離で上目遣いの美優と目が合って、動揺して指先にコーヒーをかけてしまう。何やってんだ俺…。カッコ悪っ。
「これ、良かったら使ってください」
「え…?」
美優の手には可愛らしいハンカチが握られていた。
「これ、ガーゼ生地のハンカチなんです。返さなくて大丈夫なので、氷を包んで冷やすのに使ってください」
「え、あ……ありがとう」
「どういたしまして。お大事に」
ニコッと笑って美優は席に戻って行った。
呆然とする俺の手には、某有名ブランドのワイルドストロベリーが刺繍されたハンカチが残っていた。
「苺……」
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