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本編
従兄/後半:大智side
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「おはよう、美優」
「ふぇ?!なんで…?!」
月曜日の朝、寝ぼけ眼でリビングに行くと、大ちゃんが寛いでいた。ソファーに深く座り、コーヒーを飲む姿はまるで自分の家のようだ。
「美優、あんたまたストーカーされてるんだって?」
お母さんがキッチンからヒョコっと顔を出す。
「またって何よ…」
「だって中学の時もストーカーやら変質者やらに追われて、大智君に迷惑かけてたじゃない」
「あれは大ちゃんが心配性なだけで、実際そんな人居なかったもん」
確かに中学1、2年の時は大ちゃんと由妃ちゃんの3人で登下校をする事が多かった。3年になって大ちゃんが高校に入学してからは、由妃ちゃんと二人だけだったけど、一度も変な人に遭遇した事は無い。それにもし変な人がいたとしたら、それは由妃ちゃんのファンの人だと思う。私じゃないって事は自分が一番わかってる。
「加奈子さん、美優はそういう所鈍感なんですよ」
大ちゃん、爽やかな笑顔でディスるのはどうかと思うよ?
「そうよねー。いつもボケ~っとしてるんだから。はぁ、あまり大智君に迷惑かけるんじゃないわよ?大智君だって忙しいんだから」
「迷惑なんて全然。こちらこそ朝早くからリビングで待たせていただいてすみません」
「いーのよぉ。あ、コーヒーのお代わりなら伊織に言ってね。伊織コーヒー入れるの上手いから」
むぅー。なんだか納得いかない。
大ちゃんとお母さんのやり取りを聞いていたら、いつの間にか背後に伊織が立っていた。
「伊織~、後よろしくね。あぁ、パパ!早くしないと遅刻よ!じゃあ、行ってきまーす!」
バタバタと家を出ていく両親を見送りながら、私は呆気にとられていた。
「美優。いつまでパジャマ姿でいるの?早く着替えて来て」
伊織に冷たく言われ、ムッとする。
土曜日の夜、伊織と喧嘩してからちょっとぎこちない。伊織に‘お仕置き’と称して付けられた首の跡は、赤みがかった色から青に変わりつつある。かなり大きくハッキリついていて目立つので、大きめの絆創膏で隠している。
姉弟喧嘩といえど、これはやり過ぎじゃない?という訳で私は怒っているのだ!
プイッと顔を反らし、無言で自室へと着替えに戻った。
ーーーーーーーーーーーーーー・・・
《大智side》
ぷくっと頬を膨らませて、プイッて無言で部屋に戻る美優の後ろ姿を見ながら、怒っても可愛いなぁなんて呑気に考えていた。
隣では同じく伊織が美優を見つめている。
「美優と喧嘩したの?」
「あー…喧嘩っていうか…」
「首の絆創膏が関係してる?」
「…ん、まぁそんなトコ」
切れの悪い返事の伊織は、後ろめたい事があるのか目を合わせようとしない。
「意地悪な言い方するけど、伊織は‘弟’だからね。美優を悩ませる事だけはしないで欲しいなぁ」
「ウザ…。そういう大智君だって従兄だし」
「従兄は結婚できるんだよ?」
「それ何度目?いつも言ってるけど、美優に選ばれなきゃ立場なんて関係ないし」
「美優に選ばれなきゃ…かぁ。確かにね」
「っていうか、マジで相澤って何なの?キスマークつけて帰って来たんだよ?!大智君もしっかりしてよね」
「わかってる。だからこうして迎えに来たんだ。なるべく登下校は美優を一人にしないようにするよ」
「相澤に取られるくらいなら、俺が美優の初めてを全部奪うから」
「はぁ…そういう所ガキだな、伊織」
「‘ガキ’の一言で許されるなら、とっくにシてる」
「はぁ~、やだやだ。いつからこんな短期で可愛げのない男になっちゃったんだろうな」
「美優は鈍感だから、こっちから行かないと気づかないよ」
伊織の呟きに、それもそうだなと納得していると、パタパタと美優が駆け寄って来た。
「あー!もぅ!二人してまた私の悪口言ってるの?私、鈍感じゃないもんっ!」
プンプン!という擬音が似合う姿。
やっぱり怒ってても美優は可愛いな。
「ふぇ?!なんで…?!」
月曜日の朝、寝ぼけ眼でリビングに行くと、大ちゃんが寛いでいた。ソファーに深く座り、コーヒーを飲む姿はまるで自分の家のようだ。
「美優、あんたまたストーカーされてるんだって?」
お母さんがキッチンからヒョコっと顔を出す。
「またって何よ…」
「だって中学の時もストーカーやら変質者やらに追われて、大智君に迷惑かけてたじゃない」
「あれは大ちゃんが心配性なだけで、実際そんな人居なかったもん」
確かに中学1、2年の時は大ちゃんと由妃ちゃんの3人で登下校をする事が多かった。3年になって大ちゃんが高校に入学してからは、由妃ちゃんと二人だけだったけど、一度も変な人に遭遇した事は無い。それにもし変な人がいたとしたら、それは由妃ちゃんのファンの人だと思う。私じゃないって事は自分が一番わかってる。
「加奈子さん、美優はそういう所鈍感なんですよ」
大ちゃん、爽やかな笑顔でディスるのはどうかと思うよ?
