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本編
般若
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はぁ…大ちゃん怒ってたよね…。
あんなに心配してくれてたのに…。やっぱり事前に相談するべきだったかな。
窓から流れる街並みを見ながら、電車の揺れに身を任せる。
蓮は私をドア側に立たせ、さりげなく周りからガードしてくれていた。こういう所、凄く紳士的だなって思う。
「あの…さっきはごめんね。大ちゃん心配症だから…ちょっとキツイ言い方になっちゃったんだと思う。大ちゃんには私からちゃんと話すね」
「話さなくていいよ」
「え…?」
「俺達の関係を説明する為に久遠先輩と二人きりになって欲しくないし、俺以外の男と電話やメールもして欲しくない。それに、従兄だからって気軽に家にも行って欲しくないな。ごめんね、俺心狭いでしょ?」
「うんん、そうだよね…。ごめん」
そっか、彼氏彼女ってそういうものか…。
まぁ(仮)ではあるんだけれど、あまり不誠実な行いもどうかと思うし…。
とはいえ、大ちゃんと全く話さないのも無理だけど。
そういえば、大ちゃんって彼女いるのかな?今まで気にせず接していたけど、彼女から見たら私の存在って凄く不快なものだったのかも。
もう少し周りもよく見なくちゃいけないな。知らず知らず誰かを傷つけているかもしれない。
「美優、降りるよ」
「う、うん」
改札を抜けると、駅の柱に背中を預け腕組みをした伊織の姿が目に入る。その顔は般若のように怒りMAXで…。
ヤバい。朝喧嘩して出てきたし、あの顔は大ちゃんから連絡がいってるのか、連絡がいってなくてもこの状況を見られたらアウトだ。
「れ…蓮、ごめん。今すぐ手を離して欲しい」
「ん?…あ、あぁ、あそこに見えるの伊織君だねぇ」
「呑気にしてる場合じゃなくて…。いいから手を離して」
「やだ」
「やだって…、うぐぐ…離して…」
おもいっきり手を引っ張るけど、蓮はニコニコしながら手を離そうとしない。
「美優、何してんの?」
「ひぃっ!!」
振り向かなくても解る。いや、振り向いたら殺されそうな程、冷気を放つ声に鼓動が速くなる。
ガシッと後ろから首に腕を回され、冷汗が出る。
「俺に嘘をついて出かけるとは良い度胸だなコラ」
「い…伊織。あはは、奇遇だね、今帰り?」
今朝は‘友達に会いに行く’と言って出てきた。嘘は…ついていないような…グレーゾーンだと思う。だからそんな極刑をくだすような目で見ないで欲しい。
「こっちは1日中お前を探し回って、大事な休日を無駄にしたって言うのに…ふざけてんの?」
ヒイィィィ!怖いっ!
何で1日中探してたの?!あ、そういえばスマホ全然見てなかったけど、着信来てたのかも…。もしかしたら、連絡つかなくて心配してたのかな…?
「やぁ、伊織君。いくら弟といえど、距離が近すぎるんじゃないかな?」
蓮は繋がれた手を離す事無く、指を絡めたまま笑顔で伊織に話しかける。
「は?ストーカーが何言ってんの?早く美優から手を離せ。キモいんだよ」
「ふふ、随分嫌われちゃったなぁ。未来の義弟だから仲良くしたいんだけどな」
苛々と怒りを隠そうともしない伊織と、ニコニコと何を考えているか解らない蓮に挟まれて、私はオロオロと見上げる事しかできない。
「ストーカーを家族にするつもりはないし、これ以上話すこともない。美優、帰るよ」
「うん…。蓮、送ってくれてありがとう。またね」
「は?『蓮』??何で名前呼び?」
伊織の視線が一層冷たくなる。
「あ、えーっと…」
「恋人だからね。弟くん」
繋がれた手を離す瞬間、蓮は一歩近付き耳に顔を寄せる。
「美優、少しでも危険を感じたら俺に連絡して。いつでも迎えに行くよ」
危険…って…??
