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本編
対峙/後半:大智side
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「美優?」
駅まで向かう途中、不意に声をかけられた。
驚いて振り向くと大ちゃんが目を見開いてこちらを見ていた。
「あっ…大ちゃん…」
今日の事は誰にも話していない。心配かけたくない気持ちと、何となく後ろめたい気持ちがあって、大ちゃんにも内緒にしていた。それがあっさり見つかってしまい凄く気まずい。
慌てて蓮の手を振りほどこうとしたけれど、ぎゅっと握り締められて離してもらえない。
見上げた蓮の瞳は冷たく、大ちゃんを見つめていた。
「美優どうしたの?また相澤に変な事…」
大ちゃんは私を心配そうに見つめた後、蓮を睨み付ける。
「あ、違うの…あの…」
どうしよう…と慌てる私の手を引き、蓮は私を背中に隠すように前に立った。
「変な事だなんて酷いなぁ、久遠先輩。今日は美優と俺の部屋でゆっくり過ごしてたんですよ。恋人同士なんだから普通でしょ?」
喧嘩になるのかと思いきや、蓮はニコッと愛想良く大ちゃんに話しかける。
「恋人…?はっ、無理矢理『彼氏(仮)』とかいうふざけたポジションに割り込んだんだろ?」
大ちゃんいつもと口調が違う気がする…。どうしよう、すごく怒らせてしまったかもしれない…。
しかも『彼氏(彼)』っていうふざけたポジションを提案し、あまつさえ本日正式に承諾したのはこの私です…。
「確かに…美優の中でまだ俺が一番じゃないって解ってますよ。でも、友達以上のステージには上がれた。誰かさんとは違ってね」
「拒否できない状況に追い込んで言わせた言葉だろ?最低だよお前。お前に美優は渡せない」
「あぁ、従兄ですもんね。可愛い妹に対して過保護になるのは解りますよ。でも心配要りません、俺が美優を幸せにしますから。お兄サンは指を咥えて見てればいいんですよ」
バチバチと音が聞こえそうなくらい睨み合う二人に私はアワアワと戸惑うばかり。
しばらく沈黙が続き、大ちゃんは「ハァ」とため息をついた。
「美優、一緒に帰ろう。今日は家で夕食でもどう?」
「え?あっ…でも急にお伺いしたら迷惑じゃ…」
気まずい雰囲気の中、突然話を振られてびっくりした。いつもなら『行く』と即答する所だけど、大ちゃんのお説教が待ってるのでは?という警戒から返答を迷ってしまう。
「迷惑な訳ないだろう。美優が来たら母さんも喜ぶよ」
あ、いつもの優しい顔の大ちゃんに戻った。
「じゃあ…」行こうかな、と答えようとした所、蓮がそっと耳打ちしてくる。
「美優、いいの?首筋や胸元、全身から俺の匂いをさせたまま行くの?」
ボッ!と一気に顔が赤くなるのが解る。
蓮に舐められ続けた後、シャワー浴びる?と聞かれた私は、流石にそれはまずいのでは…と頑なに拒否したのだった。
たくさん抱き締められたこともあり、蓮の香水が服から香る気もするし…。やっぱりこのまま大ちゃんの家に行くのは避けたい。
「大ちゃんごめんね、また今度にする。今日は帰るね」
「美優、そろそろ行こう。では久遠先輩、失礼します」
「あっ!美優っ…!!」
後ろで大ちゃんの声が聞こえたけれど、蓮がぐいぐい手を引っ張るから振り返る事ができなかった。
ーーーーーーーーーーーーーー・・・
《大智side》
「大智さん、いいんですか?行かせて…」
「そうですよ、あんなポッと出の遊び人、俺達は認められません」
後ろから声をかけてきたのは、美優と同じ1年の佐藤 傑と山田 佑樹だ。
「今日はもう帰る所みたいだし仕方ない」
視線を後ろ姿の美優に向けたまま吐き捨てる。
「俺達がついていながら本当に申し訳ありません」
「来週からは気を引き締めてガードします」
傑と佑樹は美優の男避けとして動いてくれている者のメンバーだ。元々二人とも美優が好きなのだが、中学の頃からこうして協力してくれている。
「傑と佑樹が謝る事じゃないよ。相澤がイレギュラー過ぎるんだ」
「俺、他のメンバーにも連絡しておきます」
「助かるよ、傑。よろしくね」
小さくなる後ろ姿に、拳に力が入る。