「そうよねー。いつもボケ~っとしてるんだから。はぁ、あまり大智君に迷惑かけるんじゃないわよ?大智君だって忙しいんだから」
「迷惑なんて全然。こちらこそ朝早くからリビングで待たせていただいてすみません」
「いーのよぉ。あ、コーヒーのお代わりなら伊織に言ってね。伊織コーヒー入れるの上手いから」
むぅー。なんだか納得いかない。
大ちゃんとお母さんのやり取りを聞いていたら、いつの間にか背後に伊織が立っていた。
「伊織~、後よろしくね。あぁ、パパ!早くしないと遅刻よ!じゃあ、行ってきまーす!」
バタバタと家を出ていく両親を見送りながら、私は呆気にとられていた。
「美優。いつまでパジャマ姿でいるの?早く着替えて来て」
伊織に冷たく言われ、ムッとする。
土曜日の夜、伊織と喧嘩してからちょっとぎこちない。伊織に‘お仕置き’と称して付けられた首の跡は、赤みがかった色から青に変わりつつある。かなり大きくハッキリついていて目立つので、大きめの絆創膏で隠している。
姉弟喧嘩といえど、これはやり過ぎじゃない?という訳で私は怒っているのだ!
プイッと顔を反らし、無言で自室へと着替えに戻った。
ーーーーーーーーーーーーーー・・・
《大智side》
ぷくっと頬を膨らませて、プイッて無言で部屋に戻る美優の後ろ姿を見ながら、怒っても可愛いなぁなんて呑気に考えていた。
隣では同じく伊織が美優を見つめている。
「美優と喧嘩したの?」
「あー…喧嘩っていうか…」
「首の絆創膏が関係してる?」
「…ん、まぁそんなトコ」
切れの悪い返事の伊織は、後ろめたい事があるのか目を合わせようとしない。
「意地悪な言い方するけど、伊織は‘弟’だからね。美優を悩ませる事だけはしないで欲しいなぁ」
「ウザ…。そういう大智君だって従兄だし」
「従兄は結婚できるんだよ?」
「それ何度目?いつも言ってるけど、美優に選ばれなきゃ立場なんて関係ないし」
「美優に選ばれなきゃ…かぁ。確かにね」
「っていうか、マジで相澤って何なの?キスマークつけて帰って来たんだよ?!大智君もしっかりしてよね」
「わかってる。だからこうして迎えに来たんだ。なるべく登下校は美優を一人にしないようにするよ」
「相澤に取られるくらいなら、俺が美優の初めてを全部奪うから」
「はぁ…そういう所ガキだな、伊織」
「‘ガキ’の一言で許されるなら、とっくにシてる」
「はぁ~、やだやだ。いつからこんな短期で可愛げのない男になっちゃったんだろうな」
「美優は鈍感だから、こっちから行かないと気づかないよ」
伊織の呟きに、それもそうだなと納得していると、パタパタと美優が駆け寄って来た。
「あー!もぅ!二人してまた私の悪口言ってるの?私、鈍感じゃないもんっ!」
プンプン!という擬音が似合う姿。
やっぱり怒ってても美優は可愛いな。
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