聞き返す前に蓮はパッと離れ、また美しい笑顔を見せる。
「またね、美優」
「うん、またね」
あんなに心配してくれてたのに…。やっぱり事前に相談するべきだったかな。
窓から流れる街並みを見ながら、電車の揺れに身を任せる。
蓮は私をドア側に立たせ、さりげなく周りからガードしてくれていた。こういう所、凄く紳士的だなって思う。
「あの…さっきはごめんね。大ちゃん心配症だから…ちょっとキツイ言い方になっちゃったんだと思う。大ちゃんには私からちゃんと話すね」
「話さなくていいよ」
「え…?」
「俺達の関係を説明する為に久遠先輩と二人きりになって欲しくないし、俺以外の男と電話やメールもして欲しくない。それに、従兄だからって気軽に家にも行って欲しくないな。ごめんね、俺心狭いでしょ?」
「うんん、そうだよね…。ごめん」
そっか、彼氏彼女ってそういうものか…。
まぁ(仮)ではあるんだけれど、あまり不誠実な行いもどうかと思うし…。
とはいえ、大ちゃんと全く話さないのも無理だけど。
そういえば、大ちゃんって彼女いるのかな?今まで気にせず接していたけど、彼女から見たら私の存在って凄く不快なものだったのかも。
もう少し周りもよく見なくちゃいけないな。知らず知らず誰かを傷つけているかもしれない。
「美優、降りるよ」
「う、うん」
改札を抜けると、駅の柱に背中を預け腕組みをした伊織の姿が目に入る。その顔は般若のように怒りMAXで…。
ヤバい。朝喧嘩して出てきたし、あの顔は大ちゃんから連絡がいってるのか、連絡がいってなくてもこの状況を見られたらアウトだ。
「れ…蓮、ごめん。今すぐ手を離して欲しい」
「ん?…あ、あぁ、あそこに見えるの伊織君だねぇ」
「呑気にしてる場合じゃなくて…。いいから手を離して」
「やだ」
「やだって…、うぐぐ…離して…」
おもいっきり手を引っ張るけど、蓮はニコニコしながら手を離そうとしない。
「美優、何してんの?」
「ひぃっ!!」
振り向かなくても解る。いや、振り向いたら殺されそうな程、冷気を放つ声に鼓動が速くなる。
ガシッと後ろから首に腕を回され、冷汗が出る。
「俺に嘘をついて出かけるとは良い度胸だなコラ」
「い…伊織。あはは、奇遇だね、今帰り?」
今朝は‘友達に会いに行く’と言って出てきた。嘘は…ついていないような…グレーゾーンだと思う。だからそんな極刑をくだすような目で見ないで欲しい。
「こっちは1日中お前を探し回って、大事な休日を無駄にしたって言うのに…ふざけてんの?」
ヒイィィィ!怖いっ!
何で1日中探してたの?!あ、そういえばスマホ全然見てなかったけど、着信来てたのかも…。もしかしたら、連絡つかなくて心配してたのかな…?
「やぁ、伊織君。いくら弟といえど、距離が近すぎるんじゃないかな?」
蓮は繋がれた手を離す事無く、指を絡めたまま笑顔で伊織に話しかける。
「は?ストーカーが何言ってんの?早く美優から手を離せ。キモいんだよ」
「ふふ、随分嫌われちゃったなぁ。未来の義弟だから仲良くしたいんだけどな」
苛々と怒りを隠そうともしない伊織と、ニコニコと何を考えているか解らない蓮に挟まれて、私はオロオロと見上げる事しかできない。
「ストーカーを家族にするつもりはないし、これ以上話すこともない。美優、帰るよ」
「うん…。蓮、送ってくれてありがとう。またね」
「は?『蓮』??何で名前呼び?」
伊織の視線が一層冷たくなる。
「あ、えーっと…」
「恋人だからね。弟くん」
繋がれた手を離す瞬間、蓮は一歩近付き耳に顔を寄せる。
「美優、少しでも危険を感じたら俺に連絡して。いつでも迎えに行くよ」
危険…って…??
聞き返す前に蓮はパッと離れ、また美しい笑顔を見せる。
「またね、美優」
「うん、またね」
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