相澤、お前なんかに渡さないよ。
あの子は俺のお姫様なんだから。
駅まで向かう途中、不意に声をかけられた。
驚いて振り向くと大ちゃんが目を見開いてこちらを見ていた。
「あっ…大ちゃん…」
今日の事は誰にも話していない。心配かけたくない気持ちと、何となく後ろめたい気持ちがあって、大ちゃんにも内緒にしていた。それがあっさり見つかってしまい凄く気まずい。
慌てて蓮の手を振りほどこうとしたけれど、ぎゅっと握り締められて離してもらえない。
見上げた蓮の瞳は冷たく、大ちゃんを見つめていた。
「美優どうしたの?また相澤に変な事…」
大ちゃんは私を心配そうに見つめた後、蓮を睨み付ける。
「あ、違うの…あの…」
どうしよう…と慌てる私の手を引き、蓮は私を背中に隠すように前に立った。
「変な事だなんて酷いなぁ、久遠先輩。今日は美優と俺の部屋でゆっくり過ごしてたんですよ。恋人同士なんだから普通でしょ?」
喧嘩になるのかと思いきや、蓮はニコッと愛想良く大ちゃんに話しかける。
「恋人…?はっ、無理矢理『彼氏(仮)』とかいうふざけたポジションに割り込んだんだろ?」
大ちゃんいつもと口調が違う気がする…。どうしよう、すごく怒らせてしまったかもしれない…。
しかも『彼氏(彼)』っていうふざけたポジションを提案し、あまつさえ本日正式に承諾したのはこの私です…。
「確かに…美優の中でまだ俺が一番じゃないって解ってますよ。でも、友達以上のステージには上がれた。誰かさんとは違ってね」
「拒否できない状況に追い込んで言わせた言葉だろ?最低だよお前。お前に美優は渡せない」
「あぁ、従兄ですもんね。可愛い妹に対して過保護になるのは解りますよ。でも心配要りません、俺が美優を幸せにしますから。お兄サンは指を咥えて見てればいいんですよ」
バチバチと音が聞こえそうなくらい睨み合う二人に私はアワアワと戸惑うばかり。
しばらく沈黙が続き、大ちゃんは「ハァ」とため息をついた。
「美優、一緒に帰ろう。今日は家で夕食でもどう?」
「え?あっ…でも急にお伺いしたら迷惑じゃ…」
気まずい雰囲気の中、突然話を振られてびっくりした。いつもなら『行く』と即答する所だけど、大ちゃんのお説教が待ってるのでは?という警戒から返答を迷ってしまう。
「迷惑な訳ないだろう。美優が来たら母さんも喜ぶよ」
あ、いつもの優しい顔の大ちゃんに戻った。
「じゃあ…」行こうかな、と答えようとした所、蓮がそっと耳打ちしてくる。
「美優、いいの?首筋や胸元、全身から俺の匂いをさせたまま行くの?」
ボッ!と一気に顔が赤くなるのが解る。
蓮に舐められ続けた後、シャワー浴びる?と聞かれた私は、流石にそれはまずいのでは…と頑なに拒否したのだった。
たくさん抱き締められたこともあり、蓮の香水が服から香る気もするし…。やっぱりこのまま大ちゃんの家に行くのは避けたい。
「大ちゃんごめんね、また今度にする。今日は帰るね」
「美優、そろそろ行こう。では久遠先輩、失礼します」
「あっ!美優っ…!!」
後ろで大ちゃんの声が聞こえたけれど、蓮がぐいぐい手を引っ張るから振り返る事ができなかった。
ーーーーーーーーーーーーーー・・・
《大智side》
「大智さん、いいんですか?行かせて…」
「そうですよ、あんなポッと出の遊び人、俺達は認められません」
後ろから声をかけてきたのは、美優と同じ1年の佐藤 傑と山田 佑樹だ。
「今日はもう帰る所みたいだし仕方ない」
視線を後ろ姿の美優に向けたまま吐き捨てる。
「俺達がついていながら本当に申し訳ありません」
「来週からは気を引き締めてガードします」
傑と佑樹は美優の男避けとして動いてくれている者のメンバーだ。元々二人とも美優が好きなのだが、中学の頃からこうして協力してくれている。
「傑と佑樹が謝る事じゃないよ。相澤がイレギュラー過ぎるんだ」
「俺、他のメンバーにも連絡しておきます」
「助かるよ、傑。よろしくね」
小さくなる後ろ姿に、拳に力が入る。
相澤、お前なんかに渡さないよ。
あの子は俺のお姫様なんだから。
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